三菱電機 Mitsubishi Electric...2 2. 配線用遮断器 2.1 配線用遮断器とは...

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1. 低圧遮断器とは

低圧遮断器とは,電気設備技術基準で云うAC600V 以下,DC750V 以下の低圧電路で,主に配線や機器の保護を目的に使用される遮断器群の総称です。低圧遮断器には,電線を過負荷や短絡から保護する配線用遮断器,漏電による火災や感電を未然に防止する漏電遮断器,船舶の発電機保護やビル・工場の主幹用として使用される低圧気中遮断器の他,リモコンブレーカ,リモコン漏電ブレーカ,機器保護用遮断器(サーキットプロテクタ)などがあり,周辺機器として漏電検出用の漏電継電器(漏電リレー),照明制御用のリモコン機器などがあります。

低圧遮断器を設置する法的根拠は,電気事業法に基づいて制定された「電気設備に関する技術基準を定める省令」です。その第14条,第15条,第63条~第66条に「過電流遮断器」や「地絡遮断器」を施設する義務が規定されており,「配線用遮断器」や「漏電遮断器」などそれぞれに適した機器を施設する必要があります。

図 1.1 に,低圧電路のスケルトン図の例を示します。

3

3

3

VCT

DS

VCB

CT

PF付 LBS

PF付 LBS

PF付 LBS

T T T

MCCB (協調用低インストブレーカ)

MCCBまたはELCB (単3中性線欠相保護付)

MCCB (SHT付)

MCCB または ELCB

リモコン ブレーカ

リモコン 漏電 ブレーカ

3 3

MCCB

MCCB MCCB

ELR

MCCB

MC MC

MCCB (サイリスタ保護用)

MC

THR THR

MCCB MCCB ELCB 時延形0.8S

ELCB 時延形0.3S

ELCB 高速形 0.1S

400V/単相3線

MCCBまたはACB(プレアラーム)

MCCBまたはACB (漏電アラーム遮断器)

TC

Wh

I

( )

( ) ( )

変圧器一次側用 高インストブレーカ

リモコン リレー

モータ 保護用 ソリッド

ステートコンタクタ

図1.1 スケルトン図

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2. 配線用遮断器

2.1 配線用遮断器とは配線用遮断器とは「交流600V以下,直流750V以下の低圧屋内電路の保護に用いられるモールドケースの遮断器」をいいます。配線用遮断器は米国で普及発達したもので,米国の規格「UL489」では「モールデットケース サーキットブレーカ」(Molded-Case Circuit Breakers)となっており,実態をよくあらわしているので,国際的に多くの規格でこの名称を使用しています。国内でもこの名称の略号MCCBがよく使用されています。従来,国内ではMCBと呼称する場合もありましたが,MCBはヨーロッパでは「ミニアチュアサーキットブレーカ」(Miniature Circuit Breaker)を意味し,家庭用に使われている小形の遮断器に限定しています。日本国内では,MCBに相当するのは電灯分電盤用配線用遮断器や住宅用分電盤用配線用遮断器(安全ブレーカ)などであり,一般的なブレーカはMCCBと呼称するのが普通です。

国内ではNFBという名称もよく使われますが,その由来は 1933 年(昭和 8年),当社が国内ではじめてブレーカを製作し,このブレーカを使った分電盤をヒューズを用いないという意味で「ノーヒューズ分電盤」とし,ノーヒューズブレーカ(NFB:No-Fuse Breaker)と名づけたため普及した呼び名です。前述した様に,JIS 規格では外国名や商品名をさけるためこれらのことを考慮して,JIS C 8201-2-1 では回路遮断器,配線用遮断器,気中遮断器などと呼んでいます。

配線用遮断器を構造面からいうと「開閉機構・引きはずし装置などを絶縁物の容器内に一体に組立てたもので通常の使用状態の電路を手動または電気操作により開閉することができ,かつ過負荷及び短絡などのとき自動的に電路を遮断する器具をいう。」となります。

電路の保護機器として以前はヒューズが用いられていましたが,取扱い・保守・再閉路・取付けスペース・安全性・協調性・制御性などにすぐれた配線用遮断器が発明されると,ヒューズ付開閉器に替って低圧電気回路にはほとんど配線用遮断器が使われるようになりました。配線用遮断器は 1930 年に米国ウェスチングハウス社が世界最初のサーマルタイプのものを発表し,その後,サーマルマグネティックタイプ(熱動-電磁式)のものに改良されて,配線用遮断器の主流を占めるようになりましたが,プランジャを使ったオイルダッシュポット式(完全電磁式)のものも使用されています。国内では 1933 年,当社が初めて 50Aフレームのサーマルタイプのものを発売して以来逐次使用され,戦後急速に一般に普及して今日に至っています。

