書誌コントロールとは - National Diet...
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第16回総合目録ネットワーク参加館フォーラ
ム平成21年3月19日
根本彰(東京大学)
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書誌コントロールの地域性と地域資料サービスの課題
根本 彰(東京大学)
書誌コントロールとは
Bibliographic controlの訳語
「資料を識別同定し、記録して、利用可能な状態を作り出すための手法の総称。」(「図書館情報学用語辞典」)
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言葉の略史
日本の初出は報告書「日本における全国的書誌調整の改良とその国際的書誌調整との関連」(国立国会図書館文献書目日本ユネスコ班 1950)
1973年のIFLAのUniversal Bibliographic ControlをきっかけにNDL内部で書誌コントロールの訳語を使い始める
『図書館情報学ハンドブック』 (1988)書誌調整
『図書館情報学用語集』(1997)『図書館情報学ハンドブック』第2版(1999)は書誌コントロール
2000年~ 書誌調整連絡会義(NDL)
講演の概要
1 書誌コントロールについて
2 書誌コントロールの枠組みの変容
3 国立図書館における書誌コントロールの課題
4 県域書誌と県域総合目録
5 地域資料全国調査より
6 まとめ
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1 書誌コントロールについて
(1) 米国における概念の誕生
(2) 国立国会図書館の誕生と書誌コント
ロールの位置づけ
(3) 戦後の書誌コントロール体制
(4) 書誌的知識とは何か
(1) 米国における概念の誕生
1946年11月ALAプリンストン会議「文化、教育、科学の国際交流に関する会議」
LC館長Luther Evansが主導、プリンストン会議を受けて、LCが実施すべき書誌的なサービスについて、bibliographic controlと呼んだ
ユネスコ/LC書誌調査(1948-1950)国際書誌サービス改良会議(1950)アメリカの戦後国際戦略→国ごとに全国書誌を整備し、それを交換することで、個々の国の知的資源の総体を把握することができる
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(2) 国立国会図書館の誕生と書誌コント
ロールの位置づけ
NDL創設時におけるClapp/Brown図書館使節の役割
NDL法(1948)における、「国内出版物の目録又は索引」(7条)、「納本制度」(24,25条)、「印刷カード」「総合目録」(21条)
開館後のサービス体制のDowns報告
整理技術の基準を示す
「雑誌記事索引」
(3) 戦後の書誌コントロール体制
整理のための3大ツールは、JLAで管理
NDLは分類および件名については独自のものを作成
個別目録作成+印刷カード配布からMARC+書誌ユーティリティ体制への移行
民間MARCの確立(商業出版と取次)
書誌ユーティリティとしてのNACSIS=NII書誌ユーティリティとしての出版取次ぎ/TRC
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(4) 書誌的知識とは何か
図書館専門職の基本的知識
書誌的なネットワーク+主題の知識
整理技術が一部のセンターと大規模館、専門図書館にゆだねられ、図書館員の専門性低下と連動している
書誌システムのブラックボックス化によって得られるものと失われるもの
2 書誌コントロールの枠組みの変容
(1)情報環境の変化
(2)コントロールの対象と主体
(3) コントロールの方法の変化
(4) 書誌情報の利用者
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(1) 情報環境の変化
書誌ユーティリティ体制=センター中心方式
↓インターネット時代の書誌コントロール• 書誌ユーティリティ+分散処理によるネットワーク
方式
• 総合目録
• 横断検索
(2) コントロールの対象と主体
これまでの対象• 図書
• 雑誌、構成単位
• 視聴覚資料
変化• Localなもの
• ネットワーク上の情報資源
• マルチメディア
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(2) コントロールの対象と主体(続)
これまでの主体(中間的)• 国立図書館
• MARC作成機関
• 書誌ユーティリティ
変化(発信者が参画)• 情報発信者
• コンテンツ作成者
自動コントロール?• サーチエンジン
• メタデータ対応の書誌検索エンジン
(3) コントロールの方法の変化
標準的書誌記述と標目指示
統制語による主題検索
↓
記述要素の拡大
記述要素の構造化(FRBR)記述要素の全文検索
自然語による主題検索?
