凝固工学 Solidification Engineering (第1回) 11...

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凝固工学 Solidification Engineering (第1回) 11月9日(水) メールアドレス:[email protected] HPアドレス :http//www.msre.kumamoto-u.ac.jp/~process/Cast/home.html 授業の内容(シラバス) 1.凝固現象とマテリアルプロセッシング (11.9)       (1.2, 2.1) 2.エネルギーの観点からみた固相と液相、界面とその必然性 (11.9) (2.3, 参考書4の4章) 3.同質(均一)核生成と過冷却の必然性(12.7)      (2.3, 参考書4の4章) 4.異質核生成,マクロ組織の形成(12.14)        (2.3, 参考書4の4章) 5.合金の凝固と溶質の再分配と組成的過冷界面の不安定性,(12.21)  (2.3.3) 6.界面の不安定性とマクロ的凝固組織(12.21) (2.3.3) 7.連続鋳造,一方向凝固,半溶融凝固,急速凝固(1.11)   (5.1, 5.3) 8.鋳鉄の鋳造とその基本的な組織,凝固欠陥(1.18)     (3章) 9.まとめと確認テスト(1.25) 期末試験(2.8) 課題1 生活の中でも,凝固,融解,蒸発,昇華などの相変化が多く,活用されています。自分でもいろいろ調べてみましょう。 使われている物質は何か? 融点や沸点は何度か? どのようなことに使われるのか? など 問題2 配布資料1の図にあるように,界面エネルギーと潜熱の関係にはその比 が0.45にならない原子もあります。それらの原子の界面原子の結合状態(固体 の結合と液体の結合の比率など)はどのようになっていると考えますか?  液相,固相の自由エネルギーは,温度の変化に伴って右図のように変化する。一般的に液層のエ ントロピー,エンタルピーは固相のそれらより,値が大きく,両者の自由エネルギーはある温度 で交差する。この温度が融点で,熱力学は融点以下で固相,以上で液相を選択すると教える。 相変態論(3年)の立場からは,凝固は一次相転移であり,自由エネルギーの温度微分が融点で不 連続になることから、潜熱が発生すること,核生成,成長という過程を経て,状態変化が進行す ることを示唆する。 1)「Principles of Solidification」 B.Chalmers 1964 2)「金属の凝固」 岡本 平、鈴木 章 共訳 丸善 1971 3)「Solodification Processing」M.C.Flemings MaGRAW-HILL, 1974 4)「結晶成長と凝固」中江秀雄著,アグネ承風社,¥3200 5)「講座・現代の金属学材料編10「鋳造凝固」,日本金属学会¥2100 参考文献 テキスト 固相-液相平衡 1. 熱力学から相変態としての凝固現象を理解した上で,固体-液体の界面の形成とそれに基づく,核生成理論 と過冷却について理解する. 2. 合金の凝固において,溶質の挙動と組成的過冷について理解する. 3. 凝固組織とそれを支配する因子について理解する. 4. 実際の凝固プロセスについて概略を理解する. 凝固現象の本質:液体の中に固体が出現し,成長する。 考えるべきこと:固-液の界面形成!! 熱力学基礎 1年 相変態 2年 3年 製錬プロセス工学 他の講義とのとの関連 粉体プロセス工学 移動速度論 凝固工学 +溶接工学 機械系大学講義シリーズ24 「溶融加工学」 大中逸雄,荒木孝雄 共著,コロナ社 ¥3000 評価方法 期末試験80%,宿題レポート(確認テスト含む)10%,毎回の講義レポート10% 本講義の目標 T m T G 液相 固相 純金属の凝固を考えてみよう。熱分析などの実験から,溶けた金属を冷却すると,その温度は 右図のように融点を下回っても凝固せず,ある程度過冷した後に,温度が回復し,凝固が進行 する。これをリカレッセンスといい,多かれ少なかれ必ず現れる現象である.このとき融点よ り下がった温度幅を過冷度といい,ΔT で表す。(実験(基礎編)実験3 熱分析) 固相,液相の結合エネルギー T m T 時間 "T 固体状態のエンタルピー 固液共存 固体の結合:強い 結合エネルギー:大 液体状態のエンタルピー 液体の結合:弱い 結合エネルギー:小 自由な原子 液体の レベル 固体のレベル 界面状態のエンタルピー 界面原子 界面のレベル 潜熱 液体の結合:中間 結合エネルギー:中間 "H 界面エネルギー 界面 さて,配布資料1にあるように,潜熱と界面エネルギーの間には,明快な関係がある。これは,上の図からも理解できるよう に,最隣接原子の数Zのうち,界面を挟んで固体側にある原子(結合の数ZS)と液体側にある原子(結合の数ZL)に分けるとす ると,体心とか面心に関わりなく,隣接原子の液体原子と固体原子の比率がほぼ一定であることがわかる。 界面原子のエントロピー 液体状態と固体状態のエントロピーの差は問題1で考えた通りであるが,界面に並んでいる原子はどうだろうか? ここで,2 つの概念に着目する。1つは,界面原子そのものの揺らぎによるエントロピーで,これはほぼ,固体状態と同じと考えることが できる。もう1つは,界面原子の並び方自体の乱雑さによるエントロピーであり,これにより,全体のエントロピーはやや大き くなる。この寄与が大きくなると界面が乱れてくる。これについては第3回でもう一度考える。 H 問題1 融点における固体状態と液体状態でのエントロピーの差ΔS  を導出し,その意味について考えてみましょう。 界面 Z S 固体側の結合数 Z L 液体側の結合数 Z = Z S + Z L