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電源側

消弧装置

端子

接触子

開閉機構

トリップボタン

モールドケース(ベース)

モールドケース(カバー)

過電流引きはずし装置

とって

負荷側

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2.2 構造と動作配線用遮断器は簡単に操作できるほか,すぐれた開閉性能と遮断性能をもっていますが,その構造の一例を図2.1 に示します。配線用遮断器を構成する主要部は,引きはずし力をたくわえるばねをもったトグルリンク機構によって接点の開閉を行なう開閉機構,過電流や短絡電流に応動して配線用遮断器をトリップ(引きはずし)させる過電流引きはずし装置,電流を遮断する際に発生するアークを消滅させる消弧装置,電線や導体を接統する端子,回路を開閉する接触子及びこれらを一体にして小形に組込むモールドケースなどからなっています。

図2.1 配線用遮断器の構造例

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2.2.1 開閉機構配線用遮断器は次のような機能により,遮断器としてすぐれた開閉性能をもっています。

(1) 速入り(quick-make)及び速切り(quick-break)配線用遮断器は,とってを“ON”“OFF”の位置に操作することにより開閉できます。とってをONまたはOFF操作すれば,引きばねの作用線がトグルリンクのデッドポイントを越え,トグルリンクはON操作においては,急激に伸長し,OFF操作の場合には,逆に屈曲して,とっての操作速度に関係なく,接触子は急速に動作します。過電流引きはずしにおいては,受け金が回転し,クレドルが釈放され,トグルリンクは上部支点が移動し,引きばねの作用線をこえて急速に屈曲し,接触子を開きます。このように,開閉機構としてトグルリンク機構によるクイックモーションを採用しているため,接触子は,操作速度に関係なく,速入り・速切り動作を行ないます。このため,開閉時の接触子の溶着防止や各極同時投入などに効果があります。

(2) トリップ表示ONまたはOFFの状態から,配線用遮断器がトリップすると,とっては,ONとOFF の中間位置に止まり,トリップを表示します。再投入するにはリセット操作後,ON操作を行ないます。すなわち,とってをOFF方向へOFF位置以上に操作すると,釈放されたクレドルと受け金が係合され,OFFの状態に復帰し,リセットが完了します。(図 2.3)

(3) 引きはずし自由(トリップフリー)とってをON位置に拘束した状態においても,引きはずし動作をさまたげないことをいいます。配線用遮断器はすべて,トリップフリーの構造となっています。

(4) 共通引きはずし多極の配線用遮断器は,各極ごとにモールドケースの隔壁により,電気的に隔離されていますが,各極の接触子は,絶縁物からなる共通の 1本のクロスバーに強力に固定されています。このクロスバーは,トグルリンク機構と連結されているため,同時投入・同時遮断を行ない,欠相などの不具合を防止します。したがって 4極の配線用遮断器のように中性極に使用する場合においても,4極同時に開閉を行うため,中性線の入れ忘れや誤って開放するというトラブルもなく使用できます。

(5) 断路(アイソレーション)機能断路(アイソレーション)機能とは,「安全のため全ての電気エネルギー源から設備や区域を分離することにより,設備の全部又は個々の部分から電源を切り離すための機能」と定義されています。接点が閉じているとき,いかなる場合であっても,とってがOFF表示しないようになっています。(適用していない機種もあります。)

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とって

ON表示ライン とって

とって

とっては中間位置にありON表示ラインは隠れている。

ON表示ラインが現われている。

ON トリップ OFF

図 2.3 とっての位置

ばねの作用線ONからOFFへのデッドポイントライン

OFFからONへのデッドポイントライン

トリップ表示とってはONとOFFの中間にとどまる。

ONの状態

OFFの状態

トリップ(TRIP)の状態

図2.2 開閉機構図

「アイソレーション適合」の機器の構造要件と検証方法項  目 規  定 検 証 方 法

①接点間隔

②絶縁抵抗

③位置表示

④OFFロック

所定の接点間隔を備えていること。

主接点がオープンの状態で, 電源側と負荷側端子間に,1.2/50μs波形のインパルス電圧を印加する。試験電圧値は, 機器の定格耐インパルス電圧値(Uimp)により決まる。定格使用電圧の1.1倍の電圧で漏れ電流を測定したとき, 新品の機器では0.5mA, 電流開閉試験後では2mA, その他いかなる時も6mAを超えないこと。ON状態で最も厳しい条件の極の接点を溶接等で固定し, とってに通常のOFF操作力の3倍の荷重(ただし150N以上400N以下)を静かに10秒間印加の後, 荷重を除いた時, とってはフリーになりOFF位置を表示しないこと。耐久試験後もこの機能が有効であること。

