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Application Handbook ポリマーの熱分析 Selected Applications Thermal Analysis

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3METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

このアプリケーションハンドブックでは、厳選されたアプリケーション例をご紹介します。実験は、各アプリケーションの説明に記載した機器を使用し、細心の注意を払い行いました。結果の解析は、弊社に蓄積されている最新の知識に基づいています。ただし、これらの例がお客様のメソッド、機器、目的にふさわしいかどうかについては、お客様ご自身でご確認ください。アプリケーションの譲渡および使用に関しては弊社の管轄外であり、弊社は一切の責任を負うことができません。化学薬品、溶剤、ガスをご使用になる場合は、一般的な安全規則に加えメーカーまたはサプライヤーの指示に従ってください。

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Selected ApplicationsThermal Analysis

ポリマーの熱分析

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5METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

はじめに

熱分析は最も古い分析技術の 1 つです。歴史を振り返ると、人は物質が本物か偽物かを単純な温度試験により判断していました。 熱分析が現在のような形になったのは、1887 年だとされています。この年に、フランスの有名な化学者である Henry Le Chatelier が最初の熱測定を粘土上で行いました。その数年後の 1899 年には、英国の化学者 William Roberts-Austen が最初の示差熱測定を行い、それが DTA の発明へとつながったのです。ただし、業務用機器が登場するのは 1960 年代に入ってからです。それから現在に至る 50 年の間に、熱分析は猛烈な勢いで発展を遂げました。

機器開発の原動力となったのは、材料科学、特に新しい材料の開発において極めて大きな進歩があったことです。現在では、その軽量さ、経済的な生産性、優れた物理的特性および化学特性によって、幅広い製品にさまざまな種類のポリマーが使用されています。熱分析は、物質の特性や相転移の分析、ポリマー材料の特性評価に最適な手法です。

このハンドブックでは、ポリマー分野における熱分析の応用例について詳しく説明します。熱分析は他の多くの業界でも使用されています。サーモプラスチック、熱硬化性物質、エラストマーの分析の説明は、年 2 回発行のユーザー向け技術誌である UserCom (www.mt.com/ta-usercoms) に別途掲載されています。

ここでご紹介するアプリケーションがお客様の業務に役立ち、ポリマー分野での熱分析メソッドに秘められた大きな可能性を理解していただくきっかけとなれば幸いです。

Dr. Angela Hammer および、メトラー・トレド Materials Characterization グループの編集チーム (以下)

Nicolas FedelichSamuele GianiDr. Elke HempelNi JingDr. Melanie NijmanDr. Rudolf RiesenDr. Jürgen SchaweDr. Markus Schubnell

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7METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

1. はじめに 8

1.1 このハンドブックについて 8 1.2 主要な熱分析手法 8 1.3 DTA 8 1.4 SDTA 8 1.5 DSC 8 1.6 TGA 8 1.7 EGA 8 1.8 TMA 8 1.9 DMA 9 1.10 TOA 9 1.11 TCL 9 1.12 アプリケーションの概要 9

2. 熱可塑性樹脂の DSC 測定 10

2.1 はじめに 10 2.2 実験の詳細 10 2.3 測定と結果 10 2.4 文献 14

3. 熱可塑性樹脂の TGA、TMA、DMA 測定 15

3.1 はじめに 15 3.2 熱重量分析 (TGA) 15 3.3 熱機械分析 (TMA) 15 3.4 動的粘弾性分析 (DMA) 17 3.5 熱挙動の概要と結果の比較 17 3.6 文献 18

4. 熱硬化性樹脂の DSC 測定 19

4.1 はじめに 19 4.2 実験の詳細 19 4.3 示差走査熱量分析 (DSC) 19 4.4 文献 22

5. 熱硬化性樹脂の TGA、TMA、DMA 測定 23 5.1 はじめに 23 5.2 熱重量分析 (TGA) 23 5.3 熱機械分析 (TMA) 23 5.4 動的粘弾性分析 (DMA) 24 5.5 熱挙動の概要と結果の比較 25 5.6 結論 25 5.7 文献 26

6. エラストマーの DSC、TGA 測定 27

6.1 はじめに 27 6.2 実験の詳細 27 6.3 測定と結果 27 6.4 文献 31

7. エラストマーの TMA、DMA 測定 32

7.1 はじめに 32 7.2 測定と結果 32 7.3 熱挙動とアプリケーションの概要 35 7.4 結論 35 7.5 文献 36

8. 詳細情報 38

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8 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

1.1 このハンドブックについて本ハンドブックでは、熱分析を使用してポリマー、特に熱可塑性物質、熱硬化性物質、エラストマーの挙動を分析する方法についてご説明します。各章では多くの興味深い例を挙げ、物理的特性の測定、さまざまな種類の転移、劣化、フィラーおよび添加剤の効果、生産条件の影響に対して、熱分析がどのように役立つかを説明します。

実験には、3 つの異なる種類のプラスチック、つまり熱可塑性物質 (PET)、熱硬化性物質(KU600)、エラストマー(W001)を使用しました。

1.2 主要な熱分析手法以下のセクションでは、主要な熱分析手法を簡単に説明します。本ハンドブックでご紹介する DSC、TGA、TMA、DMA の 4 つの主要な測定手法は一般に、互いに補足しあう関係にあります。

しかし、サンプルを完全に理解するには、これら 4 つの手法すべての組み合わせが必要になる場合もあります。図 1 に示すとおり、ポリアミド 6 のサンプルの測定では DSC、TGA 、TMA が使用されています。

1.3 DTA

示差熱分析DTA では、サンプルと不活性の標準物質との間の温度差が温度の関数として測定されます。DTA シグナルの単位は、°C または K です。従来は、熱電対電圧 (単位: mV) が表示されていました。

1.4 SDTA

シングル DTAこの手法はメトラー・トレドの特許技術で、従来の DTA の変化形です。熱重量分析と組み合わせて使用する場合に特に効果を発揮します。測定シグナルは、対象サンプルと事前測定され保存されているブランクサンプルとの温度差を表しています。DTA および SDTA を使用すれば、吸熱および発熱現象の検出、その熱挙動が生じる温度の評価が可能になります。

1.5 DSC

示差走査熱量分析DSC では、サンプルを加熱か冷却、または一定温度に維持したときにサンプルと標準物質に流入および流出する熱流が、温度の関数として測定されます。測定シ

グナルは、サンプルが吸収または放出するエネルギー (単位: mW ) です。DSC を使用すれば、吸熱および発熱の検出、ピーク面積 (転移および反応のエンタルピー)の解析、ピークまたは他の現象の生じる温度の評価、および比熱容量の測定が可能になります。

1.6 TGA

熱重量分析 TGA は重量の測定、すなわち、温度に対するサンプル質量の変化を測定します。従来、この手法は TG という略語で呼ばれていました。

最近では、Tg (ガラス転移点) との混同を避けるため、TGA という用語が一般的に用いられています。TGA を使用すると、サンプルの質量変化 (増加または減少) の検出、段階的な質量変化 (一般に初期サンプル量に対する割合として示される) の評価、質量減少または質量増加のステップ温度の測定が可能になります。

1.7 EGA

発生ガス分析 (EGA)EGA は、サンプルから発生した揮発性ガス生成物の特性や量を温度の関数として測定する技術の総称です。最も重要な分析手法は、質量分析および赤外分光分析です。

EGA は一般に、TGA 機器と組み合わせて使用します。これは、TGA で測定する現象の中に揮発性化合物の揮発 (質量減少)が含まれるためです。

1.8 TMA

熱機械分析TMA はサンプルの変形および寸法変化を温度の関数として測定する手法です。TMA ではサンプ

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図 1:さまざまな熱挙動を示すポリアミド 6 の測定手法。DSC: 結晶部分の融解ピーク、TGA: 乾燥および分解のステップ、TMA: 荷重による軟化。

1. はじめに

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9METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

ルに一定荷重、変調した荷重のいずれかを加えます。膨張率測定での寸法変化は可能な限り最小の荷重を使用して測定します。TMA を使用すると、測定モードに応じて熱挙動 (膨張または収縮、軟化、膨張係数の変化) の検出、その温度の測定、変形のステップ高さの測定、膨張係数の測定が可能になります。

1.9 DMA

動的粘弾性分析DMA において、サンプルは正弦波の機械的ストレスを受けます。過重の振幅、変位(変形)の 振幅、位相ずれが、温度または周波数

の関数として測定されます。DMA を使用すると、弾性率もしくは減衰挙動の変化に基づく熱挙動を検出できます。最も重要な結果は、熱挙動の温度の測定、損失角 (位相シフト)、動的損失率 (位相シフトの損失正接)、弾性率またはその構成要素である貯蔵弾性率および損失弾性率、せん断弾性率またはその構成要素である貯蔵弾性率および損失弾性率です。

1.10 TOA熱光学分析 Thermo-optical Analysis)TOA では顕微鏡用加熱冷却ステージもしくは顕微鏡を搭載した DSC

を使用して透過光および反射光でのサンプルの視覚的な観察や、光の透過率測定を行います。一般的な用途は、結晶化および融解のプロセスや結晶多形の相転移の評価です。

1.11 TCL

熱化学発光 Thermochemiluminescence)TCL を使用すると、特定の化学反応に伴う微弱な発光の観察および測定が可能になります。

特性、アプリケーション DSC DTA TGA TMA DMA TOA TCL EGA比熱容量 ••• •

エンタルピー変化、反応エンタルピー ••• •

融解、結晶化エンタルピー ••• •

融点、融解挙動 (liquid fraction) ••• • • •••

結晶性低分子物質の純度 ••• ••• •

結晶化挙動、過冷却 ••• • •••

蒸発、昇華、脱離 ••• • ••• ••• •••

固相―固相転移、結晶多形 ••• ••• • •••

ガラス転移、非晶質の軟化 ••• • ••• ••• •

熱分解、パイロリシス、解重合、劣化 • • ••• • • •••

温度安定性 • • ••• • • •••

化学反応 (例: 重合) ••• • • •

反応速度の解析および反応速度の応用 (反応予測)

••• • ••• •

酸化分解、酸化安定性 ••• ••• ••• • •••

組成分析 ••• ••• •••

異なるロットおよびバッチ、競合製品の比較 ••• • ••• • • ••• • •••線膨張率 •••

弾性率 • •••

せん断弾性率 •••

機械的減衰 •••

粘弾性挙動 • •••

••• は「最適」、• は「適用可能」を表します

1.12 アプリケーションの概要

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10 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

