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- 1 - TDM標準化ガイドライン 抗てんかん薬のTDMガイドライン(案) Draft version 1.2 日本TDM学会TDMガイドライン策定委員会 <抗てんかん薬ワーキンググループ> 委員長:猪爪 信夫(北海道薬科大学臨床薬理学分野) 委 員:今村 知世(慶應義塾大学医学部臨床薬剤学教室) 末丸 克矢(就実大学薬学部健康解析学分野) 鈴木 小夜(慶應義塾大学薬学部医療薬学センター) 戸田 貴大(北海道薬科大学臨床薬理学分野) 矢野 育子(京都大学大学院薬学研究科臨床薬学教育) 湯川 栄二(第一薬科大学臨床薬剤学教室) 中村 秀文(国立小児成育医療研究センター治験推進室) 2012 6 17

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TDM標準化ガイドライン

抗てんかん薬のTDMガイドライン(案)

Draft version 1.2

日本TDM学会TDMガイドライン策定委員会

<抗てんかん薬ワーキンググループ>

委員長:猪爪 信夫(北海道薬科大学臨床薬理学分野)

委 員:今村 知世(慶應義塾大学医学部臨床薬剤学教室)

末丸 克矢(就実大学薬学部健康解析学分野)

鈴木 小夜(慶應義塾大学薬学部医療薬学センター)

戸田 貴大(北海道薬科大学臨床薬理学分野)

矢野 育子(京都大学大学院薬学研究科臨床薬学教育)

湯川 栄二(第一薬科大学臨床薬剤学教室)

中村 秀文(国立小児成育医療研究センター治験推進室)

2012 年 6 月 17 日

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1.はじめに

てんかん薬物治療は抗てんかん薬の単剤投与からはじめることが推奨され、2〜3 種類

の抗てんかん薬による単剤治療を行っても奏功しない場合に多剤併用による治療が選択さ

れる。それでも発作が抑制されないときに外科的治療の可能性が考慮される。

有効とされる血中濃度域を維持することによりてんかん発作を抑制することが可能とな

る抗てんかん薬では、てんかん発作を効率的に予防する血中濃度の維持を指標とした TDM

が重要である。てんかん患者に新たに抗てんかん薬を投与する際には、副作用発現に注意

しつつ投与量を漸増し、有効濃度域に到達するように患者に見合った投与量を見いだす方

法が行われる。患者の服薬コンプライアンスを確認するときにも TDM が有用である。

治療血中濃度とは多くの患者において発作発現を抑制する濃度域であり、この濃度域以

下でも効果を示す患者や治療有効濃度を越えてはじめて効果が出現する患者も存在する。

有効濃度域に達していなくとも発作発現が抑制されているならば、その患者に対する投与

計画を変更する必要はない。血中濃度が非常に低濃度であり、かつ、てんかん発作を長期

間発現していない患者であっても抗てんかん薬投与の中止決定は慎重に行う必要があり、

数ヶ月から年単位に亘る長期間をもって徐々に投与量を減少させて抗てんかん薬投与から

離脱することが求められる。一方、有効濃度域以上の血中濃度であっても、特記すべき副

作用が発現しない状態で発作が抑制されている患者であれば、以後の副作用発現に留意し

つつ現在の投与計画が継続される。

一般に、血液中でたん白質に結合していない薬物(血中非結合形薬物)が作用部位に達

して薬理効果を発揮し、主として肝臓での代謝や腎臓での排泄を受け体内から消失する。

たん白結合率の高い薬物では、限外濾過法や平衡透析法によりたん白質に結合していない

薬物を分離し、血中非結合形薬物濃度の測定が行われることがある。

シトクロム P450 を代表とする代謝酵素の遺伝子多型が抗てんかん薬の代謝速度に影響

を与え、血中薬物濃度に大きな差が生じることも知られており、遺伝子型情報をふまえた

薬剤の選択・投与量調整の可能性が議論されている。

TDMは専門的な担当者の知識と経験に基づいた業務として行われてきた傾向を否めな

い。しかし、現在では血中薬物濃度測定値による個別投与量管理は確立された技術であり

、医療従事者の一般的な業務としての普及が必要である。本ガイドラインでは、日本にお

いて抗てんかん薬としての適応があり、汎用される抗てんかん薬の TDM についての情報を

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下記に示すエビデンスレベルと推奨グレードとしてまとめ、日常業務への対応に重点をお

いた。重要と考えられる文献については解説中に示し、その他の文献は末尾に記載した。

エビデンスレベル

I システマティックレビュー/ランダム化比較試験のメタアナリシス

II 1 つ以上のランダム化比較試験

III 非ランダム化比較試験

IV 分析疫学研究

V 記述研究

VI データに基づかない専門家の意見

推奨グレード

A 強い科学的根拠があり、TDM を行うべきである。

B 科学的根拠があり、TDM が有用・有効である可能性が高い。

C 科学的根拠は確立していないが、一定条件下では参考となる。

D 推奨できない。

2.血中濃度測定法

これまで、血中薬物濃度の免疫学的測定法としてアボット社の全自動血中濃度測定シス

テム(TDx システム)を用いた蛍光偏光免疫測定 (FPIA) 法による測定が多くの施設で行

われてきた。しかし、TDx システムのメンテナンス終了に伴い、2012 年現在ではアボット

社の新規測定システムやその他の診断機器会社からの測定機器と試薬類が多数市販されて

いる。新規に導入された機器の特性を見極めた TDM を行うことと、これまでの測定結果と

の整合性評価が求められる。また、多くの臨床検査機器において各種の TDM 測定試薬を用

いた測定ができるが、測定試薬の交差反応性などの影響に加え、使用する臨床検査機器自

身による測定誤差を評価して、得られた血中濃度測定値の信頼性を検証する必要がある。

本邦においてはバイオ・ラッドラボラトリーズ社が精度管理プログラムを毎年実施してお

り、集計結果も無償で入手可能である。米国病理学会(CAP: College of American

Pathologists)では国際的な精度管理プログラムを毎年実施しており、有料参加すること

により市販されている試薬と測定機器を用いたときの測定値比較表を入手することが可能

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である。

3.定常状態

薬物を一定投与量、一定投与間隔で経口投与すると血中濃度は徐々に上昇し、最終的に

一定の濃度域を上下する定常状態に到達する。抗てんかん薬による発作抑制には定常状態

における血中濃度を治療濃度域内に保つことが求められる。定常状態への到達度を判断す

るには薬物の血中からの消失半減期が重要な因子となる。1–コンパートメントモデルによ

り解析できる薬物を一定の投与量と投与間隔で使用した場合、消失半減期の 5 倍時間以上

経過すれば、定常状態における血中濃度の 96%以上の濃度に到達する。したがって、通常

は消失半減期の 4から 5倍時間経過した時点で定常状態に到達したとみなされる。

参考文献

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フェニトイン(PHT)

フェニトインの特徴と TDM

フェニトインは、てんかんのけいれん発作、自律神経発作、精神運動発作に対して経口

投与され、てんかん発作重積時および術中・術後や意識障害時には静脈内投与される。フ

ェニトインの治療濃度域における血中濃度は投与量に対して非線形性を示すため、TDM に

よって投与量管理を精密に行う必要がある。

Q1.治療濃度域について教えてください。

10~20 μg/mL(非結合形濃度:1~2 μg/mL)(推奨グレード A)

【解説】

てんかんの重症度や症例によって違いはあるが、成人の強直間代発作に対する有効血中

濃度は 10~20 μg/mL とされている。血中濃度の上昇に伴う中毒症状としては、眼振、発

作の機能活動, 不随意運動の誘発、運動失調、知的能力の低下などがあり、さらに血中濃

度が上昇すると意識障害、血圧低下、呼吸障害を生じる。血中非結合形フェニトインの有

効域は 1~2 μg/mL とされている。結合たん白である血漿アルブミンの濃度低下時には非

結合形分率が上昇するため、総濃度が治療域範囲内であっても中毒症状を発現することが

ある。またバルプロ酸などのたん白結合置換現象による薬物相互作用を生じる薬物との併

用時や黄疸ならびに腎不全時にも非結合形分率は上昇する(Shorvon et al, 1978)(後述

の Q4 参照)。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

非線形体内動態を示す(推奨グレード A)

【解説】

経口投与では消化管よりほぼ 100 %が吸収される。血漿たん白結合率は約 90 %と高く、

分布容積は約 0.7 L/kg である。主として CYP2C9 および一部 CYP2C19 によって活性を持た

ない主代謝物 5-(p-hydroxyphenyl)-5-phenylhydantoin (HPPH)に肝臓で代謝される。こ

の代謝は治療濃度域において飽和することによりクリアランスが減少し、定常状態到達時

間も延長するため、投与量の増減は慎重に行った上で血中濃度をモニタリングする必要が

ある。フェニトインの投与計画には、Michaelis-Menten 式による1日最大代謝量 Vmaxとミ

カエリス定数 Kmが用いられる。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

成人に臨床用量を経口投与した場合は、投与開始もしくは用量変更 5 日以降に測定

する(推奨グレード A)

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【解説】

フェニトインは治療域すなわち臨床用量の範囲内で代謝が飽和し、半減期は血中濃度の

上昇に伴い増加する。治療域での半減期は成人で 6-36 時間であるため、初回投与時、用

量変更時、相互作用を生じる可能性のある併用薬剤の変更時には、5~7日間隔でトラフ

濃度(投与前値)のモニタリングを行い、用量調節を行いながら個々の患者での至適用量

を見いだす。

Q4.特殊患者での TDM について教えてください。

たん白結合率の低下患者では非結合形濃度測定が必要である(推奨グレード B)

【解説】

高齢者の Vmax は非高齢者とほぼ同程度であるが、小児においては成人よりも体重当た

りの Vmax は大きい。しかし、高齢者、小児とも Km はほぼ一定の値を示す。妊婦では循環

血流量や脂肪組織の増加、および胎児、胎盤、羊水のため分布容積が増大することから、

血中フェニトイン濃度が低下していくため TDM に基づく増量が必要となる。

熱傷、肝硬変、ネフローゼ、妊婦、嚢胞性線維症、黄疸、腎不全などの疾患時や妊娠時

には、フェニトインのたん白結合率が低下して非結合形濃度が上昇する(Perucca, 1980,

Wallace & Brodie, 1976)。このようなときには血漿あるいは血清を限外濾過して、非結

合形薬物濃度の測定を検討することにより、さらに精密な TDM による投与量管理を行うこ

とができる(Sheiner & Tozer, 1978) 。肝硬変患者においては肝代謝の低下も報告されて

いる。

Q5.中毒時の TDM について教えてください。

血中フェニトイン濃度が治療域内に低下するまで頻回に TDM を行う(推奨グレード

A)

