Sapporo - FoE Japan除本理史( 大阪市立大学 大学院経営学研究科 教授)、James...

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2020 年 8 月 28 日 株式会社エイチ・アイ・エス 代表取締役会長兼社長 澤田秀雄様 H.I.S. SUPER 電力株式会社 代表取締役 赤尾昇平 角田パーム油発電所に関する要請および質問書 毎年繰り返される大型台風や豪雨に見られるとおり、気候変動の影響は非常に深刻な影 響を私たちの暮らしにもたらしています。 御社が宮城県角田市で建設されているパーム油を燃料とする発電所につきまして、重ね て中止をお願いいたします。 パーム油の需要拡大による、熱帯林の減少や泥炭地開発、ライフサイクルにわたる温室 効果ガスの排出による気候変動といった環境問題、人権・労働・土地紛争といった社会問 題についてはすでにお伝えした通りです。 私たちは、2019 年 2 月に澤田社長および赤尾社長にお会いし、パーム油を大量に燃焼す ることの問題点、環境・社会影響の大きさについて情報提供をさせていただきました。御 社が、その後、角田市の発電所を着工されたことは大変残念です。 今からでも遅くありません。このまま稼働に至れば、御社は今後何十年にもわたり、パ ーム油を燃やし続けることにより熱帯林の破壊に加担する可能性があり、大量の温室効果 ガスを発生させ、生態系と気候を破壊しているという批判を被ることになるでしょう。ぜ ひ本事業から撤退していただけますようにお願いいたします。 また、資源エネルギー庁の FIT 事業計画策定ガイドラインに基づきまして、以下につい てご教示いただけますでしょうか。恐縮ですが、9 月 8 日までにご回答いただけますと幸 いです。質問の趣旨・背景については、別紙をご覧ください。 1) 御社が燃料として利用するパーム油はどこ(国、地域、農園)から輸入されるもので しょうか。 2) 御社が燃料として利用するパーム油は RSPO 認証(IP,SG)でしょうか。 3) 御社が燃料として利用するパーム油が食料と競合しないことを、どのように証明され る予定でしょうか。 4) HIS 角田バイオマスパークのパーム油発電所事業における、ライフサイクル(土地利 用転換、栽培、加工、輸送、燃焼)におよぶ GHG 排出量について、その計算根拠と ともに開示してください。 以上 国際環境 NGO FoE Japan、気候ネットワーク、国際環境 NGO グリーンピース、地球・ 人間環境フォーラム、プランテーション・ウォッチ、熱帯林行動ネットワーク、Mighty Earth、Fridays for Future Sendai、Fridays for Future Furano、Fridays for Future

Transcript of Sapporo - FoE Japan除本理史( 大阪市立大学 大学院経営学研究科 教授)、James...

  • 2020 年 8 月 28 日

    株式会社エイチ・アイ・エス

    代表取締役会長兼社長 澤田秀雄様

    H.I.S. SUPER 電力株式会社

    代表取締役 赤尾昇平 様

    角田パーム油発電所に関する要請および質問書

    毎年繰り返される大型台風や豪雨に見られるとおり、気候変動の影響は非常に深刻な影

    響を私たちの暮らしにもたらしています。

    御社が宮城県角田市で建設されているパーム油を燃料とする発電所につきまして、重ね

    て中止をお願いいたします。

    パーム油の需要拡大による、熱帯林の減少や泥炭地開発、ライフサイクルにわたる温室

    効果ガスの排出による気候変動といった環境問題、人権・労働・土地紛争といった社会問

    題についてはすでにお伝えした通りです。

    私たちは、2019 年 2 月に澤田社長および赤尾社長にお会いし、パーム油を大量に燃焼す

    ることの問題点、環境・社会影響の大きさについて情報提供をさせていただきました。御

    社が、その後、角田市の発電所を着工されたことは大変残念です。

    今からでも遅くありません。このまま稼働に至れば、御社は今後何十年にもわたり、パ

    ーム油を燃やし続けることにより熱帯林の破壊に加担する可能性があり、大量の温室効果

    ガスを発生させ、生態系と気候を破壊しているという批判を被ることになるでしょう。ぜ

    ひ本事業から撤退していただけますようにお願いいたします。

    また、資源エネルギー庁の FIT 事業計画策定ガイドラインに基づきまして、以下につい

    てご教示いただけますでしょうか。恐縮ですが、9 月 8 日までにご回答いただけますと幸

    いです。質問の趣旨・背景については、別紙をご覧ください。

    1) 御社が燃料として利用するパーム油はどこ(国、地域、農園)から輸入されるもので

    しょうか。

    2) 御社が燃料として利用するパーム油は RSPO 認証(IP,SG)でしょうか。

    3) 御社が燃料として利用するパーム油が食料と競合しないことを、どのように証明され

    る予定でしょうか。

    4) HIS 角田バイオマスパークのパーム油発電所事業における、ライフサイクル(土地利

    用転換、栽培、加工、輸送、燃焼)におよぶ GHG 排出量について、その計算根拠と

    ともに開示してください。

    以上

    国際環境 NGO FoE Japan、気候ネットワーク、国際環境 NGO グリーンピース、地球・

    人間環境フォーラム、プランテーション・ウォッチ、熱帯林行動ネットワーク、Mighty

    Earth、Fridays for Future Sendai、Fridays for Future Furano、Fridays for Future

  • Sapporo、Fridays for Future Iwate、Fridays for Future Miyazaki、Fridays for Future