2.1 はじめに本章では、DSC を使用して熱可塑性樹脂、PET (ポリエチレンテレフタレート) を分析する方法を包括的に説明します [1]。さまざまな手法で測定した結果を互いに比較します。主なトピックは以下のとおりです。• ガラス転移 • 冷結晶化 • 再結晶化 • 溶融 • 熱履歴 • 酸化誘導時間(OIT) • 分解

PET熱可塑性樹脂のグループの代表例として、PET(Polyethylene Terephtalate)を測定サンプルとしました。構造式については、図2 に示しました。PET は、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合により製造されたポリエステル系の熱可塑性樹脂で、多種多様な分野で使用されています。最もよく知られた使用例の

一つが、飲料用プラスチックボトルです。PET はスポーツウェアの衣料分野でも繊維として使用されます。この理由は、しわが寄らない、耐裂性、耐候性、水をほとんど吸収しないというような優れた特性を持っているためです。さらに、PET からは、厚さ 1~500 µm の包装用フィルム、家具用フィルムまたは遮光フィルム等が製造されています。出来上がったフィルムは被覆加工されることが多いのですが、あるいは他のフィルムと接着されて、ラミネートフィルム化され、これらのフィルムは例えばコーヒーパッケージ用の香りの保持フィルムとして食品業界で広く使用されてきています。このような材料の優れた品質を確認し、用途に適した製品であるための一定の品質を保証できるようにするためには、熱分析による材料の熱特性に関する情報が非常に重要になります。

2.2 実験の詳細本試験ではメトラー・トレド製 熱分析装置 FRS5 センサ付き DSC 1を用いました。解析は STARe ソフトウェアにより行いました。測定サンプルは、試料量約 3~10 mg としました。実験条件によっては予備加熱処理を行いました。一般的には、サンプルはサン

プルパンの底面とぴったりと熱接触するように、サンプルの底面は平滑な表面を有するように注意してサンプリングする必要があります。サンプルをサンプルパンに詰め込む際には、サンプルパンの底が変形しないように、フラットな板、押し棒等を用いて注意しながらセットし、サンプルパンを密閉しました。

2.3 測定と結果

示差走査熱量測定 (DSC)DSC は、サンプルの熱流を温度または時間の関数として測定する技法です。DSC により、物理的変化と化学的変化(化学反応)を定量的に熱量測定することができます[2]。異なる DSC 測定を行うことで、現象を分析することができます。図3 では、PET を DSC で測定した場合に起こる、もっとも重要な現象を示します。これらの DSC 曲線は物質ごとに特徴的であることが多く、ある特定の物質の指紋のようなものとして扱うことにより、品質管理に応用することも可能です。図 3 は PET サンプルの 1st heating で得られる典型的な DSC 曲線です。ガラス転移、冷結晶化、融解の現象を見ることができます。このガラス転移はエンタルピー緩和を伴っており、吸熱ピークが重なっているように見えます。この緩和はサンプルが長い時間、ガラス転移より低い温度で保管されていた場合に起こります。結晶化はサンプルが急速に冷却され、冷却中に結晶化する時間がなかった場合に生じます。また DSC 曲線から、比熱 cp を決定することも出来ます。ガラス転移にはさまざまな解析方法がありますが、メトラートレド熱分析STARe ソフトウェアにより、そのうちのいくつかの解析方法でガラス転移を分析した例を図 3 に示します。

ガラス転移ガラス転移は非晶質物質を加熱、冷却した場合に特定の温度範囲で起こる可逆的な転移です。

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2. 熱可塑性樹脂の DSC 測定

図 2: PETの構造式。

図 3: エンタルピー緩和を伴うガラス転移、冷結晶化及び融解を示す典型的な PET の DSC 曲線(温度範囲:30~ 300℃、昇温速度: 20 K/min、雰囲気ガス:50 mL/min窒素)。

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11METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

その特性を示す温度をガラス転移点 Tg と示します。物質は、冷却するとガラスのような脆い(柔軟性のない)状態となり、加熱すると柔らかい状態に戻ります。[2, 3, 4, 5]。熱可塑性樹脂の場合、ガラス転移は、それを超えると樹脂が成型可能となる温度範囲にほぼ相当することになります。ガラス転移が見られるサンプルは、一般的には半結晶性固体または完全非晶質固体であり、通常のガラスまたはプラスチック(有機高分子)です。ガラス転移点を超えると、ガラスまたは有機高分子は軟化し、破壊させずに、塑性変形もしくは成型できるようになります。この挙動は、プラスチックを非常に有用なものにしている特性の一つとなっています。ガラス転移は動的現象であり、測定されたガラス転移は、冷却速度、サンプルが受けた熱履歴、機械的な履歴、解析条件などにより大きく依存します。冷却速度が遅いほど、その後の昇温測定で測定されるガラス転移点は低くなります。これはガラス転移点が測定条件に依存し、正確に定義できないことを意味します。DSC によるガラス転移の測定で、ガラス転移に重なって非常によく観察されるのが、エンタルピー緩和による吸熱ピークです。これはサンプルの履歴に依存します。ガラス転移点以下での物理的熱処理(アニーリング)を反映した結果として、エンタルピー緩和ピークが観察されることになります。ガラス転移点(Tg)においては、以下のような物理的な性質が変化します。• 比熱容量 (cp)• 熱膨張率 CTE (TMAで測定可能)

• 弾性率(DMAで測定可能)• 誘電率

大まかにガラス転移点を計算する方法として 2/3 経験則を用いることも出来ます。この経験則は、ガラス転移点は実測された融点の 2/3 (絶対温度 K で計算)に相当するという法則です。PET のガラス転移点を計算してみますと下記のような結果となります。

• PET の融点:Tmelt = 256℃ = 529.16 K

• ガラス転移点 Tg =(529.16) × 2/3 = 352.8 K すなわち79.6℃ガラス転移は DSC 曲線上においてはステップとして現れ、固体から液体に変化する時の 比熱容量(cp)の変化を示しています。

冷結晶化冷結晶化は結晶化による発熱現象です。融解後非常に急速に冷却され、結晶化する時間的がなかったサンプルで生じます。ガラス転移点以下では、分子の運動性はわずかであり、結晶化は起こりません。昇温してガラス転移点を超えると、比較的低温でも小さな結晶が形成されます。このような昇温過程で生じる再結晶化のことを特に冷結晶化といいます。

融解融解は固体から液体への転移です。吸熱現象で、純粋な物質では決まった温度で生じます。その温度で転移の間、温度は一定になります。その状態変化のために必要な熱が、融解潜熱として知られています。

結晶化度結晶化度とは、半結晶性物質に含まれる結晶の割合です。熱可塑性樹脂では結晶化度は、最大でも 80% です。物質の結晶化度は

その熱履歴に依存します。サンプルの融解熱を測定し、それをその 100% 結晶の融解熱で割ることで求めることができます。X 線回折法で 100% 結晶性物質であることを確認することができます。PET のような半結晶性サンプルでは、そのガラス転移点を超えたところで冷結晶化が生じ、測定前のその物質の結晶化度を決定することは難しくなります。従って本章では、これについて、これ以上議論しません。

再結晶化再結晶化は、より小さな結晶が大きく成長する一種の再組織化プロセスです。このプロセスは昇温速度に依存します。昇温速度が遅くなるほど、再組織化できる時間がより長くあることになります。再結晶化は発熱現象である結晶化と、吸熱現象である融解が同時に起こるため、DSC で測定するのは困難です。

昇温・冷却・昇温測定図4は、20 K/min の昇温・冷却・昇温のサイクルで測定された DSC 曲線です。この種の昇温・冷却・昇温のサイクル実験は、サンプルを 1 回目の昇温(1st run) で、サンプルに決まった方法で、熱的な前処理を行う意味で、熱分析では広く採用されています。図 4 の 1st run は、図3 の DSC 曲線に相当します。図から、2nd run が

図 4: エンタルピー緩和を伴うガラス転移、冷結晶化および融解の PETの昇温・冷却・昇温のリサイクルDSC曲線による比較1st昇温:エンタルピー緩和ピークあり、冷結晶化ピークあり、1st冷却:再結晶化ピークあり2nd昇温:エンタルピー緩和ピーク及び冷結晶化ピークは消滅。

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12 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

1st run と大きく異なっていることも分かります。2nd run では、融解ピークの幅は広くなり、ガラス転移に伴うエンタルピー緩和と冷結晶化による発熱ピークがなくなっています。冷却過程ではサンプルは結晶化する十分な時間があり、冷却曲線では結晶化ピークがはっきりと見られます。サンプルはその後すぐに昇温されたため、物理的エイジングの時間がなく、エンタルピー緩和は生じませんでした。このような昇温・冷却・昇温サイクルの実験は、その熱履歴を見積もり、製造過程の確認するのに用いられます。2nd run では、ガラス転移のステップがより小さくなっています。これは 1st run の時よりも、非

晶質の割合が小さくなり、結晶の割合が大きくなったことを意味します。結晶化の結果として、非晶質の割合が減少し、それに付随して結晶化度が増加しました。

冷却速度の影響図 5 に、結晶化とその温度範囲に対する冷却速度の影響について示します。冷却速度が速いほど、結晶化ピークがより低温へとシフトすることになります。サンプルが非常にゆっくりと冷却されると、その後すぐの 2nd run には冷結晶化は観測されません。これに対して、サンプルが急速に冷却された場合には、サンプルには充分に結晶化する時間がないまま冷却され、

次の昇温時に冷結晶化による発熱ピークが観測されます。例えば 50 K/min で PET を冷却した場合は、冷却中にサンプルは完全には結晶化が出来ず、次の昇温で、非晶質部分が冷結晶化します。

熱履歴図 6 は、サンプルに対する熱履歴の影響を示したものです。PET サンプルを 3 種類の条件で冷却しました。1 つ目は非常にゆっくりと冷却、2 つ目は急速冷却し、3 つ目はサンプルを急冷した後ガラス転移点より僅かに低い 65℃ で 10 時間アニールしました。このようにして冷却した後の昇温測定では、明確な差異が見れます。ゆっくりと冷却されたサンプルでは、ガラス転移の小さなステップしか観測されず、冷結晶化が見られません。結晶化する時間が十分にあったため、サンプル中の非晶質の割合は小さくなります。一方急冷されたサンプルの DSC 曲線には大きなガラス転移によるステップが観測されています。このことは非晶質の割合が高いことを意味します。更に結晶化するのに十分な時間がなかったため、冷結晶化ピークが観測されるます。急冷後と 65℃ で 10 時間アニールされたサンプルでは、前述の急冷サンプルで見られた現象に加えて、エイジングの結果としてエンタルピー緩和を示します。融解ピークに関しては 3 サンプルともほぼ変わらない結果でした。融解は熱処理による影響を受けないことが分かります。図 7 は、エンタルピー緩和おける、アニール時間の違いによる影響を示したものです。サンプルをまず昇温速度 10 K/min で 30℃ から 300℃ に昇温して融解後、ただちに急速冷却し、65℃ で等温保持してから、時間を変えて0~24時間の範囲でアニールしました。そのサンプルを昇温速度 10 K/min で 30℃ から 300℃ まで測定を行いました。サンプルのガラス転移点以下での保持時間が長いほど、エンタルピー緩和は大きくなり、サンプルへの物理的エイジング効果は強くなっていることが分かります。エンタルピー