【解説】

フェニトインの中毒時には、血中濃度が治療域に低下するまで休薬し、高濃度域で血中

からのフェニトインの消失が遅くなることに注意しながら TDM を頻回に行う。たん白結合

率が高いため血液透析での除去率は高くないが、活性炭血液吸着法は有効との報告がある

(Kawasaki et al, 2000)。その際には血中濃度のリバウンド(再上昇)が認められないこ

との確認も必要である。

Q6.薬物相互作用について教えてください。

フェニトインの血中濃度は併用する抗てんかん薬によって変動する。また、薬物代

謝酵素の誘導作用が強いため、併用薬物の血中濃度を低下させ、薬理効果を減弱さ

せる(推奨グレード A)

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【解説】

表に示すフェニトイン血中濃度を変動させる可能性がある薬物の投与開始もしくは中止

、および用量の増減を行った際は、TDM を通常より頻繁に行って相互作用による影響を確

認し、必要に応じて対処を行う。また併用薬の変更後にフェニトインの効果増強もしくは

減弱が認められた場合には、TDM による検証に努める。なお併用による臨床症状の変化は

、併用薬の変更直後ではなく徐々に発現する場合も多いため、長期的な注意深い観察が必

要である。

Q7.代謝酵素の遺伝子検査の必要性について教えてください。

必ずしも行う必要はない(推奨グレード C)

【解説】

フェニトインの主代謝酵素は CYP2C9 であり、一部 CYP2C19 で代謝される。CYP2C19 遺

伝子多型の寄与は小さいものの、CYP2C9*1/*3 の患者では血清中フェニトイン濃度が低用

量からでも急激に上昇するという報告がある(Odani et al, 1997、Mamiya et al, 1998)

。日本人での CYP2C9*3 のアレル頻度は 3%程度であり、投与前の代謝酵素の遺伝子検査は

必要ではないが、投与初期に適切な TDM を行うことが重要である。

文献検索条件

PubMed (2011.07.03)

phenytoin/(serum OR plasma) AND drug monitoring

436 hits

医中誌(2011.07.05)

フェニトイン AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリン

グ)

26 hits

参考文献

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monitoring data for determination of the population pharmacokinetics and enteral

bioavailability of phenytoin in neonates and infants with seizures. Ther Drug

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(エビデンスレベルⅣ)

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(エビデンスレベルⅤ)

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(エビデンスレベルⅣ)

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(エビデンスレベルⅣ)

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(エビデンスレベルⅣ)

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71-109.

(エビデンスレベルⅠ)

Shorvon SD, Chadwick D, Galbraith AW, Reynolds EH. One drug for epilepsy. Br Med

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(エビデンスレベルⅣ)

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(エビデンスレベルⅣ)

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(エビデンスレベルⅣ)

アレビアチン散 10%添付文書、大日本住友製薬株式会社、2010.7.

http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/400093_1132002B1060_1_14.pdf

アレビアチン錠、アレビアチン散インタビューフォーム、大日本住友製薬株式会社、

2010.7.

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フェノバルビタール(PB)

フェノバルビタールの特徴と TDM

フェノバルビタールは抗てんかん薬として、新生児発作の第一選択薬、部分発作、全般

性強直間代発作およびミオクロニー発作の第二選択薬に用いられる。

Q1.治療濃度域について教えてください。

10-35 μg/mL(推奨グレード A)

【解説】

フェノバルビタールの有効治療濃度域は 10-35 μg/mL とされている。35 μg/mL を超

えると眠気、歩行失調などが出現する。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

他の抗てんかん薬との薬物相互作用が多い(推奨グレード A)

【解説】

フェノバルビタールはヒトで投与量の 45-65%が肝臓で代謝され、主に CYP2C9 および

CYP2C19 により p-ヒドロキシフェノバルビタールとなり、さらにグルクロン酸抱合される

。表に主な体内動態情報を示す。相互作用が多く報告されているので必要に応じて TDM を

精密に行う必要がある。

一方、プリミドンは臨床での使用頻度が低い抗てんかん薬であるが、経口投与後約 25%

がフェノバルビタールに代謝される。プリミドンの消失半減期は成人で約 8時間であるの

に対してフェノバルビタールの消失半減期は長いため、プリミドン投与時に TDM(治療濃

度域:3-12 μg/mL)を行う際には代謝物としてのフェノバルビタールの TDM を同時に行

うことが求められる。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

初回投与開始約 14-28 日以降、投与量変更時には 4-5 日以降に測定する(推奨グレ

ード A)

【解説】

フェノバルビタールは半減期が長く、定常状態に達するまでに 10-30 日を要する。また

、1日の血中濃度の変動は小さく、採血時間はトラフ値で良い。ただし、投与間隔内での

ピーク値とトラフ値の振れ幅が小さいのでどの時間帯で採血しても大きな誤差はない。バ

ルプロ酸、フェニトイン、クロバザムを併用開始時には 4-5 日以降に血中濃度を測定す

る。症状が安定した状態における TDM 頻度は1回/1-3ヶ月 程度で良い。

Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。

疾患および年齢によりクリアランスが変動する(推奨グレード A)

【解説】

肝硬変患者における消失半減期は 130±15 時間であり、健常人に比べて有意な延長が認

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められる。また、腎疾患の程度により消失半減期が延長することが報告されている。尿毒

症患者ではたん白結合率が 20-30%に低下する。これはアルブミン濃度の低下によると考

えられる。

妊娠により血中濃度は低下する。この原因としてはたん白結合率の低下が考えられてい

る。また、妊娠に伴う体重増加や羊水中への移行など分布容積の増加も考えられている。

文献検索条件

PubMed (2011.07.03)

phenobarbital/(serum OR plasma) AND drug monitoring

260 hits

医中誌(2011.07.05)

フェノバルビタール AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニ

タリング)

14hits

参考文献

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(エビデンスレベル V)

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(エビデンスレベル V)

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カルバマゼピン(CBZ)

カルバマゼピンの特徴と TDM

カルバマゼピンは、複雑部分発作、てんかん性格及びてんかんに伴う精神障害、強直間

代発作(全般痙攣発作、大発作)のようなてんかんの痙攣発作、あるいは躁病、躁うつ病

の躁状態、統合失調症の興奮状態、三叉神経痛に用いられる。このうち本邦では 2011 年

現在、カルバマゼピンをてんかん患者、あるいは躁うつ病または躁病の患者に対して使用

したときに、特定薬剤治療管理料の対象となっている。剤形には錠剤と細粒があり、小児

から高齢者まで幅広い年代で使用されている。カルバマゼピンは代謝の自己誘導を起こす

ことが知られており、そのため、血中濃度が定常状態に到達するには 3-4 週間が必要であ

る。投与量を増量していくと、それに伴う血中濃度の上昇率が徐々に低下する頭打ち現象

が認められる。また、代謝物であるカルバマゼピン-10,11-エポキシドには、カルバマゼ

ピンと同程度の抗痙攣作用があると報告されている(Tomson et al, 1990)。

Q1.治療濃度域について教えてください。

4-12 µg/mL であるが、8 μg/mL を超えると、副作用の発現頻度が高まる (推奨

グレード A)

【解説】

カルバマゼピンの有効血中濃度域は、多くの文献で 4-12 μg/mL とされている(St.

Louis, 2009、Neels et al, 2004、Eadie, 2001、Rapeport, 1985)。しかし、日本神経

学会監修の「てんかん治療ガイドライン 2010」では、治療域は 5-10 μg/mL とされてい

る。さらに、カルバマゼピンの血中濃度が 8 μg/mL を超えると、副作用の発現頻度が高

まることから、最初の治療目標濃度は 5-8 μg/mL とし、薬理効果および患者の状態に応

じて最大 12 μg/mL まで増量するのが良いと考えられる。

主な副作用には、複視、眠気、知覚障害、眼振、運動失調、嘔気・嘔吐があり、これら

はカルバマゼピン血中濃度上昇とともに発生頻度が上昇する。一方、血中濃度が治療域内

であっても、皮膚粘膜眼症候群が投与後 1-3 週間に発症することがある。近年、日本人に

おいては HLA-A*3101 がその発症に関連していることが報告された(Ozeki et al, 2011)

フェニトイン、フェノバルビタール、バルプロ酸など他の抗てんかん薬を併用している

患者では、カルバマゼピンの副作用が生じやすいため、治療域はやや低めの 4-8 μg/mL

が推奨される(Lee, 2009)。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

主として CYP3A4 による代謝を受ける。自己誘導を起こすため、消失半減期は投与

初期で 10-36 時間であるのに対し、連続投与時では 10-24 時間に短縮される(推奨

グレード A)

【解説】

カルバマゼピンは肝において主に CYP3A4 により代謝を受け、それ自身も薬理作用を有

する 10,11-エポキシド体となる。カルバマゼピンは CYP3A4 や CYP2C9 などを誘導するた

め、長期投与においては自己誘導が認められる(Neels et al, 2004)。カルバマゼピン

の単独投与を受けているてんかん患者において、血中濃度と投与量の関係に個人差は大き

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いが、投与初期は投与量に比して高い血中濃度が得られ、その後は低くなることが示され

ている。これは、カルバマゼピンの自己誘導によるものである。したがって、カルバマゼ

ピンの体内動態パラメータを考える上では、投与初期と長期投与で分ける必要がある。(

表参照)

Q3.測定タイミングについて教えてください。

基本的にトラフ値で採血し、投与開始から定常状態到達までは 1-2 週間ごとに測定

し、投与量、併用薬変更時には新たな定常状態到達後にも測定する(推奨グレード

A)

【解説】

血中濃度測定に際しては、代謝の自己誘導があるため定常状態に到達(おおよそ投与後

3-4 週間)したことが確認できるまで、1-2 週間ごとの TDM が推奨される。自己誘導が完

全に終了した後は、投与量変更、カルバマゼピンとの相互作用を有する薬物の追加、削除

があったときにモニタリングを行えば良い(Janicak, 1993)。

投与量変更時には、新しい投与量での定常状態到達後に採血する。自己誘導完了後に投

与量を変更した場合には、新たな定常状態に達するのに 4-5 日かかる。自己誘導が完了す

る前に投与量を変更した場合には、それまでの投与期間に応じて、定常状態に入るまでに

1-3 週間が必要である(Taylor & Diers Caviness, 1985)。

カルバマゼピンの代謝を誘導あるいは阻害する薬物の併用が開始あるいは中止された場

合には、定常状態に入るまでに 1-2 週間が必要である(Taylor & Diers Caviness, 1985

)。

Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。

重篤な肝障害患者、高齢者、妊婦には慎重に投与する(推奨グレード A)

