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1 基礎と演習 流れの力学 8 章 運動量の法則 8.1 運動量の法則 8.2 運動量の法則の応用 8.2.1 曲管の壁面に作用する噴流の力 8.2.2 固定平板に衝突する噴流の力 (1) 垂直に衝突する場合 (2) 斜めに衝突する場合 8.2.3 移動する平板に衝突する噴流の力 8.2.4 曲面板に衝突する噴流の力 (1) 曲面板が固定している場合 (2) 曲面板が移動している場合 8.2.5 ペルトン水車に作用する力 8.2.6 ジェットによる推進 8.2.7 ジェット機の推力 8.2.8 ロケットの推力 8.3 角運動量の法則 8.4 角運動量の法則の応用 8 章 演習問題(完全解答付き)

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基礎と演習 流れの力学

第 8 章 運動量の法則

8.1 運動量の法則

8.2 運動量の法則の応用

8.2.1 曲管の壁面に作用する噴流の力

8.2.2 固定平板に衝突する噴流の力

(1) 垂直に衝突する場合

(2) 斜めに衝突する場合

8.2.3 移動する平板に衝突する噴流の力

8.2.4 曲面板に衝突する噴流の力

(1) 曲面板が固定している場合

(2) 曲面板が移動している場合

8.2.5 ペルトン水車に作用する力

8.2.6 ジェットによる推進

8.2.7 ジェット機の推力

8.2.8 ロケットの推力

8.3 角運動量の法則

8.4 角運動量の法則の応用

第 8 章 演習問題(完全解答付き)

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第 8 章 運動量の法則

8.1 運動量の法則

運動量の法則を用いると,流れの局所の圧力や速度などが不明であっても境

界面の状態のみによって流体の運動を解明できる。この手法は,力学における

運動量保存則,すなわち,ニュートンの運動の第 2 法則を流れの場に適用して

導かれる。いま,質点の力学において,質量 m,速度 v の物体に力 F が作用

するとき,加速度をαとして第 2 法則より

dt

dm

dt

d

dt

dmm

BF  v

vα (8.1)

 ・・ vdmdt F (8.2)

ここで,質量 m と速度 v との積 mv =B を運動量(momentum),m・dv を運動

量変化,F・dt を力積(impulse)という。式(8.1)から,運動量の単位時間当りの変

化は,物体に作用する力に等しいことがわかる。これを運動量の法則(momentum

law)という。この法則は流体にも適用することができる。この場合,運動量の

単位時間当りの変化は,流体に作用する力に等しいことになる。

図 8.1 に示すように,流体が曲管を定常状態で流れているとき,断面①,②

の間にある流体に着目する。断面①,②を含む閉じた閉曲面を検査面(control

surface)と呼ぶ。この検査面の中の流体に運動量の法則を適用してみよう。

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ある時刻tにおいて,検査面内の断面①と②にあった流体は,それぞれの断面

での速度を V1,V2とすると,微小時間Δt 後に V1Δt,V2Δt だけ移動して,断

面①’と②’に達する。最初に①-②間あった流体は,Δt 後に①’-②’に移動したこ

とになり,共通部分の①’-②間の流体は時間的に変化していない。したがって,

Δt 時間後の流体の運動量変化は,①-①’間の流体の運動量と②-②’間の流体の

運動量の差に等しい。V1,V2の x,y 方向の成分をそれぞれ u1,v1,および u2,

v2 とする。①-①’間における流体の単位時間当りの質量は111 VAρ ,Δt 時間後の

質量は t ΔVA 111ρ であり,したがって,x 方向の運動量は 1111 Δ ut VAρ ,y

方向の運動量は 1111 Δ vt VAρ となる。 また,②-②’間における流体の単位時間

当りの質量は 222ρ VA ,Δt 時間後の質量は t ΔVA 222ρ より,x 方向の運動量は

2222 Δ ut VAρ ,y 方向の運動量は 2222 Δ vt VAρ となる。なお,単位時間に流れ

る流体の質量,すなわち,質量流量(mass flow rate)をGとすると,連続の式よ

222111 VAVAG ρρ

である。

x 方向の運動量の時間的変化率は,式(8.1)を参照して

t

ut VAut VA

Δ

11112222 ΔΔ ρρ

であるから,単位時間の x 方向の運動量の変化は

1211112222 ρρ uuGuVAuVA

同様に y 方向の運動量の変化は

1211112222 ρρ vvvv GVAVA

となる。以上のことより,「流体の運動量の単位時間当りの変化は,検査面を

単位時間に流出する運動量と検査面に流入する運動量との差に等しい」ことが

わかる。

次に,運動量の法則により,検査面内の流体に外から作用する力を P とし,

その x,y 方向の成分を Px,Pyとすると

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vvy

x

GP

uuGP (8.3)