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図 5: 異なる冷却速度での DSC測定。各冷却過程(上)と、その後の昇温(下)。遅い冷却速度では、冷却中に十分に結晶化する時間があるため、その後の昇温での冷結晶化がなくなります。

図 6: 異なる条件で冷却した PETの昇温カーブ。

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13METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

緩和ピークはサンプルが熱履歴を受けていたことを表すものであり、ガラス転移の解析に影響を与えます。このピークは一度サンプルをガラス転移より高い温度まで昇温させ急冷して、その後の昇温を測定することで取り除くことができます。サンプルの保管された温度は重要な要因なので、、望ましくない履歴(を与えないよう注意すべきです。

昇温速度の影響図 8 は、PET サンプルの DSC 測定に対する昇温速度の影響を明らかにしたものです[6, 7]。昇温速度が速くなるほど、結晶化のための時間は短くなります。昇温速度 300 K/min では、結晶化する時間がなくなるために、融解ピークが全く観測されません。

TOPEM®

TOPEM® は、IsoStep や ADSCと並んで、最新のもっとも強力な温度変調測定技術です。これにより、可逆、不可逆の現象を分けることができます。図 9 に、標準的なパラメータを用いて解析したPET の TOPEM® 測定の結果を示します。サンプルは事前に80℃ まで昇温後、炉から取り出し冷たいアルミプレートの上において急冷したものを用いました。TOPEM® 測定は 40uL アルミパン(ピンホール開孔の蓋)を用い、0.2 K/min の昇温速度で行いました。

図 9 の一番上のデータが解析前の測定データです。TOPEM® 解析をすることで、トータルヒートフロー(黒線)、可逆ヒートフロー(赤線)、不可逆ヒートフロー(青線)に分けることができます。加えて、準静的 cp0 が測定から求められます。その次の段階として、特定の周波数における熱容量もしくは位相を得ることができます。図では16.7 Hz の周波数について求めています。TOPEM® [8, 9]は、通常の DSC では分けることのできない現象を分けて cp を得ることもできるすぐれた手法です。例えば、化学反応から得られるエン

図 7: PET のガラス転移、およびエンタルピー緩和へのアニール時間の影響。

図 8: 各種昇温速度で測定した PETの DSC曲線(注)縦軸は比熱値(J/g・℃)のため、下向き→発熱方向、上向き→吸熱方向となります。

図 9PET の TOPEM® 測定。可逆、不可逆、トータルヒートフローカーブ。

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14 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

タルピーから、同時に起きているガラス転移によるエンタルピー変化だけを分けることもできます。これは、ガラス転移が可逆的現象である一方、化学反応は不可逆反応であることによります。TOPEM® 技術は、ランダムパルス波の温度プロファイルを用います。これにより、一度の測定で様々な特性の分析が可能となります。図10 には PET のガラス転移の周波数依存性を示します。この場合、ガラス転移は周波数が高くなるほど高い温度にシフトします。一方で、このカーブの冷結晶化によるステップは、同じ温度で起こっており周波数に依存しません。未知のサンプルでは特定の現象が周波数依存性を示すことから、現象の解釈を明確にすることができます。

酸化安定性(OIT/OOT)最後に、ポリマーやオイルの酸化安定性の評価[10,11]に用いられる、OIT,OOT として知られる二つの DSC 測定について述べたいと思います。この方法では、製品の加速的化学エイジングをシミュレートし、その相対的な安定性についての情報を得ることができます。例えば、異なる材料を互いに比較したり、同じ材料でも添加剤が異なるものでは、その添加剤の影響を分析することができます。実際には、この実験にはPE(ポリエチレン)が広く用いられています。PETでは分解と融解および再エステル化が重なって明確に識別することができないので、図の例でもPEを用いています。PE の OIT(酸化誘導時間)は、PEの安定

性に対して金属が影響することがあるため、異なる材質の数種類のパンを用いることがよくあります。(図11)この例では、次の温度プログラム:窒素雰囲気下、 30℃ で 3min 保持、20℃/min で 30℃ から 180℃ まで昇温、180℃ で 2min 等温後、雰囲気ガスを酸素に切り替えて測定。酸化が観測でき次第測定を停止するにて測定を行いました。OITの時間はガスを酸素に切り替えた瞬間から、酸化反応のオンセットまでの時間です。

測定は 40ulの開放パンで行い、アルミニウムと銅のパンで比較しました。銅パンの方が明らかに早く酸化しています。銅が触媒として作用し、PEの分解を加速させるためです。酸化安定性は酸化開始温度のオンセット(OOT)の測定からも比較することができます。この方法では、サンプルを酸素雰囲気で昇温させ、酸化の始まるオンセット温度を解析します。OIT 測定は簡単に行うことができ、それほど時間がかからないので、製品の安定性を比較する品質管理によく用いられます。

2.4 文献[1] Total Analysis with DSC, TMA and

TGA-EGA, UserCom9, 8–12.[2] Interpreting DSC curves, Part 1:

Dynamic measurements, User-Com11, 1–7.

[3] The glass transition from the point of view of DSC-measurements; Part 1: Basic principles, User-Com10, 13–16.

[4] The glass transition temperature measured by different TA tech-niques, Part 1: Overview, User-Com17, 1–4.

[5] R. Riesen, The glass transition temperature measured by different TA technique, Part 2: Determinati-on of glass transition temperatu-res, UserCom18, 1–5.

[6] M. Wagner, DSC Measurements at high heating rates - advantages and limitations, UserCom19, 1–5.

[7] R. Riesen, Influence of the heating rate: Melting and chemical reac-tions, UserCom23, 20–22.

[8] TOPEM® – The new multi-frequency temperature-modulated technique, UserCom22, 6–8.

[9] J. Schawe, Analysis of melting processes using TOPEM®, User-Com25, 13–17.

[10] Oxidative stability of petroleum oil fractions, UserCom10, 7–8.

[11] A. Hammer, The characterization of olive oils by DSC, UserCom28, 6–8.

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図 10:PET の TOPEM®測定。ガラス転移における周波数依存性。

図 11:異なるサンプルパンを用いた PEのOIT測定 図 11異なるサンプルパンを用いた PEのOIT測定。

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15METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

3.1 はじめに 本章では、TGA、TMA、DMA の分析手法について詳しく説明します。分解、膨張、冷結晶化、ガラス転移、融解、緩和、再結晶化など、各種の現象について、詳細に説明します。TGA、TMA、DMA によって、貴重な補足情報が DSC 測定にもたらされます。

3.2 熱重量分析(TGA)熱重量分析(TGA)とは、物質がある特定の雰囲気中で昇温、冷却または等温保持された場合に、サンプルの質量変化を時間または温度の関数として測定する手法ということになります。 このTGAは、主として各種製品からの熱重量変化を定量的に分析することを目的として使用されています。

一般的な TGA 曲線は、高揮発性成分(水分、溶剤、モノマー)の揮発、ポリマーの熱分解、すすと残渣(灰、充填材、ガラス繊維)の酸化燃焼分解などに関連した重量変化を示しています。従って TGA 曲線から、揮発性成分、熱分解性成分あるいは残渣についての成分量を知ることが可能となります。TGA 曲線の時間、または温度で一次微分された DTG 曲線からは、分解速度についての情報が得られます。

T G A / D S C 同時測定の場合は、DSC と重量変化が同時に得られるので、発熱反応や吸熱反応を検出、解析することができます。しかし TGA/DSC で測定されたDSC 曲線は、DSC 専用機で測定されるよりも、感度、分解能が劣ります。

図 12 には、PET の TGA 曲線と DTG 曲線を示しました。また図 9 の下の 2 つの図は窒素雰囲気での対応する DSC 曲線です。右のDSC 曲線は 300℃ までの範囲を拡大しており、ガラス転移、冷結晶化、融解が見られます。左の

図は測定中のサンプルの重量減少を補正した DSC 曲線です。青いカーブは補正前で、赤いカーブが補正後です。[2, 3]

分解分解過程では、化学結合が破壊され、複雑な有機化合物もしくはポリマーは、水や二酸化炭素、炭化水素のような気体の生成物に分解されます。

酸化しない不活性雰囲気では有機分子がカーボンブラックになることもあります。発生するガスの

定性分析を行うためには、TGA-FTIR または TGA-MS 同時測定装置が有効となります。

3.3 熱機械分析(TMA)熱機械分析とは、ある一定の雰囲気中で昇温または冷却されたサンプルの寸法変化を測定する技法となります。さらに、TMA 測定にはいくつかの異なる測定モードがあり、得られる結果も異なってきます。ここでは代表的な膨張モード、針入モードおよび DLTMA 測定法(動的 TMA: Dynamic Load TMA)について紹介します。

3. 熱可塑性樹脂の TGA、TMA、DMA 測定

図 12: PETの TGA/DTG曲線、拡大 DSC曲線および TGA重量補正後の DSC曲線昇温速度 : 20 K/min 温度範囲 : 30~1000 ℃。

図 13: 膨張モードで測定した PET の TMA 曲線と平均線膨張係数曲線。

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16 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

膨張モードによる測定膨張モードによる測定では、サンプルの熱膨張または熱収縮による長さの変化が測定されます。このため通常サンプルに掛ける荷重は、常に接触させておく程度に、出来る限り微小な荷重にすることが必要です。測定結果から得られる情報は、熱膨張係数(CTE)です。

図 13 に膨張モードによる測定結果を示しました。厚さ約 0.5 mm のサンプルを 2 枚のシリカディスクの間に挟み、装置中で 90℃ まで予備加熱し、熱履歴を除去、冷却後、下記の測定を行いました。 昇温速度 : 20 K/min, 温度範

囲: 30℃ から310℃, 測定荷重: 0.005 N, プローブ : ボールポイントプローブ

図 13 の TMA 曲線から、ガラス転移点までは膨張は非常にゆるやかであることが分かります。ガラス転移点 約 73℃ を境に分子の運動性が増加することにより、膨張率は著しく増加します。

その後冷結晶化と再結晶化が起こり、サンプルは収縮します。約 150℃ で再結晶化による結晶形成が終了したところから、サンプルは再度膨張にし、最終的に融解します。融解は粘度とサンプル長の劇的な減少を伴います。