【解説】

重篤な肝障害において、カルバマゼピンの全身クリアランスは低下するため(Lee,

2009)、投与量減量を考慮した慎重なモニタリングおよび投与設定が必要である。一方、

腎障害では全身クリアランスに大きな変化はない(Bennett et al, 1994)。

小児においては成人よりも高いクリアランス値を示す。テグレトール®添付文書におい

ては、成人(14-64 歳)に対して小児(6-13 歳)では、カルバマゼピン代謝速度が速いた

め投与量当たりの血中濃度は低値を示す。成長に伴いカルバマゼピンクリアランスが減少

するとの報告がある(Taylor & Diers Caviness, 1985)。

高齢者においては、肝機能低下のためカルバマゼピンの全身クリアランスは低下すると

言われているが、成人と高齢者でカルバマゼピン体内動態に変化はないとする報告もある

ため(Hockings et al, 1986)、個々の患者に合わせたモニタリングが必要である。

妊婦に関しては投与量変更の必要はないとの報告(Tomson et al, 1994、Battino et

al, 1985)がある。一方、妊娠中にはカルバマゼピンの全身クリアランスが約 2 倍に上昇

し、分娩後 2 週間で元に戻るため、出産 1 ヶ月後までは頻繁なモニタリングが必要との記

載(Taylor & Diers Caviness, 1985)もあり、一定の見解が得られていない。

Q5.薬物相互作用について教えてください。

多くの他の抗てんかん薬との間に相互作用を生じる(推奨グレード A)

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【解説】

評価が一定ではない薬物もあるが、カルバマゼピンと相互作用を生じる抗てんかん薬は

数多くある。一般的に、バルプロ酸、フェノバルビタール、プリミドン、クロナゼパム、

エトスクシミド、特にフェニトインは、CYP3A4 を誘導することでカルバマゼピンの代謝

を促進し血中濃度を低下させる。一方、クロバザムは、カルバマゼピンの代謝を阻害し血

中濃度を上昇させる(てんかん治療ガイドライン 2010)。

Q6.活性代謝物の TDM の意義について教えてください。

ルーチンでの測定は必要ない(推奨グレード C)

【解説】

活性代謝物であるカルバマゼピン-10,11-エポキシド体は、カルバマゼピンの 1/4-1/2

程度の濃度で体内に存在し(Anderson, 2008)、主にグルクロン酸抱合を受け尿中排泄さ

れる。10,11-エポキシドを直接投与したときの消失半減期は約 6 時間である(Neels et

al, 2004)。10,11-エポキシドは、カルバマゼピンと同程度の抗痙攣作用があると報告さ

れているが(Tomson et al, 1990)、ルーチンの TDM の必要性については認められていな

い(Johannessen & Landmark, 2008)。一方で、カルバマゼピンの血中濃度が高くないに

も関わらず副作用が現れている患者ではエポキシド体の蓄積が考えられ、エポキシド体の

TDM を勧める報告がある(St Louis, 2009、Potter & Donnelly, 1998)。

免疫学的測定法では 10,11-エポキシド体と高い交差性を示す検査試薬もあり、PETINIA

法での交差性は 96%と報告されている(McMillin et al, 2010)。

文献検索条件

PubMed (2011.09.21)

carbamazepine & (serum OR plasma) & drug monitoring

456 hits

医中誌(2011.09.21)

カルバマゼピン AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリ

ング)

22 hits

参考文献

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バルプロ酸ナトリウム(VPA)

バルプロ酸ナトリウムの特徴と TDM

バルプロ酸ナトリウム(以下、バルプロ酸)は各種てんかん(小発作・焦点発作・精神

運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の

治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療、片頭痛発作の発症抑制に適応を有し、錠剤、

シロップ剤、細粒、および徐放性製剤が開発されている。

バルプロ酸血中濃度と臨床効果、副作用(毒性)に関する報告は数多いが、これらの明

確な相関性は示されていない。しかし、バルプロ酸体内動態の個体間/個体内変動は大き

く、治療濃度域において濃度依存性にたん白結合率が変化すること、毒性代謝物の生成、

他の抗てんかん薬(AEDs)との相互作用、その他、合併症や患者年齢など、バルプロ酸体

内動態への影響要因は多岐に亘るため、目的とする効果が得られていない場合、副作用出

現時、服薬状況の確認、投与量調節の際、多剤併用時、妊娠中、てんかん重積状態治療時

、肝障害、腎障害など臨床上必要性がある場合の TDM が推奨されている。

Q1.治療濃度域について教えてください。

40-125μg/mL (推奨グレード A)

【解説】

本邦のバルプロ酸製剤のインタビューフォームには 40-120μg/mL が治療上有効な血中

濃度と記載されており、一般に、バルプロ酸の有効濃度下限は 40μg/mL 程度が目安とさ

れる。有効濃度上限についての確固たるコンセンサスはないが、部分発作患者ではしば

しば 100μg/mL 以上のバルプロ酸濃度を要し、難治性部分発作の患者では 80-150μg/mL

でコントロールが得られることがある。躁うつ病に対する臨床効果とバルプロ酸血中濃

度との間には線形性があり、米国精神医学会ガイドラインでは躁うつ病に対するバルプ

ロ酸目標血中濃度を 50-125μg/mL と定めている(Allen et al. 2006, Bowden et al.

1996)。

毒性域は一般に 200μg/mL 以上とされているが、バルプロ酸血中濃度と副作用のリス

ク域値は明確でなく、昏睡、せん妄は多くの場合 100μg/mL 以上、吐き気、嘔吐、傾眠

、めまい、運動失調などの副作用症状は治療濃度域でも発現する可能性があるため、副

作用に関する注意は常に必要である。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

治療用量範囲において、投与量と総バルプロ酸血中濃度は非線形を示すが、非結合

形バルプロ酸濃度は投与量に比例して上昇する(推奨グレード A)

【解説】

バルプロ酸の経口製剤のバイオアベイラビリティはほぼ 100%である。経口投与後、通

常製剤ではおよそ 2 時間、徐放性製剤ではおよそ 10-12 時間で最高血中濃度に到達する。

バルプロ酸のたん白結合率は濃度依存性の非線形を示し(Machkichan & Macgory 2009,

Garnett et al. 2005)、治療濃度域でのたん白結合率はおよそ 70-95%である。分布容積

はほぼ細胞外液に相当するが、胎盤通過性を有するため臍帯血中バルプロ酸濃度は母体血

中濃度の 1.5-2.0 倍、たん白結合率が高いため母乳中濃度は母体血中濃度の 1-10%程度

である。大部分は肝代謝により消失し、尿中未変化体排泄率は 5%以下である。肝クリア

ランスは肝血流量に依存せず肝固有クリアランスと非結合形分率に依存するため、総バル

プロ酸血中濃度は投与量の増加とは比例せず頭打ちの傾向を示すが、非結合形濃度は投与

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量に比例して上昇する。β-酸化、シトクロム系酵素(CYP2C9、CYP2C19、CYP2A6 など)

による代謝、UDP-glucuronosyltransferase(UDPGT)を介するグルクロン酸抱合がバルプ

ロ酸の主な代謝経路であり、CYP を介して生成される代謝物 2-propyl-4-pentenoic acid

(4-en-VPA)は肝毒性と胎児毒性(催奇形性)に関与する。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

初回投与後または投与量変更後 3-5 日目以降に測定する(推奨グレード A)

【解説】

トラフ値をモニタリングする。単剤投与時のバルプロ酸の消失半減期は、通常製剤 6-

20 時間、徐放性製剤 14-26 時間程度であるため、それぞれ定常状態に到達する初回投与

後または投与量変更後の 3-5 日目以降で血中濃度を測定する。ただし、バルプロ酸は他の

AEDs など酵素誘導作用をもつ薬剤と併用により消失半減期が短縮するため、状況により

早めの測定も考慮する。

Q4.特殊患者群での体内動態について教えてください。

病態や生理状態が特殊な患者では、総バルプロ酸血中濃度測定値のみに基づく判断

は評価を誤る可能性がある(推奨グレード B)

【解説】

総バルプロ酸血中濃度は非結合形分率と肝固有クリアランス両方の影響を受けるが、非

結合形薬物濃度は肝固有クリアランスのみに依存する。つまり、腎疾患時など、バルプロ

酸たん白結合率が低下する病態は総バルプロ酸血中濃度を低下させるが非結合形バルプロ

酸の薬物動態には影響しないため投与量調節の必要はない。肝疾患時には肝固有クリアラ

ンスが低下するが、低アルブミン状態を呈している場合には非結合形分率も上昇するため

、非結合形濃度が上昇しているにもかかわらず総血中濃度は治療濃度域に入っていること

がある。このように肝・腎機能障害患者においては総バルプロ酸血中濃度測定値のみにも

とづく判断は評価を誤る危険性があり、非結合形バルプロ酸濃度の挙動を意識する必要が

ある。透析患者の透析日に追加投与の必要はないが、バルプロ酸は高濃度域ほど非結合形

分率が高く、分布容積がほぼ細胞外液に相当することから、過量投与時などの血中濃度異

常高値の際には high-efficiency HD/HDF(高効率血液透析/血液透析ろ過)が体内から

のバルプロ酸除去に有効である。

新生児のたん白結合率は 84-90%と成人に比しやや低く、非結合形分率が高いが、3-16

歳におけるたん白結合率および分布容積は成人と大きく変わらない。小児の全身クリアラ

ンスは成人に比し大きめで、消失半減期はやや短い。小児においては年齢によるバルプロ

酸体内動態の経時的変化に伴う非結合形バルプロ酸濃度の挙動を常に意識して評価を行な

う。

高齢者の全身クリアランスは非高齢者と大きく変わらないが、たん白結合率や非結合形

バルプロ酸クリアランスが低下するため、予想以上に非結合形バルプロ酸濃度が高い可能

性を考慮し、臨床症状・経過にもとづき投与量設定を行なう。

妊娠中は、妊娠後期(第 3 期)のたん白結合率の低下とクリアランス増加により、しば

しば総バルプロ酸血中濃度が低下するが非結合形バルプロ酸濃度は比較的安定であるため

、総濃度の低下のみを理由に増量すべきではない。

以上のように、特殊な患者群などの非結合形分率の上昇が予想されるような場合は、状

況により総濃度は低めの設定から様子を見るなどの配慮も必要である(Machkichan &

Macgory 2009)。

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Q5.その他に TDM を行なう上で考慮すべきことについて教えてください。

