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活発化する中国のベンチャー活動は持続可能か

2018年11月26日富士通総研経済研究所主席研究員金堅敏（ジンジャンミン）

特別企画コンファレンス【研究報告】

Copyright 2018FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 1

問題意識

問題意識１) ＩｏＴ時代：イノベーション主体の多様化

・大企業・エリートから「大衆化」或は「ベンチャー化」まで広がり

・中国では、近年ベンチャー活動の活発化 ⇒ 経済の活性化

2）米シリコンバレーのようなベンチャー成長のエコシステム形成や仕組みの形成

・起業率を高めることも重要だが、

新たなベンチャーが生まれる循環メカニズムが形成されたのか？

3) 日本ベンチャーの歴史は中国より長く、洗練されたベンチャーも存在する

・大きくならないのは、なぜか？

・他方、大企業との連携も成功例が少ないのはなぜか？


研究内容、発表概要

研究内容シリコンバレーをベンチマークに中国ベンチャー活動・特徴・仕組み・政策の調査研究

中国のベンチャー活動はブームで終わるか？それとも持続か？

その循環メカニズムの解明、日本への示唆

発表概要イノベーションシステムの改革で目指すシリコンバレーモデル消費サイドのデジタル化とベンチャー活動の活発化デジタルイノベーションにおける循環メカニズムの検証持続性に残される制約や課題

出所：WIPO Copyright 2018FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 3

9703

1455

7511

22601768 1469

9115

6059 5359

2019 1841 1716

S.ko

rea

Chin

a

Japa

n

Germ

any

Switz

erla

nd US

GDP千億㌦当たりの自国民特許申請数

（件）

2006 2016

25902715

957743 885

93

3189

2049

1043914

890 874

S.ko

rea

Japa

n

Switz

erla

nd US

Germ

any

Chin

a

100万人口当たりの自国民特許申請数

（件）

2006 2016

14.3723

30.2136

16.0643

1.0792

8.24

0.11155.624 4.8882 4.8208

1.8982 1.5764 0.1603

米国中国日本ドイツ韓国インド

国際特許申請と国内の発明特許付与

（万件）

国内付与(国内住民,2016)

ＰＣＴ出願(2017)

「コピー天国」から「ＩＰＲ大国」へ変貌しつつあるが


0

10

20

30

40

50

60

70

80

企業大学研究所個人

％現在有効の発明特許の実施状況

2015 2016

出所：WIPO、中国国家知的財産権局

技術開発と産業化／商業化に大きなギャップ

世界特許申請トップ100社中・日本40社（大学０）ｖｓ中国25社（大学14）（米国、ドイツ、韓国も大学は入っていない）

ロボット特許シェア・日本 56%(2000) ⇒ 21%(2011) ｖｓ中国 1%(2000) ⇒25%(2011) ・世界トップ10企業に日本8社、中国0、世界トップ申請者大学に日本１ｖｓ中国６

消費サイドのデジタル化で「イノベーションの民衆化」へ

出所：著者作成 Copyright 2018FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 5

政府主導による開発体制（国有企業、大学）例：インフラ、基礎材料など

企業(大企業＆大学)によるイノベーション・システム

既存産業・量産製品・サービス

草の根(大衆)によるイノベーション

ベンチャー活動等

Spillover effect

Start-up ⇒ Growth up

フェーズⅠ

フェーズⅡ

フェーズⅢ Open Innovation


シリコンバレーモデルの特徴その１：ベンチャー活性化のエコシステム

VB1 VB3

VB9

VBn

VB15

リスクマネー Financial ｓystem : VC

ヒューマンリソース Labor Market: divers,

highly skilled

産官学連携 Industry-University-

Government ties

オープンイノベーション “open” innovation with large firms

and small firm symbiosis

起業家奨励・尊重 Social system encouraging

entrepreneurship

プロフェッショナルサービス

Professional services ecosystem

出所：Stanford (2017) ”Science and Technology Trends"


シリコンバレーの「４I」モデル

出所：筆者ヒアリングで纏め

Idea

IP

IB

IPO （Integration)

