日本のスポーツ政策とジェンダー · important to promote gender equity and equality in...

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― 36 ― The purpose of this study is to examine the current Sport Basic Plan from the perspective of gender because the second Sport Basic Plan must be enacted along the Basic Act on Sport’s principle: “Living a happy and fulfilled life through sport is the right of people.” The study has suggested that the second Sport Basic Plan should include the following five points: (1) Promotion of an active lifestyle in women from early childhood (2) Abolition of the stereotyped division of roles on the basis of gender and pro-motion of the work/life balance in order to improve the exercise frequency of adult women (3) In accordance with the Basic Plan for Gender-Equality, setting a target that the rate of women leaders will be at least 30% by 2020 (4) Setting a guideline to prevent sexual violence and sexual harassment (5) The guarantee of sport rights to the L.G.B.T Now that the 2020 Olympics has been determined to be held in Tokyo, it is very important to promote gender equity and equality in the Japanese sport world. 1 はじめに 本稿は,平成 23 年に制定されたスポーツ基本法(平成 23 年法律第 78 号)に基づき,スポー ツの推進に関する基本的な計画を策定したスポーツ基本計画(平成 24 年 3 月 30 日,文部科学 省)をジェンダーの視座から検討するものである.その目的は,およそ 5 年後に改訂される第 2 次スポーツ基本計画において,ジェンダー平等・公平の推進を加速させることにある.何故 なら,スポーツ基本計画へのジェンダー視点の導入は,スポーツ基本法で定めているスポーツ 人間科学部研究年報 平成 25 年 日本のスポーツ政策とジェンダー −第 2 次スポーツ基本計画に向けて− Japan’s Sport and Gender Policy − Proposal for the Second Sport Basic Plan − 飯田 貴子 Takako Iida

Transcript of 日本のスポーツ政策とジェンダー · important to promote gender equity and equality in...

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人間科学部研究年報 平成 25 年

  The purpose of this study is to examine the current Sport Basic Plan from the perspective

of gender because the second Sport Basic Plan must be enacted along the Basic Act on Sport’s

principle: “Living a happy and fulfilled life through sport is the right of people.”

  The study has suggested that the second Sport Basic Plan should include the following

five points:

    (1) Promotion of an active lifestyle in women from early childhood

    (2) Abolition of the stereotyped division of roles on the basis of gender and pro-motion

of the work/life balance in order to improve the exercise frequency of adult

women

    (3) In accordance with the Basic Plan for Gender-Equality, setting a target that the

rate of women leaders will be at least 30% by 2020

    (4) Setting a guideline to prevent sexual violence and sexual harassment

    (5) The guarantee of sport rights to the L.G.B.T

  Now that the 2020 Olympics has been determined to be held in Tokyo, it is very

important to promote gender equity and equality in the Japanese sport world.

1 はじめに

  本稿は,平成 23 年に制定されたスポーツ基本法(平成 23 年法律第 78 号)に基づき,スポー

ツの推進に関する基本的な計画を策定したスポーツ基本計画(平成 24 年 3 月 30 日,文部科学

省)をジェンダーの視座から検討するものである.その目的は,およそ 5 年後に改訂される第

2 次スポーツ基本計画において,ジェンダー平等・公平の推進を加速させることにある.何故

なら,スポーツ基本計画へのジェンダー視点の導入は,スポーツ基本法で定めているスポーツ

人間科学部研究年報 平成 25 年

日本のスポーツ政策とジェンダー−第 2 次スポーツ基本計画に向けて−

Japan’s Sport and Gender Policy

− Proposal for the Second Sport Basic Plan −

飯田 貴子

Takako Iida

日本のスポーツ政策とジェンダー

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権は全ての人々の権利という理念を遂行するためであり,同時に現在のスポーツ界の緊急課題

であるあらゆる暴力の根絶のために必要不可欠だからである1.

  先行研究に関しては,Cinii article および Cinii book において,スポーツ基本法,スポーツ

基本計画,ジェンダー,男女共同参画,女性をキーワードにして検索した.しかし,ヒットし

た文献および図書は見いだされなかった.これまでに入手した文献の中で,女性やジェンダー

に関する記述が見られるのは,日本弁護士連合会による「スポーツ基本法の立法に向けての意

見書」(2010)2,「スポーツ基本計画の策定について(中間報告)に関する意見募集への意見書」

(2012)3および日本スポーツ法学会編「詳解スポーツ基本法」(2011)4だけである.日本弁護士

連合会はスポーツ基本法に対し,性別により不合理に差別されないこと,およびセクシュアル・

ハラスメントの防止を含むべきであるとし,基本計画に対してはセクシュアル・ハラスメント

を含む紛争時の制度設計を求めている.「詳解スポーツ基本法」においては,セクシュアル・ハ

ラスメントの問題に加え,女性アスリートの環境改善が挙げられている程度である.

  そのため本稿では,まずスポーツ振興法(昭和 36 年法律第 141 号)を 50 年ぶりに全面改訂

したスポーツ基本法の理念を確認したうえで,スポーツ基本計画において女性に特化した項目

を洗い出し,基本計画における現状分析や課題,施策目標や施策展開が十分なものであるかを

検証し,次期基本計画へ若干の提言をまとめた.

2 スポーツ基本法の理念

   スポーツは,世界共通の人類の文化である.

   スポーツは,心身の健全な発達,健康及び体力の保持増進,精神的な充足感の獲得,自律

心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活

動であり,今日,国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠のも

のとなっている.スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは,全ての人々の権利であ

り,全ての国民がその自発性の下に,各々の関心,適性等に応じて,安全かつ公正な環境の

下で日常的にスポーツに親しみ,スポーツを楽しみ,又はスポーツを支える活動に参画する

ことのできる機会が確保されなければならない.