針入モードによる 測定針入モードでの測定では、特性温度に関する情報が得られます。測定中のサンプル形状の変化により、プローブの接触面積が変わるため、この測定では通常サンプルの厚みは重要ではありません。針入深さは測定に用いられる荷重とサンプルの形状の影響を受けます。

針入モード測定には、厚さ約 0.5 mm の PET サンプルを用い、サンプルをシリカディスクの上に置き、ボールポイントプローブを用いて、昇温速度: 20 K/min, 温度範囲: 30 ~ 310℃, 測定荷重:0.1 N および 0.5 N, で測定しました。予備加熱は行っていません。

針入モードでの測定においてプローブは、だんだんサンプルに入り込んでいきます。縦軸のシグナルはガラス転移により軟化した所で大きく減少します。その後、冷結晶化の領域ではほとんど一定の値となり、融解で再び減少します(図14)。

DLTMA 法による測定DLTMA は、物理的性質を測定するのに非常に感度の高い方法です。DSC と異なり、サンプルの機械的な挙動を評価します。DLTMA(Dynamic Load TMA)[4]の場合、サンプルに一定の周波数で大きな荷重と小さな荷重を交互にかけます。

このようにして DLTMA 測定から微小な転移、膨張および弾性率(ヤング率)の測定が可能になります。図 15 に PET サンプルの DLTMA曲線を示します。動的荷重に対する DLTMA 曲線の振幅はほとんど見られません。ガラス転移点約 72℃ 以上になると、で、サンプルが柔らかくなるため大きくなります。この後、冷結晶化では体積収縮と同時に、固くなるため、振幅は小さくなってきます。再結晶化が終了した 140℃ でサンプルは充分な固さに戻り、その後 160℃ まで一定の膨張を示します。

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図 14: 針入モードで測定した PET の TMA曲線。

図 15: 室温 ~160℃の温度範囲での PETのDLTMA測定結果。

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17METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

挙動についてまとめました。表 2 では、各測定により得られた転移温度についてまとめました。温度の解析方法は TGA/DSC および DSC の場合はピーク温度で、 TMA の場合は膨張変化の開始温度、DMA の場合はtan δ 曲線のピーク温度で示しています。異な

3.4 動的粘弾性分析(DMA)動的粘弾性分析 DMA は、粘弾性材料に周期的な振動荷重を加え、機械的な特性を、時間、温度または周波数の関数として測定する装置です。

DMA 測定では、振動荷重を様々な周波数でサンプルに加えて測定しますが、DMA からは弾性率(ヤング弾性率 E’,せん断弾性率 G’、損失弾性率 E”,G”)を測定し、そのデータから、損失係数 tanδ や減衰係数が求められます。

DMA では、他の測定技術に比べて非常に感度が高く、例えば DSC ではフィラーを含有したサンプルや基板上の薄膜のガラス転移を測定することが可能です。

図 16 は PET の DMA 測定結果を示したものです。前もって急速冷却された直径5 mm、厚さ 0.49  mm の PET サンプルを、周波数 :1 Hz , 昇温速度 :2   K /min, 温度範囲: -150 ~ 270 ℃ でせん断モードで測定しました。

DMA 測定結果では、TMA または TGA/DSC 測定で観測されたガラス転移、などの他に、新たにポリマー内の局部的な分子運動である、β 緩和現象を示すピーク、再結晶化のピークが見られました。β 緩和は弱い現象で、DMA でしか測れません。

3.5 熱挙動の概要と結果の比較図 17 には、PET の分析に用いた熱分析手法とその結果についてまとめました。表 1 には、各種の熱分析手法から測定できる熱

表 2: 各種熱分析手法により測定される現象。

る手法を用いて、一貫性のある結果が得られ、互いに補完し、材料の物性について重要な情報が得られるということは明らかです。

これは、物質の品質管理や、未知の材料の検討、ダメージ・不良分析(例えば、材料中の不純物の検

図 16: -150 ~ 270℃の範囲での PETのせん断モードによるDMA測定結果。

図 17: PETの測定結果の比較。

熱特性、現象 DSC TGA/DSC TMA DMA

β 緩和 xガラス転移 x x (DSC signal) x x冷結晶化 x x (DSC signal) x x再結晶化 (x) x融解 x x x x分解 (x) x (x)OIT x

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18 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications18

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出)などに特に役立ちます。このように複数の熱分析手法を用いた複合分析は非常に有益です。

結論この最初の2章では、熱可塑性樹脂について、一般的な熱分析手法である DSC、TGA、TMA および DMA により、どのような熱挙動が測定可能であるかについて検討しました。熱可塑性樹脂としてPETを用い、一貫性のある結果が得られました。検討した主要な現象は、ガラス転移、冷結晶化、再

結晶化、融解、分解です。OIT やサンプルの熱履歴のような測定までカバーしています。PET で述べたのと同様の現象が他のポリマーでも生じます。特定の現象を種々の熱分析手法によって測定できる場合はよくあります。それにより、一つの測定から得られた結果を他の測定で確認することができます。包括的な材料の特性評価を行うには、まず TGA で検討し、DSC ,TMA、最後に DMA を用いて分析を行うことが一般的です。

3.6 文献[1] A. Hammer, Thermal analysis of

polymers. Part 1: DSC of thermo-plastics, UserCom 31, 1–6.

[2] R. Riesen, Heat capacity deter-mination at high temperatures by TGA/DSC. Part 1: DSC standard procedures, UserCom 27, 1–4.

[3] R. Riesen, Heat capacity deter-mination at high temperatures by TGA/DSC. Part 2: Applications, UserCom 28, 1–4.

[4] PET, Physical curing by dynamic load TMA, UserCom 5, 15.

表 3: 各種熱分析手法により得られた PETの熱特性の比較。

熱特性、現象 DSC (20 K/min)

TGA/DSC (20 K/min, DSC, N2)

TMA (20 K/min)

DMA (1 Hz, 2 K/min, tan delta)

β 緩和 –77 ℃ガラス転移 80 ℃ 81 ℃ 77 ℃ 81 ℃冷結晶化 150 ℃ 154 ℃ 152 ℃ 118 ℃再結晶化 183 ℃融解 248 ℃ 251 ℃ 242 ℃ 254 ℃分解 433 ℃

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19METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析 19

4.1 はじめに本章では、いろいろな DSC アプリケーションをご紹介します。主な熱挙動として、ガラス転移および比熱容量、硬化反応および反応速度、熱履歴、温度変調 DSC (ADSC) を説明します。

熱分析のさまざまな手法を使用することで、物質の温度を温度プログラムに従って変化させながら、物質の物理的特性を時間の関数として測定できます。この手法には、示差走査熱量測定 (DSC)、熱重量分析(TGA)、熱機械分析(TMA)、動的粘弾性測定(DMA)などがあります。

熱分析は、研究開発、プロセス最適化、品質管理、材料の不良や損傷の分析、さらには競合製品の調査に使用されています。一般的な用途としては、製品の硬化挙動に関する予測、複合材料の適合性試験、ガラス転移の周波数依存性の調査などがあります。

KU600電子部品用の粉末コーティング剤である KU600 は、エポキシ樹脂と触媒から成り、金属部品の絶縁やセラミックコンデンサーの保護層として使用されます。基盤への良好な密着性と、非常に優れた機械的・電気的・熱性特性、さらに化学物質に対する耐性を有しています。

4.2 実験の詳細使用したのは FRS5 センサ搭載の DSC 1 と DSC センサ搭載の TGA/DSC 1、および TMA/SD-TA840e と DMA/SDTA861e です。解析は STARe ソフトウェアで行いました。

4.3 示差走査熱量測定 (DSC)

主な熱挙動DSC はヒートフローを温度または時間の関数として測定する技術

です。DSC によって物理的変化と化学反応を定量的に把握することができます [3]。図 18 は、熱硬化反応を DSC で測定した例です。図には 3 回の昇温測定の結果が示されています。最初の昇温測定(青色)ではエンタルピー緩和を伴うガラス転移が観測されています。

エンタルピー緩和はサンプルが長時間、ガラス転移点よりも低い温度に保持されたときに生じます。100℃ までの昇温によってサンプルの熱履歴は消去され、2

回目の昇温測定では、ガラス転移に続いてエポキシ熱硬化性樹脂を特徴付ける大きな発熱ピークが確認できます。

また、約 210℃ に添加剤(ジシアンジアミド)の融解による吸熱ピークがみられます。3 回目の昇温測定では全く異なる様相を呈しており、ここでサンプルは大きな変化を受けます。

初めはサンプルは粉末でしたが、2 回目の昇温測定の際に粉末はくっつくとともに重合体が生

図 18: KU600: 昇温速度 10 K/min での DSC 測定の結果 (計 3 回の昇温測定)。

4. 熱硬化性樹脂の DSC 測定

図 19: KU600: 150℃ の等温で一定時間硬化し、引き続き昇温速度 10K/min で測定。

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20 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

成し、硬化します。3 回目の昇温測定ではガラス転移点は高温側にシフトし、発熱ピークは観測されません。図 19 は、サンプルを 150℃ で一定の時間保持したのち昇温測定を行ったもので、保持は最大 140 分行いました。

一回目の昇温測定の結果から、ガラス転移点が硬化度に依存することが明確に示されています。さらに、硬化が進むほどガラス転移点は高温側にシフトすることがわかります。そして硬化が進むにつれ、後硬化反応の発熱ピークは減少し、完全に硬化したものは後硬化反応を示しません。

熱履歴図 20 は、硬化した KU600 を異なる速度で冷却した後、10 K/min の昇温速度で測定したもので、ガラス転移点の冷却速度依存性を示しています。冷却速度が遅いほどエンタルピー緩和は大きくなります。また、ゆっくりとした冷却速度は長時間のアニーリング処理と同じ効果を持っています。これらのことから、エンタルピー緩和はサンプルのプロセス条件、もしくは保管条件が同じであるかを調べるために使用することができます。

等温での硬化および昇温での硬化KU600 を 180℃ と 190℃ の

図 20: KU600: ガラス転移点の冷却速度依存性。

等温で硬化させたときの DSC カーブとその反応率カーブが、図 21 に示されています。温度が高いほど硬化に必要な時間は短くなるとともに、反応率カーブから 180℃ の場合、約 11 分で 80% の硬化度に、190℃ では約 6 分で到達することがわかります。

もう 1 つの硬化法として昇温での硬化があります。図 22(1、左上)には、いくつかの昇温速度で測定したときのDSCカーブが示してあります。昇温速度とともにガラス転移点と硬化反応に伴う発熱のピーク温度が高温側にシフトすることがわかります。