技術イノベーション

Start-up

Scale-up

創新

創業

創富

技術革新と市場化が一気貫通

シリコンバレーモデルの特徴その2：創新・創業活動の一貫性

消費サイドのデジタル化とベンチャー活動の活発化


Copyright 2018FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

進む消費サイドのデジタル化

https://newzoo.com/insights/rankings/top-50-countries-by-smartphone-penetration-and-users/

2018年9月現在主要国のスマホユーザーと普及率Ｔｏｐ１０

出所：国家工商総局、税務総局、科学技術部など

「大衆創業、万衆創新」でベンチャーブームへ

2014年3月企業工商登録制度改革に伴い、創業ブームが到来している 2013年月平均新規企業登記数 20.86万社 ⇒ 開業率18.3%

(年間新規設立企業/前年末の企業数）


2014年 30.40万社 ⇒ 23.9%

2015年 36.16万社 ⇒ 23.9%

2017年 50.60万社 ⇒ 23.4%

新規設立された小規模企業の「定義」によって政策支援の度合いが異なる

・新規「中小企業」：中小企業政策

⇒ 「スタートアップ科技型企業」（条件ある）：スタートアップ創新企業政策

⇒ 「科技型中小企業」（認定必要）：技術の高いスタートアップ企業

数十万社(李克強首相演説から）

来源:清科集団、KPMG”Venture Pulse Q4 2017”、Forbes

83

40

19

3.5(e)0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

主要国家/地域のVC投資総額の推移

U.S.

China

Europe

India

单位:10亿美元

政府誘導基金の設立状況

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

基金規模

(億元)

0

50

100

150

200

250

300

350

基金数(個）

ファンド規模ファンド数


0

100

200

300

400

500

600

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

The Country’s Billionaires

U.S.

China

Germany

Japan

60才以下の比率

＊U.S. 83.4%

＊Ｃｈｉｎａ 71.8％

＊Germany 38.6%

＊Ｊａｐａｎ 15.0%

ベンチャーになだれ込む創業投資資金：シード・エンジェル、VC、PE

実感できるＡＩ製品を目指す「大拿科技」

出所：筆者ヒアリング、作成 Copyright 2018FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 12

イメージ識別技術とディープラーニング技術の活用

花、植物認識ＡＰＰ

皮膚病ＡＩ補助診断ＡＰＰ

算数宿題補助診断 APP

創業者：1980年代生まれ、二次創業者・CEO 中国「千人計画」招へい者 (米留学経験）・CTO 浙江大学計算機学部卒 APP実績：・花認識APP（2015.08リリース）・皮膚病診断APP ・宿題診断APP（2017.09リリース）

日本語版デビュー


クラウドサーバー

脳波計測催眠曲

アルゴリズムソリューション

共同創業者・ＣＥＯ像・1992年生まれ・2014年7月浙江大学生物医学学科卒

・2013年4名の同級生で技術開発

・2014年8月、エンジェル融資200万元投資者：同浙江大学ＯＢ・2016年初、Pre-Aシリーズ融資700万元投資者：北京中関村創業投資基金・製品化：①意識制御 ②睡眠障害軽減 ③子供集中トレーニングＢ２Ｂ分野へ作業員意識計測など制御健康教育

出所：筆者ヒアリング、作成

「脳波テクノロジーで生活を豊かに」：Enter社


米国, 86中国, 21

インド, 7

英国, 5

ドイツ, 4

韓国, 2その他, 14

関係国のユニコーン数（2015.09.20現在）

米国 , 135中国, 84

英国 , 14

インド, 14

ドイツ , 7

イスラエル, 4

インドネシア,

3 韓国, 3 その他, 21

関係国のユニコーン数(2018年10月31日現在)

一部のベンチャーが競争に勝って、ユニコーンへ

出所：CB Insights, 各種資料により筆者纏め

中国のAIユニコーン・Cambricon 寒武纪科技（AIチップ） Alibaba ・Face++ 旷视科技（顔認識） Alibaba ・Sense Time 商汤科技（コンピュータービジョン） Alibaba ・Yitu Technology 依图科技（コンピュータービジョン） Sequoia Capital ・Momenta （自動運転） Tecent ・Pony.ai 小馬智行（自動運転） Sequoia Capital ・iCarbonX 碳雲智能（ヘルスケア） Tencent


