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【知の市場】 [化学工学会SCENet] 化学工業の役割と特徴 山﨑 Copyright2015 1 VT523b 化学技術特論1b ケミカルスが産み出す日本の力 講義No.1 化学工業の特徴と役割 SCENet 山﨑

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VT523b 化学技術特論1bケミカルスが産み出す日本の力

講義No.1 化学工業の特徴と役割

SCE・Net 山﨑 徹

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目 次

1.化学工業とは、化学工業の役割

2.化学産業(工業)の特徴

3.製造業における化学工業の位置づけ

4.化学工業の歴史

5.化学工業の功罪

6.化学工業の分類

7.まとめ

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1. 化学工業とは、化学工業の役割

化学工業とは、ある物質に化学反応を施し、より価値の高い物

質に転換する工業のこと。

広義には化学反応を伴わなくても、

・化学物質の性質、機能に関する知識を活用して、ある物質をよ

り高い価値を持つ状態に変換する工業(薬品類の配合や樹脂の

成型など)

・生物の機能を利用して有用物を生み出す工業(バイオテクノロ

ジー)

を含む。

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ナフサ熱分解

エチレン重合ポリエチレン樹脂

射出成型

ポリエチレン製

容器

化学反応 化学反応なし

化学産業の例

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産業の分類(日本標準産業分類による)

A. 農業,林業

B. 漁業

C. 鉱業,採石業,砂利採取業

D. 建設業

E. 製造業

F. 電気・ガス・熱供給・水道業

G. 情報通信業

H. 運輸業,郵便業

I. 卸売業,小売業

J. 金融業,保険業

K. 不動産業,物品賃貸業

L. 学術研究,専門・技術サービス業

M. 宿泊業,飲食サービス業

N. 生活関連サービス業,娯楽業

O. 教育,学習支援業

P. 医療,福祉

Q. 複合サービス事業

R. サービス業(他に分類されないもの)

S. 公務(他に分類されるものを除く)

T. 分類不能の産業

09 食料品製造業

10 飲料・たばこ・飼料製造業

11 繊維工業

12 木材・木製品製造業(家具を除く)

13 家具・装備品製造業

14 パルプ・紙・紙加工品製造業

15 印刷・同関連業

16 化学工業

17 石油製品・石炭製品製造業

18 プラスチック製品製造業

19 ゴム製品製造業

20 なめし革・同製品・毛皮製造業

21 窯業・土石製品製造業

22 鉄鋼業

23 非鉄金属製造業

24 金属製品製造業

25 はん用機械器具製造業

26 生産用機械器具製造業

27 業務用機械器具製造業

28 電子部品・デバイス・電子回路製造業

29 電気機械器具製造業

30 情報通信機械器具製造業

31 輸送用機械器具製造業

32 その他の製造業

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化学工業の内訳161 化学肥料製造業 1645 印刷インキ製造業

1611 窒素質・りん酸質肥料製造業 1646 洗浄剤・磨用剤製造業

1612 複合肥料製造業 1647 ろうそく製造業

1619 その他の化学肥料製造業 165 医薬品製造業

162 無機化学工業製品製造業 1651 医薬品原薬製造業

1621 ソーダ工業 1652 医薬品製剤製造業

1622 無機顔料製造業 1653 生物学的製剤製造業

1623 圧縮ガス・液化ガス製造業 1654 生薬・漢方製剤製造業

1624 塩製造業 1655 動物用医薬品製造業

1629 その他の無機化学工業製品製造業 166 化粧品・歯磨・その他の化粧用調整品製造業

163 有機化学工業製品製造業 1661 仕上用・皮膚用化粧品製造業(香水,オーデコロンを含む)

1631 石油化学系基礎製品製造業(一貫して生産される誘導品を含む) 1662 頭髪用化粧品製造業

1632 脂肪族系中間物製造業(脂肪族系溶剤を含む) 1669 その他の化粧品・歯磨・化粧用調整品製造業

1633 発酵工業 169 その他の化学工業

1634 環式中間物・合成染料・有機顔料製造業 1691 火薬類製造業

1635 プラスチック製造業 1692 農薬製造業

1636 合成ゴム製造業 1693 香料製造業

1639 その他の有機化学工業製品製造業 1694 ゼラチン・接着剤製造業

164 油脂加工製品・石けん・合成洗剤・界面活性剤・塗料製造業 1695 写真感光材料製造業

1641 脂肪酸・硬化油・グリセリン製造業 1696 天然樹脂製品・木材化学製品製造業

1642 石けん・合成洗剤製造業 1697 試薬製造業

1643 界面活性剤製造業(石けん,合成洗剤を除く) 1699 他に分類されない化学工業製品製造業

1644 塗料製造業

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化学産業(工業)の役割

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2.化学産業(工業)の特徴(その1)

(1)化学産業はプロセス産業

プロセス産業とは・化学産業を始め、窯業、ガラス産業、紙パルプ産業、鉄鋼業、非鉄金属産業など、生産工程がものをいう産業。自動車や機械など加工組立産業と対になる言葉・ものづくりを規定する情報「設計」を、①「機能設計」、②「構造設計」、③「工程設計」に分けて考えた時、プロセス産業は「工程設計」の比重が大きな産業。① 顧客が製品に求める機能や性能を決める「機能設計」② その製品の具体的な寸法・形状や材質、あるいは構成部品やその結合

部分の具体的な形などを決める「構造設計」③ そうした製品をつくり出す生産工程、生産設備やその操作方法、それら設

備の順序や配置、制御ソフト、あるいは人的作業の内容や手順などを決める「工程設計(プロセス設計)」出典:藤本隆宏 http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/dp/pdf/MMRC1_2003.pdf

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2.化学産業(工業)の特徴(その2)