カルバペネム系抗生物質の併用は禁忌である(推奨グレード A)

【解説】

バルプロ酸は、肝ミクロソーム酵素を誘導しないため自身や併用薬剤の代謝を促進せず

、CYP2C9 や UGT、epoxide hydroxylase で代謝される薬物を併用した際には阻害剤となる

。また、バルプロ酸はたん白結合率が高いため、他の薬物のアルブミンとの結合を置換す

るとともに、非結合脂肪酸などの内因性物質による置換を受ける。カルバペネム系抗生物

質はバルプロ酸の血中濃度を低下させるため併用禁忌である。

文献検索条件

PubMed (2011.09.22)

valproic acid/(serum OR plasma) AND drug monitoring

301 hits

医中誌(2011.09.22)

バルプロ酸 AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリング)

23 hits

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ゾニサミド(ZNS)

ゾニサミドの特徴と TDM

ゾニサミドは広範な抗てんかんスペクトルを有し、難治性てんかんにも有効性を示す抗

てんかん薬で、成人と小児の部分てんかんおよび全般てんかんに適応を有する。治療用量

範囲において、ゾニサミドの投与量と血中濃度は直線的な関係を示す。一般的な治療濃度

域は確認されているが、血中濃度と薬効/副作用の関連性は明らかではない。ゾニサミド

の消失半減期は長く、酵素誘導作用を有する抗てんかん薬と薬物相互作用を示す。ゾニサ

ミドの血中濃度のモニタリングは、定常状態における患者個々の濃度を参照する場合、治

療効果が発現しない場合ならびに副作用や薬物相互作用を確認する場合等に実施を考慮す

る。

Q1.治療濃度域について教えてください。

10-30 μg/mL(推奨グレード B)

【解説】

ゾニサミドの治療濃度域は、てんかんの重症度や症例によって違いがあり、確定してい

ない。一般的な治療濃度域は 10-30 μg/mL とされ(Wilensky, 1985)、20 μg/mL 前後が

目安と考えられている。10-40 μg/mL とする報告もある(Mimaki, 1998; Johannessen et

al, 2006)。しかし、血中濃度と臨床効果との関連性は明らかでなく、てんかん発作が抑

制された患者と無効患者の血中濃度に有意な差は認められていない(Faught et al, 2001;

Brodie et al, 2004; French et al, 2004a; Sackellares et al, 2004)。一方、30

μg/mL 以上で認知機能の低下(Berent et al, 1987)、40μg/mL 以上で眠気/注意力低下

(Sackellares et al, 1985; Miura, 2004)が報告されていることから、血中濃度上昇によ

る副作用を確認する場合には血中濃度のモニタリングの実施を考慮する。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

治療用量範囲において投与量と血中濃度は直線的な関係を示す(推奨グレード B)

【解説】

ゾニサミドは経口投与でそのほとんどが吸収され、成人では 2-5 時間以内に最高血中濃

度に到達する(Johannessen et al, 2006; Perucca et al, 1996)。ゾニサミドは血清たん

白と 40-60%が結合するため(Perucca et al, 1996)、血中非結合形濃度を測定する必要

はない。ゾニサミドは赤血球に高い親和性を示すため、血清より赤血球内濃度が高くなる

。ゾニサミドは投与量と血中濃度が非線形性を示すことが報告されているが(Wagner et

al, 1984)、定常状態の治療用量範囲においては投与量に比例して血中濃度が上昇する

(Perucca et al, 1996; Faught et al 2001)。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

初回投与後または投与量変更後の 2週間以降に測定する(推奨グレード A)

【解説】

ゾニサミド単剤投与の消失半減期は 50-70 時間である(Johannessen et al, 2006;

Perucca et al, 1996)。定常状態に到達するまでには半減期の 5 倍以上の時間が必要であ

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るため、初回投与後または投与量変更後の 2 週間以降にゾニサミドの血中濃度を測定する

。内服後の血中濃度のピークは成人で 2-5 時間である(Johannessen et al, 2006;

Perucca et al, 1996)。ゾニサミドは長い半減期を有するため、定常状態以降のトラフと

ピークの血中濃度の差は小さく(Kochak et al 1998; Miura 2004)、採血時間の相違に

よる影響も小さい。しかし、同一の患者では同じタイミングで採血することが望ましい。

Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。

肝・腎機能障害患者では血中濃度のモニタリングを実施する(推奨グレード C)

【解説】

ゾニサミドは肝臓(70%)と腎臓(30%)で消失する(French et al, 2004a)。肝・腎機能

障害とゾニサミドの体内動態に関するデータは少ない。しかし、重篤な腎機能障害ではク

リアランスが低下することが報告されている。また、重篤な肝機能障害でも血中濃度が上

昇するおそれがある。従って、肝・腎機能障害患者では血中濃度モニタリングの実施を考

慮する。

Q5.小児での体内動態について教えてください。

一定の血中濃度を得るには低年齢ほど体重当たりの投与量を多くする必要がある(

推奨グレード A)

【解説】

ゾニサミドの小児における消失半減期は 16-36 時間、血中濃度のピークは 1-3 時間であ

り、低年齢ほど半減期とピーク時間が短くなる。逆に、ゾニサミドのクリアランスは低年

齢ほど大きくなるため、一定の血中濃度を得るには低年齢ほど体重当たりの投与量を多く

する必要がある(Johannessen et al, 2006; Miura, 2004; Perucca et al, 1996)。思春

期以降は成人と同様になる。従って、発達や成長を考慮した投与設計と TDM を行う必要が

ある。

Q6.薬物相互作用について教えてください。

酵素誘導作用を有する抗てんかん薬の併用によりゾニサミドのクリアランスが増加

する(推奨グレード A)

【解説】

ゾニサミドは主として肝臓のシトクロム P-450(CYP3A4)によって代謝されるため、酵

素誘導作用を有するフェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタールとの併用により

ゾニサミドのクリアランスが増加する(Ojemann et al, 1986)。従って、酵素誘導作用を

有する抗てんかん薬を併用している場合の消失半減期は 25-40 時間と短くなる

(Johannessen et al, 2006; Perucca et al, 1996)。ゾニサミドが他の抗てんかん薬(フ

ェニトイン、カルバマゼピン、バルプロ酸およびラモトリギン)の血中濃度に及ぼす影響

は小さい(French et al, 2004a; Levy 2004 & 2005; Ragueneau-Majlessi et al, 2004)

。薬物相互作用が推定される場合には、血中濃度のモニタリングを考慮する。

文献検索条件

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クロバザム(CLB)

クロバザムの特徴と TDM

クロバザムは他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかんの部分発作(単純

部分発作、複雑部分発作、二次性全般化強直間代発作)および全般発作(強直間代発作、

強直発作、非定型欠神発作、ミオクロニー発作、脱力発作)に対して他の抗てんかん薬と

併用して用いられる。クロバザムおよび活性代謝物 N-デスメチルクロバザムの血中濃度

測定方法として HPLC が用いられており外注測定が可能である。治療域は明らかとはなっ

ていないため TDM の有用性は限定的で、期待される治療効果が得られない場合や副作用が

疑われる場合等に TDM の実施を考慮する。活性代謝物の血中濃度は CYP2C19 遺伝子型の影

響を受けるため注意が必要である。

Q1.治療濃度域について教えてください。

クロバザムについて 0.1-0.4 μg/mL (活性代謝物の濃度は 8 倍高値)という報告が

ある(推奨グレード C)

【解説】

クロバザムの治療濃度域については 0.1-0.4 μg/mL(活性代謝物である N-デスメチルク

ロバザムの濃度は 8 倍高値)とする報告があるが(Neels et al, 2004)、活性代謝物とクロ

バザム血中濃度の比には大きな個体間変動があるため注意が必要である(安田ら, 2008)

。また、クロバザムや活性代謝物の血中濃度と治療効果に関連がないという報告もあるが

(Allen et al, 1983)、活性代謝物の血中濃度が高くなる患者では低用量のクロバザム

(平均 5.6 mg/day)が有効であるとの報告がある(Kinoshita et al, 2008)。そのため

、血中濃度の解釈については個々の患者の臨床症状を見ながら、個別に対応するべきであ

る。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

主として肝臓の薬物代謝酵素 CYP3A4 で代謝され、活性代謝物 N-デスメチルクロバ

ザムは CYP2C19 で不活化される(推奨グレード A)

【解説】

臨床用量を経口投与した後 1-4 時間以内に最高血中濃度に到達する(Neels et al,

2004; Glauser and Pippenger, 2000)。主として肝臓で代謝され、未変化体の尿中排泄率

は投与量の 1.0-2.7%である(マイスタン添付文書)。クロバザムは主として薬物代謝酵

素 CYP3A4 で代謝され、活性代謝物 N-デスメチルクロバザムは CYP2C19 で不活化される

(Giraud et al, 2004)。活性代謝物の薬理活性は未変化体の 40 % ( Fielding &

Hoffmann, 1979)あるいは 1/2-1/15(マイスタンインタビューフォーム)であるとされて

いる。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

初回投与後または投与量変更後 2-4 週目以降に測定する(推奨グレード B)

【解説】

クロバザムの消失半減期は単剤投与時において成人で 10-30 時間、活性代謝物の半減期

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は 36-46 時間との報告があり(Neels et al, 2004; Glauser and Pippenger, 2000)、定常

状態における未変化体および活性代謝物の血中濃度を測定するには初回投与後または投与

量変更後 2-4 週目以降の採血が必要である。また、未変化体、活性代謝物ともに半減期が

長く、採血時間の影響は受けにくいため、投与前採血は必ずしも必要ないが、測定毎の採

血タイミングをそろえることが望ましい。

Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。

肝代謝型薬物であり、肝障害の患者では減量が必要と考えられるが、明確な減量基

準はない(推奨グレード C)

