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脳血流計測による表情伝達の評価の検討 1.背景・目的 近年、非対面メディアにおいて表情を利用した感情伝達が盛んに利用されている。それにともない、 様々な感情伝達方法の研究がなされているが、その効果の測定としては、SD 法を用いた印象評定など の、言語を介した計測が主流である。表情は、感情のような内的体験が行動として表出されたもので ある。受信者は表情から送信者の内的体験を模倣することで非言語的なコミュニケーションが成り立 ち、共感が起こると考えられる。その受信者の内的体験を直接的に計測することによってより直感的 な伝達効果が測定できると考えられる。 共感性に乏しいと言われている自閉症は模倣に関連するミラーニューロンの活動に問題があるとさ れている。本研究は、ミラーニューロンの活動計測を通じて、感情の内的模倣が起こりやすいかの指 標とし、感情伝達評価の一助としようとするものである。 3.計測方法の検討 大学生 9 名を対象に、非侵襲性で利便性に富む近赤外分光法によりブローカ野 の計測記録を行い、計測方法の検討を行った。 計測は以下の手順で行った。 1)光トポグラフィーを装着する。 2)参加者は3種類の刺激(①タッピング動画、②場所を指示する静止画、③動き を指示する動画[ 図 1] を 3sec 観察模倣する。各刺激間は 16sec の休憩を挟む。 3)光トポグラフィーを脱着する。 (実験環境) 計測室内の椅子に参加者を座らせ、机の上に設置したモニタ を見せる。モニタからの距離は 600mm とした。 (計測部位) ブローカ野(ブロードマンの 44 野)の活動を計測するため、 国際 10/20 法に基づき T3T4 を端点とし、3×3のプローブ を用い、左右 24 チャネルを計測記録した [ 図 2]。なお計測 部位間は3㎝である。サンプリングレートは 30Hz とし、ノ イズがあるチャンネルは解析対象外とした。 4.検討結果 (解析方法)各刺激呈示前の 4sec の平均 (Atn) 及 び標準偏差 (σtn) を基準とし、刺激呈示中 (3sec) 及 び後(12sec)の数値を変換(X= (Xn- Atn)/σtn)し、 タスクごとに 15sec 分を加算平均した。このように して得られた数値を①ー②③間で比較した。 (結果)ブローカの範囲であると思われる CH5,7,8,9,10, および CH20,24 が、模倣条件時に有 意に活性化していることが認められた [ 図 3]。 このことから、上記の方法によってミラーニューロ ンの活動が計測できたと考えられる。 Evaluation of the Facial Expressions Communication by Cerebral Blood Flow Measurements ○中森志穂,飯嶋君枝 , 永盛祐介 , 藤岡徹 , 内山俊朗 , 山中敏正 , 宮本信也(筑波大学大学院) 場所の指示 実写動画 動きの指示 模倣 共感 ミラーニューロン 図1:計測方法検討のための呈示刺激 図2:計測部位 図3:計測方法の検討結果:有意差の得られたチャンネルを色付けして示す T3 T4 44 ブロードマンの 44 野 ブローカ野 プローブ位置(左) 国際 10-20 法 プローブ位置(右) 国際 10-20 法 T3 01 02 03 04 05 06 07 11 12 08 09 10 T4 24 23 22 21 20 19 18 14 13 17 16 15 模倣条件で有意に活性化 有意差無し

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脳血流計測による表情伝達の評価の検討

1.背景・目的 近年、非対面メディアにおいて表情を利用した感情伝達が盛んに利用されている。それにともない、様々な感情伝達方法の研究がなされているが、その効果の測定としては、SD法を用いた印象評定などの、言語を介した計測が主流である。表情は、感情のような内的体験が行動として表出されたものである。受信者は表情から送信者の内的体験を模倣することで非言語的なコミュニケーションが成り立ち、共感が起こると考えられる。その受信者の内的体験を直接的に計測することによってより直感的な伝達効果が測定できると考えられる。 共感性に乏しいと言われている自閉症は模倣に関連するミラーニューロンの活動に問題があるとされている。本研究は、ミラーニューロンの活動計測を通じて、感情の内的模倣が起こりやすいかの指標とし、感情伝達評価の一助としようとするものである。

3.計測方法の検討 大学生 9名を対象に、非侵襲性で利便性に富む近赤外分光法によりブローカ野の計測記録を行い、計測方法の検討を行った。計測は以下の手順で行った。1)光トポグラフィーを装着する。2)参加者は3種類の刺激(①タッピング動画、②場所を指示する静止画、③動きを指示する動画)[図 1] を 3sec 観察模倣する。各刺激間は16sec の休憩を挟む。3)光トポグラフィーを脱着する。

(実験環境)計測室内の椅子に参加者を座らせ、机の上に設置したモニタを見せる。モニタからの距離は 600mmとした。(計測部位)ブローカ野(ブロードマンの 44野)の活動を計測するため、国際 10/20 法に基づき T3T4 を端点とし、3×3のプローブを用い、左右 24チャネルを計測記録した [図 2]。なお計測部位間は3㎝である。サンプリングレートは 30Hz とし、ノイズがあるチャンネルは解析対象外とした。

4.検討結果 (解析方法)各刺激呈示前の 4sec の平均 (Atn) 及び標準偏差 (σtn) を基準とし、刺激呈示中 (3sec) 及び後 (12sec) の数値を変換(X= (Xn- Atn)/σtn)し、タスクごとに 15sec 分を加算平均した。このようにして得られた数値を①ー②③間で比較した。