反応速度論解析反応速度論解析は、化学反応の速度を研究するのに用いられます。熱分析における最も重要な使用法は、測定不可能な条件での反応状況、例えば極めて短いもしくは長い反応時間下で物質がどのように変化するかを予測することにあります。

つまり、特定の温度において希望の反応率に到達するまでのどれぐらい時間がかかるのか、という問いに答えるということです。ここではモデルフリー反応速度論解析 (MFK)として知られている解析ソフト [5, 6] を用い、KU600 を例にその説明をします。

この解析では反応のモデルを考慮する必要がありません。また、反応の活性化エネルギーが反応率に伴い変化するものとします。

この解析法では、3 つ以上の異なる昇温速度での測定が必要となります(図 22、1)。そして、その DSC カーブから反応率カーブを求めます(図 22、2)。続いて、反応率に応じて変化する活性化エネルギー(図 22、3)を算出します。

最終的には、ここから予測曲線を導き出し(図  22、4)、実際の実験でそれを検証することがで

図 21: KU600: 180℃ または 190℃ での等温で硬化させたときの DSC 曲線(上)と反応率カーブ (下)。

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21METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

きます。例えば、MFK から 170℃ の場合、30 分で 90% の硬化度に到達すると予測されます。図から、予測と実測値曲線がうまく合致していることが分かります。

cp(比熱容量)の測定以下では、硬化した KU600 を例に、サファイア法と呼ばれる比熱容量の測定法をご紹介します[4]。サファイア法(DIN 51007)は、約 5% の再現性で精度よく測定できる、cp 測定の一般的な方法で、サンプル、サファイア、空のサンプルパン(ブランク)についてそれぞれ測定を行います。この際、サンプルパンの重量はできるだけ同じ(+/-0.4 mg)になるよう注意する必要があります。

図 23 ではサンプルを 60℃ から 160℃ まで 5 K/min で昇温していますが、昇温の前後にそれぞれ 5 分間の等温測定を含んでいます。サンプルとサファイアについて得られた DSC カーブをブランク補正後、ソフトウェアを用いて両曲線から cp を求めます。図 20 には、各 DSC カーブとサンプルの熱容量(赤色)が表してありますが、約0.3 J/gK の cp の上昇はガラス転移の存在を明確に示しています。

なお、大きなシグナルを得るため、約 55 mg のサンプルが用いられています。また、サンプルの温度勾配をできるだけ小さくするため、比較的ゆっくりとした昇温速度である 5 K/min が用いられています。

ADSC: オーバーラップしている熱挙動の分離ADSC [7] は、I s o S t e p や TOPEM® と並ぶ温度変調測定技術で、ガラス転移とエンタルピー緩和のようにオーバーラップしている現象をそれぞれ分離することができます。さらに、cp の測定も可能です。以下では、KU600 の例を用いて説明します。

ここでは硬化していないサンプル KU600 を平均昇温速度

1 K/min、振幅 0.5 K、周期 48sで 30℃ から 130℃ まで昇温しました。比熱容量の決定は、以下の順により測定を行いました。はじめに、ふたをしていない空のサンプルパンとリファレンスパンでブランク測定を行います。続いてキャリブレーション測定として、ふたをした空のサンプルパンとふたをしていない空のリファレンスパンを用いて先程と同様に行います。

最後にサンプル測定として、サンプルの入ったサンプルパンにふたをしたもの、ふたをしていない空のリファレンスパンの測定を行います。

図 24 の右側にはブランクカーブ(黒色)、その上にキャリブレーションカーブ(青色)、サンプルカーブ(赤色)が示されています。さらに、同図の左側には ADSC で解析したヒートフローが表示されています。赤色のカーブは可逆ヒートフロー、青色のカーブは、不可逆ヒートフローで、黒色のカーブはトータルヒートフローです。なお、比較のため、通常の DSC 測定の結果が緑色の曲線で示されています。この曲線は、同じ条件下のトータルヒートフローに相当します。

不可逆ヒートフローと可逆ヒートフローから、エンタルピー緩和に

図 22: KU600 の硬化を例にとりあげたモデルフリー反応速度論解析。

図 23: KU600 の cp 測定。

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22 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

よる吸熱ピークは不可逆ヒートフローに、ガラス転移は可逆ヒートフローにそれぞれ分離されていることが分かります。さらに、可逆ヒートフローから比熱容量を算出できます。 このように、温度変調DSC 測定によって通常の

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DSC 測定ではオーバーラップしている現象を分離することができます。例えば、ガラス転移は可逆ヒートフローに、エンタルピー緩和や溶媒の蒸発、化学反応や結晶化は不可逆ヒートフローに分離されます。

4.4 文献[1] A. Hammer, Thermal analysis

of polymers. Part 1: DSC of thermo plastics, UserCom 31, 1–6.

[2] A. Hammer, Thermal analysis of polymers. Part 2: TGA, TMA and DMA of thermoplastics, UserCom 31, 1–5.

[3] Interpreting DSC curves. Part 1: Dynamic measurements, UserCom 11, 1–6.

[4] METTLER TOLEDO Collected Applications Handbook: Thermosets, Volume 1.

[5] Model free kinetics, UserCom 2, 7.

[6] Ni Jing, Model free kinetics, UserCom 21, 6–8.

[7] ADSC in the glass transition regi-on, UserCom 6, 22–23.

図 24: KU600 の ADSC 測定。

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23METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

5.1 はじめに本章では、TGA、TMA、DMA のアプリケーションの詳細、およびこれらの手法を使用した追加情報の取得方法を説明します。

特に重点を置いているのは、分解、膨張、ガラス転移とその周波数依存性に関する説明です。

5.2 熱重量分析(TGA)熱重量分析は、サンプルが定義された雰囲気下で昇温、冷却もしくは等温保持されたときの重量変化を調べる技術です。この技術は主に製品の定量分析に用いられます [2]。図25 の赤色のカーブは、KU600 の熱重量分析の結果を示しています。

ここでは 30 µL アルミナ製サンプルパンにサンプルを入れ、昇温速度 20 K/min で 30℃ から 700℃ まで昇温しました。

パージガスの流速は 50 mL/min とし、–600℃ で窒素から空気に切り替えています。

ポリマー成分は約 500℃ までの重量減少量から求めることができます。さらに、熱分解で生じたカーボンブラックは空気雰囲気で酸化され、残留物として残るのは、ケイ酸塩や酸化物といった無機質の充填材です。

図 25 には、DTG カーブ(青色)とDSC カーブ(黒色)が示してあります。DTG カーブは重量変化(TGA カーブ)を一次微分したもので、分解速度の目安となります。

さらに、DSC カーブは TGA 測定の際に同時に得られるもので、しばしば貴重な情報を与えてくれます。

たとえば、DSC カーブから約 60℃ でガラス転移が、さらに 120℃ から 240℃ で硬化反応が生じていることが確認できます。

また、分解と燃焼に関する情報も提供してくれます。

5.3 熱機械測定(TMA)熱機械分析(TMA)では決められた雰囲気で昇温、または冷却したときのサンプルの長さの変化を測定します。

TMA の応用例として、サンプルの膨張係数やガラス転移点、軟化点温度の測定に加え、ヤング率や溶媒中での膨張率変化、ゲル化温度の測定などがあげられます。

膨張係数の測定膨張係数に関するデータは、複合材料を利用する際にはとても重要な情報です。

膨張係数の異なる材料を接合すると、温度変化による亀裂のリスクが生じます。ここでは硬化した KU600 を例として、膨張係数の測定結果をご紹介します。厚さ 1.9 mm のサンプルを 2 枚の石英板で挟み、ホルダーにセットします。プローブ(ボールポイント 3 mm)は石英板の上に位置しており、これにより与えられる応力

図 25:KU600 の TGA/DSC 1 曲線(昇温速度 20 K/min)。 TGA 曲線(赤色)は重量変化に関する情報を、DSC 曲線(黒色)は吸熱/発熱に関する情報を提供します。

図 26:硬化した KU600 の線膨張係数の同定測定。

5. 熱硬化性樹脂の TGA、TMA、DMA 分析

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24 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

は、表面全体に均等に分散されます。

このとき応力は、プローブとサンプルの接触を維持するのに十分で、かつ、サンプルの変形を伴わない 0.02N を用いました。サンプルは 40℃ から 160℃ の範囲で測定し、サンプルの熱履歴を消去するため、昇温測定を 2 回行いました。

2 回目の昇温測定の結果が図 24 に示してあります。黒色のカーブはサンプル長で、赤色のカーブは膨張係数です。膨張係数はガラス転移の前後で大きく変化していることがわかります。

DLTMA(動的荷重 TMA)による Tg およびヤング率の測定DLTMA(動的荷重 TMA、[3])は、硬化させた薄膜のガラス移転温度の測定に用いることができます。金属版に薄膜コーティングしたサンプルについて、空気雰囲気下、昇温速度 5 K/minで 50℃ から 240℃ まで昇温し、12 秒周期で0.1 N と 1 N の応力を交互に与えました。(つまり、6秒ごとに応力の大きさが切り替わります。)プローブは 3 mm ボールポイントを使用しました。

図 27 は、その測定結果です。上部の黒色のカーブは、DLTMA 測定でのサンプル長の変化を示し

ています。DLTMA カーブの振幅はサンプルのヤング率を反映し、図から、ガラス転移点よりも低い温度ではその振幅は 40 µm と小さく、一方、ガラス転移点よりも高い温度では振幅が 200 µm に増加していることがわかります。

その平均値のカーブ(赤色)や同図中央のヤング率のカーブ、および下の tan δ のカーブは、ガラス転移点を決定するために用いられます。

薄膜の軟化点温度の測定薄膜(コーティング層)の軟化点温度の測定例を以下に示します。サンプルは KU600 をコーティングした金属版で、薄膜の厚みは 27 µm です。ボールポイント(3 mm)プローブでサンプルに直接1Nの応力を与え、空気雰囲気下、昇温速度 5 K/min でサンプルを 40℃ から 190℃ まで昇温しました。図 28 は、その測定結果です。

コーティング層自体はサンプル長の変化にほとんど寄与しておらず、プローブの貫入前後でのサンプル長の変化は金属版(アルミニウム)の膨張に対応します。

この例から、TMAが薄膜の軟化温度の測定に理想的であることがかわります。サンプルの前処理は必要なく、軟化点温度は 1 回の昇温測定から求められます。

5.4 動的粘弾性測定(DMA)[4] でご紹介したように、動的粘弾性測定(DMA)ではサンプルの粘弾性を時間、温度、または周波数の関数として測定します。この際、サンプルには振動荷重を周期的に加えます。