ユニコーンになるのは、目的ではない！さらなる成長を目指す

◎かつてのユニコーン中国：アリババ、JD.COM 米国：FaceBook,Tesla

開発Team a

開発Team b

開発Team ｃユニコーン（メガベンチャー）からジャイアントベンチャーに進んだのは、米ＧＡＦＡと中国ＢＡＴぐらい！ Start-up・ベンチャー

メガ・ベンチャー

ジャイアント・ベンチャー

デジタルイノベーションにおける循環メカニズムの検証



外部からの資金調達件数、金額、伸び率等で評価されるスタートアップ・ハブ

ジャイアントベンチャーに惹かれるイノベーションエコシステムの集積

出所: ＮＹＵ(2018) “ＧｌｏｂａｌＳｔａｒｔｕｐＣｉｔｙ”

・San Francisco Bay Area(USA) ・London (UK) ・Beijing(China) ・Los Angeles(USA) ・Boston(USA) ・New York(USA)

Tier 1 (6都市)

Tier 2 (13都市)

Tier 3 (20都市)

Tier 4 (23都市)

・Austin(USA) ・San Diego(USA) ・Chicago(USA) ・ Shanghai(China) ・Paris(France) ・Berlin(Germany) ・Delhi(India) ・Singapore(Singapore) ・Bangalore(India) ・Seattle(USA) ・Mumbai(India) ・Stockholm(Sweden) ・Tel Aviv(Israel)

・Amsterdam(Netherlands) ・Atlanta(USA) ・Barcelona(Spain) ・Dallas (USA) ・Denver(USA) ・Dublin(Ireland) ・Hangzhou(China) ・Helsinki(Finland) ・Hong Kong (Hong Kong) ・Houston(USA) ・Jakarta(Indonesia) ・Miami(USA) ・Philadelphia (USA) ・Raleigh-Durham(USA) ・Seoul(Korea) ・Shenzhen(China) ・Sydney(Australia) ・Tokyo(Japan) ・Toronto(Canada) ・Washington(USA)

・Baltimore(USA) ・Boulder(USA) ・Cambridge(UK) ・Charlotte(USA) ・Chennai(India) ・Copenhagen(Denmark) ・Dubai(UAE) ・GuangZhou(China) ・Kuala Lumpur(Malaysia) ・Melbourne(Australia) ・Milan(Italy) ・Minneapolis(USA) ・Montreal(Canada) ・Munich(Germany) ・Oxford(UK) ・Phoenix(USA) ・Pittsburgh(USA) ・Portland(USA) ・Provo(USA) ・Salt Lake City(USA) ・Sao Paulo(Brazil) ・Vancouver(Canada) ・Zurich(Switzerland)

アリババテンセント

Baidu JD.COM

Copyright 2018FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 18 出所: McKinsey, author

BATからスピンオフや能力提供（PF)によるStart-Up育成へ

Alibaba: 13 (2011) ⇒ 90 (2017.4); Finance 35

ベンチャー創業者像（杭州）

・アリババ等OB等

・国内大学卒業者

・海外留学帰国組

・第二世代、第三世代創業者


成功したベンチャーは、またメガベンチャー “Unicorn”へ

年平均6.57

21

12

22

26

0

5

10

15

20

25

30

2010-

13

2014

2015

2016

2017

2018.1

0.31

年間新規ユニコーンにランクインした企業数

（社）

(合計26社)

ユニコーンに新規ランクイン数が安定するかどうかに注目

出所：CB Insightsデータを参考に筆者作成 Copyright 2018FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 20

自立できるユニコーンの育成、そしてグローバルへ

Easy Home

Discord (米系）

Cambricon

Dt Dream

iTutorGroup

URWork

Wle.me

Didi Chuxing

OfO

Koudai Gouku

Zhihu

Kuaishou

iCarbonX

Xiaohongshu

Yuanfudao

Mobike

Weiying Technology

DouyuTV

Maoyan-Weiying

Vipkid

NIO China Internet Plus

Guahao Technology

Meizu Technology

One97 (Paytm)

