IBM i(AS/40) FAX送信のASPサービスFTTH、IP電話、無線LANなどのブロ...

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86 2009 No.9 自動FAX送信の仕組みを ASPサービスへ移行 ソフトバンク BB は、ソフトバンク グループの事業会社 4 社(ビー・ビー・ テクノロジー、ソフトバンクネットワ ークス、ソフトバンク・イーシーホー ルディングス、ソフトバンク・コマー ス)の合併により 2003 年に誕生した。 事業の柱は大きく 2 つ。 1 つは Yahoo! BB 」でお馴染みの ADSLFTTHIP 電話、無線 LAN などのブロ ードバンド・インフラ事業。もう 1 は、ソフトバンクの創業ビジネスを継 承した IT 関連商材の流通をはじめ、 e コマースなどの事業を行うコマース& サービス事業。その中核的な存在とな IT 流通事業は個人や法人向けのソ フトウェアやハードウェアなど約 30 万アイテムを超える IT 関連商材を 1600 社の国内ベンダーから仕入れ、 5800 社の販売会社や 7200 店の量販 店を通じて販売するもの。 27 年にわた る実績と、年商約 2700 億円のセール スパワーを持つ、国内最大級の IT 流通 事業である。 合併統合の経緯から、今もブロード バンド・インフラ事業とコマース&サ ービス事業では、別系統の情報システ ムを利用している。ソフトバンクが創 業当時から使用してきた AS/400 を今 も継承するのは、コマース&サービス 事 業。現 在 は「System i 550」上 で、 販売管理や債権管理、入出荷管理など 一連の基幹業務システムを運用してい る。また情報系システムとしては、 IT 商材のサプライチェーン構築に向けて、 IT-EXchange」と呼ばれる BtoB サイ トをPC サーバー上で運営している。 同社では主に発注書などを中心に、 月に約 2 万枚(1000 枚/日)の帳票 System i の基幹情報システムから 取引先および仕入先へ自動的に FAX 送信していたが、 2008 7 月から、 その仕組みをコクヨ S&T が提供する 先進のユーザー事例❻ FAX送信のASPサービス POINT COMPANY PROFILE 自動FAX送信を「@Tovas」へ移行 1日1000枚の送信時間を劇的に短縮 ソフトバンクBB 株式会社 コスト、パフォーマンス、拡張性、稼働までの工数を検討して移行 System iに「UT/400-iPDC」導入でPDF変換を実行・送信 1日1000枚の送信時間が420分から30分へ 設立:2003年 本社:東京都港区 資本金:1203億100万円 従業員数:5500名 http://www.softbankbb.co.jp/ 小林由味情報システム本部 C&S システム統括部 C&S システム企画部 C&S システム企画 1 課 課長 ASP サービス「@ Tovas (あっととば す )」に 移 行 す ることに な っ た。@ Tovas は、スプールデータを PDF に変 換する「UT/400-iPDC」(アイエステ クノポート)を基幹業務を運用する System i へ導入し、帳票を PDF に自 動変換した後、コクヨ S&T の通信網を 利用して、自動的に FAX 送信するため のオンデマンド・サービスである。ソ フトバンク BB が自社運用の FAX 送信 体制から、新たなアウトソーシングサ ービスの利用に踏み切った経緯を詳し く見てみよう。 送信時間が420分から30分へ 劇的な改善効果を実証 同社が自動 FAX 送信ツールとして 長く利 用し て き た の は、「IBM Fax Director for Windows NT」である。 しかし同製品は既に販売・保守を停止 していることに加え、導入から 10 以上が経過し、処理容量の増大と老朽 化に起因する障害が 2007 年頃から多 発していた。発注書に関する FAX 送信 の障害や送信レスポンスの劣化は、発 注・納品のタイミングに多大な影響を 及ぼし、現場では業務に支障が生じ始 めていたため、早急な対応が求められ ていた。そこで新たな FAX 送信の仕組 松田恭典情報システム本部 C&S システム統括部 C&S システム企画部 部長

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Page 1: IBM i(AS/40) FAX送信のASPサービスFTTH、IP電話、無線LANなどのブロ ードバンド・インフラ事業。もう1つ は、ソフトバンクの創業ビジネスを継

86 2009 No.9

自動FAX送信の仕組みをASPサービスへ移行

 ソフトバンクBBは、ソフトバンクグループの事業会社4社(ビー・ビー・テクノロジー、ソフトバンクネットワークス、ソフトバンク・イーシーホールディングス、ソフトバンク・コマース)の合併により2003年に誕生した。 事業の柱は大きく2つ。1つは「Yahoo! BB 」でお馴染みのADSL、FTTH、IP電話、無線LANなどのブロードバンド・インフラ事業。もう1つは、ソフトバンクの創業ビジネスを継承した IT関連商材の流通をはじめ、e

コマースなどの事業を行うコマース&サービス事業。その中核的な存在となる IT流通事業は個人や法人向けのソフトウェアやハードウェアなど約30万アイテムを超える IT関連商材を1600社の国内ベンダーから仕入れ、5800社の販売会社や7200店の量販店を通じて販売するもの。27年にわたる実績と、年商約2700億円のセールスパワーを持つ、国内最大級の IT流通事業である。 合併統合の経緯から、今もブロードバンド・インフラ事業とコマース&サービス事業では、別系統の情報システムを利用している。ソフトバンクが創業当時から使用してきたAS/400を今も継承するのは、コマース&サービス事業。現在は「System i 550」上で、販売管理や債権管理、入出荷管理など一連の基幹業務システムを運用している。また情報系システムとしては、IT 商材のサプライチェーン構築に向けて、 「IT-EXchange」と呼ばれる BtoBサイトをPCサーバー上で運営している。 同社では主に発注書などを中心に、月に約2万枚(1000枚/日)の帳票をSystem iの基幹情報システムから取引先および仕入先へ自動的にFAX送信していたが、2008年7月から、その仕組みをコクヨS&Tが提供する