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凝固工学 Solidification Engineering (第1回) 11月9日(水)メールアドレス:[email protected]HPアドレス :http//www.msre.kumamoto-u.ac.jp/~process/Cast/home.html

授業の内容(シラバス)1.凝固現象とマテリアルプロセッシング (11.9)           (1.2, 2.1)2.エネルギーの観点からみた固相と液相、界面とその必然性 (11.9)  (2.3, 参考書4の4章)3.同質(均一)核生成と過冷却の必然性(12.7)              (2.3, 参考書4の4章)4.異質核生成,マクロ組織の形成(12.14)               (2.3, 参考書4の4章)5.合金の凝固と溶質の再分配と組成的過冷界面の不安定性,(12.21)  (2.3.3)6.界面の不安定性とマクロ的凝固組織(12.21)       (2.3.3)7.連続鋳造,一方向凝固,半溶融凝固,急速凝固(1.11)   (5.1, 5.3)8.鋳鉄の鋳造とその基本的な組織,凝固欠陥(1.18)         (3章)9.まとめと確認テスト(1.25)  期末試験(2.8)

課題1 生活の中でも,凝固,融解,蒸発,昇華などの相変化が多く,活用されています。自分でもいろいろ調べてみましょう。使われている物質は何か? 融点や沸点は何度か? どのようなことに使われるのか? など

問題2 配布資料1の図にあるように,界面エネルギーと潜熱の関係にはその比が0.45にならない原子もあります。それらの原子の界面原子の結合状態(固体の結合と液体の結合の比率など)はどのようになっていると考えますか? 

液相,固相の自由エネルギーは,温度の変化に伴って右図のように変化する。一般的に液層のエントロピー,エンタルピーは固相のそれらより,値が大きく,両者の自由エネルギーはある温度で交差する。この温度が融点で,熱力学は融点以下で固相,以上で液相を選択すると教える。相変態論(3年)の立場からは,凝固は一次相転移であり,自由エネルギーの温度微分が融点で不連続になることから、潜熱が発生すること,核生成,成長という過程を経て,状態変化が進行することを示唆する。

1)「Principles of Solidification」 B.Chalmers 19642)「金属の凝固」 岡本 平、鈴木 章 共訳 丸善 19713)「Solodification Processing」M.C.Flemings MaGRAW-HILL, 19744)「結晶成長と凝固」中江秀雄著,アグネ承風社,¥32005)「講座・現代の金属学材料編10「鋳造凝固」,日本金属学会¥2100

参考文献

テキスト

固相-液相平衡

1. 熱力学から相変態としての凝固現象を理解した上で,固体-液体の界面の形成とそれに基づく,核生成理論と過冷却について理解する.

2. 合金の凝固において,溶質の挙動と組成的過冷について理解する.3. 凝固組織とそれを支配する因子について理解する.4. 実際の凝固プロセスについて概略を理解する.

凝固現象の本質:液体の中に固体が出現し,成長する。考えるべきこと:固-液の界面形成!!

熱力学基礎1年

相変態

2年

3年 製錬プロセス工学

他の講義とのとの関連

粉体プロセス工学

移動速度論凝固工学 +溶接工学

機械系大学講義シリーズ24 「溶融加工学」 大中逸雄,荒木孝雄 共著,コロナ社 ¥3000

評価方法 期末試験80%,宿題レポート(確認テスト含む)10%,毎回の講義レポート10%

本講義の目標

!

Tm

!

T

!

G

液相

固相

純金属の凝固を考えてみよう。熱分析などの実験から,溶けた金属を冷却すると,その温度は右図のように融点を下回っても凝固せず,ある程度過冷した後に,温度が回復し,凝固が進行する。これをリカレッセンスといい,多かれ少なかれ必ず現れる現象である.このとき融点より下がった温度幅を過冷度といい,ΔT で表す。(実験(基礎編)実験3 熱分析)

固相,液相の結合エネルギー

!

Tm

!

T

時間!