(2)化学産業は装置産業

装置産業とは、大型の設備や施設などによって製品やサービスを生産する産業。化学産業に限らないが、化学産業は典型的な装置産業。

多くは生産能力を増やしても、投資額は比例しては増えない、スケールメリットがある。(3分の2乗則)

投資額∝(生産能力)2/3

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参考

3分の2乗則の根拠

・装置の生産能力は装置の容積に比例する。生産能力∝装置の容積∝L3

・装置の投資額(設備費)は装置材料の重さに比例する。更に装置材料の重さは装置の表面積に比例する。

装置の投資額∝装置の表面積∝L2

・以上から投資額∝L2∝(L3)2/3∝(生産能力)2/3

注;3分の2乗則は大まかに傾向を把握するのに使う原則であり、実際の投資を決める時は個別に詳細の見積もりを行う。

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2. 化学産業(工業)の特徴(その3)

(3)化学産業は産業内・産業間取引の大きい産業最終化学品

中間化学品 (他の産業への中間投入財となる)

原料 基礎化学品 樹脂ゴム成型品

化学肥料・農薬

有機化学品 印刷インキ 農業

石油 エチレン

合成樹脂 塗料・接着剤 食品産業

LPG ベンゼン

合成ゴム タイヤ 医療サービス産業

天然ガス 硫酸

合成繊維 医療用医薬品 繊維産業

植物油脂 苛性ソーダ

界面活性剤 食品添加物 電機電子産業

空気・水 アンモニア

合成染料 (消費財となる) 自動車産業

食塩 塩素 一般用医薬品

医薬原体 建設業

リン鉱石 酸素・チッソ 家庭用殺虫剤

溶剤

糖蜜 リン酸 家庭用洗剤

無機化学品

化粧品

ユーザーとなる他の産業

(主に化学業界への中間投入

財となる)(主に化学業界への中間投入

財となる)

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化学プロセスと企業間取引の一例

エチレン 酸化

原油 石油精製 ナフサ 熱分解 プロピレン

ブタジエン

ベンゼン

石油精製企業

BTX 蒸留 トルエン

キシレン

石油化学企業

二軸延伸 プラズマディスプレイ、液晶用として電器会社へ

空気酸化 重合

紡糸・延伸 PET原糸 繊維製品

化学・合繊企業 PETボトル 飲料水メーカーなどへ

テレフタール酸(TPA)

ポリエステル(PET)

PETフィルム

染色・織布・縫製

など

射出成型・延伸ブロー

成型

接触改質・芳香族抽出

異性化・分離

エチレングリコー

パラキシレン

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3.製造業における化学工業の位置づけ

(1)製品出荷額は第2位。第1位は自動車、僅差の第3位は電機電子情報。

(2)付加価値額、出荷額に対する付加価値率ではトップクラス。日本のGDPに大きく貢献。付加価値額=製品出荷額ー原材料投入額ー減価償却費

(3)資本集約産業、研究集約産業

・従業員に占める研究者の割合、売上高に対する研究開発費の割合は電気電子情報に次ぐ高レベル。

・設備投資額も高レベル。

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出典;平成24年工業統計表「産業編」データ(平成26年4月11日)経産省

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2008 2009 2010 2011 2012

食料品製造業

繊維工業

化学工業

化学工業(広義)

石油製品・石炭製品製造業

鉄鋼業

金属製品製造業

はん用・生産用・業務用機械器具製造業

電子部品・デバイス・電子回路・電気機械

器具・情報通信機械器具製造業

輸送用機械器具製造業

製造業の製品出荷額の推移

年度

製品出荷金額

兆円

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/result-2/h24/kakuho/sangyo/index.html

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食料品製造業

繊維工業

化学工業

化学工業(広義)

石油製品・石炭製品製造業

鉄鋼業

金属製品製造業

はん用・生産用・業務用機械器具製造

電子部品・デバイス・電子回路・電気機

械器具・情報通信機械器具製造業

輸送用機械器具製造業

製造業の付加価値額の推移

年度

付加価値額

兆円

出典;平成24年工業統計表「産業編」データ(平成26年4月11日)経産省

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/result-2/h24/kakuho/sangyo/index.html

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2008 2009 2010 2011 2012

製造業計

食料品製造業

繊維工業

化学工業

化学工業(広義)

石油製品・石炭製品製造業

鉄鋼業

金属製品製造業

はん用・生産用・業務用機械器具製

造業

電子部品・デバイス・電子回路・電気

機械器具・情報通信機械器具製造業

輸送用機械器具製造業

製造業の出荷額に対する付加価値率

付加価値率

年度

出典;平成24年工業統計表「産業編」データ(平成26年4月11日)経産省

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/result-2/h24/kakuho/sangyo/index.html

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出典:経産省企業活動基本調査各報

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製造業

食料品製造業

繊維工業

化学工業(医薬品を除く)

化学工業(広義)

石油製品・石炭製品製造業

鉄鋼業

金属製品製造業

はん用・生産用・業務用機械器具製造業

電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・

情報通信機械器具製造業

輸送用機械器具製造業

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17.00

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2009 2010 2011 2012

医薬品製造業

売上高研究開発費比率

年度

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/result-2/h25data.html

製造業の売上高研究開発費比率

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従業員総数(人)

研究者数(人)

従業員10,000人当たりの研究者数(人)

