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PFU Tech. Rev., 26, 1,pp.25-30 (09,2015) 25 Unified Management Center(UMC) ~ IT インフラの安心・安全を支え続ける中核機能~ Unified Management Center (UMC) - Core Functions that Provide Continuous Support for the Security and Safety of the IT Infrastructure - 鈴木崇士 * Takashi Suzuki 中村和幸 ** Kazuyuki Nakamura * カスタマ & テクノロジー・サービスグループ サービス支援統括部 品質管理部 ** カスタマ & テクノロジー・サービスグループ UMC 事業部 IDC・クラウド運用部 PFU は「IT インフラの安心・安全を支え続ける中核機能」をコンセプトに,コールセンター,監視センターを はじめとした多彩なサービスメニューを支える各機能を統合した「Unified Management Center(UMC)」の 稼働を 2014 年 10 月より開始した.UMC は,ワンストップ&スピーディーな対応を実現すると共に,徹底した 見せる化により,お客様にその運用を見ていただくショールームとしての機能も併せ持つ. Based on the concept of "core functions that provide continuous support for the security and safety of the IT infrastructure", PFU started running the "Unified Management Center (UMC)" in October 2014 which consolidated the functions supporting various services such as the call center and the monitoring center. UMC achieves a one-stop service with speedy support and also functions as a showroom where customers can thoroughly visualize those operations. 1 まえがき PFUは,長年にわたり,パソコンやオフコン, UNIX サーバの開発や製造を通じて高度な開発技術を 培ってきた.システムの構築サービスおよび運用サービ スでは,それらを活かし,UNIX や Linux に精通した エンジニアによる並列分散処理システムの構築など,高 度な IT インフラ構築および運用インテグレーションの サービスを提供してきた 参1) また,システム展開サービスおよびハードウェア保守 サービスでは,全国 120 拠点で 24 時間 365 日のサー ビスを提供している. ハードウェア保守サービスでは,自社製品に加え,混 在する複数の他社製品の保守も一括で担っている. 現在では約 50 社と正規認定プロバイダー契約を締結 し,マルチベンダー対応を実現している. これら「PFU の IT インフラソリューション&サー ビス」の大きな特長は, 図-1に示す四つと言える. ① IT 基盤構築および運用インテグレーション ② 全国 120 拠点での展開と保守 ③ マルチベンダー対応 ④ 24 時間 365 日対応 PFU の IT インフラソリューション & サービスには, 監視センターによる「お客様のシステムのリモート運用 や監視サービス」,コールセンターによる「保守の受付 ◆図 - 1 P F U の I T インフラソリューション & サービスの特長◆ (Fig.1-Features of PFU's IT infrastructure and services)

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Unified Management Center(UMC) ~ IT インフラの安心・安全を支え続ける中核機能~Unified Management Center (UMC) - Core Functions that Provide Continuous Support for the Security and Safety of the IT Infrastructure -

鈴木崇士 *Takashi Suzuki

中村和幸 **Kazuyuki Nakamura

* カスタマ&テクノロジー・サービスグループ サービス支援統括部 品質管理部** カスタマ&テクノロジー・サービスグループ UMC事業部 IDC・クラウド運用部

PFU は「IT インフラの安心・安全を支え続ける中核機能」をコンセプトに,コールセンター,監視センターを

はじめとした多彩なサービスメニューを支える各機能を統合した「Unified Management Center(UMC)」の

稼働を 2014 年 10 月より開始した.UMC は,ワンストップ&スピーディーな対応を実現すると共に,徹底した

見せる化により,お客様にその運用を見ていただくショールームとしての機能も併せ持つ.

Based on the concept of "core functions that provide continuous support for the security and

safety of the IT infrastructure", PFU started running the "Unified Management Center (UMC)"

in October 2014 which consolidated the functions supporting various services such as the call

center and the monitoring center. UMC achieves a one-stop service with speedy support and

also functions as a showroom where customers can thoroughly visualize those operations.