"T

固体状態のエンタルピー

固液共存

固体の結合:強い結合エネルギー:大

液体状態のエンタルピー

液体の結合:弱い結合エネルギー:小

自由な原子

液体のレベル

固体のレベル

界面状態のエンタルピー

界面原子界面のレベル

潜熱

液体の結合:中間結合エネルギー:中間

!

"H界面エネルギー

界面

さて,配布資料1にあるように,潜熱と界面エネルギーの間には,明快な関係がある。これは,上の図からも理解できるように,最隣接原子の数Zのうち,界面を挟んで固体側にある原子(結合の数ZS)と液体側にある原子(結合の数ZL)に分けるとすると,体心とか面心に関わりなく,隣接原子の液体原子と固体原子の比率がほぼ一定であることがわかる。界面原子のエントロピー液体状態と固体状態のエントロピーの差は問題1で考えた通りであるが,界面に並んでいる原子はどうだろうか? ここで,2つの概念に着目する。1つは,界面原子そのものの揺らぎによるエントロピーで,これはほぼ,固体状態と同じと考えることができる。もう1つは,界面原子の並び方自体の乱雑さによるエントロピーであり,これにより,全体のエントロピーはやや大きくなる。この寄与が大きくなると界面が乱れてくる。これについては第3回でもう一度考える。

!

H

問題1 融点における固体状態と液体状態でのエントロピーの差ΔS    を導出し,その意味について考えてみましょう。

界面

!

ZS 固体側の結合数

!

ZL液体側の結合数

!

Z = ZS

+ ZL

過冷が進むと熱的なゆらぎによるエンブリオの大きさが大きくなる。これは次のようにボルツマン分布で説明される。右の式はボルツマン分布を示す。Eを活性化エネルギーといい,そのエネルギーまでゆらいでいる粒子の存在確率を表している。ここでは右上の図にあるΔG*までゆらいでいれば核になると考えることができるので,E=ΔG*とする。ΔG*はΔTの2乗に反比例するので、ΔTが大きくなると,指数関数の値は極端に大きくなってゆく.一方,式の左辺はそこまでゆらいだ原子の個数を示しており,それはエンブリオのサイズと正の相関関係にある。

凝固工学 Solidification Engineering(第2回) 12月7日(水)

均質核生成

液体

熱振動のゆらぎ液体中の原子はその温度に相当する熱振動をしていてその大きさは原子全体で分布している。

臨界半径の導出

振動は激しく,原子は集合・離散を繰り返している。

固体に類似する配列

エンブリオ

温度が融点よりも高ければ(Aの状態),原子の配列が固体に類似しても,エネルギーが高くなってしまうので,すぐに離散してしまう。しかし,温度が融点より低い場合(Bの場合)そのまま固体となって成長する。

AB

!

"T

!

Tm

!

T

しかし,界面エネルギーを考慮しなくてはならない

エンブリオ形成に伴うエネルギーの変化

体積に比例する自由エネルギー変化

!

"G = #4

3$r3"G

V+ 4$r2%

エンブリオ半径rの球

界面積に比例する界面エネルギー

界面

これを模式的に図で示す

!

"4

3#r3$G

V

!

4"r2#

!

r *

!

"G *

!

0

!

"G

!

"GV

!

"

右上の液体と固体のエネルギー差(単位体積当り)界面エネルギー(単位面積当り)

!

r *

極大変化する前に比べてエンブリオのサイズが小さくなる方向に安定する。すなわちサイズが小さくなる方向に変化する。

過冷している場会

エンブリオのサイズがr*よりも大きい場合変化する前に比べてエンブリオのサイズが大きくなる方向に安定する。エンブリオが成長して固体が成長する。この場合のエンブリオを核という。

極大を与えるこの半径を臨界半径という。

!

"#G

"r= $4%r2#G

V+ 8%r& = 0

!

r* =2"

#GV

ΔG*の導出

!

GV

= "HV#T"S

V

エンブリオのサイズがr*よりも小さい場合

ΔG*をΔTで表現する

融点では

!

"SV

="H

V

Tm

=L

Tm

!

"GV

!

GV

!

"GV

=L"T

Tm

!

r* =2"T

m

L#T

極大値なので

!

"G* =16#

3

$ 3

L2

Tm

2

"T2

臨界半径を超えるエンブリオが固体の核となり,成長する

過冷度とエンブリオのサイズの関係

!

"T#"G*$1/2

凝固には有限の過冷度が必要!以上のことから,凝固に有限の過冷が必要であることを説明する。右図に示すように,エンブリオの大きさ(半径)を横軸に,過冷度を縦軸にとり,ゆらぎによって形成されるサイズと臨界半径を同時に描く。エンブリオのサイズは過冷度とともに大きくなってゆく。一方,臨界半径は過冷度と反比例しており,2つの曲線は1つの交点で交差する。この交点をAとする。

Aよりも過冷度ΔTが小さい。 → 熱的なゆらぎによって形成されるエンブリオのサイズが臨界半径以下 →核とならないAよりも過冷度ΔTが大きい。 → 熱的なゆらぎによって形成されるエンブリオのサイズが臨界半径以上 →核となるすなわち,ΔT*(有限の値)以上の過冷を与えないと凝固が進行しない。

!