 上記は,スポーツ基本法前文の書き出しであり,「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むこ

とは,全ての人々の権利」であると定め,欧州においては 1970 年代から認められてきたスポーツ

権5が日本において初めて法律上規定された.

 さらに,スポーツ基本法第2条において,8 つの基本理念を定め,第2条 1 項には「スポーツ

は,これを通じて幸福で豊かな生活を営むことが人々の権利であることに鑑み,国民が生涯にわ

たりあらゆる機会とあらゆる場所において,自主的かつ自律的にその適性及び健康状態に応じて

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行うことができるようにすることを旨として,推進されなければならない」と掲げている.

 「詳解スポーツ基本法」によると,「具体的にどのような「人々」のどのような「スポーツ」に

関するどのような「権利」であるのかは必ずしも明白ではない」6とスポーツ基本法の課題が提示

されているが,本稿では,権利主体を日本「国民」とし,前文の定義に基づいた「スポーツ」を

「行う」権利と包括的に捉えることとする.

 

3 スポーツ基本計画における女性に対する施策

 (1)女性に特化された具体的施策

 スポーツ基本法に基づいたスポーツ基本計画は表 1 のように構成されている.第 2 章の基本方

針では,「年齢や性別,障害等を問わず,広く人々が,関心,適性等に応じてスポーツに参画する

ことができるスポーツ環境を整備すること」を基本的な政策課題として掲げ,「スポーツ」を「行

う」人には,「する人」「観る人」「支える(育てる)人」が含まれると記載されている.

 次の第 3 章今後 5 年間に取り組むべき施策は,7 分野に分けて記載されている.各分野は,各々

2 から 4 項目に分けられ,各項目は施策目標,現状と課題,今後の具体的施策展開によって構成

されている.

表 1. スポーツ基本計画の目次(概略)

はじめに

第 1 章 スポーツをめぐる現状と今後の課題

第 2 章 今後 10 年間を見通したスポーツ推進の基本方針

第 3 章 今後 5 年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

1. 学校と地域における子どものスポーツ機会の充実

2.  若者のスポーツ参加機会の拡充や高齢者の体力つくり支援等ライフステージに応じたスポーツ活動の推進

3. 住民が主体的に参画する地域のスポーツ環境の整備

4. 国際競技力の向上に向けた人材の養成やスポーツ環境の整備

5. オリンピック・パラリンピック等の国際競技大会等の招致・開催等と通じた国際交流・貢献の推進

6. ドーピング防止やスポーツ仲裁等の推進によるスポーツ界の透明性、公平・公正性の向上

7.  スポーツ界における好循環の創出に向けたトップスポーツと地域におけるスポーツとの連携・協働の推進

第 4 章 施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項

参考資料

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 表 2 は,具体的施策展開に述べられている女性に特化した記述を抽出し整理して示している.

 (2) 女性に対する施策への提言

 上記に掲げた女性に対する施策の特徴は,1. 中学生で顕著となるスポーツを行わない女子に対

する対策,2. 育児や家事を担う成人女性に対する対策,3. 女性アスリートに対する支援,4. 女性

指導者の育成と登用の 4 つにまとめることができる.次に順を追って,その施策の不備を指摘し,

補足と提言を述べる.

  ① 基本計画では,特に中学生女子を対象にした対策の必要性を述べているが,幼児期から

活動的生活スタイルを身につけさせる対策が肝要である.

 何故なら,文部科学省「平成 22 年度 体力・運動能力・生活習慣等調査」によると,体育の授

業と通学時間を除く 1 週間の総運動時間 60 分未満の子どもは,小学 5 年生において男子 10.5%,

女子 24.2%,中学 2 年生において男子 9.3%,女子 31.1%であり,小学 5 年生においてほとんど運

動しない児童が女子は既に男子の 2 倍強にも達しているからである7.

 運動部活動加入率について小学生は調査されていないが,中学校においては男子 75.5%,女子

表 2. 女性に特化された具体的施策展開

1・ 特にその傾向が中学校段階で顕著となる積極的にスポーツを行わない女子を対象にして,スポーツの

楽しさや喜びを味わうことができるように重点をおく.・性別に応じたスポーツの推進や体力向上方策の中で,スポーツ医・科学の積極的な活用を図る.・ 中学校及び高等学校において,男子と比較して加入率が低い女子の運動部活動への参加機会の向上を

図る.・ 中学校女子をはじめ積極的にスポーツを行わない子どもを対象にして,総合型クラブやスポーツ少年団

等,地域における多様なスポーツ機会を充実させるための取組を推進する.2・仕事や家事・育児の合間に気軽に行える運動等について開発・普及・啓発を図る.・地域スポーツクラブにおいてレディースデーを設けるなどして,教室,イベント等を開催する.・子どもや女性,高齢者,障害者を含む全ての地域住民の公共スポーツ環境の安全確保に努める.3・ 若者や高齢者,女性,障害者のポーツ指導者を適切に行うことができるように,指導者の資質向上を

図る.・性別のバランスに配慮して,スポーツ推進委員を委嘱する.・子どもや女性,高齢者,障害者を含む全ての地域住民の公共スポーツ環境の充実に努める.4・ 女性アスリートに対する支援として,国内外の情報の収集,データベース化及び特有の課題解決にむけ

た調査研究の取組を推進し支援の充実に努める.・女性の指導者の育成方策について検討する.6・女性の団体役員等への積極的な登用,外部役員・監査役の登用を図ることが期待される.

注)表中の数字 1.2.3.4.6. は,表 1 の第 3 章の 7 つの分野の数字にあたる.

