2019年2月 - Johnson Matthey market...今回のPGM市場レポート(The PGM Market...

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2019年2月 PGM市場レポート

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Page 1: 2019年2月 - Johnson Matthey market...今回のPGM市場レポート(The PGM Market Report)はAlison Cowleyが執筆した。ジョンソン・マッセイのPGM市場調査担当者:

2019年2月

PGM市場レポート

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今回のPGM市場レポート(ThePGMMarketReport)はAlisonCowleyが執筆した。

ジョンソン・マッセイのPGM市場調査担当者:

LucyBloxham

StewartBrown

LauraCole

AlisonCowley

PeterDuncan

MikioFujita

NicolasGirardot

LukeHan

JasonJiang

RupenRaithatha

MargeryRyan

ElaineShao

FeiXiaoyan

我々が示した2018年に関する数値は2018年10月末までに入手できた情報に基づく暫定推定値である。ただし、例外として、投資に関する数値は通年のデータを反映している。2018年の最終的な数値は2019年5月のレポートで発表する予定である。

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ジョンソン・マッセイPLCは本レポートに記載される情報および資料を正確なものにするよう努めるが、正確さ、完全性、特定目的への適合性を保証する

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関連取引が潜在投資家の投資目的または財務状況に適しているまたはふさわしいといった趣旨のアドバイスも含まれるが、これに限定されるもので

はない。

本レポートの情報または資料に依拠し、規格貴金属関連商品、その他の規格品、有価証券、投資に対する投資決定を行ってはならない。投資決定に先

立ち、潜在投資家は財務、法務、税務、会計に関する自身の顧問にアドバイスを求め、各自の資金ニーズや資金状況を考慮し、かかる投資決定に伴うリ

スクを慎重に検討すべきである。本レポートは、いずれかの規格貴金属関連商品、その他の規格品、有価証券、投資を後援、擁護、推薦、奨励する役割

を果たすとみなしてはならない。

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1 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