OFFロック装置を有する場合は, 上記③の試験中, OFFロック装置でロックできないこと。

漏れ電流が所定の値以下のこと。(所定の絶縁抵抗が保持されていること。)

主接点位置表示装置を備えていること。

OFFロック装置を備えているものは, 主接点がオープン位置のときにのみロック可能のこと。

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(6) コンタクトオンメカ配線用遮断器は名板の表示範囲内で使用すれば接点が溶着することはありませんが,それでも万一過大な事故電流などによって溶着が発生した場合,引きはずし機構が働いても,とってはON位置を示し,負荷側端子は充電されていることを示します。もし接点が溶着していても,ハンドルがトリップ状態を示すと,配線用遮断器を操作する人は負荷側端子は電源より切り離されているものと誤認して負荷側端子に接触する恐れがあります。このメカニズムは,上述の感電事故を防止するための安全機構で,コンタクトオンメカと呼びます。

2.2.2 過電流引きはずし装置動作原理により,熱動電磁形,完全電磁形(単に電磁形ともいいます)と電子式とに大別できます。(1) 熱動電磁形(a) 構造図 2.4 に一例を示すように受け金は,ローラトリガーを介して共通引きはずし軸のラッチに係止されています。共通引きはずし軸は過電流引きはずし装置のベースに固定された支え腕によって回転自在に支えられています。過電流を検出し引きはずし動作を行なう素子として,時延引きはずしを行なうバイメタルと瞬時引きはずしを行なう電磁石が設置されています。バイメタルは,熱により矢印方向にわん曲し,共通引きはずし軸を時計方向に回転し,ラッチの係合がはずれると受け金も時計方向に回転してクレドルを釈放します。電磁石は,導体を包囲した固定鉄心と可動鉄心,及び可動鉄心を常時開離方向に付勢させている引きばねとで構成されており,過電流がある限度をこえると引きばねに逆らって可動鉄心を吸引し,引きはずし棒によって共通引きはずし軸を時計方向に回転させて,クレドルを釈放します。バイメタル及び電磁石は,各極に設置されており,いずれの極の過電流でも共通引きはずし軸に作用するので,全極同時に遮断を行ない,欠相の恐れはありません。(4極遮断器のN極には設置されてない場合もあります。)

熱動電磁形は,過電流引きはずし装置の構造により,次の種別があります。① モールドケースを有するものと有しないもの過電流引きはずし装置がそれ自身のモールドケース内に一体に組立てられ,過電流引きはずし装置として封印された構造の,いわゆるトリップユニットと呼ばれるものと,遮断器内部に解放して組立てられたモールドケースを有しない構造のものがあります。②引きはずし特性の固定形と可調整形時延引きはずし特性及び瞬時引きはずし特性の各々について,使用者にて特性を変化できない固定形のものと,負荷に合わせ変化させることのできる可調整形とがあります。可調整形には時延引きはずし特性を調整できるサーマル可調整形と,瞬時引きはずし特性を調整できる瞬時可調整形があります。

バイメタル

共通引きはずし軸トリップボタン

モールドケース

押しばね

引きはずし棒

可動鉄心

固定鉄心

加熱抵抗支え腕

ローラ トリガー

ラッチ

クレドル

受け金

図2.4 熱動電磁形引きはずし装置の構造

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・サーマル可調整形 … バイメタルと共通引きはずし軸とのギャップを調整し,引きはずしに必要なバイメタルのわん曲量を変化させ,定格電流を可調整としたもの。(輸出専用です。)

・電磁可調整形 ……… 可動鉄心と固定鉄心のギャップをカムを介して調整し,瞬時引きはずし電流値を可調整としたものです。

③ バイメタルの加熱方法・直熱式 ……………… バイメタルに直接電流を流し,バイメタルの抵抗により,そのジュール熱により

動作する方式です。 一般に定格電流の小さなものに使用されています。・傍熱式 ……………… 加熱抵抗を設け,この加熱抵抗の熱を間接的にバイメタルに与える方式です。 一般に定格電流の大きなものに使用されています。・直傍熱式 …………… 上記両者を併用する方式です。・CT式 ……………… 傍熱式の一種で,鉄心を貫通する一次導体の電流に応じて誘起される二次電流の