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53.8%となっている8.もちろん,よく運動する子どもとしない子どもの体力差は大きく開き,体

力の2極化傾向が見られる.この状態を改善するためには,中学校期に女子に特化した対策をた

てても遅すぎるのは明白である.

 ベネッセ教育研究所「第 4 回幼児の生活アンケート報告書」(2011)9によると,幼児(1 歳 6 か

月〜 6 歳 11 か月)の遊びは,公園の遊具を使った遊びでは男子 74.6%,女子 81.8%と差がないも

のの,ボールを使った遊び(サッカーや野球等)は男子 59.6%,女子 33.5%,人形遊び,ままご

と等のごっこ遊びは男子 29.1%,女子 85.7%と明らかなジェンダー差があり,男子は屋外での活

発な遊びが多い.また,習い事・おけいこ事についても男子にはスイミング,サッカー,女子に

はバレエ・リトミック,楽器が多く,同様の傾向になっている.これには,保育者の子育て観が

大きく関与してくる.同じくベネッセの報告書によると,母親の子育てに力を入れていることは

性別によって異なり,「屋外で遊ぶこと」「身体を丈夫にすること」はジェンダー差が大きく,男

子に高い.

 保育者がジェンダーに囚われない教育の重要性を認識していても,幼児に性別を意識させるこ

とは必要とする主張や 10,性別にグループ化することに性役割の社会化の意図を把握できず,単

に便宜的に用いているという事実は,参与観察を通して多数見られる 11.また,保育者の大半が

女性であるという物理的人的環境,さらにテレビ・絵本・おもちゃ等を通じて生後直後からジェ

ンダー規範に覆い尽くされているのが現状である.このような状況下では,極めて困難ではある

が,生後直後を含めた幼児期から,固定的ジェンダー観にそった育児や教育を改めなければ,小

学校高学年における運動習慣に関するジェンダー格差は縮まらないと考える.

 日本学術会議の提言においても,女子の運動習慣が低年齢から減少していることに注目し,「運

動しない女子の増加は,自身の体力・健康面はもとより,彼女たちの多くが将来母親や保育者と

して育児に関わることを考える 12 と,運動・スポーツ習慣が身についていない女性に育てられる

子どもに活動的な生活スタイルを期待することはできないという点 13 で重大な問題である.つま

り,運動しない女子の割合を下げなければ,元気な日本の子どもを育成することは困難である」

と述べている 14.

 

  ② 成人女性への対策について,気軽に行える運動についての開発・普及やレディースデー

の設置を含めた環境改善をあげているが,固定的役割分業を改める視点を導入し,男女のワーク

ライフバランスの必要性を掲げる.

 文部科学省「平成 23 年度 体力・運動能力調査結果」によると,昭和 60 年頃と比べると,女性

の 20 代前半(20-24),30 代前半(30-34)の運動・スポーツ実施頻度が約 50%から 40%弱に低下

しており,若年層(20・30 歳代)における運動・スポーツ実施頻度を向上させるための取組,特

に女性への取組が重要な課題であると記載されている.さらに,現在の運動・スポーツ実施頻度

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と学校時代の運動部活動経験との関連を分析し,20 歳代女性の実施頻度「しない」の約 70%が,

運動部の活動経験がない者と活動が中学のみの者で占められていると指摘している 15.

 また,「健康日本 21 最終評価」(平成 23 年 10 月)によると,運動習慣者の割合において女性

は男性よりも低く,特に 20 歳代,30 歳代の女性の運動習慣者が際立って低く,40 歳代,50 歳代

も併せて直近実測値がベースライン値を下回っている結果が報告されている.このように直近の

報告では,特に 20 歳代 30 歳代の女性の運動・スポーツ実施頻度が下降している 16.

 この要因を探るのには,江刺の論考が有効である.江刺は,「女性スポーツの社会学」におい

て,膨大な資料を分析した結果,わが国の既婚女性の「スポーツ参与は過去も現在も男性より劣

位であり,かつ欧米諸国と比較しても劣っている」と指摘し,母親役割を中心とした女性役割が

重く,社会全体における女性の社会的地位が低いほど最も抑制されると結論づけている 17.

 現状に対する江刺論考を裏付ける資料として,女性の労働力率は上昇し,20 歳代 30 歳代では

66%〜 69%に伸びているが,いわゆる M 字型曲線の谷の解消には至っておらず,25 歳〜 34 歳の

女性離職者のうち 2 割が結婚か出産・育児を理由にしているという 2010 年調査がある 18.「男は

仕事,女は家庭」から「女は家庭も仕事も」の時代にはいっているのである.

 年代別比較はされていないが,男女の家事労働時間を比較すると,平日の女性 3.42 時間に対し

男性 0.31 時間,日曜日の女性 3.49 時間に対し男性 1.07 時間,有業者男女の家事と家族のケアに

要する時間は,女性 3.29 時間に対し男性 0.51 時間と大きな開きがある.もちろん,そこには男性

の収入労働時間および仕事関連時間が女性より長いことは考慮するべきであるが,他の先進諸国

と比較して日本の性別役割分業が強固である事実は疑いようもない 19.

 そして,20 歳代 30 歳代女性の労働力率は上昇したものの非正規労働者を含む常用労働者全体

の女性の賃金額は,1980 年より男性の 5 割台前半で推移し,賃金額そのものも 1998 年以来下降

している 20.上昇し続けていた育児休業取得者の割合も 2008 年をピークに低下し始めている 21.

リーマンショックがもたらした経済不況によって,企業が人件費や人員を削減した影響が表われ

ているのであろう.全般的に見れば,女性役割からも解放されず,女性の社会的地位も低下して

いると推察できる.