"T

!

rエンブリオのサイズ!

"T *A

!

r *

凝固が進行する

ここでのエンブリオ生成は熱的なゆらぎだけを考慮しており,液相内のどこでも起きうる。→ 均質核生成

動的核生成

外部からエネルギーを与える等の外的な要因により,エンブリオのサイズを大きくすると,核生成を起こす過冷度が小さくなる。例えば,衝撃や振動を与える,対流を起こす。

!

"T A

!

rA’

まとめ1  模式図を適宜使用して,凝固に有限の過冷が必要であることを説明しましょう。

問題3 融解熱Lと融点Tmの比を 5.0x105 J/K m3,界面エネルギーが 1.0 J/m2, 1.5 J/m2,過冷度が15K, 40Kのそれぞれの場合について臨界半径を示すグラフを作成して下さい。(配布資料3)

!

ni

N= exp "

Ei

kBT

#

$ %

&

' (

!

n *

N= exp "

#G *

kBT

$

% &

'

( )

!

r" n *1/ 3

過冷した温度でも  と仮定

!

"SV

メールアドレス:[email protected]HPアドレス :http//www.msre.kumamoto-u.ac.jp/~process/Cast/home.html

凝固工学 Solidification Engineering(第3回) 12月14日(水)

異質核生成領域Aのような均一な液体の中から原子のゆらぎによりエネルギー障壁を超える原子集団(エンブリオ)が固体の核荷なる場合(均質核生成)に対して,固体壁Bや介在物Cの表面との界面エネルギーが小さい場合にその場所(核生成サイト)が生成する方が有利となる。

異質な物質の表面

B

C

エンブリオ

このエンブリオを球冠と近似する体積

!

VC

="r3

3(1# cos$)2(2 + cos$)

界面積異質固体-エンブリオ

界面積液相-エンブリオ

!

ACS

= "r2(1# cos2$)

!

ALC

= 2"r2(1# cos$)

!

f (") =1

4(1# cos")2(2 + cos")

!

"G = #4

3$r3"GV + 4$r2% LC

&

' (

)

* + f (,)

( )内は均質核生成と同じ。r*も同じ。しかし実際の体積は半径rの球のf(θ)倍。

エンブリオ生成に伴う界面エネルギー変化

球冠C固体S

液体L

固体S液体L

!

"LS

!

"LC

!

"CS

!

r!

VC

!

V

!

"

!

rcos"

!

rsin"

!

"

!

"LC

!

"LS

!

"CS

界面エネルギーは界面張力でもあるYoung の式

!

"LS

="CS

+"LCcos#

エンブリオ生成に伴う自由エネルギー変化

球冠のエンブリオが異質物質に付着(濡れている)している場合の自由エネルギー変化

!

"G* =16#

3

$ 3

L2

Tm2

"T2f (%)

球形のf(θ)倍

!

r *

!

"G *

!

0

!

"G *

臨界半径(サイズ)とエネルギー障壁は共に小さくなり,均質核生成に比べて核生成しやすくなっている。より小さい過冷度で核生成する。

!

"T

A

!

r

A’

問題4 異質核生成の濡れ角因子 f(θ) をθ=0-πの範囲でグラフに描いて下さい。

核生成速度

(ボルツマン分布に従う)

!

I =Nk

BT

hexp "

#G *

kBT

$

% &

'

( ) 熱活性化過程によりエネルギー障壁を超える核の数

ΔTが増加するにつれて極端に大きくなる。

!

"T

凝固の進行に従って

核生成速度,I

異質

均質

均質核生成では,一般的にかなり過冷した後に核生成がおこる。しかし,一旦核生成が始まればあらゆる場所で核生成が進行し,上述の観点からもトータルの核生成速度は非常に大きくなる。一方,異質核生成では均質核生成ほど過冷を必要としないが,核生成サイトが限定されているので,その場所での核生成が永遠に生じる訳ではない。従って、図に示すように核生成速度は均質核生成ほど大きくならない。

マクロ的な凝固組織核生成理論に基づいて,一般的な凝固組織(鋳造組織)について考えてみよう。

B

C

チル晶

柱状晶

等軸晶

鋳型等のChillの冷却面に接触した金属は急速に冷却され,過冷度は大きく,Aに示される最大の過冷度になる。この領域は冷却面の近傍のみで,得られる組織は微細な等軸晶組織となり,特にチル晶と呼ばれる。