【解説】

見かけの分布容積は肝炎・肝硬変患者で有意に増加し、消失半減期も肝機能の低下に伴

い有意に延長する(マイスタン添付文書)。見かけのクリアランスは健康成人とほぼ同じ

である。肝障害患者で一般に排泄が遅延する傾向があるので、肝障害の患者では減量が必

要と考えられるが、明確な減量基準はない。また、クロバザムの全身クリアランスは男性

では年齢に従い減少するが、女性では影響しないとの報告もある(Greenblatt et al,

1981)。また、高齢者では投与量を半量にするべきであるとの指摘もある(Brogden et

al, 1980)。小児での半減期は 16 時間と成人に比べて短い。

Q5.薬物間相互作用について教えてください。

フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、バルプロ酸の併用によって

、クロバザムの血中濃度は低下する(推奨グレード B)

【解説】

フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、バルプロ酸の併用によって、ク

ロバザムのクリアランスは上昇し血中濃度は低下する(マイスタン添付文書)。相互作用

の機序は、クロバザムの代謝には主として CYP3A4 が関与しており、フェニトイン、カル

バマゼピン、フェノバルビタールの併用により CYP3A4 酵素が誘導され、クロバザムの代

謝が促進するためである。また、バルプロ酸との相互作用機序として、クロバザムあるい

は活性代謝物の血漿たん白結合率が 85-90%と高いため、バルプロ酸の併用によりクロバ

ザムのたん白結合率が低下するためと推測される。

一方、クロバザム併用によって、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール

、バルプロ酸のクリアランスは低下することが報告されているが、その機序は不明である

Q6.クロバザムのファーマコゲノミクスについて教えてください。

活性代謝物 N-デスメチルクロバザムの血中濃度は、CYP2C19 遺伝子多型の影響を受

ける(推奨グレード A)

【解説】

活性代謝物 N-デスメチルクロバザムの血中濃度は、CYP2C19 遺伝子多型の影響を受ける

(Kosaki et al, 2004; Seo et al, 2008)。Seo ら(2008)の報告では、クロバザムを平

均 0.43-0.49 mg/kg/day 投与時において、クロバザムの血中濃度は遺伝子型の影響を受け

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ないものの、N-デスメチルクロバザムの血中濃度は、0.96±0.61, 2.14±1.69,

7.70±6.04 μg/mL と CYP2C19 遺伝子変異数の増加に伴い増加する。また、CYP2C19 遺伝

子変異を有する患者に通常量のクロバザムを投与した場合に、N-デスメチルクロバザム血

中濃度が顕著に高くなり、副作用が認められたとの症例報告がある(Contin et al, 2002

)。さらに、CYP2C19 遺伝子多型はクロバザムの有効性に影響するものの、副作用や耐性

の発現とは関連がないとの報告がある(Seo et al, 2008)。

文献検索条件

PubMed (2011.09.21)

clobazam/(serum OR plasma) AND drug monitoring

12 hits

医中誌(2011.09.21)

クロバザム AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリング)

1 hit

参考文献

Allen JW, Oxley J, Robertson MM, et al. Clobazam as adjunctive treatment in

refractory epilepsy. Br Med J. 1983; 286:1246-1247.

(エビデンスレベルⅤ)

Brogden RN, Heel RC, Speight TM, et al. Clobazam: A review of its

pharmacological properties and therapeutic use in anxiety. Drugs. 1980; 20:161-

178.

(エビデンスレベル I)

Contin M, Sangiorgi S, Riva R, Parmeggiani A, Albani F, Baruzzi A. Evidence of

polymorphic CYP2C19 involvement in the human metabolism of N-desmethylclobazam.

Ther Drug Monit. 2002;24:737-741.

(エビデンスレベル IV)

Fielding S, Hoffmann I. Pharmacology of anti-anxiety drugs with special

reference to clobazam. Br J Clin Pharmacol. 1979;7 Suppl 1:7S-15S.

(エビデンスレベル III)

Giraud C, Tran A, Rey E, Vincent J, Tréluyer JM, Pons G. In vitro

characterization of clobazam metabolism by recombinant cytochrome P450 enzymes:

importance of CYP2C19. Drug Metab Dispos. 2004;32:1279-1286.

(エビデンスレベルⅣ)

Glauser TA, Pippenger CE. Controversies in blood-level monitoring: reexamining

its role in the treatment of epilepsy. Epilepsia. 2000;41 Suppl 8:S6-S15.

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- 35 -

(エビデンスレベル I)

Greenblatt DJ, Divoll M, Puri SK, et al: Clobazam kinetics in the elderly. Br J

Clin Pharmacol. 1981;12:631-636.

(エビデンスレベル IV)

Kinoshita M, Ikeda A, Begum T, Terada K, Shibasaki H. Efficacy of low-dose, add-

on therapy of clobazam (CLB) is produced by its major metabolite, N-desmethyl-

CLB. J Neurol Sci. 2007;263:44-48.

(エビデンスレベル IV)

Kosaki K, Tamura K, Sato R, Samejima H, Tanigawara Y, Takahashi T. A major

influence of CYP2C19 genotype on the steady-state concentration of

N-desmethylclobazam. Brain Dev. 2004;26:530-534.

(エビデンスレベル IV)

Neels HM, Sierens AC, Naelaerts K, Scharpé SL, Hatfield GM, Lambert WE.

Therapeutic drug monitoring of old and newer anti-epileptic drugs. Clin Chem Lab

Med. 2004;42:1228-1255.

(エビデンスレベル I)

Seo T, Nagata R, Ishitsu T, Murata T, Takaishi C, Hori M, Nakagawa K. Impact

of CYP2C19 polymorphisms on the efficacy of clobazam therapy. Pharmacogenomics.

2008;9:527-537.

(エビデンスレベル IV)

安田幸代, 矢野育子, 北村朋子, 橋田 亨, 木下真幸子, 池田昭夫, 高橋良輔, 乾 賢一

. 成人難治性てんかん患者におけるクロバザムおよび活性代謝物の体内動態に関する解析

. TDM 研究. 2008;25:165-169.

(エビデンスレベル V)

マイスタン添付文書、大日本住友製薬(株)、2010.9.

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1139006C1030_2_08/

マイスタンインタビューフォーム、大日本住友製薬(株)、2010.9.

http://www.alfresa-pharma.co.jp/medical/iyaku/docs/if/if_00450.pdf

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クロナゼパム(CZP)

クロナゼパムの特徴と TDM

クロナゼパムはミオクロニー発作、失立発作、点頭てんかん発作等に用いられる。クロ

ナゼパムの血中濃度測定方法として HPLC が用いられており外注測定が可能である。治療

域の報告はあるが TDM の有用性は限られているため、治療効果が発現しない場合や副作用

が疑われる場合等に TDM の実施を考慮する。

Q1.治療濃度域について教えてください。

治療域は 0.02-0.07 μg/mL とされるが、0.04-0.27μg/mL で中毒が見られたとの

報告もある(推奨グレード C)

【解説】

多くの文献において治療域は 0.02-0.07μg/mL(Matsuda et al, 1989; MacKichan et

al, 1986; Glauser and Pippenger, 2000;Neels et al, 2004)とされるが、上限を

0.1μg/mL とする文献もある(Pichini et al, 2009)。一方、0.04-0.27μg/mL で中毒が

見られたとの報告もある。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

クロナゼパムのバイオアベイラビリティは 90%以上で、肝代謝型薬物である(推奨

グレード A)

【解説】

クロナゼパムは臨床用量を経口投与した後 1-4 時間以内に最高血中濃度に到達する(

Glauser and Pippenger, 2000;Neels et al, 2004)。クロナゼパムのバイオアベイラビ

リティは 90%以上で、肝の CYP3A4 で主として代謝され、投与量の 2%以下が未変化体とし

て尿中に排泄される(Matsuda et al, 1989; MacKichan et al, 1986)。クロナゼパムは

血漿たん白と 80-90%結合し、成人の分布容積は 2-6 L/kg である(Matsuda et al, 1989;

MacKichan et al, 1986)。小児での分布容積は 1.5-11.0 L/kg と報告されている(

Pichini et al, 2009)。

酵素誘導作用を有するフェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタールの併用によ

って、クロナゼパムのクリアランスは上昇する。また、クロナゼパム併用によってカルバ

マゼピンのクリアランスは上昇し、プリミドンのクリアランスは低下する(須貝,2009)

。フェニトインについては、クリランスは上昇あるいは低下するとの報告がある(リボト

リール添付文書)。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

初回投与後または投与量変更後 1-4 週間以降に測定する(推奨グレード B)

【解説】

クロナゼパムの消失半減期は単剤投与時において成人では 20-60 時間(Matsuda et al,

1989; Glauser and Pippenger, 2000;Neels et al, 2004)、小児では 20-140 時間

(Pichini et al, 2009)という報告がある。定常状態における血中濃度を測定するには投

与開始 1-4 週間目以降の採血が必要である。

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Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。

肝障害のある患者や高齢者では、クロナゼパムの消失が遅延する可能性があるので

慎重に投与する。(推奨グレード C)

【解説】

尿中排泄の割合は投与量の 2%以下と低いため、腎障害時における投与量調節は必要で

はない(Bennett et al, 1994)。ベンゾジアゼピンは肝代謝型薬物のため、肝機能低下

時には投与量や投与間隔を変更する必要がある(Greenblatt and Shader, 1974)。また

、クロナゼパムはふらつきや運動失調、行動異常を引き起こすことが多いため、高齢者で

は投与量の減量が望ましい。

文献検索条件

PubMed (2011.09.21)

clonazepam/(serum OR plasma) AND drug monitoring

40 hits

医中誌(2011.09.21)

クロナゼパム AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリン

グ)

2 hits

参考文献

Bennett WM, Aronoff GR, Golper TA, et al: Drug Prescribing in Renal Failure, 3rd.

American College of Physicians, Philadelphia, PA, 1994.

(エビデンスレベル I)

Glauser TA, Pippenger CE. Controversies in blood-level monitoring: reexamining

its role in the treatment of epilepsy. Epilepsia. 2000;41 Suppl 8:S6-S15.

(エビデンスレベル I)

Greenblatt DJ and Shader RI: Drug therapy: benzodiazepines. N Engl J Med. 1974;

291:1011.

(エビデンスレベル I)

MacKichan JJ, Ferrendelli JA, Wilder BJ. Antiepileptic drugs. In: Taylor WJ,

Caviness MHD, editors. A textbook for the clinical application of therapeutic

drug monitoring. Irving, Texas: Abbott Laboratories; 1986. p.207-281.

(エビデンスレベル I)

Matsuda I, Higashi A, Inotsume N. Physiologic and metabolic aspects of

anticonvulsants. In: Blumer JL, Reed MD, Guest Editors. The Pediatric Clinics of

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- 38 -

North America. Philadelphia: W.B. Saunders Company; 1989. p.1099-1111.