製 造 業 4,172,248 432,289 1,036

食  料  品  製  造  業 346,840 13,348 385

繊 維 工 業 92,584 5,364 579

医  薬 品  製  造  業 189,293 21,725 1,148

化 学 工 業 277,984 34,130 1,228

化 学 工 業 ( 広 義 ) 644,201 69,192 1,074

石 油 製 品 ・ 石炭製品製造業 26,571 1,703 641

鉄   鋼 業 136,501 4,716 345

金 属 製 品 製 造 業 191,760 5,039 263

はん用・生産用・業務用機械器具製造業

681,908 73,510 1,078

電子部品・デバイス・電子回路・電気機械器具・情報通信機械器具製造業

1,012,181 176,779 1,747

輸 送 用 機 械 器 具 製造業 610,826 58,392 956

http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001024127&cycode=0

製造業の従業員に対する研究者の割合2009年12月公表

出典;政府統計の総合窓口 平成21年度化学技術研究調査

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業種別の設備投資額の推移

出典:日本化学工業協会「グラフで見る化学工業2014」

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5.化学工業の歴史

5.1 第1期 『近代化学工業の基盤成立』

産業革命から19世紀末までの150年間

5.2 第2期 『化学産業の自立と高度成長時代』

20世紀初頭から1970年代後半のオイル

ショックまでの70年間

5.3 第3期 『リストラクチャリングの時代』

オイルショック後から現在に至る約30年間

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5.1 第1期 近代化学工業の基盤成立

18世紀半ば~19世紀初めの産業革命が契機;石炭をエネルギー源とし、動力に蒸気を得て大量生産されるようになった織物に使う漂白剤を始め、金属処理、ガラス、石鹸製造などを目的として、酸及びアルカリに対する大量の需要を生み出し、化学工業勃興の契機となった。

需要の増加と改良;産業革命によって生活水準が向上し、購買力が増加したことにより、化学品に対する需要が高まった。化学品が一定品質で大量生産することが可能になるに従い、従来の天然素材、人工素材を代替しながら急速に市場を拡大していった。

増加した需要は化学品に対する性能や品質、安全性の向上、大量で安価な原料の確保などのコストダウンが要求され、これに応えて改良することで、化学工業は市場を拡大していった。

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第1期 近代化学工業の基盤成立

1746

1789

1816

1821

1825

1828

1839

1841

1846

1856

1866 ダイナマイトの発明A.Nobel

1867

1869

1894

1899

1909

尿素の人工合成F.Woehler(独)→有機化学工業の成立

鉛室法の硫酸製造の工業化J.Roebuck(英)炭酸ソーダ製造に成功N.Leblanc(仏)

塩化銀を使って陰画像の定着に成功N.Niepce(仏)→写真技術の基礎

マラリア治療薬キニーネの生成T.Morson(英)

動植物から脂肪酸の分離に成功M.E.Chevreul(仏)→油脂化学の始まり

毒性少なく色が変化しない顔料の開発H.I .Thomas(英)&R.W.Grif f iths(英)→塗料の始まり

Union Carbide(米)ナイアガラの水力発電を利用してカルシウムカーバイド製造を工業化

フェノールから合成されるサリチル酸に解熱作用、「アスピリン」Bayer(独)

American Cyanamid(米)カーバイドから石灰窒素を工業化、ここからアセチレンを得てアルデヒド、メタノール、酢酸エチルなどの誘導品の工業化

加硫ゴムの製造開始C.Goodyear(米)→合成ゴムの始まり

硫酸を使用して過リン酸肥料を製造J.B.Lawes(英)→人工肥料の始まり

硫酸と硝酸の混合C.Shonbein(スイス)&A.Sobrero(伊)→合成火薬の成立

アニリン染料モーブの合成に成功W.H.Perkin(英)→染料の工業化・発展はドイツやスイスへ

発電機の発明W.Siemens(独)→電気分解生産技術の大きな革新

コールタールから抽出されるフェノールを殺菌剤として使用J.Lister(英)

無機化学の基盤成立

電気化学への展開

種々の化学工業の勃興 有機化学工業の基盤成立

医薬への展開火薬・写真・塗料への展開

生産量;5000t/年(1820)→600,000t(1880)

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・SO2 非鉄金属の精錬副生物、黄鉄鉱の焙焼、石油の脱硫による回収硫黄

2FeCuS2 + SiO2 + 5O2 → 2Cu + Fe2SiO4 + 4SO24FeS2 + 11O2 → 2Fe2O3 + 8SO2

・鉛室法(硝酸法)(1746→1793) 得られる硫酸濃度が低い。SO2 + NO2 → SO3 + NOSO3 + H2O → H2SO4

・接触法(触媒;V2O5)(1915)2SO2 + O2 → 2SO3H2SO4 + nSO3 → H2SO4・nSO3 吸収塔内でSO3 を濃硫酸に過

剰に吸収させ、発煙硫酸とする。H2SO4・nSO3 + H2O → (n+1)H2SO4 稀硫酸で希釈し、濃硫酸へ

硫酸参考

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ソーダ灰(炭酸ナトリウム) ガラス、織物、石鹸、製紙業など

・ルブラン法(1789→1791)食塩と硫酸を窯の中で加熱しソルトケーキ(硫酸ナトリウム)を造る。

2NaCl + H2SO4 → Na2SO4 + 2HClソルトケーキ

硫酸ナトリウムとコークスと石灰石を反射炉で加熱して黒灰を造る。

Na2SO4 + CaCO3 + 2C → Na2CO3 + CaS + 2CO2石灰石 黒灰

黒灰とは生成物である炭酸ナトリウムと硫化カルシウムと未反応の石灰石とコークスの混合物のこと。黒灰中から水に溶けだすソーダのみを水で抽出して、この水溶液からソーダを結晶として取り出した。

・塩化水素の利用;ディーコン反応(1880)4HCl+O2 → 2H2O +Cl2 触媒;CuCl2

・硫黄の回収と再利用(1880)CaS+H2O+CO2 → CaCO3+H2SH2S+(1/2)O2 → H2O+S⇒硫酸

参考

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・ソルベ―法(アンモニア・ソーダ法)(1863)

食塩水を飽和させ、アンモニアを十分に溶かした後、CO2を通じる。

NaCl + H2O + NH3 + CO2 → NH4Cl + NaHCO3↓2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2 ↑