核としての基本的書誌情報はセンターが発信すべきではないのか
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(4)書誌情報の利用者
出版関係者
出版流通関係者
著作権管理機構
図書館
一般市民
自宅・職場からのインターネット利用
検索インターフェースの向上
3 国立図書館における書誌コントロールの課題
(1) 「国立国会図書館法」の納本規定
(2) 納本制度と全国書誌
(3) 全国書誌の網羅性
(4) マルチメディア資料と書誌コントロール
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(1) 「国立国会図書館法」の納本規定
「館長は、一年を超えない期間ごとに、前期間中に日本国内で刊行された出版物の目録又は索引を作成し、国民が利用しやすい方法により提供するものとする。」(7条)「各号に該当する出版
物(機密扱のもの及び書式、ひな形その他簡易なものを除く)を納入しなければならない」(24条、24条の2、25条共通)
–1 図書–2 小冊子–3 逐次刊行物–4 楽譜–5 地図–6 映画フィルム–7 前各号に掲げるもの
のほか、印刷その他の方法により複製した文書又は図画
–8 蓄音機用レコード–9 電子的方法、磁気的
方法その他の人の知覚によつては認識することができない方法により文字、映像、音又はプログラムを記録した物
(2)納本制度と全国書誌
すべての種類の出版物の全国書誌はつくられていなかった• 図書、小冊子、逐次刊行物
• 点字録音図書総合目録
全国書誌サービスの新方針(平成14年4月実施)• 収録対象資料 地図資料(一枚もの )、楽譜(一枚もの)、
録音資料(音楽録音資料を除く)、音楽録音資料、映像資料、静止画資料、電子資料(映像資料、録音資料、音楽録音資料でもあるものは除く)、点字資料、マイクロ資料
• 納本制度との整合性
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(3) 全国書誌の網羅性
依然として未解決(納本制度の問題)• 官庁出版物
• 地方出版物
• その他gray literature(学術出版物、楽譜、コミックス等々)
• 電子出版物はさらに範囲が不明確
「出版」とは何か
national collectionの概念の明確化
(4) マルチメディア資料と書誌コントロール
他機関との分担は:保存と全国書誌機能• 映画フィルム(附則により納入免除)
• 東京国立近代美術館フィルムセンター 「フィルムセンター所蔵映画目録 日本劇映画」4,325本(3,153作品)
• 放送番組(規定なし)
• (財)放送番組センター放送ライブラリー
• NHKライブラリー
• 新聞(逐次刊行物)
• 日本新聞教育文化財団新聞博物館内新聞ライブラリー
分担を明確にすべきではないか
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4 県域書誌と県域総合目録
全国レベルの書誌コントロール• NDL法の想定する守備範囲の確認
• 全国レベルの出版物=ナショナルカルチャー
地方レベルの書誌コントロール• 地域レベルの出版物=地域文化
「総合目録」の作成• 「日本の図書館資料資源に関する総合目録並びに全国
の図書館資料資源の連係ある使用を実現するために必要な他の目録及び一覧表の作成のために、あらゆる方策を講ずる。」(21条1項4号)
県域書誌とは
(1)青森県内出版物総目録
青森県内出版物総目録 ; 昭和29年版-昭和59年版/青森県立図書館 青森県立図書館 1955-1985青森県内出版物総目録・新聞連載記事所蔵目録 ; 昭和60年版-平成12年版/青森県立図書館 青森県立図書館 1986-20001950年代前半の国立国会図書館における書誌調査による調査依頼による年に1回、全県の出版社、新聞社、大学、学校、公民館・博物館等の機関に対する出版物調査に基づく「目録」ではなく「書誌」同様の書誌が、岩手、秋田、山形、宮城、群馬で作成を確認「OPACあるいは横断検索総合目録で代替」は本当か?
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(2)群馬県関係資料情報
1. 群馬県関係資料情報 / 群馬県立図書館資料課. -- 群馬県立図書館, [19--]-1995 所蔵 41号(1982.9) - no.101(1995年2・3月)
2. 群馬県関係資料出版情報・群馬の本 / 館内サービス係. -- 群馬県立図書館, 1995- 所蔵No. 102 (1995年4月)-
3. No.136以降はHP上で公開
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(3)県域総合目録
ネット上のOPACに対して横断検索をかけ
る総合目録技術の開発による(長野県、鹿児島県)
三重県、京都府は横断検索ではなく所蔵情報集中方式
全国の公立図書館の蔵書が検索可能になり、擬似的な全国書誌がつくられつつある
5 地域資料全国調査より
図書館調査研究リポート No.9 「地域資料に関する調査研究 」国立国会図書館 2008 http://current.ndl.go.jp/report/no9アンケート調査(対象)
• 図書館:抽出により3000館のなかで637館
• 博物館:都道府県・政令市博物館(総合、歴史)86館
• 公文書館 全数
• 行政情報センター都道府県 60館
訪問調査(図書館を中心に博物館、公文書館)
• 秋田県
• 沖縄県
• 滋賀県
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質問紙調査
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データ入力している資料の種類
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図書館の地域情報発信
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6 まとめ
図書館の書誌コントロール機能はあらゆる図書館サービスの基盤にあたる地域図書館はそれぞれの地域の書誌コントロールセンターとなるこれを都道府県レベルあるいは全国レベルで集約する総合目録はその意味で重要であるだが、本来の書誌コントロールは単なる書誌的識別あるいは所在の確認だけではない多様な役割を担っている。これを実現するためには専任地域資料担当者の配置が必要になるだろう