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プロセスシステム論 機械工学系 生産システム研究室 Room:D-612, Tel: 6713, http://ise.me.tut.ac.jp/

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プロセスシステム論

機械工学系

生産システム研究室

Room:D-612, Tel: 6713,

http://ise.me.tut.ac.jp/

清 水 良 明

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[授業の目標]

プロセスシステムでの問題解決において、問題を明確に定義することと総合的評価に基づいて意思決定を行うことの重要性を特に認識し、これを支援する手法として有効な参加型システムズアプローチと多目的最適化理論の基礎事項と応用について学ぶ。

[授業の内容、進展度合等]

プロセスシステムの一例としての生産システムにおける生産活動の多くは本来的に社会と深く関わっている。したがって生産目標や種々の制約条件といったものも工学的に単独に決められるよりは社会的要因に影響されて決められる。こうした現実にあって、問題を明確に定義し、それに基づいて合理的な意思決定を行う上で有用となる方法論について学ぶ。授業では、構造化モデリング手法や多目的最適化の理論と応用を中心として取り上げる。

シ ラ バ ス

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[あらかじめ要求される基礎知識の範囲等]

線形代数や代数解析学に関する基礎知識

[教科書]

清水良明、「最適化工学のすすめ」、

コロナ社、(2010)

[参考書]

• SHIMIZU Yoshiaki, Zhong, Zhang

& Rafael Batres : Frontiers in Computing

Technologies for Manufacturing Applications,

Springer (2007)

• 市川 惇信(編):多目的決定の理論と方法、

計測自動制御学会 (1980)

• 木下 栄蔵:意思決定論入門、啓学出版 (1992)

• A.P.Sage: Methodology for Large-scale Systems,

•MacGraw-Hill (1977)

[履修条件等]

適時および期末にレポート提出

期末レポートを7割、その他の分を3割とする。

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[達成目標]

・プロセスシステムの概念を理解し、そこでの問題

解決策を意思決定科学と対応付けて理解できるこ

と。

・価値観の分析とそれに基づく決定手順について

理解し、実践できること。

・多目的最適化の基礎理論を理解し、その各種の

求解手順についても説明できること。

・身の回りの問題解決を多目的最適化手法として

定式化できること。

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[JABEE学習・教育目標との対応 ]

(D1) 専門的技術を駆使して課題を解決する能力

[その他]

• Room: No. D-612, Tel.: 6713, E-mail: shimizu@tut. jp

• ウェルカムページ : http://ise.me.tut.ac.jp

• オフィスアワー : 水曜日 15:00~17:00

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1―2週目

1.前半の授業内容と目標およびプロセスシステムの概念と

その一例としての生産システムでの意思決定の科学

2. 意思決定問題の認識と定義のための方法

2.1 合理性と意思決定規則

2.2 問題発見と問題定義のためのシステムズアプローチ

2.2.1 ISM法

2.2.2機能構造化モデルリング-IDEF0

2.2.3 その他の方法

[1] 古典的手法

[2] マインドマップ(Mind Map) [3] TRIZ

[4] KANO法

[5] 品質機能展開(QFD; Quality Function Deployment)

授業内容

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5. 多目的計画法と実行支援 5.1 多目的最適化の基礎概念 5.2 多目的解析手法 5.2.1 従来法 5.2.2 多目的進化法 5.3 多目的最適化手法 5.3.1 選好最適性の必要条件 5.3.2 多目的最適化の手法の分類 5.3.3 非対話的解法 5.3.4 対話的解法 5.3.5 MOON2R /MOON

3―5週目

6―8週目

5.4 選択肢問題の解決法

5.4.1 価値評価法

5.4.2 階層分析法,AHP

5.4.3 その他の方法

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豊橋技術科学大学 生産システム工学系 清水良明

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プロセスシステム論とは

プロセス(過程=こと) システム(ものの集合)

ものごとの工学(科学)的な

決め方を論じる。

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プロセスシステムの一例としての

生産システムの機能と要素

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「生産:production/manufacturing」 とは・・・ 何か新しく作り出すこと

基本的にインプット(投入)/アウトプット(産出)・システム

1.1 生産システム

変換過程

transformation process

生産 生産要素

production factors 生産財

produced goods

機能・手続:「生産過程」

生産財

有形

無形

製品

product

サービス

service

物理的・化学的性質を変える

情報を機能的に変える

価値を増殖する価値増殖過程

(自由財と経済財は区別)

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•Manufacturing

「設計の製品への変換」 (広義)

“物の流れ:flow of materials”