副生する塩化アンモニウムは消石灰と反応させてアンモニアに戻し、再利用する。

CaCO3 → CaO + CO2↑CaO + H2O → Ca(OH)2Ca(OH)2 + 2NH4Cl → CaCl2 + 2H2O + 2NH3↑

反応を一つにまとめると 2NaCl + CaCO3 → CaCl2 +Na2CO3

ソーダ灰(炭酸ナトリウム)(続き)参考

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カルシウムカーバイド(炭化カルシウム)(1894)

石灰とコークスの混合物を電気炉で2000℃に加熱

CaO + 3C → CaC2 + CO

石灰窒素(カルシウムシアナミド)(1909) 2atmで加熱

CaC2 + N2 → CaCN2 + C

アセチレンCaC2 + H2O → C2H2 + Ca(OH)2

アセトアルデヒドC2H2 + H2O → CH3CHO PdCl2/CuCl2存在下

(参考)ワッカー法2C2H4 + O2 → 2CH3CHO

酢酸エチル ティシチェンコ反応

2CH3CHO → CH3COOC2H5 アルミニウムアルコキシド存在下

参考

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尿素・ヴェーラ―合成(1828) シアン酸アンモニウム水溶液を加熱

NH4OCN → H2NCONH2

・現在の製法2NH3 + CO2 → NH2COONH4NH2COONH4 → H2NCONH2 + H2O

モーブ(パーキン紫)・パーキン(1856) 最初の合成(アニリン)染料

参考

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企業名 国名 設立年 当初の事業

BASF 独 1865年 染料

Dow Chemical 米 1897年 漂白剤

Bayer 独 1863年 染料

DuPont 米 1802年 火薬

Hoechst(現:Sanofi等) 独 1880年 染料

Ciba(現:Ciba Specialty) スイス 1884年 染料

Geygy(現:Ciba Specialty) スイス 1860年 染料

Sandoz(現:Syngenta) スイス 1886年 染料

Degussa 独 1873年 貴金属加工

Air Liquide 仏 1902年 液体空気

ICI 英 1926年 4社の統合

世界の化学企業の設立

出典;みずほ産業調査23(2006 No.5)我が国化学産業の現状と課題 みずほコーポレート銀行

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日本の化学工業の萌芽

1873 大阪造幣局で鉛室法硫酸の製造が始まった。

1887 東京人造肥料(現:日産化学工業)によって硫酸製造が始められた。

1902 藤山常一と野口遵らが仙台でカーバイドの工業化に成功。1908 Frank=Caro法石灰窒素を工業化し、日本窒素肥料(現:チッソ)が設立された。

1914 三井鉱山によるアリザニン染料が工業化された。

1916 旭硝子がアンモニア法ソーダの工業化を行った。

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企業名 地名 創業年 当初の事業

住友肥料製造所(現:住友化学) 新居浜 1913年 肥料

旭絹織(現:旭化成ケミカルズ) 延岡 1922年 レーヨン製造

日本沃土(現:昭和電工) 千葉 1926年 肥料

東洋高圧工業(現:三井化学) 大牟田 1933年 肥料

三井化学工業(現:三井化学) 大牟田 1941年 染料

三井石油化学(現:三井化学) 岩国 1955年 石油化学

宇部窒素工業(現:宇部興産) 宇部 1933年 アンモニア合成

日本タール工業(現:三菱化学) 黒崎 1934年 タールケミカル

三菱油化(現:三菱化学) 四日市 1956年 石油化学

東洋曹達工業(現:東ソー) 南陽 1935年 ソーダ工業

日本の化学企業の設立

出典;みずほ産業調査23(2006 No.5)我が国化学産業の現状と課題 みずほコーポレート銀行

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5.2 第2期 化学工業の自立と高度成長時代

大量生産時代の到来 第2期は、・Haber-Bosch法アンモニア合成の成功により化学技術が飛躍的に発展したことを起点とし、

・リーディングカンパニーの研究室から、幾多のブレークスルー化学製品が生まれたこと、

・また、石油という新たな安価かつ大量に供給される原料が出現したことにより、

・二度にわたる世界大戦を経て軍需から民需への移行を経ながら、・世界中に化学品が普及し、企業は拡大路線をとってきた。・その流れがオイルショックによって終わる。(約70年間)

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第2期 化学産業の自立と高度成長時代1900

1910

1920

1930

1940

1950

1960

1970

1980

1909 F.Harbor(独)アンモニア合成に成功

1913 BASFでHarbor-Bosch法アンモニア工業化

1920 5社統合によりAllied Chemical(米)誕生

1925 I.G.Farben Industries(独)誕生、BASF、Bayer、Hoechst、Agfaが統合

1926 ICI(英)誕生、4社統合

1920 FCCプロピレンからのイソプロピルアル

コール製造から始まり、エチレンオキサイド、エ

チレングリコール、エチルアルコールなどのエ

チレン誘導品が工業化。

1930 ポリスチレン(PS) BASF(独)

1931 塩化ビニル樹脂(PVC) BASF(独)

1939 低密度ポリエチレン(LDPE) ICI(英)

1953 高密度ポリエチレン(HDPE) Montecatimi(英)/Heachst(独)

1957 ポリプロピレン(PP) Montecatini(伊)/Hercules Powder(米)

/Hoechst(独)

1939 ポリアミド(ナイロン)繊維 DuPont(米)

1941 ポリエステル繊維 ICI(英)

1943 アクリル繊維 IG(独)

1958 ポリカーボネート(PC) Bayer(独)/GE(米)

1959 ポリアセタール(POM) DuPont(米)

1967 変性ポリフェニレンエーテル(PPE) GE(米)

1970 ポリブチレンテレフタレート(PBT) Celanese(米)/Hoechst(独)