 以上のことから,スポーツ基本計画においても固定的役割分業を見直す視点を導入し,男女の

仕事と生活の調和(ワークライフバランス)を実現するという方向への舵取りがなければ,成人

女性の運動・スポーツ実施頻度や運動習慣者の割合を上昇させるための抜本的改革は望めないと

考える.

 なお,性別による固定的役割分業を見直すことは男女共同参画社会基本法(平成 11 年法律第

78 号)の理念に沿っており,男女のワークライフバランスの実現は第 3 次男女共同参画基本法の

具体的施策に掲げられていることは言うまでもない.

 

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  ③ 女性アスリートに対する支援においては,セクシュアル・ハラスメントおよび性暴力の

防止・対策を明記する必要がある.

 スポーツ界におけるセクシュアル・ハラスメント研究の第一人者である Kari Fasting は,2008

国際スポーツ社会学会のキーノートレクチャー ”Violence against women in sport” において,女

性が被っている様々な形態の暴力が頻発する環境に,職場や学校に加えてスポーツの場をあげな

ければならないと述べている 22.𠮷川・熊安・飯田らによる調査研究においては,一般女子学生

に比較し体育系女子学生は,セクシュアル・ハラスメントに対する認識が低いことが明らかにさ

れている 23.また,セクシュアル・ハラスメントになりうる行為に関しては,男性指導者よりも

女性競技者の方に評価が甘いという結果を得ており,女性競技者は男性指導者の「挨拶やマッサー

ジでさわる」「容姿に関する発言」「ひわいな発言」「お酌をさせる」「月経について聞く」という

行為を 40 〜 60%,「一人だけ部屋に呼び出す」という行為を約 35%が経験している.レベル別に

みると,国際レベルの女性競技者に「性的な経験や性生活についての質問」,「からだをじろじろ

見る」,「指導者と恋愛関係になる」における経験率が高い結果を得ている 24.

 IOC(国際オリンピック委員会)は,声明文「スポーツにおけるセクシュアル・ハラスメント

と性的虐待」(2007 年 2 月)25 を採択し,冒頭で「セクシュアル・ハラスメントや性的虐待は,ス

ポーツに携わるすべての関係者を傷つける人権行為」であると位置づけ,定義,発生リスク,加

害者,影響等の科学的根拠,防止対策とともに,何故スポーツにおいてセクシュアル・ハラスメ

ントや性虐待が生じるのかについて言及している.

 「諸外国および国内におけるスポーツ振興施策等に関する調査研究」(平成 22 年度)26 によると,

フランスのスポーツの保護関連施策の中で,「ヨーロッパ評議会による 1992 年の「スポーツ倫理

綱領」,2003 年の「スポーツにおけるレスビアンおよびホモセクシャルに関する勧告 1635 号」,

2007 年の IOC による声明文「スポーツにおけるセクシュアル・ハラスメントと性的虐待」27 等,

ヨーロッパでは性暴力等に関する問題への関心が高まってきている」と記述されており,デンマー

ク,オーストラリア,ドイツ,フランス,韓国のスポーツ政策にセクシュアル・ハラスメントや

性暴力防止施策が記載されている.同報告では記載されていないが,アメリカ,カナダ,イギリ

ス,ノルウェー,フィンランドが国レベルあるいは各国最大の NGO で防止施策を備えているこ

とは,これまでの研究蓄積において把握している 28.

  なお,スポーツ基本計画に先だって策定された第 3 次男女共同参画基本計画(平成 22 年 12

月 17 日,閣議決定)の第 9 分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶− 3. 性犯罪への対策の推進

−具体的施策」において「スポーツ分野における指導的立場の者等による性犯罪の発生を防止す

るための効果的な対策やこれらの者等に対する啓発を強化する」と記載されている.「男女共同参

画社会基本法」の規程に基づき策定された男女共同参画基本計画に記載された事項については,

スポーツ基本計画においても遵守されるべきであろう.各省庁が縦割りの行政ではなく,内閣府

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(男女共同参画局)と文部科学省も連動して,日本の施策を決定するべきである.そのためには,

基本計画策定に関する委員会に多様な人材を配置することが肝要と考える.

 日本のスポーツ界における調査研究は,セクシュアル・ハラスメントに比重をおいたものであ

るが,昨今の女性競技者に対するパワーハラスメントや準強姦事件を顧みると,IOC 声明文と同

様に,次期基本法には,セクシュアル・ハラスメントだけでなく性的虐待あるいは性暴力を併記

するべきと考える.

  ④ 女性指導者の育成と登用においては,性別に配慮することおよび女性の団体役員等への

積極的な登用を図ることが期待されるとあげられているが,ここにはスポーツ活動実施率と同様

に目標値を示すべきである.

 何故なら,「第 2 次男女共同参画基本計画」(平成 17 年 12 月 27 日,閣議決定)「第 1 部基本的

な考え方」においては「社会のあらゆる分野において指導的地位に女性が占める割合が 2020 年ま

でに少なくとも 30%程度になることを期待し,各分野における自主的な取組が進められることを

奨励している」と記載され,さらに「第 3 次男女共同参画基本計画」「第 1 部基本的な方針」にお

いては,その目標「2020 年 30%」の達成に向けて,「取組の強化・加速が不可欠である.クオー

タ制(割当制)やインセンティブ付与,ゴール・アンド・タイムテーブル方式など多種多様な手

段のうち,分野や実施主体の特性に応じて,実効性のある積極的改善措置(ポジティブ・アクショ

ン)を推進する」と記載されているのである.

 オリンピックにおける男女共同参画をみると,参加選手数においてはアテネより対等になり,

男性選手と女性選手の割合は,アテネ 45.2%対 54.8%,北京 50.1%対 49.9%,ロンドン 46.8%対

53.2%である.一方,役員の割合では,アテネ 87.4%対 12.6%,北京 85.9%対 14.1%である 29.ロ

ンドンの役員割合は JOC(日本オリンピック委員会)のサイトから割り出すことができないが,

ドラスティックな変革はなされていないだろう.