・活動:生産工程:production processesで実行

・有効性 :生産性:productivity、能率:efficiencyで測定

・結果:効用:utilityの生成

(素価値体が高価値体になることで生成)

CIRP:国際生産加工研究会議

「製造企業で製品の設計、素材の選択、計画、加工、品質保証、

管理、および販売を含む一連の関連ある活動」

「技術的生産:Technical production」

「経済的生産:Economical production」

「価値増殖過程」に伴う利潤(剰余価値)の獲得を目的

“価値(原価)の流れ:Flow of value(cost)”

•Production 「加工」 (狭義)

用 語

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表 1 生産システムの事例

事例 入力 変換と流れ 出力

機械加工 金属材料

電力

切削・プレス加工

移送装置・ロボット搬送

機械部品

鉄鋼製造 鉄鉱石

石炭

電力

製銑・製鋼・圧廷

行程間の製品移動

鉄鋼製品

副生ガス

自家発電力

自動車製造 鋼板

機械部品

エンジン

電力

プレス加工・塗装

組立加工・溶接

移送装置・ロボット搬送

自動車製品

コンテンツ製造 ソフト仕様 ソフトウェア製作

デバッグ

製品ドキュメント製作

製品ソフト

情報調査 調査要求情報 検索ソフトによる検索

検索条件の変更・再検索

検索結果の報告書作成

調査結果情報

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1.2 生産の概念と産業の変遷

① “自然”を対象とする概念

採取・狩猟→農耕・牧畜・漁

→ 第一次産業

② “市場生産:production of the market”の概念

実体物の生成である製造を包含(「形あるもの」を強調)

→ 第二次産業(e.g.,製造業,建設業など)

③ “効用”の概念

効用の生成または増大をもって生産と理解

→ 第三次産業(e.g.,輸送,販売,通商など)

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生産要素 (1) 生産対象 生産活動として働きかける目的物

主要材料・・産出物の形成に主要的役割を果たす e.g.,原料,素材,部品など

補助材料・・・補助的役割を果たす e.g.,エネルギ,ユーティリティなど

(2) 生産手段 生産対象に作用して、産出物を生成する手立て

直接に生産対象に働きかける e.g.,生産設備

直接には生産活動にあずからない e.g.,敷地,工場建屋

(3) 生産労働力 生産活動のために労働する能力

(4) 生産情報 生産行為の効果的(能率的・経済的)な運用のための知識

=生産方法(狭義の生産技術)

生産設備

「工具:tool」(道具:instrument)

人力で動かして人間の手の補助的役割を果たす加工用の小器具

「機械:machine」 外部から与えられたエネルギを有用な仕事に変換する力学的な加工器具

「装置:apparatus」 非力学的加工用器具(e.g.,化学プロセス変化を起こす)

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生産財

生産財は高価値体の経済財

• 生産体の利潤(販売価格-総生産費用)→(利益目的)

• 消費体の価値 → (社会目的-社会への寄与)

生産管理の目的: 効用の創造の統制

生産目的の遂行:良い Q,安い C,早く D

生産による効用生成のタイプ

有形財: 形態の効用の生成 e.g.,製造業

部分的有形財: 所有の効用の生成 e.g.,販売業

無形財: 主に場所と時間の効用の生成

e.g., (1)運輸業(航空機,パイロット→時間内に場所へ)

(2)金融業(貯蓄→預金・貸付け(場所・時間・所有))

(3)コンサルタント,システムインテグレーション

(頭脳的人的資源,コンピュータ→有効な情報

生産管理

(Production management)

製品の価値創出の条件

1.機能・品質(Quality)

2.価値・価格(Cost)

3.量・時期(納期)(Delivery)

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豊橋技術科学大学 生産システム工学系 清水良明

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生産工程と生産性

① 形態変換型(e.g.,製造)

② 時間変換型(e.g.,在庫)

③ 場所変換型(e.g.,輸送)

生産工程の有効性 : 生産性= 産出物 (アウトプット)

投入物 (インプット)

(分母・分子によって、種々の生産性が規定)

① 物的生産性(数量単位)と価値生産性(価値単位)

② 要素生産性(労働力,資本,etc.)と総生産性

③ 付加価値生産性

生産要素 生産財

生産工程 (生産作業)

変換

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生産関数 (production function)

①固定係数型生産関数 : Y = min(K/k,L/l ) 1単位の生産に対して,k 単位の資本と l 単位の労働が必要

②コブ-ダグラス型生産関数 : Y = aKαL

β

aの技術水準と資本,労働のα, βの弾力係数

③CES型生産関数 : Y-ρ=γK -ρ+δL-ρ

γ,δは技術条件で,ρ=(1- α)/ α ( α:代替弾力性)