1 まえがき

PFU は,長年にわたり,パソコンやオフコン,

UNIX サーバの開発や製造を通じて高度な開発技術を

培ってきた.システムの構築サービスおよび運用サービ

スでは,それらを活かし,UNIX や Linux に精通した

エンジニアによる並列分散処理システムの構築など,高

度な IT インフラ構築および運用インテグレーションの

サービスを提供してきた参1).

また,システム展開サービスおよびハードウェア保守

サービスでは,全国 120 拠点で 24 時間 365 日のサー

ビスを提供している.

ハードウェア保守サービスでは,自社製品に加え,混

在する複数の他社製品の保守も一括で担っている.

現在では約 50 社と正規認定プロバイダー契約を締結

し,マルチベンダー対応を実現している.

これら「PFU の IT インフラソリューション&サー

ビス」の大きな特長は,図 - 1に示す四つと言える.

① IT 基盤構築および運用インテグレーション

② 全国 120 拠点での展開と保守

③ マルチベンダー対応

④ 24 時間 365 日対応

PFUのITインフラソリューション&サービスには,

監視センターによる「お客様のシステムのリモート運用

や監視サービス」,コールセンターによる「保守の受付

◆図 -1 PFUの ITインフラソリューション&サービスの特長◆

(Fig.1-FeaturesofPFU'sITinfrastructureand

services)

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UnifiedManagementCenter(UMC)~ IT インフラの安心・安全を支え続ける中核機能~

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や障害切り分け」などの保守サービスも含まれている.

これらは,従来,お客様への対応の起点として,また各

運用サービスのオペレーションやマネジメント部門とし

て,それぞれ別の場所で独立して稼働していた.

2 UMC 構築の背景と狙い

2.1 構築の背景昨今の技術革新を背景に,企業や官公庁の IT インフ

ラ環境において,以下の課題が生まれている.

1) 運用コストの削減やスピードアップによる「IT

資産の活用と効率化」

2) 情報漏えいや不正アクセス,災害といった「外的

脅威への対応」

3) 内部統制や社内ポリシーに基づく「管理の適正化」

これらの課題に対して,全体最適の観点から解決策を

提示し,IT 資産の保守運用について,ワンストップ注1)

で対応するサービスが求められている.

また,BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)

市場の約半数を占めるカスタマケア分野において,従来,

PFU はコールセンター業務や TAC(テクニカルアシス

タントセンター)注2)といった部分的な業務のアウトソー

シングサービスを提供することで,お客様の業務プロ

セス改善や,本業へのリソース集中といった,お客様の

IT 戦略効果を導いてきたが,市場規模の拡大に合わせ

て一層これを強化していく必要があった参2).

これら「ワンストップサービスの実現」と「BPO サー

ビスの充実」を担う機能として,コールセンターや監視

センターなどの機能を統合し,シナジー効果を最大限に

発揮する「PFU の運用サービスの中核を担う統合型の

センター(UMC)」の設立を構想した.

2.2 構築の狙いUMC 構築に際し,以下三つをターゲットに設定した.

(1) ワンストップ&スピーディーな対応の実現

IT インフラの企画,設計,導入,運用,保守,移行,

再生までのサービスメニューを組み合わせ,お客様に

とって最適な運用サービスを提供することを,IT イン

フラのライフサイクルマネジメントという(図 - 2参

注1) ワンストップとは,1 箇所で複数の用事を済ませられること.ここでは,単一の事業者が一括で複数のサービスを行うことをいう.

注2) TAC(テクニカルアシスタントセンター)とは,ユーザーに対し高度な技術支援を行う専門部署.必要に応じて製品開発部門と連携して問題の調査を進め,解決策を提供する.

照).その IT インフラのライフサイクルマネジメント

に関わるすべてのサービスをより迅速に提供する.

(2) 運用サービスの品質向上

安心で安全な環境の構築に加え,オペレーション品質

やフィールドエンジニアの品質の向上など,運用サービ

ス全体の品質を向上させる.