流れが非圧縮性ならば, ρρρ 21 (一定)であるから,流量をQとすると QρG

であるから

12

12

vvy

x

ρ

ρ

P

uuP (8.4)

式(8.3),(8.4)を流れに対する運動量の法則(momentum law)といい,単位時間

に検査面を通過した運動量の増加は,流体に外部より加えられた力に等しいこ

とを意味する。運動量の法則を利用すると,このように二つの断面の流れの状

態がわかれば,内部の流れの状態が不明であっても,流体に作用する力を求め

ることができる。なお,運動量の法則は,流体の圧縮性や粘性の有無には関係

なく成立する。

8.2 運動量の法則の応用

8.2.1 曲管の壁面に作用する噴流の力

図 8.2 に示すような曲がり管内を水が流れている場合,水が管壁面に及ぼす

力 F を運動量の法則を用いて求めることができる。

圧力によって外部から水に及ぼす x,y 方向の力はそれぞれ

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なお,力 F の x,y 方向の成分を Fx ,Fyとすると,水は作用,反作用の法則

により,管壁から-Fx ,-Fyの力を受ける。したがって,断面①-②間の水には,

圧力による力と反作用の力とが作用するので,水に作用する力 P の x 方向の力

Pxは

y 方向の力 Pyは,重力を考慮して

ここに,m は断面①-②間の水の質量である。

また,x,y 方向の運動量の増加率は,水の密度ρを一定とすると

結局,運動量の法則より,水の受ける力 Px ,Pyは,上に示した運動量の増

加率と等しいので,これらを等置して整理すると,Fx ,Fyは,それぞれ式(8.5),

(8.6)で求めることができる。

(8.5)

また

(8.6)

重力の影響を無視すると式(8.6)は

(8.7)

水が管壁面に及ぼす力 F およびその方向βはそれぞれ

22yx FFF (8.8)

x

y

F

F1t a nβ (8.9)

となる。

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8.2.2 固定平板に衝突する噴流の力

(1)垂直に衝突する場合

図 8.3 に示すように,密度ρ,速度 V,断面積 A の噴流が固定された十分に

広い平板に垂直に衝突する場合,平板に作用する噴流の力 F を考える。

噴流は,平板の摩擦がないものとすると,壁面に沿って周囲に速度 V で流れ

去る。いま,図に示すような検査面をとり,運動量の法則を適用する。噴流が

衝突前にもっていた運動量は VQρ であり,衝突後は,平板に直角方向の速度

成分は 0,したがって運動量が 0 となるから,平板に作用する噴流の力 F は

20 AVVVF ρρρ QQ (8.10)

となる。

次に,平板が小さい dD 6 場合には,図 8.4 に示すように,角度θの方向に

流れ去る。

噴流方向の速度成分は V から Vcosθに変化し,流量 AVQ であるから,小

さな平板に作用する噴流の力 F は

(8.11)

となる。

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(2)斜めに衝突する場合

図 8.5 に示すように,固定した傾斜平板に噴流が衝突する場合を考える。

平板に直角な方向に対して,運動量の法則を適用すると簡単に求めることが

できる。図に示すように,傾斜平板への衝突前の速度成分は,平板に直角方向

に sinV ,平板に沿う方向に cosV である。衝突後の速度成分は,平板に直角

方向の速度成分は 0,平板に沿う速度 V1,V2は,この方向に運動エネルギの損

失がないものとすると速度 V のままであり, 21 VVV となる。したがって,噴

流が最初もっていた運動量は sinVQρ ,衝突後の平板に直角方向の運動量は 0

となり, AVQ であるから,傾斜平板に直角方向に作用する力 F は

(8.12)

となる。x,y 方向の力の成分 Fx ,Fyはそれぞれ

(8.13)

(8.14)