1938 ポリアミド(PA) DuPont(米)

1964 ポリイミド(PI) DuPont(米)

1972 ポリフェニレンサルファイド(PPS) Phillips Petroreum(米)

ポリエーテルスルフォン(PES) ICI(英)

1976 液晶ポリマー(LPC) Eastman Kodak(米)

1980 ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) ICI(英)

1942 フッ素樹脂(PTFE) DuPont(米)

化学企業のコングロマリット化石油化学の発展へ

合成繊維の発展

汎用樹脂の発展

エンジニアプラスチックの発展スーパーエンプラの発展

化学技術発展の起点

1914~1918 第1次世界大戦

1939~1945第2次世界大戦

1973 第1次オイルショック

1978 第2次オイルショック

1957 ヨーロッパ共同

体(EC)の成立

1962 ケネディラウン

ド交渉による関税の

引き下げ

市場シェアの確保、生産設備過剰の解消、不況に伴う価格カルテルの形成を狙う。

多くのヒト・モノ・カネ・チエが巨大企業に集まり、1920年代

以降に石油化学が急速に発展する際の大きな言動量になった。

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アンモニア ハーバー・ボッシュ法(1913) 10t/日

N2 + 3H2 → 2NH3 鉄触媒、20MPa , 500℃ ミタッシュ

ハーバー・ボッシュ法のアンモニア合成プロセス ボッシュが考案したアンモニア合成高圧反応管

参考

ハーバー;カールス・ルーエ大学教授、後にカイザー・ウィルヘルム研究所(マックスプランク研究所)ボッシュ;BASFの技術者、後にIGの社長 ミタッシュ;BASFの研究者

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アンモニア合成の水素源(1)水の電気分解 H2O → 2H2 + O2(2)石炭を原料として C + H2O → H2 + CO

CO + H2O → H2 + CO2(3)石油を原料として CmHn + (m+ℓ)/2O2

→ mCO + (n-2)H2 + ℓH2OCO + H2O → H2 + CO2

アンモニア合成技術の展開(1)硝酸の製造 NH3 + 2O2 → HNO3 + H2O(2)高圧技術の展開

・メタノール合成 1923 CO + 2H2 → CH3OH

・石炭液化 1925 石炭、タール + H2 → ガソリン

マンガン/ビスマス酸化物

モリブデン系触媒

参考

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日本の化学工業の発展(1)

・本格的な化学工業のスタートはアンモニア工業から1923 日本窒素肥料(現:チッソ/旭化成ケミカルス)延岡工場で初のアン

モニアの工業化

他の主なアンモニア製造企業;三池窒素(現:三井化学)、宇部窒素(現:宇部興産)、日本タール工業(現:三菱化学)、昭和肥料(現:昭和電工)、住友肥料(現:住友化学)

・日本の化学工業は第2次世界大戦で大きく停滞。終戦後に再び発展を始めるが、特に戦後の食糧生産優先の方針により化学肥料は急速に戦前の生産水準に回復。

・日本の石油化学工業 1950外資法施行、1956石油化学育成対策等に基づき、行政主導で石油化学へ転換

1958~1959 第Ⅰ期 先発4社の参入、操業開始1962~1964 第Ⅱ期 先発4社の能力増強と5社の新規参入、操業開始1969~1971 第Ⅲ期 エチレンプラント10万トン(後に30万トン)が認可

基準、単独投資、共同投資、輪番投資を含めて9計画を認可、稼働

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エチレン生産量 百万トン

原油輸入量 億KL

第1次オイルショック

第2次オイルショック

エチレン1号機

高度成長:成長率30~50%-第1次石油危機 2.6→11.5 $/bbl-第2次石油危機 11.3→34 $/bbl

オイルショック後の対策:-エネルギー多消費型産業撤退

(NH3、アルミなど)

-省エネルギー

-設備廃棄(エチレン30%など)

-海外進出(シンガポール、サウジ)

-ポリオレフィン共販会社

-脱本業 多角化(多くは失敗)

日本の化学工業の発展(2)とオイルショック

出典:服部道夫 SCE・Net公開講座資料 環境 講義No.1(2010)

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場所 設立年

三井石油化学工業(現:三井化学) 岩国 1958年

住友化学工業(現:住友化学工業) 新居浜 1958年

三菱油化(現:三菱化学) 四日市 1959年

日本石油化学(現:新日本石油) 川崎 1959年

東燃石油化学(現:東燃化学) 川崎 1962年

大協和石油化学(現:東ソー) 四日市 1963年

丸善石油化学 千葉 1964年

化成水島(現:三菱化学) 水島 1964年

出光石油化学(現:出光興産) 徳山 1964年

鶴崎油化(現:昭和電工) 大分 1969年

大阪石油化学(現:三井化学) 大阪 1970年

水島エチレン(現:旭化成ケミカルス) 水島 1971年

第Ⅰ期

第Ⅱ期

第Ⅲ期

企業名

工業化年 工業化企業

高密度ポリエチレン(HDPE) 1958年 三井石油化学工業

低密度ポリエチレン(LDPE) 1958年 住友化学工業

ポリプロピレン(PP) 1962年 三井化学工業

ポリスチレン(PP) 1957年 モンサント化成工業

塩化ビニル樹脂(PVC) 1940年 日本窒素肥料

ナイロン繊維 1951年 東洋レーヨン

アクリル繊維 1957年 鐘淵化学工業

ポリエステル繊維 1957年 東洋レーヨン・帝国人造絹糸

5大汎用樹脂

3大合繊

ポリマー名

日本におけるエチレン生産開始

日本における合成樹脂及び合成繊維の国産化

出典;みずほ産業調査23(2006 No.5)我が国

化学産業の現状と課題 みずほコーポレート銀行

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5.3-1 第Ⅲ期 リストラクチャリングの時代

前半;守りのリストラクチャリングの時代(1980年代)・オイルショックで過剰となった設備の廃棄、人員整理

・製品別の寡占化を企図した工場閉鎖、事業交換、垂直統合、水平統合、撤退等(選択と集中、M&A) → 寡占化の進行

・オイルマネーで潤った中東諸国の国営企業の汎用石油化学事業への参入(欧米、日本の資金と技術の導入)