本章では、ガラス転移点の決定と周波数依存性 [5,6] について説明します。

ガラス転移の測定図 29 に、せん断モードでの KU600 の動的粘弾性測定の結果を示します。粉末状の KU600

図 27:硬化した KU600 層の DLTMA(動的荷重 TMA)測定。

図 28:TMA による KU600 薄膜の軟化点温度測定。

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25METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

をプレスして、直径 5 mm、肉厚 0.56 mm のサンプルを 2 つ作製しました。

サンプルはせん断測定用ホルダーにセットし、昇温速度 2 K/min で 250℃ まで昇温後、2 K/min で冷却しました。さらに、160℃ まで 2 K/min で昇温しました。周波数は 1 Hz とし、最大荷重は 5 N、最大変位は 20 µm としました。

図 30 は 2 回目の昇温測定の結果です。それぞれ、貯蔵弾性率(黒 色、G')と損失弾性率(赤色 G")およびその比である損失係数 (緑色、tan δ )が示してあります。ここでは縦軸の表現方法とガラス転移点の評価方法に注目します。

図 29 の左のグラフはその線形表記で、右のグラフは対数表記です。温度の増加に対し貯蔵弾性率は減少するのに対し、損失弾性率と損失係数はピークを示します。

一般に、2% 法と呼ばれる DIN 65583 に基づいた線形のグラフから求められるオンセット温度と、対数グラフ(ASTM E6140)から求められるオンセット温度は異なります。このことから、ガラス転移点の決定には比較ができるよう、測定条件と決定プロセスを必ず表記しなければいけません。なお、対数表記のグラフの方が貯蔵弾性率と損失弾性率の違いが明確に分かることから、通常は対数表記をお勧めします。

ガラス転移点の周波数依存性図 30 は、さまざまな周波数における KU600 の動的粘弾性測定の測定結果です。図 29 での測定と同様に、サンプルの準備を行いました。なお、測定は最大荷重5N、最大変位 30 µm で行ないました。測定周波数は 0.1 から 1000 Hz です。

上部には貯蔵弾性率と損失弾性率を、下部には損失係数を温度

の関数として表示しています。貯蔵弾性率はガラス転移点の前後でステップを示しますが、損失弾性率と損失係数にはピークがみられます。

損失係数のピーク温度は、損失弾性率のピーク温度よりも常に少し高くなります。

また、ガラス転移点は周波数に依存し、周波数が高くなるほど高温側にシフトすることが明確に見て取れます。

このシフトは、ガラス転移が緩和現象であるために生じます。詳細な解説は [7] をご参照ください。

5.5 熱挙動の概要と結果の比較図 29 は、KU600 で行われた測定結果をまとめたものです。

測定方法にかかわらず、同様のガラス転移点が得られることがわかります。(赤色の線を参照)。

5.6 結論本 章と前章では、K U 6 0 0 を サン プルとして D S C や TGA、TMA、DMA を用いたキャラクタリゼーションについて述べてきました。

そしてこれらの結果には整合性があることがわかりました。

図 29:KU600 の 90から160℃の DMA 測定結果(縦軸 左:線形表記、右:対数表記。

図 30:KU600のガラス転移点の周波数依存性。

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26 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

5.7 文献[1] A. Hammer, Thermal analysis of po-

lymers, Part 3: DSC of thermosets, UserCom 33, 1–5.

[2] Elastomer Analysis in the TGA 850, UserCom 3, 7–8.

[3] PET, Physical curing by dynamic load TMA, UserCom 5, 15.

[4] Georg Widmann, Interpreting DMA curves, Part 1, UserCom 15, 1–5.

[5] Jürgen Schawe, Interpreting DMA curves, Part 2, UserCom 16, 1–5.

[6] Klaus Wrana, Determination of the glass temperature by DMA, UserCom 16, 10–12.

[7] METTLER TOLEDO Collected Appli-cations Handbook: Thermosets, Volume 1El

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図 31: Tg の測定結果の比較。

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27METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

6.1 はじめに本章では、エラストマーの熱分析 [5,6] について、および DSC と TGA で評価が可能なエラストマーの特性について説明します。

エラストマーとは、弾性または粘弾性の変形を示す軽度の架橋ポリマーの総称です。熱分析はエラストマーの分析において重要な役割を担っており、原材料、中間製品、加硫製品の特性評価に幅広く使用されています。

そこから得た情報は、品質管理、プロセス最適化、高度な材料の研究開発、不良分析に役立ちます。

本章では、エラストマーの一般的かつ重要な物理的特性および化学反応について説明します。この特性には、ガラス転移点、融解、加硫、組成分析、フィラーおよび添加剤、クリープおよびリカバリー、マスターカーブ、ポリマーブレンドの適合性などがあります。

これらの特性を実証するために実験で使用したエラストマーは、EPDM (エチレンプロピレンジエンゴム)、SBR (スチレンブタジエンゴム)、NBR (天然ブタジエンゴム)、EVA (エチレン酢酸ビニル共重合体) です。

6.2 実験の詳細本章および次章で説明する測定に使用した機器は、FRS5 センサを搭載した DSC 1、TGA/DSC 1、TMA/SDTA840e および 841e、DMA/ SDTA861e です。サンプル、および実験条件の詳細については、個々のアプリケーションで説明しています。

6.3 測定と結果

1示差走査熱量測定(DSC)DSC は最も頻繁に使用される熱分析法です。この方法は、サンプルのエンタルピー変化もしくは熱容

量変化を、温度または時間の機能として測定し、これらと関連する物理的変化を検証することができます。

そのため、エラストマーは特にガラス転移点や融解、加硫の測定に頻繁に用いられます。

ガラス転移点図 32 は、エチレン含有量の異なる加硫されていない2つのEPDMサンプルのガラス転移点を示しています。

EPG 3440は、完全にアモルファス状態で、ガラス転移点はヒートフローのステップ状の変化で確認することができます。中点温度として、-53℃ と評定されます。

こ れ と は 逆 に 、サ ン プ ルEPG 6170 にはガラス転移の直後に幅広い融解プロセスがみられます。ガラス転移点を正確に決定するためには、ガラス転移が融解プロセスと重なり合わないようにすることがとても重要となりますが、この場合、接線を約75℃に合わせるように引いて解析を行います。

ガラス転移点の特性をさぐることは、ポリマー混合物の相溶性に関

する貴重な情報をもたらしてくれます。

図 33 は、加硫した 2 つの SBR 混 合物のガラス転移点を示したものです。SBR(スチレン・ブタジエンゴム)/BR (ブタジエンゴム)混合物は、-110℃ から -50℃ までの幅広い温度領域でガラス転移を示しています。

ポリマー混合物に 2 つのガラス転移点が現れないということは、2つのコンポーネントは相溶性で、相としては1つであることを示していますが、このガラス転移は -80℃ から -50℃ まで広がっています。これは、理想的に均一ではないポリマー混合物に見られる典型的なパターンです。

S BR(スチレン・ブタジエンゴム)/NR(天然ゴム)混合物の場合は、各々のポリマーごとに独自のガラス転移点が確認できます。NR(天然ゴム)のガラス転移点は -58.8℃ で、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)のガラス転移点は -44.1℃ です。この特性は、双方には別個の相があり、さらにまた両方のポリマーコンポネントの間には相溶性がないことを示しています。NR(天然ゴム)と SBR(スチレン・ブタジエ

6. エラストマーの DSC、TGA測定

図 32:エチレン含有量の異なる加硫されていないEPDMサンプルのガラス転移点の同定。

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28 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

ンゴム)の比率は、それぞれのガラス転移の大きさから見て、 4:1と推測できます。

融解図 34 に基づき、加硫されていない EPDM(EPG 6170)の融解の様子を解説します。サンプルの前処理が融解に及ぼすことを明確にするため、3 種類の加熱実験を行いました。

全ての曲線が、-45℃ のところで段差を示しています(ガラス転移)。この後、直ちに融解が始まり、融解は 70℃ で終了しました。ポリマー内に大きさの異なる結晶が幅広く分布しているため、

比較的幅広い融解領域になっています。小さな結晶は低い温度で融解し、より大きい結晶はこれとは逆により高い温度で融解します。最初の加熱では、融解領域に 3 つのピークがみられました。最初のピークは非常に幅広く、ピーク温度は 14℃ でした。その後、ピーク温度が 43℃ の幅の狭いピークがこれに続き、最後は同 52℃ の幅の狭いピークでした。この包括的な融解状況は、サンプルの保管条件と実験のプロセス条件に起因する結果であるといえます。

2 回目の加熱では幅広い融解ピークがみられ、その幅は約 100 K

と、幅広い分布の結晶であることを示唆しています。この結晶は冷却中にできあがったもので、サンプルの保管条件に起因する結晶は生じていません。

3 度目の測定は、室温 20℃ で 20 日間保管した後で行いました。この間のゆっくりとした結晶化によって、大きい結晶ができあがったことが図から判断できます。なお、3 番目のピークはみられませんでした。

温度変調 DSC を用いてオーバーラップしている現象を分離エラストマーの DSC カーブには、部分的に弱い現象がオーバーラップすることがよくありますが、こうしたことはデータの解釈・評価を困難にします。その場合、現象を的確に解釈するための補助手段として、 ADSC や TOPEM® や IsoS-tep® といった温度変調 DSC を利用することができます。

ADSC では温度プログラムに小さな周期的な正弦波温度振動がオーバーラップされます。その結果、ヒートフローも周期的に変動します。シグナルの中間値で表示される曲線は、これと同じ昇温速度で求めることのできる従来の DSC 曲線と一致します。

熱容量は、ヒートフローの振幅と昇温速度、位相のずれから求めることができます。可逆ヒートフローは熱容量曲線から算出され、ガラス転移や熱容量の変化といった現象は、可逆ヒートフロー曲線上に表れます。

不可逆ヒートフロー曲線は、トータルヒートフロー曲線と可逆ヒートフロー曲線との差として求められます。

不可逆ヒートフロー曲線には、結晶化や気化・蒸発または化学反応といった現象が表れています。この手法の重要なメリットは、同時進行するプロセスを分離することができる点にあります。図 35 は、その一例を示しています。

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図 33:2つの SBR ポリマー混合物の相溶性に関する DSC 分析。

図 34:加硫されていないEPDM の前処理が融解に及ぼす影響。

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29METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

図 35 は、加硫されていない SBR の ADSC 曲線を示したものです。トータルヒートフロー曲線には、さまざまな解釈が可能な複数の熱挙動が確認できます。この曲線は、従来の DSC 曲線と一致します。