先進のユーザー事例❻ FAX送信のASPサービス

POINT COMPANY PROFILE

自動FAX送信を「@Tovas」へ移行1日1000枚の送信時間を劇的に短縮

ソフトバンクBB株式会社

●コスト、パフォーマンス、拡張性、稼働までの工数を検討して移行

●System iに「UT/400-iPDC」導入でPDF変換を実行・送信

●1日1000枚の送信時間が420分から30分へ

設立:2003年本社:東京都港区資本金:1203億100万円従業員数:5500名http://www.softbankbb.co.jp/

小林由味氏

情報システム本部C&Sシステム統括部C&Sシステム企画部C&Sシステム企画1課課長

ASPサービス「@Tovas(あっととばす)」に移行することになった。@Tovasは、スプールデータをPDFに変換する「UT/400-iPDC」(アイエステクノポート)を基幹業務を運用するSystem iへ導入し、帳票をPDFに自動変換した後、コクヨS&Tの通信網を利用して、自動的にFAX送信するためのオンデマンド・サービスである。ソフトバンクBBが自社運用のFAX送信体制から、新たなアウトソーシングサービスの利用に踏み切った経緯を詳しく見てみよう。

送信時間が420分から30分へ劇的な改善効果を実証

 同社が自動FAX送信ツールとして長く利用してきたのは、「IBM Fax Director for Windows NT」である。しかし同製品は既に販売・保守を停止していることに加え、導入から10年以上が経過し、処理容量の増大と老朽化に起因する障害が2007年頃から多発していた。発注書に関するFAX送信の障害や送信レスポンスの劣化は、発注・納品のタイミングに多大な影響を及ぼし、現場では業務に支障が生じ始めていたため、早急な対応が求められていた。そこで新たなFAX送信の仕組

松田恭典氏

情報システム本部C&Sシステム統括部C&Sシステム企画部部長

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http://www.imagazine.co.jp/ 87

ソフトバンクBB コクヨ 取引先

@Tovas

FAX送信サービス

FAX

FAX

@Tovasサーバー

サービス提供24時間365日

System i 550

インターネット(HTTPS)

@Tovas

連携モジュール

スプール

送信情報

PDF変換

UT/400-iPDC

PDF

送信情報送信結果

送信 発信

みを検討することになったのである。 自動FAX送信をサポートする10社以上の製品を比較検討し、自社運用型の 製 品 とASPサ ー ビ ス で あ る@Tovasの2つに絞り込み、詳細に両者を検討した。情報システム本部で IT流通事業のシステム全般を統括する松田恭典部長(C&Sシステム統括部C&Sシステム企画部)は、その選定過程を次のように指摘する。 「主にコスト、送信パフォーマンス、稼働開始時期、拡張性やセキュリティなどの点を中心に検討しました。とくに業務の効率性に直接的に影響する送信時のパフォーマンスについては慎重に検討を重ねました」 松田氏によれば、最終的に@Tovasに決定した理由は、やはり送信パフォーマンスにあったようだ。主に午前中に集中して発生する、1日当たり約1000枚の帳票送信に必要な送信時間は、@Tovasの場合、約30分。自社運用型の製品の場合は80分である(ちなみに以前のシステムでは420分)。同等のパフォーマンスを自社運用型の製品で実現する場合は、相当数の回線を自社費用で増強する必要があり、結果的には導入・運用コストが肥大する

ことになる。 さらに「開発作業が不要で短期間で本稼働できる点や、障害発生時も迅速な対応が期待できる点、さらに@TovasであればFAXだけでなく、セキュアなファイル送信など拡張オプションが豊富である点なども評価しました」と語るのは、情報システム本部の小林由味課長(C&Sシステム統括部 C&Sシステム企画部 C&Sシステム企画1課)である。 同社では、業務システムの運用をアウトソーシングサービスに移行させた経験はかつてなく、サービスレベルについての不安もあったという。しかし「サービス提供事業者がコクヨであることも、@Tovas選択の大きな理由になりました。 以前からグループ会社との協業など企業同士の信頼関係があり、また同じ頃、@Tovasサービス自体の再販というSaaS事業の連携が活発化していたことが後押しになりました」(松田部長)という。 導入決定から約2カ月を経て、本稼働は2008年7月。まずSystem i上にPDF変換と連携の各モジュール(UT/400-iPDCと@Tovas連携ソリューション)を導入。出力されたスプ

ールファイルをPDF変換してから@Tovasサーバーへ送信。そこから取引先へFAX送信し、送信結果をフィードバックする。そして送信結果を、画面上で確認するという仕組みだ。 一連の導入作業や、対象帳票のオーバーレイ作成、送信状況の参照・再送指示画面の作成、System iとの連携といった準備作業は、ソフトバンク・テクノロジー株式会社が担当した。  連携モジュールでは標準で送信状況の参照・再送指示画面等のインターフェースを用意しているが、システムの変更による利用ユーザーへの影響を最小限にすべく、既存業務アプリケーション側でカスタマイズを実施した。 @Tovas導入後は、システム障害が一切解消され、また1日1000枚の送信時間がそれまでの420分から30分へと劇的に短縮されるなど、その業務改善効果が現場では高い評価を得ているようだ。 同社ではしばらくFAX送信の運用を続けた後、PDF化されたドキュメントの新たな利用方法なども模索していきたいと考えている。      

図表 FAX送信サービスの仕組み