(エビデンスレベル I)

Neels HM, Sierens AC, Naelaerts K, Scharpé SL, Hatfield GM, Lambert WE.

Therapeutic drug monitoring of old and newer anti-epileptic drugs. Clin Chem Lab

Med. 2004;42:1228-1255.

(エビデンスレベル I)

Pichini S, Papaseit E, Joya X, et al. Pharmacokinetics and therapeutic drug

monitoring of psychotropic drugs in pediatrics. Ther Drug Monit. 2009;31:283-

318.

(エビデンスレベル I)

須貝研司. 小児の難治性てんかんの治療. 臨床精神医学. 2009;38:1711-1721

(エビデンスレベル I)

ランドセン添付文書、大日本住友製薬(株)、2010.9.

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1139003C1052_2_04/

リボトリール添付文書、中外製薬(株)、2010.9.

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1139003C1044_1_06/

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ニトラゼパム(NZP)

ニトラゼパムの特徴と TDM

ニトラゼパムは異型小発作群および焦点性発作に用いられる。ニトラゼパムの血中濃度

測定方法として HPLC が用いられており外注測定が可能である。治療域の報告はあるが

TDM の有用性は限られている。

Q1.治療濃度域について教えてください。

治療域は 0.03-0.18μg/mL とされる(推奨グレード C)

【解説】

治療域は 0.03-0.07μg/mL(Neels et al, 2004)、あるいは 0.04-0.18μg/mL とする

報告がある(MacKichan et al, 1986; Matsuda et al, 1989)。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

ニトラゼパムのバイオアベイラビリティは 50-90%で、肝代謝型薬物である(推奨

グレード A)

【解説】

臨床用量を経口投与した後 0.5-5 時間以内に最高血中濃度に到達し、バイオアベイラビ

リティは 60-90%である(Neels et al, 2004)。ニトラゼパムの代謝部位は主として肝臓で

あるが、一部は腸管壁で薬物代謝酵素により代謝される(添付文書)。主な代謝経路はニ

トロ基の還元とそれに続くアセチル化である。未変化体の尿中排泄量は投与量の 1%以下

である。ニトラゼパムの成人での全身クリアランスは 50 mL/h/kg で、血漿たん白結合率

は 85-95%、分布容積は 1.5-3 L/kg(MacKichan et al, 1986; Matsuda et al, 1989)、

あるいは 2-5 L/kg(Neels et al, 2004)と報告されている。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

初回投与後または投与量変更後 1-2 週間以降に測定(推奨グレード B)

【解説】

ニトラゼパムの消失半減期は単剤投与時に成人において 17-48 時間であることから

(MacKichan et al, 1986; Matsuda et al, 1989; Neels et al, 2004)、定常状態におけ

る血中濃度を測定するには投与開始 1-2 週間目の採血が必要である。

Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。

肝障害のある患者や高齢者では、消失が遅延する可能性があるので慎重に投与する

(推奨グレード C)

【解説】

尿中排泄の割合は投与量の 1%以下と低いため(MacKichan et al, 1986; Matsuda et al,

1989)、腎障害時における投与量調節は必要ではない。ベンゾジアゼピンは肝代謝型薬物

のため、肝機能低下時には投与量や投与間隔を変更することが望ましい。

また、妊婦にニトラゼパム 5mg を経口投与 12 時間後の母親の血漿中濃度と臍帯血濃度

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- 40 -

は同程度であった(Kangas et al, 1977)。

文献検索条件

PubMed (2011.09.21)

nitrazepam/(serum OR plasma) AND drug monitoring

3 hits

医中誌(2011.09.21)

ニトラゼパム AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリン

グ)

0 hit

参考文献

Kangas L, Kanto J, Erkkola R. Transfer of nitrazepam across the human placenta.

Eur J Clin Pharmacol. 1977;12:355-357.

(エビデンスレベル V)

MacKichan JJ, Ferrendelli JA, Wilder BJ. Antiepileptic drugs. In: Taylor WJ,

Caviness MHD, editors. A textbook for the clinical application of therapeutic

drug monitoring. Irving, Texas: Abbott Laboratories; 1986. p.207-281.

(エビデンスレベル I)

Matsuda I, Higashi A, Inotsume N. Physiologic and metabolic aspects of

anticonvulsants. In: Blumer JL, Reed MD, Guest Editors. The Pediatric Clinics of

North America. Philadelphia: W.B. Saunders Company; 1989. p.1099-1111.

(エビデンスレベル I)

Neels HM, Sierens AC, Naelaerts K, Scharpé SL, Hatfield GM, Lambert WE.

Therapeutic drug monitoring of old and newer anti-epileptic drugs. Clin Chem Lab

Med. 2004;42:1228-1255.

(エビデンスレベル I)

ベンザリン添付文書、塩野義製薬(株)、2011.7.

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1124003C1092_1_09/

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<新規抗てんかん薬>

ラモトリギン(LTG)

ラモトリギンの特徴と TDM

ラモトリギンは他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作

、強直間代発作、Lennox-Gastaut 症候群における全般発作に対する抗てんかん薬との併

用療法として、成人および小児に適応がある。チュアブル・ディスパーシブル錠として開

発されており、錠剤を咀嚼してそのまま服用、水とともに服用、あるいは水に懸濁させて

服用などが可能なため、小児にも使いやすい製剤である。他の抗てんかん薬と併用すると

ラモトリギン服用患者間で、薬物体内動態に大きな個人差が認められている。有効血中濃

度域に関する報告があるが(Musenga et al, 2009)、血中濃度と薬効や副作用との関連

性が明らかでないとする論文もある(Striano et al, 2008)。併用する抗てんかん薬に

よって血中濃度が影響を受けること、長期投与によりラモトリギンの代謝酵素の誘導があ

りうること、海外臨床試験において併用する抗てんかん薬の血中濃度が変動した症例があ

ることなどから、一部の症例ではラモトリギンの血漿中濃度測定が有用な場合がある。

ラモトリギンには皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)及び中毒性表皮壊死症

(Lyell 症候群)等の重篤な皮膚障害があらわれることがあり、定められた投与量以上に投

与した場合に発生頻度が高くなること報告されている。重篤な皮膚障害は投与 8 週間以内

に起こることが多く、バルプロ酸併用時や小児において発現しやすい。

Q1.治療濃度域について教えてください。

3-15 μg/mL(推奨グレード C)

【解説】

本邦の成人と小児における体内動態試験結果によると、血漿中濃度が高い症例において

も改善率が高くなる傾向は認められていない。また、複視などの副作用が投与初期の増量

段階で発現率が高かったが、血漿中濃度との相関は認められていない。

ラモトリギンの有効血中濃度域は 1-4 μg/mL、最近では 3-15 μg/mL と提案されるよ

うになったが確定していない。患者によっては 20 μg/mL 程度まで耐薬性があるとの報告

がある。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

バルプロ酸などグルクロン酸抱合を競合的に阻害する薬物を併用すると半減期が延

長し、グルクロン酸抱合を誘導する薬剤を併用すると半減期は短縮する(推奨 グ

レード A)

【解説】

ラモトリギンは臨床用量を経口投与すると 1-3 時間以内に最高血中濃度に到達する。ラ

モトリギンは肝において主にグルクロン酸抱合酵素(主に UGT1A4)により不活性なグル

クロン酸抱合体に代謝される。そのため、同じようにグルクロン酸抱合を受けるバルプロ

酸を併用すると抱合が競合的に阻害されてラモトリギンの半減期が約 2 倍に延長されたと

の報告がある。一方、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、プリミドン

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- 42 -

はラモトリギンのグルクロン酸抱合を誘導することが知られている。本邦においてラモト

リギンは他の抗てんかん薬と併用して使用することとされているため併用薬の影響を評価

することが重要であり、バルプロ酸を併用する場合に比較して、フェニトイン、カルバマ

ゼピン、フェノバルビタール、プリミドンを併用する場合のほうがラモトリギンの投与量

が多く設定されている。また、その他の抗てんかん薬を併用する際にはバルプロ酸を併用

する場合に従った投与量が設定されている。併用する抗てんかん薬の取り扱いについては

、小児においても同様の投与量調節が規定されている。

ラモトリギンは線形の体内動態を示すことから、平均血中濃度を調整するには投与量を

比例的に増減する。ラモトリギンは血漿たん白と約 50%が結合するため、血中非結合形濃

度を測定する必要はない。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

投与開始 1週間以降に測定する(推奨グレード C)

【解説】

ラモトリギンは線形の体内動態を示す。本邦では他の抗てんかん薬との併用療法として

承認されている。単剤投与時における消失半減期は 15-30 時間とされており、定常状態に

おける血中濃度を測定するには最長で投与開始 1 週間以降の採血が必要である。一方、ラ

モトリギンは投与開始時に自己誘導されるとの報告もあるが、(Stefan & Feuerstein

2007)、自己誘導の期間に関する具体的な情報は提示されていない。

Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。

疾患および年齢によりクリアランスが変動する(推奨グレード C)

【解説】

肝障害や腎障害の程度によりラモトリギンのクリアランスが低下する。また、生後 6 ヶ

月から 5 歳までの小児においては、代謝酵素誘導作用のある抗てんかん薬と併用するとラ

モトリギンの消失半減期が短縮する。平均年齢 71 歳の高齢健常人の消失半減期は平均

31.2 時間と、平均年齢 31 歳の若年健常人の 24.9 時間と比較して延長したとの報告があ

る。

妊婦の体内動態に関するデータは少ないが、妊娠継続に伴ってラモトリギンの総クリア

ランスと非結合形クリアランスが増加し、てんかん発作頻度が増加した結果が示されてい

る。

文献検索条件

PubMed (2011.07.03)

lamotrigine/(serum OR plasma) AND drug monitoring

146 hits

医中誌(2011.07.05)

ラモトリギン AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリン

グ)

1 hit

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ガバペンチン(GBP)

ガバペンチンの特徴と TDM

ガバペンチンは他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作

に対する抗てんかん薬との併用療法として用いられる抗てんかん薬である。2011 年 7 月

には 3-12 歳までの幼児と小児への用法・用量が追加承認され、シロップ剤が市販された

海外においてはガバペンチン有効濃度が示されているが、本邦における承認申請時の臨

床試験結果では臨床効果および副作用との相関性が明確ではないため、服薬コンプライア

ンスの確認以外の TDM の必要性は低いとされている。主な副作用は傾眠、浮動性めまい、

頭痛、ミオクローヌスの誘発などであるが、特に投与初期に現れることが多い。

ガバペンチンは薬物相互作用を起こしにくい抗てんかん薬であることから、他の抗てん

かん薬と併用しやすいと考えられている。しかし、金属カチオンを含む制酸薬はガバペン

チンの AUC を 19%低下させ、モルヒネは 44%増加させたとの報告がある。

Q1.治療濃度域について教えてください。

2-20μg/mL(推奨グレード C)