(3) カスタマエクスペリエンス(顧客経験価値)の向

PFU では従来,「ホスピタリティ重視の対応品質」に

主眼を置いてきた.そのため,UMC は定型的な電話や

メール対応以外の方法でもお客様とのコミュニケーショ

ンを図り,お客様に PFU の運用サービスについて深く

ご理解いただけるようにする.

3 UMC の概要

3.1 UMC の位置付けUMC は,コールセンター,監視センターおよび

PFU のサービス基盤を支える各部門を統合したサービ

スセンターである.

その機能は,IT インフラのライフサイクルマネジメ

ント,24 時間 365 日のコール受付,障害発生時の障

害切り分け,交換部品選定,エンジニアへの作業指示,

技術サポート,作業進捗管理,お客様のシステムの運用

監視,品質管理などで,「PFU の IT インフラソリュー

ション & サービス」の管制塔の役割を果たす.

3.2 UMC のコンセプト3.1 で説明した位置付けから,UMC のコンセプトを,

◆図 -2 ITインフラのライフサイクルマネジメント◆

(Fig.2-LifecyclemanagementoftheIT

infrastructure)

移行・再生

導入

サービスマネージメント

企画・設計

運用・保守

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UnifiedManagementCenter(UMC)~ IT インフラの安心・安全を支え続ける中核機能~

「お客様の IT インフラの安心・安全を支え続ける中核

機能」と定めた.

名称にある Unified(統合された,一元的な)は,以

下の1)から3)を意図して採用したものである.

1) コールセンターの「responsive」な機能,監視

センターの「active」な機能などの多彩な機能の統

2) マルチベンダー対応における運用の一元管理

3) 全国サービス網の一元管理

4 UMC の特長

4.1 機能集約型のワンフロア配置UMC 最大の特長は,図 - 3のように「障害解決まで

のプロセスがワンフロアにすべて揃っていること」であ

る.

約 400 坪のワンフロアに,多彩なサービスメニュー

を支えるスタッフ約 200 名を,オペレーションに即し

た機能的なレイアウトで配置し,統合したマネジメント

によるプロセス最適化によって,ワンストップで高品質

な対応を実現した.

また,各部門の技術やノウハウ,強みが UMC 内で

スムーズに共有される,統合リソース管理により,部門

を越えた柔軟な体制変更が即時可能であるなど,技術の

蓄積,機動力強化も含めた組織力の向上を実現している.

UMC の主な部門を表 - 1に示す.

4.2 安心・安全を実現する,BCP 対策と ISMS注3) 準拠のセキュリティマネジメント

4.2.1 BCP(事業継続計画)対策24 時間 365 日の運用を止めることは許されない

UMC にとって,BCP 対策は必須である.

UMC は,横浜と石川の 2 拠点体制で稼働している.

2 拠点の地震対策は表 - 2のとおりである.

大規模災害などにより,どちらか片方に運用の支障が

生じた場合でも,簡単なボタン操作で電話を切り替え,

もう片方へ運用を引き継ぐことができるディザスタリカ

バリ機能を備えている.

4.2.2 ISMS に基づいたセキュリティマネジメント

UMC では,お客様の情報を扱うため,高いレベルで

注3) ISMS とは,「Information Security Management System」の略称.UMC の情報セキュリティマネジメントシステム

(ISMS)が,ISO27001 に適合していることを,第三者評価によって認定を受けている.

の情報セキュリティマネジメントが必須である.

PFU は 2004 年に ISMS(ISO27001)の認証を

取得しているが,取得にあたり,自社セキュリティ製品

や UMC 独自に開発したセキュリティシステムを活用

した,高いレベルでの情報セキュリティマネジメントシ

ステムを構築している.

(1) 3 レイヤーのゾーニング

見学エリア,UMC 在籍者エリア,有資格者エリアの

3 段階のゾーニングで,静脈認証,IC カード,パスワー

ド認証による入退室管理を実施している.

(2) ストラップ運用

役割に応じた専用ストラップで,入退室許可者以外の

侵入者を判別している.