プラチナ市場の要約2018年の供給と需要

• 産業用需要が高水準であったにもかかわらず、プラチナ総需要は 2018 年に減少した。

• 中国の生産設備増設を反映して、化学、ガラス、石油の各分野のプラチナ需要は非常に旺盛であった。

• もっとも、欧州のディーゼル車ではプラチナ需要が減少し、投資も大幅な純減となった。

• 一次供給量は横這いだったが、自動車のリサイクルが引き続き堅調に増加し、二次供給量(リサイクル量)を押し上げた。

• プラチナ市場では供給過剰が拡大し、価格は年末に 800ドル /ozを割り込んだ。

2018 年のプラチナ市場は供給過剰が拡大した。使用済み

自動車触媒のリサイクル量が一段と増加したため、一次

供給量と二次供給量の合計は 1.8%増加したが、投資需

要が減少し、欧州のディーゼル車のプラチナ需要が落ち込

んだことから、需要は2.2%減少した。宝飾需要も低調だっ

たが、中国のガラス分野、化学分野、石油分野による大

量の購入によって、産業用需要は約 15%増加した。

2018 年のプラチナ一次供給量は世界全体で前年比横這

いであった。南アフリカでは、シャフトの閉鎖が打撃となっ

たが、ほかの鉱山での増産や仕掛在庫からの放出がこの

打撃を補って余りあるものとなった。しかし、ロシアでは、

砂鉱床のプラチナ生産量が激減したため、出荷量が減少

した。

南アフリカの PGM 鉱山は非常に大量の仕掛在庫を抱え

たまま 2018 年を迎えた。ノーザム・プラチナムは 2017

年 12 月の新規溶鉱炉の始動に先駆けて精鉱在庫を構築

しており、インパラ・プラチナムでは 2017 年と 2018 年

序盤に、精錬所の計画停止に加えて予定外の停止に見舞

われたため、パイプラインの中に仕掛在庫が積み上がっ

ていた。昨年の上半期中には、アングロ・プラチナムで

も精錬所の保守整備によって仕掛在庫が増加していた。

2018 年 5 月の報告書では、過剰な仕掛在庫の精錬が

2018 年末までにすべて終わると想定していたが、精錬

処理は 2019 年までずれ込んでいるようである。それで

も、2018 年下半期の仕掛在庫の放出によるプラチナ供

給量の増加は約 7 万 5,000 ~ 10 万オンスになったと考

えられる。ただし、我々の試算は 2018 年 9 月までの 9ヵ

月間に公表されたデータに基づくものであり、通年のデー

タを入手次第すぐに更新されるという点に留意すべきで

ある。

プラチナの供給と需要(単位:1,000oz)

供給 2016年 2017年 2018年

南アフリカ 4,392 4,449 4,471

ロシア 717 703 657

その他 988 953 980

供給合計 6,097 6,105 6,108

総需要

自動車触媒 3,342 3,218 3,052

宝飾品 2,412 2,400 2,363

産業用 1,806 2,022 2,321

投資 620 361 89

総需要合計 8,180 8,001 7,825

リサイクル量 -1,934 -2,072 -2,215

純需要合計 6,246 5,929 5,610

在庫変動 -149 176 498

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2018 年の鉱山生産量は、2017 年下半期のボコニ鉱山