Chill ×

+×+×

+×+

Chill ×

+×+×

+×+×+×++ 冷却面からある程度離れると,過冷度は小さくなり,金属の固

体自身が異質な面となり(非常によく濡れる)Bに示される異質核生成(結晶成長)から冷却方向に結晶は長く成長する。

Chill ×

+×+×

+×+×+×++

+ ×++×+ ×凝固の末期になり,残りの溶液が少なくなると,液体全体が十分に冷却され過冷度が大きくなる。柱状晶も成長しているが,その前方の液相からCに示されるあたりで核生成される。チル晶ほど核生成速度は大きくなく,比較的大きな等軸晶となる。

問題5 αの値は物質や結晶形態によって異なる。シリコン(ダイヤモンド構造)と鉄(体心立方)の値を それぞれ3.5、0.8として左のようなグラフを描いて下さい。

凝固の進行

凝固界面が白の原子の面として,そこに新しい原子(黒)が固体となって付着するというミクロ的な結晶成長を考える.この際,Aのようにさらに新しい面に原子が付着するか,しないかによって界面の形態が異なる。物質の界面エネルギーが大きい場合Aの位置には付着せず,黒の原子面が形成されてから次の面が形成されてゆく。この場合は水晶のようにマクロ的な結晶面が形成されることになる。このような成長をファセットという。

ミクロ的な結晶成長

平坦な界面に次の原子面が形成されるモデル                   (Jackson’s model)

界面エネルギーの増加

!

"E

!

"G = "E #Tm"S

!

"S 界面エントロピーの増加

!

"S = kBln

N!

Na!(N # N

a)!

$

% &

'

( ) = kBN ln

N

N # Na

+ kBN

alnN # N

a

Na

!

"E = LZ1

ZN

a1#

Na

N

$

% &

'

( )

!

" =Z1

Z

L

kBTm

!

Na/N

!

0!

0

!

"G

kBNT

m

α:大

α:小

原子面にN個の結合サイトがあり,Na個の原子が結合する。 原子1個あたりの潜熱

メールアドレス:[email protected]HPアドレス :http//www.msre.kumamoto-u.ac.jp/~process/Cast/home.html

!

"G

kBNT

m

=#N

a(1$ N

a)

N2

$ lnN

N $ Na

$N

a

NlnN $ N

a

Na

=#x(1$ x) + x ln x + (1$ x)ln(1$ x)

!

x =N

a

N

凝固の進行に伴う界面移動

凝固工学 Solidification Engineering (第4回) 12月21日(水)

平衡分配と平衡分配係数 これまでは,純金属か合金であるかということをあまり考えていなかった。実際にはほとんどの場合,多かれ少なかれ合金になっている。では合金を凝固させた場合,何が問題となるのだろうか?

A-B合金が共晶の場合,Bが希薄な領域では,左のような液相線と固相線を模式的に考えることができる。均一な濃度C0の融体を冷却し、温度が液相線を下回ると,初晶と液相の2相共存となる。そのとき,固相と液相の溶質濃度(この場合はBの濃度)は界面を挟んで異なる値をとる。左の平衡状態図の液相線と固相線上の濃度で分配することを平衡分配という。そして,凝固が進行する場合,液相側と固相側の濃度の差の分だけ,溶質が液相側に排出される(溶質の排出)。

A

!

Tm

!

C0

!

CL

B

固体 液体

凝固前面

溶質

溶質の排出

液相側の濃度

!

CL

固相側の濃度

分配係数

!

k = CS/C

L:平衡分配係数 熱力学的な平衡条件から成立する濃度平衡を示す。

!

ke

= CS/C":実効分配係数 液相が撹拌されている場合のバルク濃度との比を示す。

溶質の再分配

平行分配によって排出した溶質は液相に蓄積されて液相の濃度は増加する。濃度が増加した液体と平衡分配する固相の濃度も増加する。凝固の初期から末期にわたり,下図のように分布する。固相内の拡散は一般に非常に遅く,この分布が冷却後も残ってしまう。これをマクロ偏析という。

固体液体

界面

!

CS*

!

CL*

境界層バルク

!

C"

!

CS*

!

CL*

均質な液体 溶質の排出 濃度:増

固体 固体

マクロ偏析した固体

さらに濃度増

負偏析

!

C0

!

CS*

これを利用するZone Melting

正偏析

定常凝固     液相中に排出された溶質が非常に早く拡散,あるいは撹拌等によって移動する場合は上のようなマクロ偏析が生じるが,一般的には拡散は遅く,派出された溶質は界面近傍に蓄積し,右図のように分布する。凝固が進むと,固相濃度が初期濃度に等しくなったところで定常状態となる。これを定常凝固という。

組成的過冷

固体 液体

界面!

C"

!

CS*

!

CL*

!

C"

A!

Tm

!