 女子選手に対するパワーハラスメント,セクシュアル・ハラスメント,性暴力を含む暴力事件

等で一挙に槍玉があがった柔道では,ロンドンオリンピックの選手団 14 名に対し役員団 16 名,

その男女の内訳は選手団(男性 7 名,女性 7 名)に対し役員団(男性 14 名,女性 2 名)である.

しかも,女性割合の低さという量的な問題だけでなく,チームリーダーは男性というヒエラルキー

も存在している 30.今回の一連の不祥事を受け,男性一色であった公益財団法人全日本柔道連盟

の役員組織は,27 名の理事のうち 4 名の女性理事,3 名の監事のうち女性 1 名を選出した 31.し

かし,男女共同参画基本計画の目標「2020 年 30%」には勿論届いていないし,会長・副会長とも

男性という質的問題も残っている.公益財団法人を名乗り,税制上の優遇処置を受けるなら,男

女共同参画という国の方針に則る姿勢が欲しいものである.

 社会のあらゆる分野における指導的地位をスポーツ界に照らし合せば,競技スポーツだけでな

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く,生涯スポーツ,教育,研究,メディア等の全分野において男女共同参画は遅れている 32.

 その中で,画期的変革を遂げた団体を紹介する.一般社団法人日本体育学会は,平成 25・26 年

度理事は 23 名中 7 名(副会長 1 名および理事 6 名)の女性理事と監事 3 名中 2 名の女性監事を選

出した.前理事会には女性役員が 1 名 5%(選出ではなく会長推薦)という状況からの飛躍であ

る.選挙過程の詳細は省略するが,女性役員を一定割合選出するポジティブアクションを採用し

たのである 33.男女共同参画社会基本法,第 1 次・第 2 次・第 3 次男女共同参画基本計画が基盤

にあり,飯田・井谷らが立ち上げた日本スポーツとジェンダー学会の活動や取組 34,および会員

の協同が強く作用したことは言うに及ばない.ちなみに,役員の 20%が当学会員で占められてい

る.選挙規程におけるポジティブアクションの採用は,次期選挙において再度検討されることに

なっている.女性理事の活用が,日本の体育・スポーツ界の活況を促すよう,当該理事を下支え

する体制が必須である.

 さらに,前項の女性アスリートの支援とも関わるが,女性指導者の比率を上昇させるには,女

性アスリートのセカンドキャリアを含めて指導者育成の具体的施策を各分野において構築するこ

とが急務である.健康・スポーツ科学分野における女性研究者育成に関する調査において,「女性

役員の数値目標」を決めることについては,推進派と反対派が拮抗しており,その理由に「能力

主義」という意見が男女双方に見られた 35.「能力主義」は「男女の適性の差」という性別特性論

に容易に結びつけられ,スポーツ界におけるジェンダー格差を自然であり自明なものと浸透させ

てしまう.スポーツにおける競技性に重点を置きすぎぬよう,スポーツ関係者の自戒と監視が求

められる.

  ⑤ 性的マイノリティを視野にいれた具体的施策が必要である.

 スポーツ基本計画には,そもそも性的マイノリティを視野にいれた施策がないため,次期基本

計画には彼ら / 彼女らのスポーツ権を保障する施策が必要である.

 何故なら,第 3 次男女共同参画基本計画第8分野,高齢者,障害者,外国人等が安心して暮ら

せる環境の整備の「4 女性であることで複合的に困難な状況に置かれている人々等への対応」の

基本的方向の中で「男女を問わず性的指向を理由として困難な状況に置かれている場合や性同一

性障害などを有する人々に対し,人権尊重の観点からの配慮が必要である」と記載され,具体的

施策においても「性的指向や性同一性障害を理由とする差別や偏見の解消を目指して,啓発活動

や相談,調査救済活動に取り組む」と掲げられている.

 飯田ら 36 による体育・スポーツ関連学部・学科等に所属する大学生・大学院生を対象とした大

規模調査(有効票 3243 部)では,身体的性別と性自認が不一致あるいは性自認に違和感を持つ者

1.7%,同性愛者 3.4%,両性愛者 2.9%の内訳にて,8%の者が性的マイノリティであることが明ら

かになった.また,身近に性的マイノリティがいると回答した者は全体で 32.6%,身体的性別で

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みると男性では 16.8%,女性では 51.3%であった.

 スポーツ界における性的マイノリティの処遇を巡っては,2004 年 IOC は,性自認と身体的性

別が不一致の者に対して,IOC が定める条件を満たした者の性別変更後の参加を認め,2011 年

IAAF(国際陸上競技連盟)は,性染色体等が曖昧な女性を競技から排除してきた性別確認検査

を廃止する等の規程変更を行ってきた.ただし,この点に関しては,女性競技者の参加資格の公

平性を担保するという理由で,性別確認検査に変わり高アンドロゲン女性の競技参加資格に関す

る規程を女性競技者に課すという問題が再燃している 37,38.他方,同性愛者に対しては 2003 年

ヨーロッパ評議会によって性的指向にもとづく差別に対する勧告「スポーツにおけるレスビアン

およびホモセクシャルに関する勧告 1635 号」が採択されている 39.