二次コイル内でのジュール熱を,間接的にバイメタルに与える方式です。 原理上,交流にのみ使用され,2000A程度以上の大容量のものに使用されています。

(b) 動作原理過電流が継続して流れると,バイメタルは熱を受けてわん曲し,バイメタルが一定の動作温度に達するとその変位置により,引きはずし動作が行なわれます。図 2.6 にバイメタルの温度・電流・時間の関係を示します。電流値の増大に伴って動作温度に達する時間が短くなります。これを電流-動作時間の目盛で示すと図 2.7 のような反限時引きはずし特性が得られます。短絡の場合においては,瞬時に遮断を行なう必要があり,このような場合にはバイメタルのわん曲をまつことなく,電磁引きはずし装置により瞬時に引きはずしを行います。瞬時引きはずし電流値は変圧器の励磁突入電流・誘導電動機の始動電流などの過渡的過電流による不必要な動作をさけるため,一般には定格電流の 10 倍以上に設定されています。

わん曲量 わん曲量わん曲量

わん曲量

固定鉄心

固定鉄心

固定鉄心

固定鉄心

可動鉄心

可動鉄心

可動鉄心

可動鉄心

バイメタル バイメタル バイメタル

バイメタル

加熱抵抗

加熱抵抗

二次コイル

CT鉄心

(a)直熱式 (b)傍熱式 (c)直傍熱式 (d)CT式

加熱抵抗

動作時間

バイメタルで動作する領域

電磁石で動作する領域

電  流

図2.6 バイメタルの温度・電流・時間の関係 図2.7 反限時引きはずし特性

図2.5 バイメタルの加熱方法

動作温度

時  間

40℃

300% 200% 125%

100%電流

30秒 1分 10分

温度

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不動作状態 時延動作状態 瞬時動作状態

電流が定格値以内のとき,鉄心は制動ばねによって押されて,磁気空隙が大きく可動鉄片を吸引するまでにはいたらない。

過電流が継続すると,漏えい磁束によって鉄心が制動ばねと制動油に反抗してパイプフタの方向に動き,鉄心がフタに吸引されると磁気空隙が小さくなり,可動鉄片が吸引され,MCCBをトリップする。

ある一定値以上の大電流が流れると,漏えい磁束の増大により可動鉄片は鉄心の移動をまたずに瞬時に吸引され,ひきはずし装置を動かせてMCCBをただちにトリップする。

(2) 完全電磁形(a) 構造図 2.8 は完全電磁形引きはずし装置の構造の一例を示すもので,時延引きはずし要素とし,オイルダッシュポットつき電磁石を用いたものです。電流が定格値以内のときには,鉄心は制動ばねによってパイプの底面に押されて磁気抵抗が大きいので,可動鉄心を吸引するまでにはいたりません。しかし,過電流が継続して流れると,電磁石の磁起力が増大し,鉄心は制動ばねの力に打ち勝ってパイプの底からフタの方向に移動して磁気抵抗が小さくなり,可動鉄片を吸引し,ラッチ部の係合をはずして過電流引きはずしを行います。このとき,パイプに中の制動油の粘性抵抗により,時延動作を行います。この時延動作の特性は,電流が大きくなれば電磁吸引力が強くなり動作時間が短くなる反限時特性を示します。短絡電流のような大電流が流れると,急激な漏洩磁束の増大によって,可動鉄片は鉄心の移動を待たずに瞬時に吸引され,回路を遮断します。完全電磁式ではコイルの巻数を変えることにより小電流定格のもの,及び制動油の粘度や鉄心とパイプとの間隙を加減することによって特殊なものも製作できます。

(b) 動作原理完全電磁式の配線用遮断器は,過電流や短絡電流の遮断を同一の電磁石で行なうものなので,ある所定の電流値までは時限をもち,それをこえるとただちに遮断しなければなりません。反限時特性を得るためにオイルダッシュポット式電磁石を使用します。この装置の動作状態は電流の大きさにより表 2.1 の 3 つに区別して説明できます。

可動鉄片パイプフタ

制動ばね

制動油

コイル

継鉄鉄心

パイプ

ラッチ部

図2.8 完全電磁形引きはずし装置の構造

表2.1 完全電磁形の動作

鉄心制動油制動ばね

パイプフタ

パイプ可動鉄片