【解説】

一部の文献での有効血中濃度は 2-20μg/mL 程度とされている。しかし、ガバペンチン

の副作用発現率と血中濃度との直接的な関係は認められないことから有効血中濃度の設定

は困難であり、現在のところ TDM を行うことによる投与量管理の必要性は低い。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

消化管吸収に飽和が見られるため、臨床用量で投与量と AUC は比例しない(推奨グ

レード A)

【解説】

ガバペンチンの消化管吸収は臨床用量で飽和される輸送担体を介しており、AUC は投与

量比例的に増加しない。ヒト血漿を用いた添加試験では、3%未満の血漿たん白結合率を示

したとの報告がある。放射性ラベルしたガバペンチンの静脈内および経口投与後には尿中

から代謝物が検出されず、代謝を受けないとされる。また、尿細管からの分泌と再吸収も

ほとんどないことが確認されており、ガバペンチンの腎クリアランスはクレアチニンクリ

アランスと一致したとの報告がある。ガバペンチンは腎排泄型薬物であり、腎機能低下患

者では全身クリアランスが低下する。また、加齢に伴ってガバペンチンの経口クリアラン

スが低下する。

国内外において行われた薬物動態試験結果をまとめた母集団体内動態解析でも、クレア

チニンクリアランス値によりガバペンチンの全身クリアランスが推定されることが示され

ている(古郡ら 2007)。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

投与開始 5日以降に測定する(推奨グレード C)

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- 44 -

【解説】

ガバペンチンの消失半減期は 5-9 時間であるため、一定投与量が維持された場合の定常

状態到達時間は約 2 日後となる。ただし、本邦でのガバペンチン投与開始時には、成人に

対して 1 日量 600 mg、2 日目の 1 日量 1200 mg を 3 分割投与し、3 日目以降は維持量とし

て 1 日量 1200-1800 mg を 3 分割投与するため、この場合の定常状態到達には 5 日以上を

要する。

Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。

腎機能障害患者ではクレアチニンクリアランス値により投与量及び投与間隔調節す

る(推奨グレード A)

【解説】

ガバペンチンはほとんどが腎より未変化体として排泄されるため、クレアチニンクリア

ランス値を基準として投与量および投与間隔を調整する必要がある。透析患者では、透析

後にガバペンチンを投与される。

高齢者では加齢に伴って腎機能が低下していることがあるため、血中濃度が高値を示す

ことがある。

文献検索条件

PubMed (2011.07.03)

gabapentin/(serum OR plasma) AND drug monitoring

49 hits

医中誌(2011.07.05)

ガバペンチン AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリン

グ)

1 hit

トピラマート(TPM)

トピラマートの特徴と TDM

トピラマートは、他の抗てんかん薬で十分な効果が得られないてんかん患者の部分発作

に対する抗てんかん薬との併用療法として用いられる。通常、成人には 1 回量 50 mg を 1

日 1-2 回経口投与で開始し、1 週間以上の間隔をあけて漸増する。トピラマートは有効性

及び安全性が必ずしも投与量と相関していないことや、漸増法により最適な投与量を見い

だすため、TDM は特に必要ないとされる。しかし、フェニトインやカルバマゼピンなど代

謝酵素を誘導する薬物の併用を中止した場合にはトピラマートの血中濃度が増加すること

が報告されているため、これらを併用していた患者ではトピラマートの TDM が有用と考え

られる。

トピラマートは未変化体として約 60%程度が腎臓から排泄されるため、腎機能低下患者

では投与量を調整する必要がある。

Q1.治療濃度域について教えてください。

5-20 μg/mL(推奨グレード C)

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【解説】

トピラマートの治療濃度域は 5-20 μg/mL とされており、トピラマートの有効な症例で

は 20 μg/mL 以下で反応があるとされる。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

線形体内動態を示し、肝代謝および腎排泄を受ける(推奨グレード A)

【解説】

トピラマートの体内動態は線形性を示し、血漿からの消失半減期は 5-20 時間である。

トピラマートの血清たん白結合率は低いが、赤血球へ飽和過程のある移行性を示す。その

ため、全血中濃度と血漿中濃度から算出される AUC 比は投与量に依存して低い値を示し、

全血中濃度の消失半減期は 63-115 時間と血漿からの消失半減期よりも長い。これらのこ

とから TDM には全血試料による測定が望ましいと考えられるが明確な全血中有効濃度域が

報告されていない。

トピラマートは約 60%が未変化体として排泄されるが、残りは主に CYP3A4 により代謝

される。フェニトインやカルバマゼピンを併用すると肝代謝酵素が誘導され、トピラマー

トの血中濃度が単独投与時に比較して低下し、また、これらの併用薬物の投与量を減量も

しくは中止するとトピラマートの血中濃度が上昇することがある。一方、トピラマートは

フェニトインの代謝を阻害することがあり、併用によりフェニトインの血中濃度が上昇す

る。トピラマートの活性代謝物は同定されていない。

Q3.測定タイミングについて教えてください。

投与開始 5日以降に測定する(推奨グレード C)

【解説】

血漿中からの消失半減期は 5-20 時間と報告されている。トピラマートは漸増法により

至適投与量が決められるので、一定の投与量で投与開始し、5 日間以上経過すれば定常状

態に到達したと考えられる。

Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。

クレアチニンクリアランスが 70 mL/min 未満の場合には、半量にする(推奨グレー

ド A)

【解説】

クレアチニンクリアランスが 30-69 mL/min の中程度腎機能障害患者においては投与量

を半減することが推奨される。中程度から重度肝機能障害患者においても AUC が約 30%増

加し、全身クリアランスが約 30%低下したとされているため、これらの肝機能障害患者へ

の投与量は慎重に考慮すべきである。

高齢者では健常成人に比較して、Cmax と AUC が 25%程度高く、消失半減期が約 10%程度

延長したとの報告がある。

文献検索条件

PubMed (2011.07.03)

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topiramate/(serum OR plasma) AND drug monitoring

65 hits

医中誌(2011.07.05)

トピラマート AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリン

グ)

2 hits

レベチラセタム(LEV)

レベチラセタムの特徴と TDM

レベチラセタムは、他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分

発作に対する抗てんかん薬との併用療法として用いられる。レベチラセタムは腎臓から未

変化体として排泄される割合の高い薬物であり、腎機能障害の程度に応じた投与量設定が

必要である。

レベチラセタムの血漿中濃度と有効性及び安全性との明確な相関は認められていないた

め、現時点では定期的な TDM の必要性は低い。しかし、投与量や併用薬の変更時の患者状

態を把握するため、及び、腎機能低下患者においては血中濃度測定が必要な場合も考えら

れる。

Q1.治療濃度域について教えてください。

12-46μg/mL(推奨グレード C)

【解説】

外国人てんかん患者において、臨床効果が得られた患者におけるレベチラセタムの血清

中未変化体濃度は 12-46μg/mL であったとの報告がある。

Q2.一般的な体内動態について教えてください。

投与量の約 70%が未変化体として尿中に排泄される腎排泄型薬剤である(推奨グレ

ード A)

【解説】

レベチラセタムは経口投与後速やかに吸収されるが、食後に投与すると AUC は同等であ

るが Cmax が 30%低下する。たん白結合率は 10%未満であり、分布容積は体内総水分量に近

似した 0.56 L/kg との報告がある。肝シトクロム P450 系酵素では代謝されず、一部が酵

素的に加水分解された不活性代謝物となる。投与 48 時間までに尿中に未変化体として

65.9%が排泄される。

国内外の血中濃度データを用いた母集団薬物動態解析が行われている。その結果、経口

クリアランスに対して体重、性別、クレアチニンクリアランス値、併用抗てんかん薬が影

響因子として見いだされ、また、経口投与後のみかけの分布容積に対して体重、併用抗て

んかん薬、健康状態も影響因子として抽出されている。一方、レベチラセタムは併用する

フェニトインの血中濃度に影響を及ぼさず、バルプロ酸併用時においてもバルプロ酸とレ

ベチラセタム双方の血中濃度に影響はないとされている。

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Q3.測定タイミングについて教えてください。

投与開始 2日以降に測定する(推奨グレード C)

【解説】

レベチラセタムの消失半減期は 6-8 時間とされているため、一定の投与量を維持した場

合には、2日後には定常状態に到達すると考えられる。

Q4.特殊患者での体内動態について教えてください。

腎機能障害患者ではクレアチニンクリアランス値を参考に、投与量及び投与間隔を

調整する(推奨グレード A)

【解説】

腎機能低下患者では、クレアチニンクリアランス値に応じた 1 日投与量の調整が必要で

あり、特に透析患者に対しては投与量を減じるとともに、透析で消失したレベチラセタム

を透析後に補充する投与が必要である。中等度までの肝障害患者では正常患者との薬物動

態値の差異は認められていないが、重度肝障害患者では全身クリアランスが健康成人の

50%程度となったとの報告がある。

妊娠時において、レベチラセタムの血中濃度が妊娠前の 60%となったとの報告がある。

文献検索条件

PubMed (2011.07.03)

levetiracetam /(serum OR plasma) AND drug monitoring

55 hits

医中誌(2011.07.05)

レベチラセタム AND (血清 OR 血漿) AND (血中濃度モニタリング OR ドラッグモニタリ

ング)

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ガバペンチン審査報告書、医薬品医療機器総合機構、2011.7.

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ガバペンチン添付文書、ファイザー(株)、2011.7.

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1139007F1022_2_02/

トピラマート審査報告書、医薬品医療機器総合機構、2008.10.

http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/P200700033/23012400_21900AMY00038_A100_1.pdf

トピラマート添付文書、協和発酵キリン(株)、2010.10.