 「諸外国および国内におけるスポーツ振興施策等に関する調査研究」40 においては調査対象国の

中で同性愛者に対する保護関連施策の記述があるのはフランスだけであるが,藤山・飯田・

吉川 41 らは,スポーツ領域における性的マイノリティのためのガイドラインを,イギリスやオー

ストラリアは政府レベルで策定し,カナダ,フィンランド,アメリカは非政府・非営利組織では

あるが公益財団法人日本体育協会のような最大のスポーツ関連団体が策定していると報告してい

る.來田 42 の研究結果とも合せると,欧米諸国では性的マイノリティのスポーツ権を擁護する施

策が一般的になっていると考えられる.

 2014 年 2 月,ソチにて冬季オリンピックが開催される.ロシアでは「同性愛宣伝禁止法」が 6

月に成立し,その直後から「ソチ大会ボイコット」の物議が醸しだされた.8 月に行われた世界

陸上モスクワ大会では,女子棒高跳び優勝者でオリンピック金メダリストのイシンバエワが反同

性愛的な法を支持する発言をし,波紋がさらに大きくなった 43.この問題に対し,125IOC 総会

(2013 年 9 月)にて,ソチ冬季オリンピック組織委員会のチェルニシェンコ会長がロシア憲法は

同性愛に基づく差別を禁止しており,同法が五輪憲章に抵触するものではないと言及し,IOC ロ

ゲ会長も「ロシア憲法は同性愛を許可しており,大会参加者や観客に対してもその扱いは変わら

ないと同政府に口頭と文書で約束してもらっている」と発言している 44.

 以上のように,国際的には性的マイノリティのスポーツ権を保障する動きが加速化している.

男女共同参画基本計画に同調し,国際的流れを受けとめるためにも,次期スポーツ基本計画には

性的マイノリティを視野にいれた施策が必要である.

4 まとめと課題

  第 2 次スポーツ基本計画の策定において,スポーツ基本法の理念「スポーツを通じて幸福で

豊かな生活を営むことは,全ての人々の権利」を浸透させるため,現スポーツ基本計画をジェ

ンダーの視点から検討した.その結果,具体的施策に(1)特に女子に対しては活動的生活スタ

イルを幼児期から身につけさせる,(2)成人女性の運動・スポーツ実施頻度を向上させるには,

― 46 ―

人間科学部研究年報 平成 25 年

固定的役割分業を改める視点を導入し,ワークライフバランスの実現を推奨する,(3)女性指

導者登用の目標値「2020 年 30%」を設定する,(4)性暴力・セクシュアル・ハラスメントの防

止対策をもりこむ,(5)性的マイノリティのスポーツ権保障をもりこむべきことを確認した.

  上記の施策を次期基本計画にもりこむには,策定までの審議会や委員会およびヒヤリングの

動向を的確に把握してロビー活動を展開すること,そしてパブリックコメントの組織的提出も

重要である.各委員会の開催,添付資料,議事録は「文部科学省新着情報メール配信サービス」

にて即時知ることができる.本稿では,スポーツ基本計画策定までの経緯を分析することはで

きなかったが,各委員会等の議事録を通読し示唆されるのは,文部科学省官吏や委員の影響力

の大きさである.つまり,意思決定機関にジェンダー視点を有する委員を送り込むことの必要

性を改めて考えさせられたのである.

  さらに,スポーツ基本計画の具体的施策がどのように実施,展開されるのかも注視する必要

がある.何故なら文部科学省「地方スポーツ政策に関する調査研究」45 によると,地方公共団

体の取組は,スポーツ基本計画における今後の具体的施策展開において,「地方公共団体におい

ては,(以下略)」と示されている項目だけに限定されている.従って,「国は,(中略)女子の

運動部活動への参加機会の向上を図る 46」等は,地方公共団体の取組から抜けているのである.

現在,第 22 期日本学術会議 健康・生活科学委員会 健康・スポーツ科学分科会では,都道府県,

政令指定市,特別区の教育委員会に対し,「体力・運動能力の向上及び運動習慣の定着に関

するアンケート調査—女子に対する取組を中心に—」を実施している.結果がまとまれば,基

本計画の具体的施策が地方公共団体においてどのように展開されているかの一端を知ることが

できる.

  取り組むべきことは山積している.日本がモデルとする女性スポーツ政策に関する海外の事

例研究は,オーストラリア 47,フィンランド 48 に限られており,その研究も端緒についたばか

りである.

  ジェンダー視点によるスポーツ基本計画の見直しは,「ジェンダーの主流化とスポーツ」

(2006)において示されているように「あらゆるシステムや構造の中に,すなわち,諸々の政

策・企画・手続・プロジェクトの中に,また諸文化や諸組織の中に,理解をしたり活動したり

するやり方の中に,システマティックに溶け込ませること」49 を通して,継続して行っていか

ねばならない.

  スポーツ基本法の成立により,日本では明確にされていなかったスポーツ権がひとまず明文

化され,基本計画の策定までこぎつけることができた.2020 年,東京オリンピックの開催が決

定した現在,スポーツにおけるジェンダー平等と公平の推進が今こそ問われている.

日本のスポーツ政策とジェンダー

― 47 ―

注および文献

1 2012 年 12 月大阪市立桜ノ宮高校バスケットボール部主将の 2 年生男子が指導中に暴力を受けた後に自殺,

同じく 12 月ロンドンオリンピック出場選手を含む柔道女子全日本代表選手 15 名が指導中にパワーハラスメ

ントや暴力を受けたという告発文を JOC(日本オリンピック委員会)に提出,2013 年 2 月には教え子に対す

る準強姦罪で柔道男子アテネ・北京金メダリストに懲役 5 年の判決,5 月には全日本柔道連盟理事,東京都

柔道連盟会長がセクシュアル・ハラスメントを行っていたことが発覚,9 月には名門天理大学柔道部におい

て 4 年生男子部員が 1 年生に対し暴行を加えた事実が発覚する等,スポーツ指導において暴力を行使する事

件が次々に明るみになっている.これらの事態を受け,文部科学大臣をはじめ,一般社団法人日本体育学会

理事会,日本スポーツとジェンダー学会理事会等では暴力根絶に向けての声明文をだしている.