    Saitama、Biofuelwatch (イギリス/アメリカ)、Friends of the Siberian Forests(ロシア)、

    Stand.earth(アメリカ)、Forum Ökologie & Papier(ドイツ)、Friends of the Earth US

    (アメリカ)、Rainforest Rescue(ドイツ)、Centar za zivotnu sredinu/ Friends of the

    Earth Bosnia and Herzegovina(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、pivot point(アメリカ)、

    Bob Brown Foundation(オーストラリア)、Centre for Environmental Justice(スリラン

    カ)、TABIO(タンザニア)、Global Forest Coalition(世界)、Fern(ベルギー)、

    reacción climática(ボリビア)、Justica Ambiental - JA!(モザンビーク)、Protect the

    Forest Sweden(スウェーデン)、Indigenous Knowledge and Peoples Network Society for

    Wetland Biodiversity Conservation Nepal in Federation of Kirat Indigenous Association(ネ

    パール)、BUND (Friends of the Earth Germany) - Bund fuer Umwelt und Naturschutz

    Deutschland e.V.(ドイツ)、Friends of the Earth International(世界)(32 団体)

    明日香壽川(東北大学東北アジア研究センター教授(気候変動政策)、泊みゆき(バイオ

    マス産業社会ネットワーク理事長)、寺西俊一(一橋大学大学院経済学研究科)、細川弘

    明(京都精華大学人文学部教授)、松原弘直(認定 NPO 法人環境エネルギー政策研究所

    理事・主席研究員)、満田夏花(国際環境 NGO FoE Japan 事務局長)、水口剛(高崎経

    済大学教授(責任投資・非財務情報開示), 日本サステナブル投資フォーラム共同代

    表)、水戸部秀利(医師, NPO きらきら発電・市民共同発電所理事長)、山下英俊 (一橋

    大学 大学院経済学研究科 准教授)、長谷川公一(東北大学大学院教授(環境社会学)、

    除本理史( 大阪市立大学 大学院経営学研究科 教授)、James Hewitt、Roland Wirth、

    Faris Ahmed(International consultant in sustainable development)、Dr. Andy Heßberg、

    Mihoko Uramoto、Yvonne Bohr、Vanessa Cabanelas(個人:18 人)

    連絡先:国際環境 NGO FoE Japan

    〒173-0037 東京都板橋区小茂根 1-21-9

    TEL: 03-6909-5983 / FAX: 03-6909-5986

  • <別紙>

    パーム油発電の持続可能性に関する背景情報

    2019 年 4 月、経済産業省はバイオマス持続可能性ワーキンググループ(以下 WG)を設

    置し、パーム油発電の持続可能性について検討を行いました。その結果を踏まえ、2020 年

    4 月に FIT 事業計画策定ガイドライン(バイオマス発電)が改訂されたました。

    ガイドラインでは、以下の観点が示されました。

    ・ パーム油発電については、RSPO 認証(IP,SG)および RSB 認証のみが認められ、マレ

    ーシアの MSPO、インドネシアの ISPO などその他の認証は、現時点では RSPO と同

    等とは認められず、FIT で活用可能な認証とはならなかった。

    ・ 燃料調達プロセスにおいて、トレーサビリティの確保とともに当該バイオマスが食用に

    供されないことの証明ができるよう考慮することを求めている。

    ・ 農産物由来のバイオマス燃料については、パーム油、副産物は PKS 及びパームトラン

    ク以外については、ライフサイクルでの温室効果ガス(GHG)排出量について検討を

    行い、GHG 排出量を含めた持続可能性基準を満たしたもののみを FIT の対象とした。

    同時にパーム油など「既に買取の対象となっている燃料についても、ライフサイクル

    GHG 排出量について専門的・技術的検討を行うとされている点に留意が必要」とし

    た。今後、パーム油についても、GHG 排出量が基準に含まれる可能性があることが示

    唆されたと言える。

    今年度の WG において、パーム油も含めライフサイクルでの GHG 排出量について検討

    されることになっています。

    RSPO 認証には、GHG 排出量の数的な基準は含まれていません。

    パーム油の生産段階で、森林や泥炭地の開発を伴う場合、樹木や地表部分の枝・葉、土

    壌中に蓄えられていた膨大な炭素を二酸化炭素として排出されることになります。

    RSPO(2013)では、2005 年 11 月以降の「保護価値の高い生態系」の開発を禁じてい

    るだけであり、それ以前の泥炭地等の開発は許容しています。また、二次林の開発を許容

    しています。

    また、RSPO 認証油には量に限りがあり、とりわけ、RSPO 認証された IP/SG 油に関し

    ては、発電に可能な量を調達することは難しいことは、企業・業界関係者からも指摘があ

    ります。既存のパーム油は食品などに多く使われており、近年、多くの企業が SDGs の観

    点から RSPO 認証油を求めるようになってきていますが、パーム油を大量に燃焼する発電

    所により、食品など従来用途にまわらなくなるのではないかということも懸念されます。