投入 と産出の関係を表す関数 Y=f (x1,x2, … ,xn ) ここで x1,x2, … ,xn は、投入生産要素,Y は、産出量

国や企業の潜在生産能力の推定や計測・評価に用いられ、 Y=F(K,L)、 Y:国民(国内)総生産,

K:資本投入量,

L:労働投入量

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第2章

第6章

第3章

第4章

第5章

第2章

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意思決定とは? • 述語的 (講談社刊:日本語大辞典) :

• 自分の考えを明確にすること

• 慣用的 :

• 選択を正当化する理由付けを探すこと

• 対象とする問題解決の目標 ⇒ 的確に設定

• 合理性の基準 ⇒ 明確に定義

• 決定規則 ⇒ 適確に選定(妥当性と有効性)

• 学術的(プロセス・システム工学) : • 所与の目的に対して合理的に態度や行動を決めること

なぜ選んだのかの理由が自他に対して容易に説明でき、

正しさを弁護できる必要がある。 決め方のプロセスの合理性を

自ら確認することを助ける

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• 述語的 (講談社刊:日本語大辞典) : • 理性によって納得できる、

• 正しい論理にかなっている、

• 無駄を省き最大の効果を挙げるさま、

• うまく説明が付くさま

合理的であるとは?

•不合理(原理原則に反する。)

•非合理(原理原則を欠いている。)

•反合理(合理的な考え方、 行動に反対する。)

•感傷的、独断的

•学術的(プロセス・システム工学) : • システマチックな手順に従って設計された

価値観の下で決定則が正しく適用されているさま

の対義語

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• 80/20 rule

• 全て中庸をもってよしとする 「不偏・不易」=かたよることなく、かわることなく、常に調和がとれている

費 用

“ C ”

“ B ”

“ A ”

High-High

Low-Low

| | | 20 50 100

100 ー

95 ー

80 ー

バランスをとる知恵としての経験則

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• 従来: 経済性が唯一の基準

• 経済性の無駄を省き最大の効果を挙げること

• 近年: 価値観の多様化、

• 単直で単一ではなく、一般に複数の属性から構成される

e.g., 経済性と環境問題、機能とデザイン、・・

工学システムにおける合理的意思決定とは?

重要な属性が抜けている ⇒ 非合理

属性間の重要度が正当に反映されていない ⇒ 不合理

総体の意思が反映されない ⇒ 独断的

結果として、反合理な行動に結び付く恐れ

意思決定 = 多属性下で

⇒ 多目的意思決定

⇒ 多目的最適化

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補償関係:

ある属性の低い評価を別の属性の高い評価が

補って総合的に評価される

⇒ 属性間に補償関係がある

意思決定規則の種類

• 補償型:属性間の補償関係を認める

• 非補償型:属性間の補償関係を認めない

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• 優越性ルール(dominance rule): 選択肢の対の中から一方を選ぶときに優越する方を取る

• 連言ルール(conjunctive rule) : 属性毎に望ましい基準値をあらかじめ設定し、 全ての属性においてそれ以上であるものを選ぶ

• 選言ルール(disjunctive rule): 一つでも満たすなら選択してよい

• 辞書的ルール(lexicographic rule): • 属性間の重要度を順序付けする。、 • 重要度の一番高い属性から見て最も好ましいものをとる。 • 複数個ある場合には、二番目に重要な属性で比較する。 • 以上の手続きを順次繰り返していく。

•排除ルール(elimination by aspect rule): • 基準値を満たさないものを次々に排除 • 辞書的ルールの裏返しの関係

非補償型の決定則

優越性: 少なくとも一つの属性が他より望ましく、

その他は同等に望ましいかそれ以上

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• 勝率最大化ルール (maximizing number of attributes with greater attractiveness rule): 比較対間で、相手より優れている属性の数が多い方を選ぶ

• 効用差加算ルール (addition of utility difference rule)

属性毎に優越性の差を値として与えその合計で優劣を決める

• 効用加算ルール(addition of utilities rule):

• 多属性効用理論の標準的なルール

• 属性毎の効用値の和を利用

• 関数の与え方で種々の効用の表現が可能

• プロダクション・システム(PS)利用ルール: (production system based aggregation rule)

• IF-THEN型のプロダクションルールを利用

e.g., もし生産効率が同じなら、品質の優れた生産ラインの方がよい

•人間の自然な意思決定手順を模擬できる

• 複雑な問題では、現実的な対応は容易でない (条件部(IF)と帰結部(THEN)の組み合せは某大)