2 日本弁護士連合会(2010 年(平成 22 年)8 月 20 日)スポーツ基本法の立法に向けての意見書,

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2010/100820.html

(2013 年 9 月 27 日)これ以降のサイトでは,確認した日付を省略するが,すべて 2013 年 9 月 27 日にアクセ

スしている.

3 日本弁護士連合会(2012 年(平成 24 年)2 月 10 日)スポーツ基本計画の策定について(中間報告)に関

する意見募集への意見書,

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2012/120210_2.html

4 日本スポーツ法学会編(2011)詳解スポーツ基本法,成文堂.

5 來田は「欧州評議会におけるスポーツと性にかかわる差別に関する近年の審議」(中京大学体育学論叢,

50:2,1-19.2009)の中で,欧州におけるスポーツの権利の主張は,1964 年 10 月の国際体育・スポーツ評議

会総会にて採択された ”Declaration on Sport(スポーツ宣言)“ に始まり,それ以降 1975 年欧州スポーツ担

当閣僚会議 ”European Sport for All Charter(ヨーロッパ・スポーツ・フォア・オール憲章),1978 年第 20

回ユネスコ総会 “International Charter of Physical Education and Sport(体育・スポーツに関する国際憲章)

等で,スポーツをすべての人が享受すべき基本的人権であると位置づけるようになったと述べている.

6 齋藤健司(2011),第 5 節 スポーツに関する権利とスポーツ基本法の基本理念,スポーツ法学会編,詳

解スポーツ基本法,成文堂,pp.19-29.

7 文部科学省(平成 20 年度〜 22 年度)体力・運動能力,生活習慣等調査結果を分析し「子どもの体力向上

のための取組ハンドブック」を作成している.

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/07/18/1321174_05.pdf

8 財団法人日本中学校体育連盟資料(2011)

http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/rikkoku/detail/1293136.htm

9 ベネッセ教育研究所(2011)第 4 回幼児の生活アンケート報告書,Vol6,pp.45-76,p.140,p.144.

http://berd.benesse.jp/jisedaiken/research/pdf/research13_1.pdf

10 青野篤子(2008)園の隠れたカリキュラムと保育者の意識,福山大学人間文化学部紀要 8:19-34.

― 48 ―

人間科学部研究年報 平成 25 年

11 性別が基礎的なカテゴリーとして多用されていることについては,木村涼子(1999)学校文化とジェン

ダー,勁草書房,pp. 28-31,幼児・初等教育の平等主義と中立な性別カテゴリーの多用,を参照.

12 筆者は,女性が保育や育児の主な担い手であるべきだという論には反対であるが,現状では幼稚園,小学

校の教諭は女性が多く(学校基本調査平成 25 年度速報結果の概要 http://www.mext.go.jp/component/b_

menu/houdou/__icsFiles/afieldfile/2013/08/07/1338338_02.pdf), 幼児の遊び相手は母親が圧倒的に多い

(ベネッセ教育研究所,第 4 回幼児の生活アンケート報告書,前掲,p.141).

13 文部科学省(平成 19 年度〜 21 年度)「体力向上の基礎を培うための幼児期における実践活動の在り方に

関する調査研究」によると,幼児の運動の実施状況に保護者の運動習慣や保護者自らの体力に対する自信や

運動経験などが関係していると報告されている.

14 日本学術会議 健康・生活科学委員会 健康・スポーツ科学分科会(平成 23 年(2011 年)8 月 16 日)提言

子どもを元気にする運動・スポーツの適性実施のための基本指針,

15 文部科学省(平成 23 年度)体力・運動能力調査結果の概要

http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1326589.htm

16 健康日本 21 評価作業チーム(平成 23 年 10 月)健康日本 21 最終評価,

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001r5gc-att/2r9852000001r5np.pdf

17 江刺正吾(1992)女性スポーツの社会学,不味堂出版,pp.293-295.

18 独立行政法人国立女性教育会館(2012)男女共同参画統計データブック—日本の女性と男性,ぎょうせ

い,p. 37.

19 前掲書,pp.76-77.

20 前掲書,p.50.

21 前掲書,p.57.

22 日本スポーツ社会学会(2008)第 5 回 国際スポーツ社会学会世界会議 京都大会 報告,pp.3-5.http://

www.jsss.jp/down/2010/issa_2008.pdf

23 吉川康夫・熊安貴美江・飯田貴子他(2005)スポーツにおいて女子学生が経験するセクシュアル・ハラス

メントの現状とその特殊性,平成 14 〜 16 年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(C)14694013)

研究成果報告書,研究代表者吉川康夫,pp.33-44.

24 日本スポーツとジェンダー学会編(2010)スポーツ・ジェンダー データブック 2010,pp.67-69.

25 International Olympic Committee.Consensus Statement,SEXUAL HARASSMENT AND ABUSE IN

SPORT,2007.2.8.

http://www.olympic.org/Documents/Reports/EN/en_report_1125.pdf

概要は,熊安貴美江(2008)IOC 声明文「スポーツにおけるセクシュアル・ハラスメントと性的虐待」報告,

スポーツとジェンダー研究 VOL.6:85-89.

26 文部科学省(平成 22 年度)諸外国および国内におけるスポーツ振興施策等に関する調査研究,http://

日本のスポーツ政策とジェンダー

― 49 ―

www.mext.go.jp/a_menu/sports/chousa/detail/1309352.htm

27 文部科学省「諸外国および国内におけるスポーツ振興施策等に関する調査研究」では,IOC 声明文を「ス

ポーツにおけるセクシャルハラスメントおよび濫用についてのコンセンサスに関する宣言」と訳しているが,

本稿では IOC 声明文作成のプロジェクトメンバーとして参加している熊安訳を用いた.