とマセヴェ鉱山の閉鎖によって打撃を受けた。もっとも、

これを補ったのが、アングロ・アメリカン・プラチナムの

旗艦鉱山であるモガラクエナとアマンデルブルトの好業

績、ならびにロイヤル・バフォケン・プラチナムのスタイ

ドリフト・プロジェクト(採掘した PGM 地金はアングロ・

アメリカン・プラチナムが精錬・販売する)の増産であった。

2018 年、モガラクエナ鉱山は選鉱プラントの最適化と高

品位鉱区の採掘によって非常に好調なスタートを切った。

下半期には低品位鉱区の採掘へと移行したものの、1 月

~ 10 月の生産量は前年同期比で 13%増加した。アマン

デルブルト鉱山では、効率化と生産性の向上によって、プ

ラチナ生産量が 2018 年の年初来 9 ヵ月間に前年同期比

で 5%増加した。

ロイヤル・バフォケン・プラチナムは閉鎖中のマセヴェ鉱

山の選鉱施設を再稼働させて、自社の鉱山から採掘した

鉱石を処理している。サウスシャフトでの UG2 の採掘事

業終了を受けて既存の BRPM 鉱山での生産量は減少した

が、新規鉱山のスタイドリフトの増産がこの減産を十二分

に補った。

2018 年、ノリリスク・ニッケルの PGM 生産量は堅調で

あった。1 月~ 9 月のプラチナ生産量は前年同期比で 4%

増加し、我々が試算した通年の生産量は同社の予想レン

ジ(60 万~ 65 万オンス)の上限にある。さらに、国営

企業のロステクから購入した銅精鉱の処理による増加分も

あった(14 ページ参照)。加えて、我々は、ノリリスク・ニッ

ケルが残滓や精錬所に戻される低品位物質の処理量を増

やしていると考えている。これにより、同社の PGM 生産

量を長年にわたって押し上げてきた古い磁硫鉄鉱精鉱の

枯渇が相殺された。

ロシアでは、極東の砂鉱事業の品位が低下したため、砂

鉱床のプラチナ生産量が 2018 年に急減した。砂鉱事業

はかつて年間 15 万オンスものプラチナを生産していた

が、現在の生産量は年間 2 万オンスを割り込んでいる。

そのため、ロシアのプラチナ供給量は 2018 年に 6.5%

減の計 65 万 7,000 オンスまで落ち込んだ。

スティルウォーターの採鉱コンプレックスの一角を形成す

るシバニェ・スティルウォーターのブリッツ拡張プロジェク

トは、初めて生産に重要な貢献を果たし、同社の米国で

の生産量を押し上げた。少量の PGM は副産物としてベー

スメタルの採掘から得られるが、シバニェ・スティルウォー

ターのモンタナ州の鉱山はプラチナを主生産とする米国

唯一の鉱山である。

副産物としての PGM 生産量がカナダのサドバリー・ニッ

ケル鉱山で減少したため、カナダ産鉱石からのプラチナ

生産量は 2018 年にやや減少したと推定される。ヴァー

レの報告によると、同社のプラチナ生産量は、購入した

物質からの生産分を含めて、昨年の年初来 9 ヵ月間に前

年同期比で 5%減少した。この一因は、同社のサドバリー

鉱山からの生産量が 2017 年に急減したこと、すなわちス

2 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

「自動車触媒、宝飾、投資の各分野の需要が減少したことから、プラチナ市場は2018年に50万オンス前後の供給過剰となった」

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トービー鉱山の閉鎖とコールマン鉱山(PGM の品位が非

常に高いと考えられている)における操業の中断によって

鉱石の採掘量が約 30%も減少したことによる可能性があ

る。処理工程が長いため、鉱山生産量の増減が PGM の

精錬量に完全に反映されるまでには数ヵ月を要する。

グレンコアのニッケル鉱山全体では、プラチナ生産量が 1

月~ 9 月に前年同期比で 20%以上も減少した。この減少

は同社のサドバリー鉱山の品位低下と整合しており、こう

した品位低下の背景には PGM を豊富に含むニッケル・リ

ム・サウス鉱山が寿命に近づいていることがある。この鉱

山の代わりとなる生産能力への投資は、2023 年前後に

生産開始を予定しているオナピング・デプス・プロジェク

トで進められている。

一次供給量は世界全体であまり変動しなかったが、二次

供給量については、使用済み自動車触媒の回収・処理量

のさらなる増加が追い風となった。2015 年と 2016 年に

は、鉄鋼の安値によって廃車台数が減少したため、主要

な市場である欧州と北米を中心として、使用済み自動車

触媒の回収・処理事業が著しく停滞した。しかし、ここ 2

年間は、鉄鋼スクラップの価格上昇によって廃車台数が

大幅に回復した。プラチナリサイクル量は、使用済み自動

車触媒からリサイクルされるほかのメタルのリサイクル量

ほど増加しなかったが、これは過去 20 年間にガソリン車

の三元触媒においてプラチナ離れが進んだためである。

化学分野のプラチナ需要は過去 5 年間にわたって著しく

高い水準にあり、2018 年もさらに増加した。消費を支え

るのは、特殊シリコーンのセクター(化学分野の中ではプ

ラチナ使用量が最大である)と硝酸セクターで、いずれも

生産量に比例して大量の需要を継続的に生み出す。これ

とは対照的に、パラキシレンやプロピレンの製造(PDH:

プロパン脱水素法)といった化学プロセス用のプラチナ

購入は主にプラント建設時に発生し、それ以降はプラント

稼働中の減耗分の補充や触媒交換のために、少量のプラ

チナが必要とされるにとどまる。

特殊シリコーンのプラチナ需要は世界全体で年 2 ~ 3%

の増加となっており、最終用途の市場における基本的な

傾向と政府の化学製品輸入縮小策を反映して、その増加

の大半は中国に集中している。このプロセスが普通とは

異なるのは、プラチナ触媒が消費され、プラチナが全く

回収されない点である。従って、シリコーンの生産量がプ

ラチナ消費量に直接結びつくことになる。

硝酸の製造にはプラチナのメッシュ触媒の利用が不可欠

であり、プラチナは製造工程における揮発によってメッシュ

触媒から減耗される。メーカーはパラジウムのメッシュ触

媒を使用して、プラチナ触媒から失われるプラチナを捕捉

することも多いが、パラジウム価格がプラチナ価格を上回

る水準まで上昇しているため、この方法は経済的ではなく

なっている。世界の硝酸消費量が年 2%前後で増加して

いることから、この用途でのプラチナ需要も徐々に増加し

続けている。

3 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

「プラチナ需要は2018年に化学分野で一段と増加し、石油分野やグラスファイバーセクターでも非常に旺盛となった」

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その他の化学プロセスにおけるプラチナ触媒需要は新規

プラントの建設活動に左右されるため、その年によって大

きく異なる。PDH への投資は今やピークを過ぎたものの、

2018 年には中国と世界のその他の地域でパラキシレン

製造設備の新設のために極めて大量のプラチナが購入さ

れた。中国の場合、これは数箇所の超大型総合製油・石

油化学コンビナートの建設に関連するプラチナ購入の第

一波である。このコンビナート建設の目的は、バルクケミ

カル製品全般の自給率を高め、燃料の品質を向上させる

ことにある。こうしたコンビナートの建設によって、製油プ

ロセスで使用されるプラチナ触媒の需要も大量に生まれ

たため、昨年は石油分野のプラチナ需要も非常に旺盛で

あった。

昨年は、ガラス分野のプラチナ需要も非常に好調で、グ

ラスファイバーセクターのプラチナ購入量は史上最高水準

に達した。メーカーは、建設や再生可能エネルギー(風

力タービンの翼にグラスファイバーを使用)ならびに自

動車(車体の軽量化を図るために金属の代わりに繊維強

化プラスチックを使用)などの最終用途で予想される需

要増加に対応するために新規生産設備に対する大型投資

を行っており、特に中国でこの傾向が顕著になっている。

中国では、さらに大型化している次世代液晶ディスプレイ

(LCD)用ガラス基板の製造装置に対する投資を受けて、

こうしたガラス基板の新規生産設備のためのプラチナ購入

量も増加した。ただし、このセクターの需要は依然として

2011 年のピークを大幅に下回っている。

電子材分野では、ハードディスクドライブの生産数が減少

し続けているにもかかわらず、ハードディスクのプラチナ

需要が 2018 年に回復した。ハードディスクドライブの市

場シェアは民生品で引き続き縮小している一方で、より

大型で単位当たりのディスク枚数が多いドライブを必要と

するニアラインや事業者向けの需要は旺盛になっている。

ソリッドステートメモリーとの競争は引き続き激化している

が、ソリッドステートメモリーはハードディスクドライブより

もかなり高価である。従って、記録容量の非常に大きい

メディアを必要とするニアラインや事業者向けではハード

ディスクが依然として主流となっている。

燃料電池のプラチナ需要は電子材分野の需要に算入さ

れている。燃料電池セクターは 2018 年に力強く成長し、

特に中国では、政府が打ち出した新エネルギー車(NEV)