(3) PC 管理システム,検疫

1) 自社製品のiNetSec Smart Finderにより不正

接続を防止している参3).

2) オンライン上ですべての PC,スマートデバイス,

サーバなどの機器棚卸し,セキュリティチェックを

実施している.個人PCのローカル環境に存在する

データに対してもその存在の検知および警告をする

ことで,情報漏えいリスクの低減を推進する.

(4) ペーパーレスと文書管理

自社製品のイメージスキャナfiシリーズと電子文書管

理システムを活用して,紙の使用を極限まで減らし,デ

スク上に文書がない状態を保つクリアデスクによる情報

漏えい防止やドキュメント共有による業務効率化を推進

している.

◆図 -3 UMCのワンフロア配置◆

(Fig.3-UMCsingle-floorarrangement)

監視センタースーパーバイザー・オープンソース・セキュリティサポート

・基盤技術・教育

・1st,2ndライン・サポート・アサイン・ロジスティクス

・品質管理・サービスマネージャー・システム開発

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4.3 マネジメント基盤およびオペレーション基盤の強化に向けた取り組み

マルチベンダー対応では,オペレーションの標準化が

難しい「ベンダーやユーザー,製品固有の要素」に,き

め細かく対応する必要がある.

UMC 構築前は,コールセンターや監視センターな

どの各部門の中で蓄積したノウハウとスキルを活かし,

各々の最適なオペレーションを構築してきた.

しかしながら,部分最適の積み上げが,必ずしも全体

最適には繋がるわけではない.

UMC 構築においては,これまでのきめ細かなサービ

スレベルや各部門固有の強みを維持したまま,いかに全

体最適化を図り,更なるスピード UP と品質強化を実

現するかが課題であった.

構築にあたり,重点ポイントとして以下 2 点に取り

組んだ.

4.3.1 マネジメント基盤の強化今回の取り組みで最も重要なウエイトを占め,UMC

構築の成否を握る部分である.

例えば,スーパーバイザーのミッションであるインシ

デント監視,最適なリソース配置などのセンター運営マ

ネジメントや,品質管理部門による UMC,フィールド

エンジニアの品質マネジメントを強化するための取り組

みを実施した.

◆表 -2 地震対策が考慮されている2拠点◆

拠点 地震対策

UMC横浜

液状化や津波などに対する高い防災対策がとられているみなとみらい地区の,国内最大規模の免震構造のビルの中にある.非常時の電源やライフラインなど,エネルギーの自立性が確保されている.

UMC石川

内閣府が発表した南海トラフ地震の被害想定で,被害が比較的小さい地域の一つである石川県にある.

◆表 -1 UMCの主な部門◆

部門名 役割

監視センター サーバやネットワーク機器の死活監視やメッセージ監視,CPUやメモリ,ディスク使用量のしきい値監視,Web サーバの応答監視,ネットワークトラフィックの監視など,お客様のシステムの稼働状況を24時間365日遠隔監視し,障害発生時にはリモート診断から復旧対応まで実施する.エンジニアの派遣が必要な際には,迅速にコールセンターと連携する.

1st ライン(受付) お客様のマルチベンダー機器の障害を一括受付する.

2ndライン(受付) 障害の原因を特定(障害切り分け)し,対応策を決定する.

エンジニアアサイン 全国120拠点のエンジニアのスケジュールを一元管理し,お客様先へ訪問する最適なエンジニアをアサイン(任命)する.

ロジスティクス 全国のサービス拠点に4時間以内で必要なパーツを供給する.

エンジニアサポート 技術的観点からエンジニアの保守手順を構築すると共に,お客様のもとで作業しているエンジニアに対し,必要に応じて技術的サポートを実施する.

オープンソース・セキュリティサポート

ソフトウェアに関する技術的な問い合わせやセキュリティ製品の障害に対応する.

スーパーバイザー インシデントの進捗監視,オペレーターの対応品質およびリソース管理によりUMCの運営をマネジメントする.さまざまな状況を監視,予測し適切に問題解決の指揮をとるUMCのブレインである.