・安全性、環境に対する対策の強化(新たなコストの発生)1976セベソ事故、1984ボパール事故

・第2次世界大戦後の化学製品の需要拡大期に、技術革新が重なり、市場は急拡大・化学企業各社の市場シェア確保のための投資競争

→オイルショックによる反動・需要の落ち込み、生産設備の過剰・原料価格の高騰にもかかわらず製品価格は下落・技術革新、新素材の発見が停滞

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日本の化学工業のリストラクチャリング

日本の化学企業を取り巻く事業環境①国内経済成長の鈍化と成熟化に伴う化学品需要の減退②ナフサ価格の高騰とナフサ価格の内外価格差の乖離拡大

③米州や中東からの安価なエタンガスベースの石油化学製品の輸入圧力

→設備稼働率50%以下、生産設備の過剰が顕在化

対応策(政策当局が中心に検討)①不況カルテルの結成②原料輸入の自由化と原料価格の市況連動化③海外プロジェクトの推進④製品の共同販売会社の設立⑤生産設備能力の共同廃棄

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国名 企業体 設立年月 出資企業

イラン Iran Japan Petrochemical 1973年4月三井物産、三井石油化学工業、三井東圧化学、東洋曹達、日本合成ゴム

シンガポール 日本・シンガポール石油化学 1977年7月海外経済協力基金、石油化学11社、プラントエンジニアリング会社5社、商社・金融7社

サウジアラビア サウディ石油化学開発(SDPC) 1979年1月 三菱系企業14社、石油化学11社等の計54社

日本の化学工業のリストラクチャリング③海外プロジェクト計画の推進

原料ナフサの安定的確保と石油化学製品の輸出市場確保の観点から、海外における石油化学プロジェクトが1960年代後半

から検討され始め、オイルショックを機にナショナルプロジェクトとして推進された。

出典;みずほ産業調査23(2006 No.5)我が国化学産業の現状と課題 みずほコーポレート銀行

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日本の化学工業のリストラクチャリング④製品の共同販売会社の設立

ダイヤポリマー ユニオンポリマー エースポリマー 三井日石ポリマー

設立 1987/6/17 1983/6/23 1983/6/23 1983/7/1

資本金 1億円 4億円 2億円 9億円出資企業 三菱油化 50%住友化学工業 18%昭和電工 20%三井石油化学工業 25%

三菱化成 50%宇部興産 18%旭化成工業 20%三井東圧化学 25%

東洋曹達工業 18%出光石油化学 20%日本石油化学 25%

チッソ 18%東燃石油化学 20%三井デュポンポリケミカル 25%

徳山曹達 14%日本ユニカー 20%

日産丸善ポリエチレン 14%

解散 1994年10月 1995年9月 1995年6月 1995年9月

第一塩ビ販売 日本塩ビ販売 中央塩ビ販売 共同塩ビ販売

設立 1982/3/12 1982/7/15 1982/7/15 1982/8/11

資本金 90百万円 80百万円 90百万円 50百万円

出資企業

日本ゼオン 25%三井東圧化学 25%化成ビニル 33%東洋曹達工業 28%

住友化学工業 25%鐘ヶ淵化学工業 25%信越化学工業 33%チッソ 28%

サン・アロー化学 25%電気化学工業 25%旭硝子 33%日産化学工業 18%

呉羽化学工業 25%東亜合成化学工業 25% セントラル化学 18%

徳山積水工業 10%

解散 1995年7月 1995年12月 1996年7月 1995年12月

(1)ポリオレフィン

(2)塩化ビニル樹脂

出典;みずほ産業調査23(2006 No.5)我が国化学産業の現状と課題 みずほコーポレート銀行

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日本の化学工業のリストラクチャリング⑤生産設備能力の共同廃棄

製品名

1982年8月末 1985年度 要設備処理量 処理率 実処理量 達成率

生産能力 生産見通し

(a) (b) (c)=a-b/90% (d)=c/a (e) (f)=e/c

エチレン 6,347 3,649 2,293 36% 2,020 88%

低密度ポリエチレン 1,667 958 603 36% 590 98%

高密度ポリエチレン 1,007 665 268 27% 260 97%

ポリプロピレン 1,252 1,085 - - - -

ポリスチレン 869 669 - - - -

塩化ビニル樹脂 2,007 1,365 490 24% 450 92%

1983年5月に公布・施行された『特定産業構造改善臨時措置法』(産構法)に基づき過剰生産設備廃棄の計画と実施結果

出典;みずほ産業調査23(2006 No.5)我が国化学産業の現状と課題 みずほコーポレート銀行

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後半;攻めのリストラクチャリングの時代(1990年代~)

・製造技術の進化 製造技術の改良による低コスト化、省エネルギー、環境に配慮した製造技術の更新(例;ソーダ・塩における水銀法から隔膜法・イオン交換膜法への転換)

・既存の化学素材の高機能化

・グローバルなリストラクチャリング(国を跨いだ再編) 「汎用化学の大型化、寡占化」と「汎用化学からの撤退とスペシャリティケミカルへの特化」

・スペシャリティケミカルへ 新素材の開発と新市場の創造(ユーザーニーズをくみ上げた対応、連携による素材開発)

5.3-2 第Ⅲ期 リストラクチャリングの時代

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90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 0 1 2 3 4 5 6

(農業部門)

ローヌ・プーラン(仏) ローヌ・プーラン・ローラー(仏) ローディア(仏)