C0

定常凝固の場合のように,界面近傍で溶質濃度が分布すると,それに基づき左図のように液相線温度が低下する。すなわち,界面の温度は低下し界面近傍の液相中に液相線温度が濃度分布に対応して分布することになる。

固体 液体

界面

!

T0

!

T0

!

T0

!

T0

凝固が進行するには冷却が必要で,界面においては一般的に液相から固相に向かって温度が低下するような温度分布となっている。これを直電的な分布と考えると界面では右図のような温度分となり,液相内部で実際の温度が液相線温度よりひくくなる領域が現れる。これを組成的過冷という。

液体

界面

組成的過冷をしている領域

液相線温度

溶質濃度

デンドライトの成長と柱状晶の形成

組成的過冷

界面 界面

組成的過冷により界面形状が不安定になり,平滑でなくなる。

界面が不安定になり,セル,あるいはデンドライトと呼ばれる形状に成長する。

界面がさらに不安定になり,木の枝のように固相が成長する。

デンドライト 柱状晶

方位のそろったデンドライトは凝固に伴い,1つの結晶を形成し,それは柱状晶となる。

純物質が過冷によって界面が不安定になり,デンドライトになるには雪の結晶のように大きな過冷(大過冷)が必要で,その状況(負の温度勾配)を実現することはかなり困難である。しかし,溶質が存在する場合,組成的過冷によって比較的容易に(自発的に),通常起こりうる正の温度勾配でもデンドライトとなる。→応用編実験7(一方向凝固)

デンドライトの成長の成長速度

温度

曲率rの界面の過冷度

!

"

先端 曲率がある

マクロ的な温度分布により凝固速度Rは決定される。しかし,ミクロ的な組織形成を支配するのはミクロ的な凝固速度,すなわち,デンドライトの成長速度である。

!

r* =2"T

m

L#T

先端近傍の温度境界層

!

Tm

!

Ti

!

"Tr

=2#T

m

rL

均質核生成の臨界半径

!

"r2RL# = 2"r2$%T

&

デンドライト先端(半球)の熱収支

!

R =2"#T

L$%=&

#T

r

凝固速度

凝固速度はデンドライト先端半径と負の相関

デンドライトの成長速度は臨界半径の2倍のサイズで最大になる。すなわちデンドライトは理論的にはこのサイズになる!

"T

デンドライトの間隔 デンドライト先端周囲の温度場が互いに干渉しない。間隔=

問題6 定常凝固において,液相側濃度が安定していることを定性的に説明して下さい。

!

TL*

!

"T = "T01#

r *

r

$

% &

'

( )

!

" # rここで

!

dR

dr="

#T0

r2

2r *

r$1

%

& '

(

) *

!

8r *

:凝固速度(m/s),   :熱伝導度(J/Kms),   :境界層厚さ(m)

!

R

!

"

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まとめ2 定常凝固において,界面が不安定になる原因と結果について述べて下さい。

メールアドレス:[email protected]HPアドレス :http//www.msre.kumamoto-u.ac.jp/~process/Cast/home.html

Gibbs-Thomson効果

凝固工学 Solidification Engineering (第5回) 1月11日(水)メールアドレス:[email protected]HPアドレス :http//www.msre.kumamoto-u.ac.jp/Cast/home.html連続鋳造プロセス(CC)

装置の概形

取鍋

タンディッシュ

鋳片

鋳片

鋳型(モールド)浸漬ノズル

ピンチロール

2 strandsの一般的な連続鋳造機浸漬ノズル モールド

オシレーションパウダーフラックス

溶湯凝固シェル

冷却水

鋳型

鋳型

1次冷却

2次冷却

吐出流

フラックス

凝固シェルの爪

ネガティブストリップではフラックスの圧力が大きくなる

オーバーフロー

屈曲

凹み

凹みモールドオシレーションに同期して,鋳片表面に凹みができてしまう。

対策例:電磁力による軟接触鋳造

問題点1 オシレーションマーク

鋳片:スラブ,ブルーム   ビレット鋳造速度:1-2m/min

吐出流

反転流

フラックス

シェル

深い循環流

介在物気泡

問題点2 吐出流による介在物     や気泡の補足

問題点3 中心編析

シェル

溶質の排出

蓄積

デンドライトの柱状晶が発達するとともに,溶質が中心部で濃化する。これを中心編析という。

対策例:2次冷却帯での 電磁撹拌最終凝固部軽圧下

柱状晶 柱状晶表面

表面対策例:

 介在物除去 電磁ブレーキ

溶断

垂直曲げ型

溶断

湾曲型

建家の関係で、下向きから水平にする

究極は水平式連続鋳造

しかし,堅い材質ではあまり曲げることはできない

問題7 水平式連続鋳造を概説し,長所と    欠点を説明して下さい。

アルミニウムの連続鋳造:フラックスなし,オシレーションなし,熱伝導度がよいので溶融部が短い。焼き付きの心配は無いが            逆にティアリング等の表面欠陥が問題となる。チラーとの接触を避け,緩冷却 → 電磁鋳造銅の連続鋳造:主に線材.鋳造径が小さいので,電磁力による電磁鋳造も用いられることもある。