可逆ヒートフロー曲線は、特定の情報のみを選択的に提供してくれます。1)ガラス転移は、熱容量におけるステップとして観測されます。

2) 結晶化と化学反応は、そのプロセスに熱容量の変化を伴う時にのみ現象を示します。

3) 融解プロセスはピークとして観測されますが、測定周期に左右されます。この点を考慮しますと、可逆ヒートフロー曲線をガラス転移点を越えた温度のところに外挿することができます(青い点線部分)。両方のトータルヒートフロー曲線と可逆ヒートフロー曲線との比較によって、現象に対する次の解釈が可能になります。

A はガラス転移です。B は発熱プロセスです。可逆ヒートフローには、何の変化も生じていません。したがって、このプロセスはガラス転移点とオーバーラップする結晶化と関連性があると考えられます。結晶化は、ガラス転移点よりわずかに高温側で始まります。

C1 と C2 は吸熱プロセスで、通常の DSC 測定の1 0 K/min よりも変調時の 2 K/min の昇温速度によってより分離されています。融解プロセスと関連性がある小さなピークを確認することができます。

加硫加硫は加硫剤によるポリマーの架橋反応で、これによりエラス ト マ ー が 得 ら れ ま す 。加 硫 は 通 常 、1 0 0 ℃ から 1 8 0 ℃ の 間 で 行 わ れ ます。典型的な加硫剤は硫黄、過酸化物で、硫黄は不飽和ポリマーを架橋するのに用いられます。そして、エラストマーの硬さから架橋密度が決定されます。

加硫されていないエラストマーのDSC 測定は、加硫反応や温度領域、反応エンタルピーやキネティックに関する有益なヒントを与えてくれます。ここで得られた情報は、プロセス条件と加硫システムを最適化するのに役立てることができます。

図 36 は、加硫されていないNBR(アクリルニトリル・ブタジエンゴム)システムの加硫の様子を示したものです。NBR の DSC 曲線はガラス転移点 -30℃ を示しており、50℃ と 95℃ の融解がこれに続いています。引き続き、ピーク温度 153.6℃ の発熱加硫反応が起きています。

これらのエンタルピーは、含有物重量と架橋システムと架橋剤の量に応じて変化します。その他の熱挙動と比較してみますと、加硫反応の反応エンタルピーは比較的小さなものです。反応の進行度は、反応率曲線に基づいて予測することができます。反応が始まるのは比較的遅く、150℃ から 160℃ の間で最大速度に達します。

加硫剤や加速剤、遅延剤や活性剤の量を変化させることによって、反応速度に選択的な影響を及ぼすことができます。反応率曲線はキネティック分析(例えば、モデルフリーキネティック)

図 36:加硫されていないNBR の DSC 測定。

図 35:加硫されていない SBR で測定された、オーバーラップする現象を ADSC を用いて分離。

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30 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications30

出することができ、これに基づいて技術的に測定が困難な条件下での、反応の予測が可能になります。なお、困難な条件というのは反応時間が極度に長い、もしくは短い反応をいいます。

図 37 は、加硫されていない NBR の加硫について、MFKを用いた解析プロセスを示しています。

MKF では、3 種類の異なる昇温速度による測定が最低3 回必要です。ここでは、 1 K/min、2 K/min、5 K/min で行いました。これに伴う反応率曲線を図 37 に示しました。見かけの活性化エネルギーは、この3本

の曲線に基づく関数として導きだされます。 活性化エネルギー曲線が描くカーブの形は、反応中における反応メカニズムの変化を表しています。NBR の加硫では 2 段階に分けることができます。第1段階は、見かけの活性化エネルギーは約90 kJ/molで 、反応率 60% になるとステップ上の変化を示します。

その後 110 kJ/mol まで上昇します。活性化エネルギー曲線から、異なる温度で等温保持したときの時間の関数として反応率を予測することができます。こういった予測は、等温測定によって実際に検証することができます。

熱重量分析(TGA)

組成の分析TGA は、サンプルの重量変化を温度と時間の関数として測定します。この技術はエラストマーの組成を測定する方法として品質検査や製品開発でよく用いられ、水分、溶剤、軟化剤などからポリマー、煤など無機質の充填剤といった、さまざまなコンポーネントを定量することができます。図 38 は、SBR エラストマーの典型的な TGA 分析を示したものです。TGA 曲線は、3 つの段階を示しています。

DTG (一次微分)曲線は、段階分けを行うための線引きによく使用されています。300℃ 以下の第1段階は、比較的揮発性の高い成分における少量の減少を表すもので、その割合は3 .1% です。エラストマーの熱分解は、300℃ から 550℃ の間で生じます。ステップの高さは、ポリマー含有量の 62.9% に相当します。

その後、雰囲気が窒素ガスから空気に切り替えらされます。この際にエラストマーの充填剤となっている煤は燃焼します。したがって、温度が600℃ から 700℃ という次の第 3 段階で、サンプル内に含ま

に使用することができ、架橋のシステムを最適化できます。

速度論解析速度論解析は、化学反応がいかに速く進行するのかを論じるものです。これより、反応温度や時間、濃度、さらに触媒や阻害剤(インヒビター)が及ぼす影響に関する貴重な情報が得られます。

反応速度論解析のためのさまざまなソフトウェアが入手可能です。n 次速度論解析やモデルフリー速度論解析(MFK)、アドバンスドモデルフリー速度論解析(AMFK)などがあります。反応率曲線から活性化エネルギーを算

図 37:NBR 加硫のモデルフリーキネティック。

図 38:SBR エラストマーの TGA 分析。

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31METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析 31

れる充填剤として、煤の含有量を31.5% と定量することができます。

残りの 2.3% は灰分に相当し、無機質の充填剤として含まれています。

減圧下でのTGAエラストマーの多くは、柔軟剤として言及に値する量の油脂が入っています。この油脂が一定の温度領域で気化するのに対して、ポリマーは熱分解するため、油脂とポリマーの含有量を同時に厳密に同定するのは困難です。しかし、測定の際に小さな昇温速度を用いるか、もしくは圧を軽減した状態(真空状態)で測定を行うことによって、油脂の気化とポリマーの熱分解とをうまく分離することができます。図 39 は、SBR/NR 混合サンプルの油脂含有量の同定に対する圧力の影響を示したものです。10 mbar と 1000 mbar の窒素圧の下、10 K/min の昇温速度で 2 回の測定を行いました。

TGA 曲線と DTG 曲線を図示しました。油脂は圧力 10 mbarで はより低い温度で気化するのに対し、ポリマーの熱分解は 1000 mbar と同様に起こることを DTG 曲線は示しています。これによって、サンプル内の油脂とポリマーの含有量をより正確に同定することができます。試験に用いたサンプルには、油脂が約 9.9% とポリマーが 35.7% 含まれていました。

難燃剤エラストマーには難燃剤が含まれていることがよくありますが、分解に対する難燃剤の効果とその熱量に関する情報が熱分析で得られます。

図 4 0 は、種 類 の異 なる難燃剤を加えた 3種類のエチレン・ビニルアセテート・コポリマー( E V A)の T G A分析を示したものです。それぞれ A l(O H)3、(水酸化アルミニウム、AT H)とM g(O H)2

(水酸化マグネシウム、MDH)

です。グラフでは、3 つのサンプルの TGA 曲線と DTG 曲線が、温度の関数として記録されています。

まずは、水が 300℃ から 400℃ の間で難燃剤(水酸化物)の構成要素として遊離されました。その後、460℃ で EVA の熱分解がこれに続きます。なお、EVA は 360℃ から 400℃ の間で、酢酸を遊離するため、定量的な分析は極めて困難です。ポリマー中の難燃剤の存在は、TGA 測定でとても良好に調べることができます。

DSC により、難燃剤の脱水プロセスにおけるエネルギーの情報を得ることができます。

6.4 文献[1] A. Hammer, Thermal analysis of

polymers. Part 1: DSC of thermo-plastics, UserCom 31, 1–6.

[2] A. Hammer, Thermal analysis of polymers. Part 2: TGA, TMA and DMA of thermoplastics, UserCom 32, 1–5.

[3] A. Hammer, Thermal analysis of polymers. Part 3: DSC of thermo-sets, UserCom 33, 1–5.

[4] A. Hammer, Thermal analysis of polymers. Part 4: UserCom 34, 1–5.

[5] METTLER TOLEDO Collected Ap-plications Handbook: ELASTO-MERS, Volume 1.

[6] METTLER TOLEDO Collected Ap-plications Handbook: ELASTO-MERS, Volume 2.

図 39:SBR/NR エラストマーの油脂含有量の量定、通常圧と減圧での TGA 分析。

図 40:種類の異なる難燃剤を含む EVA の TGA 分析。

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32 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

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7.1 はじめに前章では、エラストマーの分野において DSC および TGA による分析が可能な、最も重要な現象をご紹介しました。本章では、DSC および TGA で測定可能なエラストマーの熱挙動および特性を中心に説明します。

例えば、膨張、ガラス転移、弾性率(周波数依存性およびマスターカーブ)、クリープ挙動およびクリープリカバリー、膨張挙動 [2,3] などがあります。

7.2 測定と結果

熱機械分析(TMA)

等温でのクリープ/リカバリー 測定「クリープ」は、材料に応力が加わった際の、時間と温度に依存する変形のことを言います[4]。

そして、クリープ変形は、可逆的な粘弾性緩和と不可逆的な粘性流の2つの成分で構成されます。可逆性の粘弾性緩和によって生じる変形は応力が軽減、もしく

図 41:30℃ におけるEPDM のクリープとリカバリー測定の結果。

は、除去されると時間と共に回復します。これに対して粘性流は、永久的な変形、およびジオメトリー変化を生じます。

温度一定下でのクリープおよびリカバリー測定(図 41 )では、機械的応力(この場合はTMAで使用する力)をサンプルに速やかに加えたのち、一定時間保持し、その後、速やかに取り除きます。この変形(サンプルの厚みの相対変化)は、初期の瞬間的な弾性応答、ゆっくりとした粘弾性緩和、粘性流、の 3 つの要素の時間の関数として記録されます。

応力が取り除かれると弾性応答は直ちに回復しますが、一方で、粘弾性緩和が起こります。そのため、カーブはベースライン初期まで戻りません。その差は粘性流の程度を示し、また、弾性応答はクリープ変形とみなしません。

図 41 は、30℃ における EPDMのクリープとリカバリーの測定結果です。測定初期において、サンプルの変形が無視できるほど小さい応力(0.01 N)を用いてサンプルの厚みを測定しました。その後、応力を速やかに 1 N に上げました。

このとき、サンプルの変形は3つの要素から構成され、それらは、瞬間的な弾性応答、時間に依存する粘弾性緩和、粘性流です。60 分後、応力を 0.01 N に戻し、リカバリーを 30 分間測定しました。速い弾性応答の後、ゆっくりとした粘性流によりサンプルの変形が起こっています。