アベンティス(仏)

サノフィ・アベンティス(仏)サノフィ・サンテラボ(仏)

ヘキスト(独)

ヘキストセラニーズ(米) ヘキスト・マリオン・ルセル(米)

セラニーズ(米)

クラリアント(スイス)

アクゾー・ノベル(蘭)

ICI(英)

ゼネカ(英)

アストラ(スエ―デン)

アストラゼネカ(英)

チバガイギー(スイス)

サンド(スイス)

ノバルティス(スイス)

チバ・スペシャリティケミカル(スイス)

シンジェンタ(スイス)

マリオンメレルダウ(米)

(化学品)

(医薬品)

(サンドからのスピンオフ)

(化学品)

(医薬品)

(ヘキストの米子会社)(医薬品)

(化学品)

(製薬・生物化学部門)

(農業部門)

(化学品)

グローバルなリストラクチャリング(国を跨いだ再編)の例

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80年代以降の日本の化学工業

社会

-冷戦の終結→グローバル競合

-バブルの崩壊→リストラ

-IT化

-国内需要は伸びず(モノ余り)

化学工業の対応(世界で生残る)

-選択と集中(合併)

-製造技術の進化と製品の高機能化(スペシャリティケミカル)

-国際化:アジアに生きる

-地球環境対応(活動・製品)

出典:服部道夫 SCE・Net公開講座資料 環境 講義No.1(2010)

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1990年代以降のポリエチレン事業の再編

出典:日本の石油化学の現状 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/japan/petchem.htm

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1990年代以降の塩ビ事業の再編

出典:日本の石油化学の現状http://kaznak.web.infoseek.co.jp/japan/petchem.htm

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製品 メーカー

フォトレジスト JSR、信越化学、東京応化

シリコンウエハー 信越化学、SUMCO

液晶ブレンド チッソ、DIC

カラーフィルター 凸版印刷、住友化学、東レ

液晶ディスプレイ用各種フィルムとその材料

富士フィルム、日東電工、日本ゼオン、クラレ、日産化学、JSR

人工腎臓 旭化成、クラレ、東レ、東洋紡

炭素繊維 東レ、三菱レイヨン

高輝度LED 日亜化学、豊田合成、昭和電工

代表的な機能化学品と日本メーカー

出典:田島慶三 化学業界の動向とカラクリがよくわかる本 (2009)秀和システム

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5. 化学工業の功罪

(1)高度成長期の公害問題・イタイイタイ病 三井金属工業の排水中のCd汚染・水俣病 チッソの排水中のメチル水銀汚染・第2水俣病 昭和電工の排水中のメチル水銀汚染・四日市ぜんそく コンビナート工場による大気汚染(亜硫酸ガス)

(2)行政の規制強化、企業の自助努力→鎮静化(公害防止設備の強化、製造プロセスの改良など)→化学物質のリスク管理

(3)化学工業はエネルギー多消費→オイルショックによる燃料

価格高騰を機にプロセスを省エネルギー型に転換する努力を継続、成果を見せている。(プロセスの改善、新プロセスの開発など)

(4)製品自体がいろいろな分野の省エネルギーに寄与している。

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出典:資源エネルギー庁 エネルギー消費統計調査

0

50000

100000

150000

200000

250000

300000

350000

2008 2009 2010 2011 2012

食料品製造業

繊維工業

化学工業

化学工業(広義)

石油製品・石炭製品製造業

鉄鋼業

金属製品製造業

はん用・生産用・業務用機械器具製造

電子部品・デバイス・電子回路・電気機

械器具・情報通信機械器具製造業

輸送用機械器具製造業

http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/energy_consumption/ec001/results.html#headline2

製造業のエネルギー消費量

年度

エネルギー消費量

TJ

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化学工業の役割と特徴 山﨑 徹Copyrightⓒ 2015 51出典:日本の部門別消費エネルギー http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01020306/06.gif

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出典:日本化学工業協会「グラフで見る化学工業2011

化学工業のエネルギー原単位指数の推移

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貢献段階 製品

既に貢献中自動車用プラスチック、塩化ビニルサッシ家電用、家庭用断熱材、フロン代替品液晶テレビ、タイヤ再資源化

普及段階 太陽電池、プラスチック再資源化

技術開発中自動車用蓄電池、燃料電池照明用白色LED、バイオマス燃料ELテレビ

地球環境問題(省エネルギー、省資源)に貢献する化学製品

出典:田島慶三 化学業界の動向とカラクリがよくわかる本 (2009)秀和システム

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5. 化学工業の分類

(1)2次元マトリックス・コモディティ;汎用化学品、基礎化学品 差別化;小、価格;低

(・疑似コモディティ;差別化;大、価格;低)・ファインケミカル;高品質中間体 差別化;小、価格;高・スペシャリティケミカル;機能化学品 差別化;大、価格;高

(2)価値の連鎖「基礎化学品」<「差別化汎用品」

<「技術的付加価値製品/調合品」(=「機能化学品」)

最近はマーケットのグローバル化、ユーザーの強力化、研究開発のブレークスル-の僅少化により、汎用品の高付加価値化を図る動きや機能化学品がコモディティ―化する傾向が認められ、価値の連鎖に沿って直線的に分類する。

Peter H. Spitz The Chemical Industry at the Millennium, Chemical Heritage Press Chapter 3 Specialty Chemicals (Andrew Boccone)