一方向凝固プロセス

単結晶製造プロセス

急冷凝固プロセス

半溶融凝固プロセス

結晶の粒界は析出物や偏析などの多くの問題を抱える場合が多く,それが全くない単結晶は多結晶体に比較して,機械的強度や電気的・磁気的性質が向上する場合が多い。単結晶製造プロセスとして次の3つを挙げておく。ブリッジマン法:対象試料を一端が鋭利なるつぼに封入し,温度勾配のある炉の中で小さい結晶が肥大化        するように凝固させる。製造される試料のサイズが小さく,主に実験試料作成用である。チョクラルスキー法:るつぼに試料を溶かし,種結晶を上部表面に接触させそれをゆっくり回転させなが(CZ法)    ら引き上げて結晶成長させる。るつぼ内の融体の流動が重要で,回転と直流磁場で制御        する。半導体用の単結晶シリコンはこれで作られる。浮遊帯溶融法:帯溶融法(Zone Melting)は細長い試料を一端から一部分のみを溶融し,その溶融部を移動,       すなわち界面を移動させることで溶質を除去するものであるが,同時に一方向にゆっくり       凝固させることで優先的に成長した結晶が肥大化し単結晶になることも期待できる。溶融       方法は一般的に高周波磁場による誘導加熱が利用されている。るつぼを使用しないので,       活性な金属(Tiなど)に適用される。

固相

融体の一端を冷却し,熱の流れを一方向に限定する。一般に金属は固体のほうが密度が大きく,また液体も低温で高密度であることから,一方向凝固では下方から凝固させる。固液共存相:一般には溶質があるので,デンドライトが成長し,その樹間には液相が残存している。      デンドライト先端の温度は液相線温度より過冷していると考えられる。溶質の排出を考え        れば,樹間液相の濃度は共晶濃度まで到達し,根元の温度は共晶温度付近と考えてよい。凝固組織:一方向に成長するデンドライトに基づいて,凝固方向に長く成長した柱状晶が形成され     る。製品全体が1つの方向の柱状組織で,強度,電気伝導度,磁化率等の特性に異方性が      現れる。応用:異方性を利用する     永久磁石材料(Alnico系),耐熱合金(Ni系)   健全な組織形成を利用する 太陽電池用多結晶シリコン,一方向凝固鋼塊

共存相液相

石英るつぼ

溶融Si種結晶

チル

結晶成長速度は凝固点より低い温度(ある程度の過冷度)で最大となるが,それ以上低い温度になると逆に成長速度が遅くなる。教区単に低い温度では,固体の結晶を形成せずに凝固してしまう。この状態をアモルファスといい,強度や腐食性などの特性が向上することが知られている。熱力学的には共晶合金の共晶組成でアモルファスになりやすい。

α βLG

凝固組織形成の段階で 微細な等軸晶を形成すし,強度や硬度を強化する方法。基本的な考え方は固体の核を予め液相内に分散させるもので,以下のような鋳造法が提案されている。

レオキャスティング:デンドライトをある程度成長させた状態で強撹拌し,デンドライトを分断微細化した後,鋳型に注入チクソキャスティング:半溶融金属を一旦凝固させた後,再加熱して鋳型に注入。取り扱いが簡便になる。コンポキャスティング:複合材料の原料をレオキャスティングの撹拌時に混入させる。混ざりにくい材料でもある程度可能。

ピンチロール

凝固工学 Solidification Engineering (第6回) 1月18日(水)メールアドレス:[email protected]HPアドレス :http//www.msre.kumamoto-u.ac.jp/Cast/home.html

鋳造プロセス古代から,人類は青銅,鋼等を鋳造というプロセスで,多くの製品を製造して来た。現代では,溶接,切削,粉末固化成形など多くの加工技術がある中で,鋳造はなおその重要性を失っていない。その理由は以下のとおりである。○原理がシンプル ー高温で溶解して型に入れて凝固させるー○切削やプレス等では不利である堅い材料のニアネットシェイプ(near net shape)が可能○大量生産が容易砂型鋳造法