LCM※1サービスマネージャー フロントエンジニアとして特定のお客様のシステムを調査および分析し,運用起点でのコンサルティング,サービスプロセスのマネジメントを実施する.

品質管理 KPI※2に基づくベンダーとのSLA※3達成管理をはじめとした全国のエンジニアの作業品質を高めるための品質マネジメントシステムを統制する.

システム開発 各部門の業務ノウハウを結集し,最適なオペレーションを実現するために独自システムを開発する.

基盤技術 エンジニアの作業精度の向上および効率化の観点からテストプログラムや最適な保守ツールを開発する.

教育 ITSS※4に基づくエンジニアやオペレーターのスキル管理とトレーニングを実施する.

※1 LifeCycleManagement の略.※2 KPI(KeyPerformanceIndicator)は重要業績評価指標ともいい,目標の達成度を定量的に測定する指標のことである.※3 ServiceLevelAgreement の略.サービス品質指標.※4 ITSkillStandard,経済産業省による IT 人材のスキル体系.

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4.3.2 オペレーション基盤の強化例えば,障害の切り分けやエンジニアへの作業指示の

発行,最適なエンジニアのアサイン工程など,どのベン

ダー向けのサービスプロセスにおいても共通する基盤の

オペレーションが存在する.

この部分の迅速性や精度を強化する取り組みを実施し

た.UMC構築において特に強化した点を表‐3に示す.

◆表 -3 マネジメントおよびオペレーション基盤の強化に向けた取り組み◆

取り組み 内容

フリーアドレスの採用 UMC開設に際し,ビジネス環境の変化に迅速に対応するため,柔軟にチーム編成を変えられるフリーアドレスの採用が必要であった.これにあたっては,UMC構築の1年前から,3S徹底活動(整理,整頓,清掃)を専門コンサルタントの指導の元で実施し,工場の生産革新手法をモデルとした定位置管理やオペレーション効率化の手法を徹底して実践した.これらの取り組みをベースに,電話とPCが一体となったソフトフォンを導入し,フリーアドレス化を実現した.

コール統計管理システム

スーパーバイザーはUMC全体の運営をマネジメントする必要がある.これを補完するシステムとして,オペレーターの応対状況,問い合わせの内容や回数,応答時間,呼放率などから導き出された現時点のサービスレベルをリアルタイムに表示するシステムを構築した.蓄積されたデータを使って個々のスキルを定量的に分析し,適正配置や人材育成に活用できる.

エンジニアアサインシステム

迅速に最適なエンジニアをアサインするには,様々な要素を考慮する必要がある.これにあたっては,訪問先までの距離,過去の障害対応状況,保有資格やトレーニング受講履歴などのスキル判定項目に基づいて優先順位付けされた候補者リストを自動的に表示するシステムを構築し,アサインのスピードと精度向上を実現した.

作業指示評価システム これまでデジタルに数値化できなかった,UMCのオペレーターが実施した障害切り分けや作業指示内容の精度を評価する機能として,作業指示評価機能を開発した.お客様のもとで作業を完了したエンジニアが,UMCのオペレーターの精度を評価した結果を,コール統計管理システムに反映する仕組みとし,UMCのサービス品質の向上に向けた分析や改善,人材育成に繋げている.

インシデント管理システム

UMCでの受付からエンジニアによる保守対応完了までの工程の進捗状況を表示.内部での工程管理に使用するほか,特定のベンダー様にも公開することで,対応状況の見える化を実現した.また,工程に進捗があると,そのことをベンダー様宛に自動でメール発信し,リアルタイムで進捗状況を共有することを可能とした.

品質BI ツール エンジニアの作業品質管理では,エンジニアの作業の背後関係にある影響要素まで広げて把握する必要がある.マネジメント強化の観点から,保守品質(スピード,精度,顧客満足度)とボリューム(受付件数や作業件数など)や生産性(リソース人員や稼働率など)のバランスを測定するツールを構築し,品質管理にとどまらず,全国120拠点の適切なリソース管理,トレーニング計画,保守ツールの開発といった各種施策に繋げている.