28 熊安貴美江(2004)スポーツにおけるセクシュアル・ハラスメント,飯田貴子・井谷惠子編著,スポー

ツ・ジェンダー学への招待,明石書店,pp. 151-159.

29 アテネ大会と北京大会の数値は,日本スポーツとジェンダー学会編,スポーツ・ジェンダーデーターブッ

ク 2010,p.15,p.34 より引用し,ロンドン大会の数値は日本オリンピック委員会のサイトより引用する.

http://www.joc.or.jp/games/olympic/london/japan/

30 日本オリンピック委員会,第 30 回オリンピック競技大会(2012 ロンドン),日本代表選手団,柔道

http://www.joc.or.jp/games/olympic/london/sports/judo/team/

31 公益財団法人全日本柔道連盟役員名簿 http://www.judo.or.jp/about-zjr/yakuinmeibo.php

32 日本スポーツとジェンダー学会編.スポーツ・ジェンダーデーターブック 2010.

33 田原淳子(2013)現実を動かす研究と社会へのアプローチ,スポーツとジェンダー研究 VOL.11:2-3,お

よび一般社団法人日本体育学会代議員選挙規程を参照.http://taiiku-gakkai.or.jp/shoukai/pdf/2012_2_kitei.

pdf

34 日本スポーツとジェンダー学会のサイトにて,これまでの学会活動を見ることができる.代表的なもの

に,2006 年第 4 回大会ワークショップでは「スポーツ組織における意思決定とアファーマティブ・アクショ

ン」,2011 年第 10 回記念大会基調講演「IOC の立場からみた女性とスポーツに関する国際情勢と施策」およ

びラウンドテーブル「組織におけるジェンダー平等−ポジティブアクション再考−」がある.http://www.

jssgs.org/

35 日本学術会議 健康・生活科学委員会 健康・スポーツ科学分科会(平成 23 年(2011 年)9 月 22 日)記録

 健康・スポーツ科学関連分野の学術研究団体における男女共同参画に関する調査結果(第 2 報)

36 本調査は,平成 22 年度〜平成 24 年度 科学研究費補助金基盤(C)「性的マイノリティのスポーツ権保

障のためのガイドライン策定に関する総合的検討」(研究代表者 飯田貴子)にて行った.その一部は,藤

山新・飯田貴子・吉川康夫ら,スポーツ価値観と性的マイノリティに対する意識の男女差,日本スポーツと

ジェンダー学会第 12 回大会(2013.7.14)にて発表,抄録はプログラムに掲載されている.

37 來田享子(2012)指標あるいは境界としての性別−なぜスポーツは性を分けて競技するのか,來田享子 ,

他編著,身体・性・生−個人の尊重とジェンダー,尚学社,pp.41-71.

38 飯田貴子(2013)身体能力の性差再考−スポーツ・パフォーマンスを中心に−,「第 16 期 女性学講演会

 女性学・ジェンダー研究の現在」大阪府立大学女性学研究センター,6 巻:1-20.

39 スポーツにおける性に関わる差別については,次の文献が詳しい.来田享子(2009)欧州評議会における

スポーツと性にかかわる差別に対する近年の審議,中京大学体育学論叢,50-2:1-19.来田は同勧告を和訳

― 50 ―

人間科学部研究年報 平成 25 年

せず,原文 “Lesbians and Gays in Sport” のまま記載している.

40 文献 26

41 藤山新・飯田貴子・吉川康夫他(2010)スポーツ領域のおける性的マイノリティのためのガ

イドラインに関する考察−海外ガイドラインの比較を通した日本への示唆−,スポーツとジェン

ダー研究 VOL.8:63-70.

42 文献 39

43 朝日新聞デジタル版(2013.8.17)陸上・イシンバエワが法の順守を訴え ロシアの同性愛宣伝規制法,

http://digital.asahi.com/articles/TKY201308160611.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308160611

44 AFP BBNEWS(2013.9.9)反同性愛法はソチ五輪に影響を及ぼさない,会長が宣言, http://www.

afpbb.com/article/sports/sports-others/sports-others-others/2966960/11316236

上記の発言は,“Reports by the Organising Committees for the Olympic Games” において確認することが

できる.

http://translate.googleusercontent.com/translate_c?depth=1&hl=ja&prev=/search% 3Fq% 3Dinternational

% 2Bolympic % 2Bcommittee % 26biw % 3D1085 % 26bih % 3D594&rurl=translate.google.co.

jp&sl=en&u=http://www.olympic.org/2020-host-city-election&usg=ALkJrhgeqfP6ePVIAYGhPhC9l5i7TLL

cMg

45 文部科学省(平成 24 年度)地方スポーツ政策に関する調査研究 http://www.mext.go.jp/component/a_

menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/04/11/1333133_1.pdf

46 この施策は,スポーツ基本計画(2)学校の体育に関する活動の充実の具体的施策 6 番目,10 頁− 11 頁

に記載されている.

47 田原淳子・池田延行(2011)女子の運動・スポーツ活動を推進するための施策に関する研究−オーストラ

リアの場合−,国士舘大学 体育研究所報,第 30 巻:131-133.

48 吉川康夫・飯田貴子(2008)フィンランドの女性スポーツ政策−フィンランドスポーツ連盟の活動を中心

に−,スポーツとジェンダー研究 VOL.6:63-71.

49 Kari Fasting(2005)ジェンダーの主流化とスポーツ,スポーツとジェンダー研究 VOL.3:92-93.