となる。なお,流量Qは,Q1とQ2に配分され,角度θの影響を受ける(問題

8.8を参照)。

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8.2.3 移動する平板に衝突する噴流の力

図 8.6 に示すように,大きい平板が噴流と同じ方向に速度 u で移動する場合,

噴流が平板に作用する力は,平板に対する噴流の相対速度を考える必要がある。

いま衝突後の噴流は平板上での損失を考えず,最初の断面積 A の噴流の速度 V

と同じ速度で平板に沿って流れ去るものとする。

この場合の平板に対する噴流の相対速度は V-u,また,平板の受ける流量 Q’

uVA ’Q (8.15)

となるので,平板に作用する力 F は

2uVAuVF ρ’ρQ (8.16)

となる。また,平板の受ける動力 L は,力×速度の関係より

2uVAuuuVuFL ρ’ρQ (8.17)

となる。

次に,図 8.4 に示したような小さい平板が,図 8.6 と同じように,噴流と同じ

方向に速度 u で移動する場合の噴流が平板に作用する力 F を考える。噴流の平

板に対する噴流方向の相対速度の変化は cos1cos uVuVuV となり,

平板の受ける流量 Q’は

uVA ’Q (8.18)

であるから,平板に作用する力 F は

(8.19)

となる。

8.2.4 曲面板に衝突する噴流の力

(1) 曲面板が固定している場合

図 8.7(a)に示すように,噴流が固定された曲面板の曲面に沿って流れ,x 軸に

対して角度θで流出する場合を考える。

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x 方向に運動量の法則を適用すると,x 方向に作用する力 Fxは

(8.20)

y 方向に作用する力 Fyは,入口での y 方向の運動量は 0 であるから

(8.21)

また,固定曲面板の受ける合力 F は

22yx FFF (8.22)

となり,合力 F の作用する方向βは

x

y

F

F1-tanβ (8.23)

となる。

図 8.7(b)に示すように, 180 の場合, 1180cos であるから

222 AVVF ρρ Qx (8.24)

となる。この場合,Fxは最大となる。

(2) 曲面板が移動している場合

図 8.8 に示すように,曲面板が最初の噴流と同じ方向に速度 u で移動してい

る場合を考える。

移動している曲面板の受ける流量 Q’は

uVA ’Q (8.25)

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となるので,曲面板に作用する噴流の力 F の x,y 方向の成分 Fx,Fyは,それ

ぞれ

(8.26)

(8.27)

となる。曲面板の動力 L は

(8.28)

となる。

8.2.5 ペルトン水車に作用する力

図 8.9(a)に示すようなペルトン水車(Pelton wheel)は,高落差用の発電所など

で利用されており,水受け(bucket)に衝突した噴流の力で回転して動力を発生す

る。

図(b)に示すように,バケットが静止しているとすると,一定流量 Qの噴流が

衝突していると考えてよい。検査面の入口での x 方向の流入運動量はρQV,検

査面出口部から流出する運動量は,βを図のようにとると,バケットから流出

する角度は β180 となるから, βρβπρ cos)cos( VV QQ である。したが

って,運動量の法則より,この静止しているバケットに作用する噴流の力 Fは,

噴流の断面積を A とすると,流量Q =AV であるから

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(8.29)

実際には,図(c)に示すように,バケットは噴流による力によって u の周速度

で回転している。簡単のために,バケットは噴流の速度 V と同じ方向に速度 u

で動くものとすると,バケットに対する相対速度は V-u であり, 1 個のバケ

ットの受ける流量は uVA ’Q である。したがって,噴流によって 1 個のバケ

ットが受ける力 F は

(8.30)

また,1 個のバケットが受ける動力 L は

(8.31)

となる。実際のペルトン水車では図(a)に示すように,多数のバケットが順次噴

流にさらされるために,噴流は常にいずれかのバケットに作用していることに

なるので,図のように検査面をとれば,単位時間に検査面を通過する流量は,

バケットが静止しているときと同じ AVQ となる。したがって,噴流がバケ

ットに衝突することによって水車全体が受ける力 F は

(8.32)

となる。また,バケットによって水車全体が受ける動力 L は

(8.33)

となる。ここで,β= 0°のとき L は最大値を示し

uVA V uL ρ2m a x (8.34)

となる。

8.2.6 ジェットによる推進

図 8.10 に示すように,表面積 A の大きな水槽の側壁に設けた断面積 a の小さ

なノズルから流量 Qの水が噴出している。運動量の法則を適用して,ジェット

による推力 Ftを考える。

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水槽の水面の高さ h は一定に保たれているとすると流入運動量は 0 であり,