<鋳造プロセス>・V偏析:大型鋼塊において,中心部に形成される。中心の最終凝固部では凝固収縮により成分の濃化した溶鋼が下方向に吸引     され.その道筋に沿って偏析が残る。・逆V編析: 大型鋼塊において,柱状晶帯前面でのデンドライト層内の熱溶質対流によるチャンネル形成が原因とされる。<連続鋳造プロセス>・中心編析:連続鋳造において,凝固前面での溶質の排出に伴い,最終凝固部である中心部に溶質が極端に濃化する。・ホワイトバンド:キルド鋼では溶鋼の撹拌が起らないのでマクロ偏析が発生しやすい。電磁撹拌等により平衡分配を比較的         低濃度側にシフトさせ,固相側の濃度がバルク濃度より低くなってしまう。・セミマクロ偏析:連続鋳造で中心編析を防止するために電磁撹拌を行う場合,最終的に等軸晶は増加するが,その結晶粒界に         溶質が偏析してしまう

鋳型は一般にベントナイトと呼ばれるような専用の砂を木枠に充填した上型と下型(場合によっては中子も)で構成され,その空隙部に対して,溶湯の通り道となる湯口系(湯受,湯口,湯道,せき),押湯,ガス抜きが連携する。

ガス抜き

空隙部 せき

湯道

湯口

湯受

中子押湯

上型

下型

見切面 鋳物

湯口系:湯口,湯道,せき 加圧方式:関野断面積が湯道より小さい 非加圧方式:せきが広い

製品を取り出す時に砂を砕いて,その砂は再利用し,木型を使って,再度砂型を形成する。

硬質な材料を複雑形状に削って作製することは困難,鋳鉄(炭素の高い鉄)などのnear net shapeとしては最適。

温度分布

鋳型 金属

温度

砂型は熱伝導度が低く,鋳型内の伝熱律速で金属内の温度は均一となり,凝固組織は均一な等軸晶

ガス抜き:溶融金属に溶けていた気体成分は固相では一般的に溶解度が低いため,ガスとなって排出される。これが空隙部に残ると鋳造欠陥となってしまう。砂型の場合は砂の間に吸収されたりもするが,効率よくガスを抜くために,ガス抜きを設ける。押湯:一般に溶融金属は凝固すると体積が減少する。凝固した分(冷却過程での熱収縮分も含む)の溶湯を補填するために,予め押し湯に湯をためておいて,最終凝固部につなげておく。

金型鋳造法空隙部 金型

鋼やニッケル等の耐熱性,強度に優れた金属で型を作製し,それを何度も使用して大量生産が可能となる.一般に,空隙部は狭く,複雑で溶等は圧力をかけて注入する.金型は熱伝導度が高く,一般に凝固組織はチル賞あるいは柱状晶となる代表的な金型鋳造はアルミのダイキャスト(ダイカスト)で自動車のアルミホイール等

鋳鉄の鋳造が一般的・自動車のエンジンなど

温度分布

鋳型 金属

温度

固体

固体

鋳造法案木型→鋳型→鋳造→取り出し→仕上げ の繰り返し木型の設計:凝固収縮,熱収縮を考慮した寸法の設定湯口系の設計:せき,湯道の配置と数,湯口のサイズ 湯口比 湯口断面積:湯道総断面積:湯道総断面積=S:R:G 加圧方式( 1:0.75.0.5,1:2:1など):せきの流量が最小,空隙部への流入速度が大きくなる。鋳鉄鋳物 非加圧方式( 1:2.2,1:4:4など):湯道部分の流量が最小,空隙部への流入速度が小さくなる。アルミ鋳物押湯の設計:熱移動の式から凝固時間 tf を概算して,それから押湯のサイズ等を設定する.最終凝固部の解析は数値解析。上図の温度分布の形は誤差関数で表現され,その変数は クボリノフの式

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x

2 "mt

凝固厚さ

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" = q t

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t f = (M /q)2, M =V /S V:体積

S:面積

鋳鉄の組織鉄-炭素系の状態図は添付資料に示すように,最も安定な平衡相と冷却が早い場合に現れる準安定相が同時に描かれている。<金型あるいは冷却が早い場合> 鉄とセメンタイト(Fe3C)の共析 白鋳鉄と呼ばれる。<砂型等で冷却が遅い場合> 鉄と炭素の共析 炭素は鱗片状,片状であり,その色からネズミ鋳鉄と呼ばれる。炭素が鱗片状に存在しているので, じん性に乏しい。   → 炭素の形を球状にすることで問題点を克服! 球場黒煙鋳鉄

鋳造欠陥

大型鋼塊の鋳造リムド鋼:酸素が多い(脱酸が十分でない)状態で凝固させると,凝固に伴いCOガスが多く発生     し,リミングアクションと呼ばれる還流が生じる。表層に緻密なリム層が形成され,     内部酸化防止に役立つ。キルド鋼:脱酸を十分に施した後に凝固させる。マクロ組織はチル晶,柱状晶,等軸晶。     鋼塊底部に自由晶の沈殿による等軸晶帯の形成.上部に収縮孔の形成セミキルド鋼:脱酸の程度はそれほど強くなく,ある程度の撹拌効果によって収縮孔の軽減を図る

上注

下注