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0 50 100

100

50

20

10

5

21

0.05

0.20

0.10

差別化指数

価格

$/kg

差別化のマトリックス 注;円の大きさはいろいろな分野の工業化学品のマーケットに比例する。

コモディティー 擬似コモディティー

ファインケミカルス スペシャリティ・ケミカルス

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
 1970年代後半に、Kline & Company(スペシャリティ・ケミカル産業のリーディングコンサルタント企業)は国際的な化学企業(2000年には1.6兆ドルの規模に達している)を分類整理するために、単純なtwo-by-two matrixを開発した。そしてスペシャルティ・ケミカル企業は高い利益の源泉を握って、図の右上部の領域に位置していた。    スペシャリティ・ケミカルスは機能化学製品であり、高度なテクニカルサポートとマーケティング力、ブランド力が重要である。その結果、比較的少量の生産であって、高価格が維持されてきた。ユーザー側から見た場合、ユーザー製品の望ましい性能/機能を賦与するのに不可欠なものであり、その一方でコストに占める割合が小さいということで、高価格を通すことが比較的容易であった。  しかし今日では、多くのスペシャリティ・ケミカルスはますますコモディティー化した。つまり多くの企業で作られるようになり、それゆえに特に収益性の高いものではなくなってきた。また、ユーザー企業を取り巻く事業環境が変化し、スペシャリティ製品であっても価格を維持するのが困難になってきた。  今日のグローバルで高度な企業間競争の環境下では、化学企業は、 two-by-two matrixで定義することは出来なくなってきている。  
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化学工業の価値の連鎖

属性

化学 分子の生産 分子の開発 分子の修飾

焦点 規模の経済性 操業 顧客/市場

構造 集中化 ある程度の脱集中化 脱集中化

技術 プロセス技術 プロセス技術および製品技術製品とその応用のノウハウ

経営管理 内部/プロセス開発 内部/外部 外部/販売とマーケティング

資本強度 高度 中庸 低位

価値の連鎖基礎

化学品差別化汎用品

技術的付加価値製品/調合製品

・国内需要分の生産が輸入との競合の下、集約されて残る。

・ナフサを出発原料とする石油化学は海外移転が進む。

・汎用性の強い製品は海外移転が進む。

・既存製品の付加価値を高めた差別化汎用品は国内での生産が続く。

・全くの新製品は出てこない。

・電子機器、情報通信、輸送用機械、医療福祉など他分野のニーズに合う高機能の素材開発とその生産は続く。(自動車用蓄電池、燃料電池、照明用白色LED、バイオマス燃料、ELテレビ、血液浄化膜、人工血管ほか)

化学工業の価値の連鎖

今後の方向

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6. まとめ

(1)化学産業は分業で製品の加工度をあげ、最終的には消費者向け産業(自動車、電器など)の素材として最終製品に組み入れられて消費者に提供される。日本の製造業を支える役割を果たしている。

(2)化学産業は製造業の中でトップクラスの付加価値を生み出し、日本のGDPに大きく貢献している。

(3)革新的なブレークスルー製品の発明と、安価な石油を出発原料とする石油化学の発展により、化学産業は戦後、高度成長を遂げたが、2度にわたるオイルショックで構造転換を余儀なくされた。石油化学など基礎化学品は産油国での生産の比重が高まり、先進国では高機能化学品の創出に重点が置かれるようになってきた。

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(4)高度成長期の負の側面として公害が顕在化したが、法規制の強化と企業の自助努力により、鎮静化してきた。今後は省エネルギー型プロセスへの転換、省エネルギーに寄与する製品の開発などで、地球環境問題への貢献が期待されている。

(5)化学工業は価値の源泉を歴史的に、基礎化学品→コモディティ製品(樹脂や合成繊維など)→コモディティ製品の差別化→新しい機能化学品の創出、に求めて現在に至っている。

次回以降、それぞれのステップにおける代表的な製品について、技術および社会への影響の両面から解説を試みる。

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文献引用【文中の引用】

• P.8 藤本隆宏は、設計の概念からプロセス産業を定義している。

• P.14~16 経産省 平成24年工業統計表「産業編」データ(2014.4.11)による。

• P.17 経産省 企業活動基本調査各報(平成25年)による。

• P.18 政府統計の総合窓口「平成21年度科学技術調査」(2009年12月)による。

• P.19 日本化学工業協会「グラフで見る化学工業2014」による。

• P.28,30,37,40~42 みずほコーポレート銀行「みずほ産業調査23(2006,No.5) 我が国化学産業の現状と課題」で整理されたデータによる。

• P.36,45 服部道夫 化学工学会SCE・Net社会人向け公開講座「環境に貢献する化学技術」教材No.1から転載。

• P.46~47 WEB上のHP「日本の石油化学の現状」で整理されたフローチャートによる。

• P.48,53 田島慶三 「化学産業の動向とカラクリがよくわかる本」秀和システム(2009)記載事項を参考にした。

• P.50~51 資源エネルギー庁がWEB上で公表しているデータによる。

• P.52 日本化学工業協会「グラフで見る化学工業2009」による。

• P.55~56 化学工業の分類については、Peter H. Spifzの著書、Specialty Chemicalsの項で述べている内容によった。

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文献引用

【巻末の引用】

• 田島慶三 「化学産業の動向とカラクリがよくわかる本」秀和システム(2009)

• 機能性化学産業研究会「機能性化学 価値提案型産業への挑戦」化学工業日報社(2002)

• 「みずほ産業調査23(2006 No.5)我が国化学産業の現状と課題」 みずほコーポレート銀行

http://www.mizuhocbk.co.jp/fin_info/industry/sangyou/pdf/1023_01.pdf#search='日本の化学産業‘(現在、閲覧不可能)

• 日本化学工業協会「グラフで見る化学工業2014」

・日本の石油化学の現状 http://kanzak.web.infoseek.co.jp/japan/petchem.htm(現在、閲覧不可能)

・久保田 宏・伊香輪恒男 ルブランの末裔 東海大学出版会(1978)

・トーマス・ヘイガー 渡会圭子訳 大気を変える錬金術 ハーバー、ボッシュと化学の世紀 みすず書房(2010)