ノズルからの流出運動量は 2aVV ρρ Q となる。水槽は反作用のためにジェッ

トと反対の方向に推力を受けるので,ジェットによる推進力 Ftは,運動量の法

則より

20 aVVVFt ρρρ Q-Q (8.35)

トリチェリ-の定理より,ノズルから噴出する水の速度 V は,摩擦損失を無視

すれば hV g2 であるから,式(8.35)は

haaVVFt gρρρ 22 Q (8.36)

となる。

8.2.7 ジェット機の推力

図 8.11 に示すようなジェット機に搭載されているターボジェットエンジンで

は,取り入れた空気を圧縮機で圧縮し,これを燃焼室に導いて燃料を燃焼させ

て高温高圧となったガスが,圧縮機駆動用のタービンを回転させ,高速度でノ

ズルから大気に噴出するようになっている。噴出する排気ガスの速度は,取り

入れる空気の速度よりも大きくなるので運動量は増加し,噴流による力の反作

用としてジェット機は前向きの大きな推力を得ることができる。

いま,ジェット機が速度 v0で飛行しているものとする。ここで,ジェット機

を固定すると,速度 v0の空気がエンジンに流入すると考えてよい。流入する空

気の流量をQ0,密度をρ0,圧力を p0,流出する排気ガスの流量をQe,密度を

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ρe,圧力を pe,相対速度を weとする。いま,近似的に入口での圧力 p0と出口

での圧力 peが周囲の空気の圧力 paに等しいとする。すなわち, ae ppp o と

考える。また,実際にはエンジンに燃料が供給されるのでノズル出口部での質

量流量 eQeρeG は,空気の流入質量 oo QoρG よりも多少増加することを考

慮すると,ジェット機の推力 Ftは

2oo

2eooe vwvw AAQQ oeeoee ρρρρ tF (8.37)

この場合のエンジンの動力 L は

3ooo

2e

2oooeo vvwvvwv AAQQ oeeoee ρρρρ tFL (8.38)

なお,近似的に Qρ GGG eo が成り立つとすると

oo vwvw eeρ GFt Q (8.39)

となる。

8.2.8 ロケットの推力

図 8.12 に示すように,ロケットでは空気を取り入れないので,式(8.37)にお

いて v0=0 となり,ロケットの推力 Ftは

eeeρ ww et GF eQ (8.40)

となる。

8.3 角運動量の法則

ポンプや水車などにおいては,羽根車の内部で流体は回転運動をしている。

このような回転する物体に回転力 (トルク torque)が加えられると,角運動量

(angular momentum)が変化する。つまり

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加えられたトルク T=単位時間の角運動量の変化 (8.41)

となる。

角運動量は運動量のモーメント(moment of momentum)を意味しているので,

いま,図 8.13 に示すように,点Oから距離 r における質量 m の流体粒子が点O

まわりに周速度 Vθで回転しているとすると,角運動量は,運動量 m Vθと距離

r との積

rmV (8.42)

で定義される。

この角運動量の単位時間の変化は,流体粒子に作用する回転力(トルク)T

となる。すなわち

Fr

dt

mVdr

dt

rmVdT (8.43)

ここに,Fθは質量 m の流体粒子に働く力であり,点Oからの距離 r を乗じるこ

とによって,点Oまわりに回転力を与える。

なお,トルク T,力 Fθおよび回転半径 r はいずれもベクトル量であるから,

式(8.1)で示したように,式(8.43)をベクトル式で示すと

FrrV

T

dt

md (8.44)

となる。式(8.41),(8.43),(8.44)の関係を角運動量の法則(law of moment of

momentum)という。

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8.4 角運動量の法則の応用

図 8.14 に示すように,流量 Qの水が,フランシス水車の羽根車に絶対速度

V1で流入し,V2の速度で流出することによって羽根車はωの角速度で回転する。

羽根車の入口と出口における周速度を u1,u2,相対速度を w1,w2,羽根車半

径を r1,r2とする。また,α1,α2はそれぞれ絶対速度と周方向とのなす角,

β1,β2はそれぞれ相対速度と周方向とのなす角,すなわち,入口と出口の羽

根角である。

羽根車の入口における水のもつ円周方向の運動量は 11 cosVQρ ,羽根車中心

Oまわりの角運動量は 111 cosrVQρ ,同様にして,出口における角運動量は

222 cosrVQρ である。したがって,角運動量の法則により,羽根車の受けるト

ルク T は

(8.45)

となる。また,羽根車の軸に伝わる動力 L は

ωTL (8.46)

となる。