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1139009F1021_1_07/

レベチラセタム審査報告書、医薬品医療機器総合機構、2008.10.

http://www.info.pmda.go.jp/shinyaku/P201000046/820110000_2200AMX00864000_A100_2.

pdf

レベチラセタム添付文書、大塚製薬(株)、2011.5.

http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1139010F1024_1_02/

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【本ガイドライン内容の確認を依頼した学会名、担当者、所属】

日本神経学会 池田 昭夫 准教授 京都大学大学院医学研究科臨床神経学 日本てんかん学会

猿渡 淳二 助教

熊本大学大学院生命科学研究部薬物治療学分野

日本小児神経学会

日本小児科学会

大塚 頌子 教授

岡山大学医学部小児神経学

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薬物 フェニトイン フェノバルビター カルバマゼピン バルプロ酸ナトリウ ゾニサミド クロバザム クロナゼパム ニトラゼパム ガバペンチン ラモトリギン トピラマート レベチラセタム略称 PHT PB CBZ VPA ZNS CLB CZP NZP GBP LTG TPM LEV

有効血中濃度域 10-20 μg/mL 10-35 μg/mL 4-12 μg/mL 40-125 μg/mL 10-30 μg/mL

0.1-0.4 μg/mL(活性代謝物の濃

度は約8倍)0.02-0.07 μ

g/mL 0.03-0.18 μg/mL 2-20 μg/mL 3-15 μg/mL 5-20 μg/mL 12-46 μg/mL副作用発現濃度 >20 μg/mL >35 μg/mL 8-12 μg/mL 100-125 μg/mL以上最高血中濃度到

達時間 3-12 h 1,5-6 h 4-12 h通常製剤 2 h、徐放

性製剤10-12 h 2-6 h 1-4 h 1-4 h 0.5-5 h 2-3 hr 1-3 hr 1-4 hr 1 hr

バイオアベイラビリティ 90±3% >90% 75-85%

通常製剤 90-100%、10%程度低下する徐

放性製剤あり >95% >90% 60-90%35-60%(投与量

依存性) ほぼ100% 80-90% 100%全身クリアラン

成人

Vmax 5.9±1.2mg/kg/day, Km 5.7

±2.9 mg/L 2.7-10.7 mL/h/kg

高齢者では低下,妊娠時は約2倍に増加、分娩後2週間で

元に戻る

15-21mL/h/kg, 併

用時20-30mL/h/kg 50 mL/h/kg

初回投与時

25-96 mL/h/kgepoxide体:86±25

mL/h/kg

6-10 mL/h/kg(単剤), 10-20

mL/h/kg(多剤) 50-90 mL/h/kg継続投与時

100 mL/h/kg(多剤)

6-10 mL/h/kg(単剤), 6-30

小児

Vmax 10-13mg/kg/day, Km 2-3

mg/L (0.5-6歳),Vmax 8-10

mg/kg/day, Km 6-8mg/L (7-16歳)

5.3-11.3mL/h/kg, 新生児

2.7-10.7 mL/h/kg

成人よりも高い(CYP3A4活性が高い

ため)15歳までは年齢に依

存 40-150 mL/h/kg初回投与時

110 mL/kg/hr(単剤)

新生児10.8mL/h/kg(多剤)

継続投与時

成人50-400mL/h/kg(成人)

0-3歳320 mL/h/kg4-9歳189 mL/h/kg

10-15歳123 mL/h/kg15歳以上90 mL/h/kg

小児8-23mL/h/kg(単剤), 13-42 mL/h/kg(多剤),

新生児14.4±9.3mL/h/kg

高齢者 成人と同程度初回投与時

7-8 mL/h/kg(健常人)

継続投与時

15.9±10.5 mL/h/kg(65-74y), 16.8±

15.8 mL/h/kg (75-84y), 16.7±20.1

mL/h/kg (≥85y)

疾患肝障害患者ではク

リアランス低下

半減期

成人6-36 h, 小児5-14 h, 新生児10-80 h, 血中濃度依

存性

成人75-126 h、小児37-198 h、乳児63.2±4.2 h、新

生児43-217 h

単剤投与

10-36 h長期投与10-24 h

小児8-20 h新生児8-28 h

※epokiside体:6 h成人6-20 h、小児6-15 h、乳幼児6-15 h 50-70 h

成人10-30 h(活性代謝物36-

46 h)、小児16h(活性代謝物15

h)20-60 h, 小児

20-140 h 17-48 h 5-9 hr 15-30 hr 5-20 hr 6-8 hr

併用投与 連続投与5-14h

成人2-12 h、小児4-12 h、乳幼児3-8

h、新生児17-40 h、高齢者(健常人)14- 25-40 h

分布容積 0.64±0.04 L/kg

成人0.55-0.73L/kg、小児0.57-0.7 L/kg、乳児0.6±0.07 L/kg、新生児0.8-

0.8-1.8 L/kg新生児1.1-2.6 L/kg※epoxide体:0.74

±0.13 L/kg 0.2-0.4 L/kg0.8-1.6

L/kg

2.0-6.0 L/kg,小児1.5-11.0

L/kg 1.5-5.0 L/kg 0.6-0.8 L/kg 1-1.4 L/kg 0.7-1.3 L/kg 0.5-0.7 L/kg

たん白結合率 89±23% 45-50%

25(10-50)%尿毒症、肝疾患で↑新生児、幼児で↓、高ビリルビンがある

とさらに↓AAG大の症例で↓

※epoxide体:16-

70-95%, 血中濃度上昇に伴い結合率が低下するとの報告あり 40-60%

90%(活性代謝物85%) 80-90% 85-95% nil about 50% 15-20% >10%

尿中未変化体排泄率 2±8% 20-30% <1% <3% 28.9-47.8% 1.0-2.7% <2% <1% almost 100% about 10% 40-70% about 70%

定常状態到達時間 5-28 days 2-4 weeks 3-5 days 10-14 days 2-4 weeks 1-4 week 1-2 weeks

初回投与時 3-4 weeks

投与量変更時 4-5 days

透析除去率 2-4%35% (血液透析6

h)<20%(血液透析6

h)

<20%(low-efficiency HD),

40-50%との報告あり

代謝物 p-HPPH2-ene-VPA, 4-ene-

VPA none Glucronateoxidated

metabolite none

活性代謝物 10,11-epoxide4-ene-VPA(強い肝毒

性) none

N-デスメチルクロバザム(未変化

体の約40%の活7-amino-

clonazepam none none薬物相互作用

(対 他の抗てんかん薬のみ)

服用薬物への影響

CL↑ZNS, TPM,CLB, CBZ, VPA CL↑CBZ, VPA

CLB、ESM、TPM、LTG、ZNS、PB、

PRM、PHTCL↑PHT, ZNS, CL↓PHT, PB, PRM, CBZ,

LTG, ESMCL↓ PHT, PB,

CBZ, VPACL↑ PHT, CBZ,CL↓ PHT, PMD

併用薬物−メカニズム−対

CBZによるCYP3A4、CYP2C9の誘導, CBZ

によるグルクロン酸抱合の促進

(対 他の抗てんかん薬のみ)

服用薬物からの影

響CL↓ZNS, TPM,CLB, CBZ, ESM

CL↑VPA, PHT,CZP

CL↑VPA、PB、PRM、PHT、CZP、ESMepoxide体CL↑

 PHT、PBCL↓VPA、CLB、ZNS

epoxide体CL↓ VPA、ZNS、PRM

CL↑PHT, PB, PRM,CBZ, ZNS, TPM,

LTG, ESM, CL↓CLBCL↑ PHT, PB,

CBZ, VPACL↑ PHT,CBZ,

PB

CL ↑PB, PRM,CBZ, PHT CL↓

VPA血中薬物濃度測

定時期 14 days 1-2 days 3-10 days 3-5 days 2 days

初回投与時 14-28 days

初期には1-2 wkごと2-3 wk後の投与直前

通常製剤 3-5 days徐放性製剤 6-7

days

投与量変更時 4-5 days

3-5days後の投与直前

(投与開始1wk以内に減量されたときは

2wk以内)(自己誘導終了前で

は1-3wk) 3-5 days代謝酵素阻害薬物の併用時または中

止時 1-2 weeks 2-4 days

妊娠時

CL↑出産後1カ月までモニタリングを継続 ↑CL ↓CL

主な代謝情報 CYP2C9, CYP2C19 CYP2C9, CYP2C19 CYP3A4

グルクロン酸抱合,β-酸化, CYP2A6,CYP2C9, CYP2C19,CYP2B6

CYP3A4主にCYP3A4(活性代謝物はCYP2C19)

CYP3A4ほとんど代謝されない

UGT1A4 CYP3A4 酵素的加水分解

PPK

定常状態の解析(成人):G1(CYP2C9*1/*1,CYP2C19*1/*1) Km= 4.0 mg/L, Vmax

= 6.07 X (BW/60)-

0.416 mg/day,G2(CYP2C9*1/*1,CYP2C19*1/*2または*1/*3) Km =4.88 mg/L, Vmax =

6.07 X (BW/60)-

0.416 mg/day,G3(CYP2C9*1/*1,CYP2C19*2/*2または*3/*3または*2/*3) Km = 6.16mg/L, Vmax = 6.07

X (BW/60)-0.416

mg/day,G4(CYP2C9*1/*1,CYP2C19*1/*2または*1/*2または*1/*3) Km = 4.0mg/L, Vmax = 3.53

X (BW/60)-0.416

mg/day

CL = 59.6 X

BW0.387 X 0.812PM

mL/h(CYP2C19のPM=1, EM=0)

12歳以上 ke = 0.0363-0.000188×年齢 h-1 t1/2 = 20.7-32.6h  PHT、PB併用時   ke = 0.0548-0.000284×年齢 h-1   t1/2 = 13.7-21.6 h12歳未満 ke = 0.0618-0.00189×年齢 h-1 t1/2 = 11.2-20.7h  PHT、PB併用時   ke = 0.0933-0.00285×年齢 h-1   t1/2 = 7.4-13.7 h ka = 1.23 h-1 Vd/F = 1.61 L/kg

12歳以上単剤 ke =0.0433h-1, PB,PHT, CBZ併用 ke =0.0551 h-1, 12歳未満単剤 ke 0.0734- 0.00251 X Age,PHT,PB, CBZ併用ke = 0.0934 -0.00319 X Age,Vd/F = 0.254 L/kg

CL = 0.152 XBW-0.181 X DIFL/h/kg, DIF:CBZ, VPAいずれか併用1.18、2以上併用2.12

X BW-0.119

その他

25%の症例では自己誘導なしepoxide体の効果がもっとはっきりするまでは、epoxide体の測定は推奨されないepoxide体測定はCBZの濃度が高くないのに副作用が現れる患者で効果判断の助けとなるかもしれない

能動輸送系を経て吸収される

線形薬物動態、自己誘導あり

全血での測定が望まれる

体内動態のばらつきが大きい