向けの補助金が自動車の電動化を促している。電気自動

車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)への補

助金は減額されているが、燃料電池車(FCEV)に対す

る補助金は維持されている。これにより、燃料電池スタッ

クの生産設備や、乗用車、バス、輸送トラック、トラムと

いった様々な燃料電池車の新規プラットフォームの開発

への投資が促されている。その結果、2018 年~ 2021

年に引き渡し予定の燃料電池スタックが大量に発注され、

FCEV のプラチナ需要は 2018 年に倍増した。さらに詳細

な情報については、2018 年 5 月の報告書の燃料電池に

関する特集を参照されたい。

産業用需要は引き続き旺盛だったが、自動車触媒分野の

プラチナ需要は 2018 年に 5%強の減少となった。インド

の自動車生産台数が 2 桁の伸びとなったものの、欧州の

自動車生産台数が 9%も減少し、この落ち込みを欧州市

場よりもはるかに小さなインド市場の回復によって補うこと

ができなかったため、世界の小型車生産台数は約 3%減

少した。加えて、欧州のディーゼル車の後処理システムで

PGM の含有量が減少したことが主因となり、プラチナ触

媒の平均充填量が減少した。

このような充填量の減少は、欧州の自動車メーカーが排

ガス規制 Euro 6d-TEMP に対応するために採用した触媒

システムの変更を反映したものである。Euro 6d-TEMP で

は、実路走行(RDE)試験の条件下で粒子状物質の排出

量と NOx 排出量の双方について「CF 値」が課されている

(欧州の排ガス規制の詳細については 40 ページを参照

のこと)。Euro 6d-TEMP の段階的導入は 2017 年 9 月

に始まり、これによりNOx の転換に関しては PGM を使用

しない選択還元触媒(SCR)と選択還元触媒機能付のフィ

ルター(SCRF)技術に頼るシステムの利用が拡大している。

4 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

プラチナの需要:産業用(単位:1,000oz)

2016年 2017年 2018年

化学 476 490 550

電子材 230 230 273

ガラス 247 366 466

医療&バイオメディカル 217 220 224

石油 175 233 311

その他 461 483 497

合計 1,806 2,022 2,321

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SCRF は PGM を使用したディーゼル微粒子捕集フィルタ

- (DPF) に取って代わり、NOxトラップはいくつかの自動

車メーカーで SCR 技術と組み合わせて引き続き利用され

ているものの、こうした触媒のプラチナ平均含有量は減少

している。Euro 6d-TEMP は 2019 年 9 月から欧州で販

売されるすべての乗用車に適用され、その 1 年後にはす

べての小型商用車にも適用されることになっている。

我々の試算によると、欧州のディーゼル車のプラチナ需要

は 2018 年に合計で 10%強の減少になった。この一部は、

インドのディーゼル車市場の力強い回復によって補われた

が、インド車の触媒充填量は依然として欧州車の充填量

を大幅に下回っている(もっとも、排ガス規制 Bharat 6

が 2020 年 4 月から施行されるため、インド車の触媒充

填量も将来的には増加するだろう)。

大型車向けに関しては、インドを含む世界のその他の地

域の一部諸国と中国で、触媒装着率が高まったことを反

映し、プラチナ需要が 2018 年に世界全体で4%増加した。

世界的に見ると、2018 年には大型ディーゼルトラックの

60%強が PGM を使用した触媒システムを装着していたと

推定され、今後 3 年間に China VI や Bharat VI に対応し

たトラックが増加するため、触媒システム装着率も急速に

高まると予想される。

プラチナ ETF 需要は 2018 年にマイナスとなった。もっと

も、ETF の現物保有量の合計はわずかな変動にとどまり、

大量の解約が続いたパラジウム ETF とは異なる。過去 3

年間にわたり、プラチナ ETF の保有残高は 250 万オンス

前後のかなり狭いレンジ内で変動しており、投資家の大

多数は含み損を抱えたまま ETF を保有し続けた。それで

も、昨年は、プラチナ価格がまず 900ドルを割り込み、

次いで 800ドルを割り込んだことを受けて一部の投資家

がポジションを清算したため、若干の解約が見られた。こ

うした解約は欧州と南アフリカに集中し、米国の投資家は

対照的に 2018 年下半期に買いを入れていた。

日本のプラチナ需要は主に資産用地金で店頭販売の形を

とり、これまでも安値の時期と連動していた。最近では

2015 年~ 2016 年に、円建てプラチナ価格が急落して

5 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

プラチナの需要:自動車触媒分野(単位:1,000oz)