(結果)ブローカの範囲であると思われるCH5,7,8,9,10, および CH20,24 が、模倣条件時に有意に活性化していることが認められた [図 3]。 このことから、上記の方法によってミラーニューロンの活動が計測できたと考えられる。

Evaluation of the Facial Expressions Communication by Cerebral Blood Flow Measurements

○中森志穂,飯嶋君枝 , 永盛祐介 , 藤岡徹 , 内山俊朗 , 山中敏正 , 宮本信也(筑波大学大学院)

③場所の指示

①実写動画 ②動きの指示

模倣

共感

ミラーニューロン

図1:計測方法検討のための呈示刺激

図2:計測部位

図3:計測方法の検討結果:有意差の得られたチャンネルを色付けして示す

T3 T4

44

ブロードマンの44野ブローカ野

プローブ位置(左)国際10-20 法

プローブ位置(右)国際10-20 法

T3

01

02

03

04

05

06

07

11

12

08

09

10

T4

24

23

22

21

20

19

18

14

13

17

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模倣条件で有意に活性化 有意差無し

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5.方法:表情伝達の比較 大学生6名を対象に、3で確立した方法論を用いて、表情模倣時における脳活動の違いを比較検討した。また、計測後に印象評定課題を行った。計測は以下の手順で行った。1)光トポグラフィーを装着する。2)参加者は 5種類の刺激(①無表情の静止画、②無表情から笑顔へ変化する実写動画、③文章、④⑤表情のアイコン2種)[図 4] を観察する。3)参加者に、いずれの刺激が呈示されても表情をまねるよう説明する。4)参加者は呈示刺激を観察しながら、表情を作る。5)光トポグラフィーを脱着する。6)印象評定課題を実施する。・PC上に①②④⑤の刺激を表示する。・参加者は、表示される印象語(うれしい、たのしい、好き)について順位評定を行う。

6.結果(印象語について)順位付けされたデータの分析は、ボンフェローニの方法で有意水準を調整し、Wilcoxon の順位和検定を行った。実写静止画は「好き」においての青および実写動画との比較以外の全ての比較において有意に順位が低い結果が得られた。アイコンについてうれしさと好きは、白>青の傾向がみられた [表 1]。これは白が喜の感情の情報を伝達するという先行研究の結果にも一致する。形態は全く同じであったことから、色が補助的に感情の情報を伝えたといえる。

7.結論 本研究で用いた計測方法でミラーニューロンの活動を計測することができた。しかし、表情の模倣時には有意な結果が得られなかった。ミラーニューロンに近い部位の脳活動により、かく乱されたためと考えられる。本研究の結果から、本研究の用いた方法ではミラーニューロンの計測により表情伝達の評価を行うことは難しいことがわかった。今後、さらなる検討が必要である。

(光トポグラフィ計測について)3で用いた解析方法で光トポグラフィ計測の結果を解析した結果、有意な結果はえられなかった。

5.参考文献[1] Iacoboni, M., Woods, R. P., Brass, M., Bekkering, H., Mazziotta, J. C. & Rizzolatti, G. (1999) Cortical mechanisms of human imitation. Science, 286(5449), p.2526-2528[2] Rizzolatti,G., Fadiga, L., Gallese, V. & Fogassi, L. (1996) Premotor Cortex and the recognition of motor actions. Cognitive Brain Research, 3(2), p.131-141[3] Williams J. H. G., Waiter, G. D., Gilchrist, A., Perrett, D., I., Murray, A. D. & Whiten, A. (2006)[4] Neural mechanisms of imitation and 'mirror neuron' functioning in autistic spectrum disorder. Neuropsychologia, 44, p.610-621[5] 金湘イル:“非対面メディアにおける感性情報伝達を支援する方法ー光のイメージを用いた感情表現を中心にー”、筑波大学大学院修士論文、2006[6] 吉川左紀子、益谷真、中村真・編:“顔と心 顔の心理学入門”、サイエンス社、1993[7] 日経サイエンス編集部 :”別冊日経サイエンス 154 脳から見た心の世界”、2006[8] JACFEE(Japanese And Caucasian Facial Expressions of Emotion;マツモト・工藤 , 1996)[9] 山本剛、牧敦、小泉英明:“光を用いた脳機能計測法:近赤外光とポグラフィ”、日本物理學會誌、59, 10, 675-681, 2004

図4:表情模倣のための呈示刺激

表1:印象評定の結果:順位平均及び検定結果

① ②

④ ⑤

検定結果

順位平均 うれしさ たのしさ 好き

実写静止画像 4.0 4.0 3.5

実写MOVIE 2.2 2.0 2.2

白MOVIE 1.7 1.5 1.3

青MOVIE 2.2 2.5 3.0

うれしい 実写静止画像実写MOVIE白MOVIE 青MOVIE

実写静止画像 * * *

実写MOVIE 0.31 1.00

白MOVIE 0.39

青MOVIE

たのしい 実写静止画像実写MOVIE白MOVIE 青MOVIE

実写静止画像 * * *

実写MOVIE 0.34 0.34

白MOVIE 0.05

青MOVIE

好き 実写静止画像実写MOVIE白MOVIE 青MOVIE

実写静止画像 0.03 * 0.33

実写MOVIE 0.08 0.15

白MOVIE 0.01

青MOVIE

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

うれしさ たのしさ 好き

実写・静止画

実写・動画

アイコン・白

アイコン・青

実写静止画

実写動画

アイコン動画・白

文字

アイコン動画・青

T3

01

02

03

04

05

06

07

11

12

08

09

10

T4

24

23

22

21

20

19

18

14

13

17

16

15

全てのチャンネルで有意差が認められなかった