Snapdeal

インド系 Hike

Byju’S

インド系

Ding Xiang Yuan

UCommune

Hellobike Face++

Lianjia

MINISO Life

Coocaa

Luojisiwei

Yijiupi

Sense Time

Xping Motors

Taxify (エストニア系）

TangoMe (米系）

イノベーション・成長の循環が形成されつつある

出所：著者作成 Copyright 2018FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 21

ＢＡＴ等のＧＩＡＮＴ

Start-up ⇒ Growth up

中国ユニコーン

ＮｅｗＣｈｉｎａ

持続性に制約や課題も残る


Copyright 2018FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 23 出所：著者ヒアリング、作成

（1）「C」から「B」へ波及していくだろうか？

製造業のサービス化

産業網モノのインターネット(IIoT)

製造業

サービス業

消費者体験の革新生産率の向上（新たな価値創造）

サービス業の高度化

消費網インターネット

「領域侵犯」、「領域融合」

インダストリ4.

０

製造業(

ドイツ)

インダストリ・イン

ターネット産業(G

E)

「中国製造2025」中国の「インターネット＋」


（2）ネットインフラ(ハード)の制約

US China Japan Germany India

ネットスピード

(Mobile/Fixed

Download,Mbps)

(2018.10.31)

29.97/

101.95 30.46/

80.44 27.41/

82.14 29.97/

59.59 8.85/

25.02

IPｖ４数(割当られたシェア

(2018.10.31) 37.4% 7.9% 4.8% 2.8% 1.0%

IPv6普及率(％)

(Googleへのアクセスベース

(2018.10.31) 33.6 2.7 26.4 40.25 32.55

関係国におけるインタネット・インフラの状況


（3）政府の政策介入と市場機能とのバランスをいかに図るのか

ベンチャー活動に政府の力を入れすぎ、リスク判断に弊害も地方政府による過剰な資金支援など

Great Firewall(GFW)による海外Webの過剰な審査と遮断（政治的な議論は別として）技術的情報も

データ現地化の必要性とデータ自由移動の効果の両立性透明性も欠ける批判も

市場の優位性

(1)ネット規模の外部性: 集積の効果で収益均衡点に早く達成できる

人材の優位性

(2)中間人材の優位性:研究開発要員Researcherは、世界の約20%を占める

2013年:中国184.4万(1071人/百万人口)、米国126.5万(3984人)、日本66万(5195人)

資金の優位性

(3)シード/エンジェルからＶＣ、ＰＥまで大量の資金が新産業に進出

フィンテックの発達やシリコンバレーとのネットワークでリスクマネーが潤沢に

纏め（1）：イノベーションにおける中国の優位性


ネット時代オープンソースの優位性

(4)技術、部品、サービスのオープンソース意識が強く、開発コストの低下をもたらす

既存技術の蓄積が少なく、「過去」を守る意識が薄い

規制当局の寛容さと新技術への群れやすさ

(5)イノベーションに「先放後管」（先に自由放任、後でルール化）、「慎重な規制原則」

(6)個人情報等について「ハダカ」になっても新技術に群れやすい国民性

纏め（1）：イノベーションにおける中国の優位性



纏め（2）：成果、課題と日本への示唆

シリコンバレーモデルの最大な特徴創新と創業の一気貫通性

中国の伝統産業では「創新」と「創業」にギャップニューエコノミーには、シリコンバレーモデルの再現、かつ循環的上昇のプロセスが見られる

課題：（1）ニューエコノミーにおけるベンチャー活動の仕組みが在来産業に浸透していくのか？

（2）強まる政府の関与：余計なお世話にならないか？

（3）情報統制にはマイナス・インパクト

日本には、以下のような示唆が考えられる（1）「創新」と「創業」の融合

（2）ベンチャーの「Scale-up」の仕組み形成

（3）規制とイノベーションのバランスの再検討

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