総需要 リサイクル量 純需要

2016年 2017年 2018年 2016年 2017年 2018年 2016年 2017年 2018年

欧州 1,801 1,717 1,510 -501 -544 -603 1,300 1,173 907

日本 359 350 344 -66 -73 -69 293 277 275

北米 344 322 325 -470 -535 -579 -126 -213 -254

中国 151 157 153 -16 -20 -24 135 137 129

その他の地域 687 672 720 -111 -120 -128 576 552 592

合計 3,342 3,218 3,052 -1,164 -1,292 -1,403 2,178 1,926 1,649

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金価格を下回ると、資産用プラチナ地金に対する大量の

需要が発生し、需要の合計は両年ともにそれぞれ 50 万

オンスを上回った。もっとも、2018 年には円建てプラチ

ナ価格が 10 年ぶりの安値まで下落したにもかかわらず、

需要は 2015 年~ 2016 年ほど刺激されなかった。これ

はおそらくプラチナ価格が金価格を大幅に下回っているこ

とに一般投資家が慣れてしまったためであろう。それでも、

資産用地金需要は正味でまだプラスとなっており、2017

年の水準もわずかだが上回った。

中国の宝飾業界では、宝飾総需要が引き続き減少し、中

古宝飾品のリサイクル量が増加したため、2018 年も宝飾

用プラチナ消費量が純減した。ファッションジュエリーの

主な購入者である若年層の消費者にはもはやプラチナ志

向はなく、魅力的なデザインまたは特定の貴石が決め手

となって購入を決断する傾向にある。

消費者のこうしたトレンドに対応して、宝飾メーカーや小

売店は 18 金等の宝飾品の品揃えを拡大している。こうし

た宝飾品は一般的にグラム単位ではなく商品単位で価格

設定されているため、利益率も高い。これは主に業界主

導の現象だが、消費者の影響力もあると考えられる。ち

なみに、消費者は大きくて非常に高価な宝飾品を 1 つか

2 つ持つのではなく、様々な服装に合わせることができる

軽量でさほど高価ではない宝飾品を複数持つことを好む

傾向にある。

プラチナ宝飾品の生産から 18 金等の宝飾品の生産へと

移行するための資本コストは現在かなり低水準にあるた

め、既存のプラチナ宝飾加工業者がプラチナの市場シェ

アを守ろうとする気持ちは弱まっている。その結果、多く

のメーカーは製品の一部を 18 金等の宝飾品へと切り替え

ている。プラチナ宝飾品に商品単位の価格設定を導入す

ることも試みられているが、これまでのところ、成功して

いない模様である。

同時に、既存のクローズド・ループの流通網、すなわち

中古品を下取りに出してより重量のある新しい宝飾品と交

換するという従来の方法以外のリサイクルが増加している

ことを示す証拠もある。宝飾小売店が集まる主要地区の

6 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

プラチナの需要:宝飾品分野(単位:1,000oz)