DLTMA によるヤング率の決定DLTMA(Dynamic Load TMA)は、サンプルに対して大きな応力と小さな応力を任意の周期で交互に作用させる測定方法です。これにより、エラストマーのヤング率を特定できます。また、この技術は材料の弾性率変化に非常に敏感

図 42:カーボンブラック含有量が異なる3つの EPDMのヤング率(サンプル;幅2 mm×長さ2 mm×厚み1.5 mm、カーボンブラック含有量はそれぞれ44.3%、34.7%、 21.0%。

7. エラストマーの TMA、DMA 測定

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33METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

なため、弱い物理的転移、もしくは、化学反応の評価に優れています。図 42 は、充填物質であるカーボンブラックがヤング率に及ぼす影響を示したものです。25℃、圧縮モードにおいて、0.05 Nと1 Nの力を交互に加えて測定しました。

サンプルの厚みの相対変化が、図の上部に時間の関数として示してあります。下部には、カーブから求めたヤング率の値が示してあります。これらの値はエラストマーの典型的な大きさです。そして、カーボンブラックの含有率が高くなるほど、変位は小さくなり、ヤング率が大きくなることがわかります。

液体中での膨潤液体中でのエラストマーの膨潤挙動も重要なアプリケーションです。TMA 膨潤測定では、特定の温度でサンプルの温度と厚みを平衡化します。その後、TMA の加熱炉を短時間開け、サンプルが入った容器に注射器を用いて液体を充填します。そして、テストピースの厚みの変化を測定し ます。

図 43 は、トルエン中におけるEPDM と FPM の膨潤挙動です。両カーブは初期厚みで正規化されています。FPM の場合、膨潤したのは 2% だけなので、トルエンに対して耐性があることがわかります。すなわち、トルエン、もしくは、トルエンに類似した液体と接することが見込まれるガスケットの材料として、FPM は使用可能です。

一方、EPDM の挙動は大きく異なり、トルエン中で 25 % 以上膨潤しています。つまり、トルエンと接するガスケットの材料として EDPM を使用することは不適当といえます。

動的粘弾性測定(DMA)エラストマーの機械的特性は、温度と周波数に依存します。よってDMA はエラストマーの特徴を明確できる重要な手段です。

典型的な使用用途は次のとおりです:a. ガラス転移、結晶化、融解、加硫反応、応力緩和、流動挙動といった熱挙動

b. ガラス転移点の周波数依存性c. 機械的特性に対する充填剤、加硫、周波数の影響、線形挙動

d. 減衰挙動e. マスターカーブ(機械的周波数スペクトル)

ガラス転移点の決定ガラス転移の際、エラストマーの粘弾性の大きさは何桁も変化するため、DSC または TMA ではガラス転移が確認できない場合で

図 43:トルエン中でEPDM と FPM の膨潤挙動(形状;円柱 直径2 mm×厚み2.5 mm、30℃で測定)。

図 44未加硫 SBR のDMA 測定の結果。

あっても、DMA を用いることによりガラス転移を検出することができます。すなわち、DMA は種々の熱分析手法の中で最も感度よくガラス転移を検出できる測定技術といえます。

図 44 は、フィラーなしの未加硫 SBR を 2 回加熱したときの DMA カーブです。それぞれ、1st runと 2nd run における貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G″)、および損失係数 (tan δ)です。

小さな弾性率領域での変化をより確実に表示できるよう、縦軸は通常、対数で表示します。

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34 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

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DMAカーブでは、ガラス転移はG′の下降ステップとして、あるいは、G″と tan δ のピークとして確認できます。そのため、ガラス転移点は G′のオンセット温度、もしくは、G″、tan δ のピーク温度で表わされます。

1st run では、ガラス転移において G′は 109 Pa から 106 Pa へと 3 桁減少しています。

その後のゴム状領域では G′はほぼ一定の1 Mpa であり、続いてゆっくりと減少しています。この減少は G″のわずかな増加とリンクし、さらに、約 40℃ ぐらいから融解が始まっています。

一方、2nd run では、ガラス転移の下降ステップの大きさは1.5桁です。その後、-30℃ から 80℃ まで G′はブロードに減少し、一方、tan δ は増加しています。1st

run においてサンプルには架橋、もしくは加硫反応が起こっているため、流動性を示していません。

ガラス転移の周波数依存性ガラス転移はポリマー内での分子単位(ユニット)の協調的な動きであるため、ガラス転移点は周波数依存性を示します。この現象は、さまざまな周波数ごとに温度スキャンをすることで調べられます。そして、スキャンには次の 2 つの方法があります。

図 45:1 Hz、10 Hz, 100 Hz、1000 Hz で測定したフィラーなし、未加硫 SBR の DMAカーブ。

図 46:2 phr の硫黄で加硫された充填されていない SBR の周波数測定。

その 1 つは、1:2:5:10 という固定比率を用いる「マルチ・フリークエンシー(Multi Freqency)」という方法です。例えば、周波数として初めに 1 Hz を選択したら、その後は 1、2、5、10 Hz で同時測定します。

2 つめの方法は、最大で 10 個の周波数を選択することのできる「シリーズ周波数測定法 (Fre-quency Series)」です。最高周波数から優先的に始めます。

図45 は、 2K/min の昇温速度において周波数1Hz、10 Hz、100 Hz、1000 Hz で測定したフィラーなし、未加硫 SBR の DMA カーブです。

明確な周波数依存性が観察でき、周波数がより高くなるにつれ、ガラス転移点はより高温側へとシフトしています。一般に、周波数が一桁大きくなるとガラス転移点は約 5℃ シフトします。

そのため、DMA を用いてガラス転移点を求めた場合、実験条件と並んで使用した周波数も表示する必要があります。

異なる温度における周波数依存性のさらなる評価は、フォーゲル・フルッヒャー方程式、もしくはウィリアムズ・ランデル・フェリー;WLF(Williams, Landel and Ferry)方程式を用いて行うことができます。

ガラス転移には周波数依存性があるため、等温下で周波数を変化させながら測定を行うことにより応力緩和に関する情報を得ることができます。

図 46 は、2 phr(parts per hun-dred)の硫黄で加硫した、フィラーなしの SBR について 1 mHzから 1000 Hz まで周波数スキャンした結果です。

SBR の弾性率は周波数と共に変化し、緩和領域では、貯蔵弾性率はステップ状に変化しま

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35METTLER TOLEDO Selected Applications ポリマーの熱分析

す。高周波数領域の貯蔵弾性率は低い周波数領域での値より高く、サンプルは見かけ上固くなります。

低い周波数領域では、外部ストレスに対応するための分子の再配列が可能になり、その結果、サンプルは柔らかくなります。損失係数は、緩和領域では 54 Hz の周波数で最大となります。損失係数のピーク形状は緩和時間の分布に相当し、これは分子間、もしくは分子内部構造に基づきます。

マスターカーブ粘弾性材料の機械的特性は、周波数と温度に依存します。一般に、緩和過程において周波数に対する変化と温度に対する変化との間には呼応関係があります。

この現象は、時間–温度重ね合わせ原理(Time-Temperature Superposition principle : TTS)として知られており、一連の等温での周波数スキャンからある温度におけるマスターカーブを作成する作業は、この原理を利用しています。

このように、マスターカーブは広い周波数領域における機械的応力緩和挙動を表します。

周波数スキャンは、DMA で直接測定が可能な周波数領域で行います(図 46 参照)。マスターカーブを作成するためには、参照温度よりも低い温度で測定したカーブ、高い周波数のカーブに重ね合わせて重なり部分が最善の状態でオーバーラップするよう水平に移動させます。

これと同じ要領で、参照温度よりも高い温度で測定したカーブを低い周波数のカーブに重ねます。これによって、図 47 のグラフ画像が得られます。

マスターカーブは、直接測定が可能な範囲よりも広い範囲を網羅します。そのため、広い周波数

図 47:未加硫SBRの貯蔵弾性率および損失弾性率のマスターカーブ(せん断モードで測定、参照温度 -10℃)。

領域におけるサンプルの機械的特性を概観することができます。図 47 は、参照温度 -10℃ におけるフィラーなし、未加硫SBRの貯蔵弾性率および損失弾性率のマスターカーブです。

低周波数領域では、貯蔵弾性率も損失弾性率もほぼ同じ 30 kPaで、このときサンプルは流動領域にあります。例えば、10-6 Hz における損失弾性率のピークは、流動緩和によるものです。

そして、10-5 Hzから10-2 Hzまでの間、1 Mpaよりやや小さな貯蔵弾性率のゴム状領域がみられます。

10-5 Hz から 10-2 Hz までの間その後、損失弾性率のピークと共に、貯蔵貯性率は約 3 桁のステップで増加しています。これは

応力緩和、もしくは、ガラス転移によるものです(実際、損失弾性率(G″)のピークが最大値を取っています)。これより高い周波数では貯蔵弾性率はほぼ 800 MPa で、一定です。

7.3 熱挙動とアプリケーションの概要表 4 は、熱分析装置を用いて評価できる、エラストマーの典型的な現象をまとめたものです。

7.4 結論前章と本章では DSC,TGA,TMA, および DMA を用いてエラストマーの特性を評価するためのさまざまな手段を解説しました。

エラストマーにとって重要で典型的な現象とそのアプリケーション(応用方法)として、EPDMと

表4:さまざまな熱分析手法によって評価できる現象。

現象 DSC TGA TMA DMAガラス転移 x x x

加硫とキネティック x

組成 x x

熱安定性/組成 x

充填材と添加剤 x x

粘弾性 x(DLTMA) x

クリープ x

溶媒中での膨潤 x

マスターカーブ x

融解、結晶化 x x

互換性 x x

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36 ポリマーの熱分析 METTLER TOLEDO Selected Applications

Elas

tom

ers

SBRを用いました。ガラス転移とその周波数依存性、加硫、組成分析、充填剤と充填剤含有量、さらにはクリープ、溶媒中での膨潤やマスターカーブまで網羅しています。

さまざまな技術がこれまでにはなかった多彩な可能性を切り開き、ガラス転移や融解、結晶化等のキャラクタリゼーションに活用できます。

図 48:熱挙動と測定結果の概要。点線部分はガラス転移点を示しています。

7.5 文献[1] Ni Jing, A. Hammer, Thermal ana-

lysis of polymers, Part 5: DSC and TGA of elastomers, UserCom 35, 1–5.

[2] METTLER TOLEDO Collected Applications Handbook: Elasto-mers, Volume 1.

[3] METTLER TOLEDO Collected Applications Handbook: Elasto-mers, Volume 2.

[4] Ni Jing, Elastomer seals: Creep behavior and glass transition by TMA, UserCom 28, 13–16.

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