オペレーター向け電子マニュアル

マルチベンダー対応により多岐にわたるUMCのオペレーションを標準化するため,手順やこれまでのノウハウを電子マニュアルとして整備した.オペレータースキルのばらつきを最小化するとともに,オペレーションの変更や追加といった改版時には一括で共有を可能とした.

仮想デスクトップ 障害発生時にお客様のシステムをリモートで操作する際,専用PC端末でなく,PFUの仮想デスクトップサービス技術を利用し,省エネ,省スペース,セキュリティに優れたメンテナンス運用環境を実現した.

メール自動処理システム

オペレーターの迅速な処理や品質向上を実現するために,大量に発報される監視メールをオペレーターの対応カテゴリ別に自動で振り分けし,迅速で正確なインシデント管理ができる機能を開発した.また,お客様宛に送信する障害広報メールを自動生成する機能も実現した.

レイアウトおよびコミュニケーションツール

スーパーバイザーのマネジメントを補完するため,以下の四つの工夫をした.(1)対面・円形レイアウト(コールセンター)中央の大画面スクリーンを中心にスーパーバイザーとオペレーターを対面で円形に配置した.双方の顔が見える配

置とすることで意思疎通を助長する.(2)同心円状レイアウト(監視センター)外側から,1列目に障害検知と対処を行う1st ライン,2列目に障害対応を主導するリーダー,3列目にマネージャ

のように,異常検知の際に迅速な対応がとりやすい配置とした.(3)メッセージボードスーパーバイザーからの重要な指示連絡事項を,各オペレーターの横にある専用モニターで周知する.通話中のオ

ペレーターとの意思疎通を助長する.(4)ヘルプライト通話中のオペレーターでも,スーパーバイザーに指示を求める意思表示ができるように専用のライトを備え,スー

パーバイザーがライト点滅中のオペレーターを迅速にフォローできるようにした.

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UnifiedManagementCenter(UMC)~ IT インフラの安心・安全を支え続ける中核機能~

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4.4 見せる化UMC は,前面,側面をガラス張りにし,お客様に実

際の運用サービスのプロセスを見ていただけるように設

計している.

また,体験コーナーとして「PFU の IT インフラソ

リューション & サービス」に関連する製品も展示し,

お客様のご希望があればデモも実施している.

これらは,見たり体験したりすることで,お客様によ

り深く UMC をご理解いただき,カスタマエクスペリ

エンスの向上を図る取り組みである.

5 今後に向けた課題

今後,社会や技術の変化に伴って,お客様の IT 環境

も多様化していくことが想定される.

PFU として,この変化に対応し,安心・安全で快適

なインフラサービスを提供し続けていくために,UMC

自らが新たな技術を実践し,更なる効果を生み出すこと

で,お客様の IT 戦略をリードしていく必要がある.

また,今後 PFU の IT インフラソリューション&サー

ビスを支えていく次世代の人材育成も重要である.

UMC は,広範囲にわたる技術やノウハウ,お客様の

ニーズや市場動向の情報などが集約された機能であるこ

とから,エンジニアをはじめとした人材育成の場として

も活用していく.

6 むすび

2014 年 10 月の構築から 2015 年 3 月までの半年

間で 500 名以上の方に見学いただいており,当社の取

り組みに対する好評を数多く頂戴している.

UMC は,独自の技術とこれまでの経験を核としつつ,

環境変化に柔軟に対応し,お客様の IT 戦略に貢献する

センターであり続けていく.

参考文献参1) ソリューション&サービス「IT インフラ」紹介ページ

https://www.pfu.fujitsu.com/infra/

参2) IDC Japan 株式会社:2015 年 5 月 26 日プレスリリース

国内 BPO サービス/ビジネスコンサルティング市場予測を発表

http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20150526Apr.html

参3) IT 機器管理アプライアンス iNetSec Smart Finder 紹介ページ

http://www.pfu.fujitsu.com/inetsec/products/sf/