補償型の決定則

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意思決定の分類 構造上の分類

・定型的意思決定 良構造問題-ルーチン化(プログラム、アルゴリズムの利用),最適化

・非定型的意思決定 悪構造問題-試行錯誤(直感、経験の利用)

未来情報での分類

・確実性のもとにおける意思決定 → 結果の効用の最大化

未来に関する確実な情報が入手できるとき

・不確実性のもとにおける意思決定 将来の出現状態の確率さえわかっていない

生起確率がわかる → 期待効果を最大化

・競争下の意思決定 競争相手がいるとき

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H.A.Simonの考え方

• 発見過程(intelligence phase):より理解し易い複数の副問題への分割

• 設計過程(design phase):直接解けるところまで問題の細分化 ⇒個々の副問題の解

• 選択過程(choice phase):試行錯誤的に選び出しながら合成

複雑で大規模な問題の解決法

A.D.Hallの形態学的考察

システムエンジニアリングの論理的な問題解決手順

• 問題の定義 (Problem definition)、

• 価値システムの設計 (Value system design)、

• システムの合成 (System synthesis)、

• システム解析 (System analysis)、

• 代替案の最適化 (Optimization of alternatives)、

• 意思決定 (Decision making)、

• 実行計画 (Planning for action)

一挙の問題解決が不可能(人間の思考範囲の限界) ⇒ 問題規模や複雑さに応じて考察範囲を限定し段階を踏む

合理性に優れた常套的手順の一つ

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Hall activity matrix

Steps

Phases

Problem

definition

Value system design

System

synthesis

Systems

analysis

Rank (optimize) alternatives

Decision

making

Planning

for action

Program planning

Project planning

System

development

Production

Distribution

Operations

Retirement

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(PDCAサイクル)

フェーズ ステップ

1 問題認識

2 要因分析 Ⅰ 問題分析過程

3 情報収集

4 代替案作成 モデル作成

5 代替案評価 モデル検証 Ⅱ 問題解決過程

6 最良案決定 決定分析

7 予測分析

8 運 用

9 成果の測定と評価

Ⅲ 評価過程

10 修正と再設計

代替案 実施したときの

成果を予測

価値

評価

採用

別の代替

案の探索

満足

不満足

意思決定の手続

①目的の認識

②代替案の提示

③予測と価値評価

意思決定を合理的に行うための手順

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意思決定の評価基準

Ⅰ 最適性基準:

最適解/最適化

Ⅱ 満足性基準:

近似最適解/フィージビリティ・スタディ

Ⅲ 一貫性基準:

Ⅰ,Ⅱが不可能な場合に,

論理的な首尾一貫性を重視する

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計画(planning)、設計(design)、

運転(operation)、管理・保全(management) (情報や決定の質が揃う範囲で対象を区切る)

プロセスの計画: • 計画手順の細分化の例 : Table1.1 ⇒ Table1.2

• 最も初期の段階での決定問題である

• 単に工学的要因にとどまらず社会的・経済的要因とも関わる

• 決定事項は次段階のプロセス設計における規定条件となる

• プロジェクト全体の成否と連動しやすい

• システムの境界上で不確定な外的条件と係わり

問題自身の把握に主眼 ⇒ • 数理的な最適化手法より、問題構造を明らかにした上で、

意思決定を支援するための論理的・手順的な手法 e.g., ブレーンストーミング、デルファイ法、KJ法、NM法等の発想法

• 数学的に悪構造(ill-defined)な場合を含めて考察できる

プロセスエンジニヤリングの問題分割の例

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Table 1.1 What to decide under what condition

決定事項 要因・条件

原料 環境

立地 安全性

製品(品質、量etc.) 需要構造

用役、要員 社会トレンド

タイミング 競合条件

資金 企業戦略

ブロックフローシート 法規

物流 技術トレンド

技術検証 価格情報

システムエンジニアリングにおける

計画問題の構成要因

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Table 1.2 Sub-phase of planning stage

決定項目/段階 マクロ計画 事業化計画 基本計画

原料 種類 純度、組成 価格

立地 国別 工場見取り図 Plot plan、気象条件

製品 生産量 品質、品種 輸送形態、稼働率

用役、要員 - 用役種類 用役仕様,価格,要員数

タイミング ターゲット ライフサイクル 工事計画

資金 枠ぎめ 経済評価 最大投資額、

計装,設備費概要

ブロック・フローシート プロセス候補選択 Basic flow, 触媒,

溶剤,設備能力

Block flow diagram, Mat.&

Heat balance

物流 - 販売計画 入出荷設備,販売ルート

技術検証 技術予測,特許権 ライセンス、アセスメント 安全確認

計画段階での細分化の例