総需要 リサイクル量 純需要

2016年 2017年 2018年 2016年 2017年 2018年 2016年 2017年 2018年

欧州 177 176 184 -5 -5 -5 172 171 179

日本 310 305 307 -241 -222 -204 69 83 103

北米 220 238 239 -3 0 0 217 238 239

中国 1,510 1,470 1,400 -485 -515 -563 1,025 955 837

その他の地域 195 211 233 -4 -4 -4 191 207 229

合計 2,412 2,400 2,363 -738 -746 -776 1,674 1,654 1,587

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大半には今や独立したリサイク受ル店が存在し、消費者

は中古宝飾品を売却して、代金として現金を受け取ること

ができる。売却されたこうした中古宝飾品は地元の精錬業

者によって精錬処理されたのちに、宝飾メーカーによって

購入されることもあり、こうしたメーカーの多くでは必要な

地金をスクラップから調達する比率が高まっている。

中国の宝飾市場の落ち込みの一部はインドの需要増加に

よって補われた。インドでは、かなりの低水準からではあ

るものの、宝飾用プラチナ消費量がまだ 2 桁の伸びとなっ

ている。リサイクルも考慮して総括すると、世界の宝飾用

プラチナ需要は 4.1%純減した。

自動車触媒、宝飾、投資の各分野の需要減少により、

2018 年のプラチナ市場は 50 万オンス弱の供給過剰と

なった。これを反映して、ドル建てプラチナ価格も低調に

推移したが、プラチナ価格は依然として、需給バランスよ

りも短期的な投機家心理や先物市場の取引活動の影響を

強く受けている。

NYMEX の買い越し残は 2018 年 2 月~ 9 月に 270 万オ

ンス強の減少となり、第 3 四半期中は投機筋のポジショ

ンは一貫して「売り越し」であった。これは 2004 年以来

のことであり、主因はプラチナへのネガティブな投資家心

理が強まったことで投機筋がこの 8 ヵ月間に大量のショー

トポジションを積み上げたことにあった(ロングポジション

はほぼ変わらないままであった)。これによってプラチナ価

格は下落し、年間最高値となった 1 月の 1,020ドル /oz

から 9 月には 772ドル /oz の最安値まで落ち込んだ。

9 月中旬から11 月中旬にかけて投機筋のショートポジショ

ンが手仕舞われ、価格は 850ドル前後まで緩やかに回復

した。しかし、年明けとともに新規のショートポジションが

形成され、価格は 800ドルを割り込む水準まで下落した。

7 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

「2018年には、投機筋が2004年ぶりに「売り越し」に転じた。主因は、投機筋が全体でショートポジションを大量に積み上げたことにあった」

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8 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

プラチナ市場の展望2019年の供給と需要

• 自動車の試験方法の厳格化に加え、大型車の排ガス規制も強化されていることから、自動車触媒分野のプラチナ需要に関する見通しは明るくなっている。

• プラチナの産業用需要は中国における生産設備のさらなる拡張によって支えられるだろう。

• もっとも、宝飾需要は引き続き低調となろう。同時に、プラチナ価格が上昇して、投資家がパラジウム市場の場合と同様の反応を示せば、投資需要も減少するであろう。

• 一次供給量が横這いで、リサイクル量がやや増加することから、市場は引き続き供給過剰となろう。

今年は一次供給量が横這いとなり、需要が緩やかに増加

する可能性があるにもかかわらず、プラチナ市場の供給

過剰は変わらないと予想される。中国、次いでインドで

大型車に対して一段と厳しい排ガス規制が施行されること

から、自動車触媒分野のプラチナ需要は安定を保ち、や

がて増加し始めるであろう。産業用需要も2018 年に迫る

水準を維持する方向へと向かっているため、見通しは明

るい。もっとも、宝飾分野の見通しは低調である。また、

価格が上昇し、投資家がパラジウム市場の場合と同様の

反応を示すようであれば、投資需要も減少するだろう。

プラチナ供給量が 2019 年に大きく変動することはおそら

くないと思われる。近年、プラチナの安値によって南アフ

リカの PGM 鉱山業界は大規模な合理化を図っているが、

驚くべきことに、現在までのところプラチナ生産量への影

響はほとんどない。シャフト閉鎖の影響は、採算性の高

い新規鉱山での増産や、クロムならびに PGM の残滓の

再処理によるプラチナ回収量の増加によってほぼ補われ

ている。2013 年以降、南アフリカのプラチナ鉱山生産量

は、ストライキの打撃を受けた 2014 年を除き、430 万

~ 440 万オンス前後で安定しているが、実際の供給量は

生産者在庫の増減を受けて変動する。

少なくとも 1 年余りは、これまでと変わらないプラチナ

生産量を維持できると考えられるが、数年間にわたる

安値を受けた戦略的決定が奏功し始めているため、そ

れ以降については生産量が減少するリスクが高まってい

る。2014 年~ 2018 年の大半において、南アフリカの

一般的な PGM バスケットのランド建て価格は 12,000 ~

14,000 ランド /oz で推移していたが、ドル建て価格は為

替相場の変動によってほとんど動かなかった。多くのプラ

チナ鉱山はこの価格水準により深刻な財政難に陥り、生

産者は設備投資を制限して事業の合理化を図った。

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2018 年 9 月以降、パラジウム価格の大幅な上昇によっ

てランド建てバスケット価格は 16,000 ランド /oz に向け

て上昇し、2008 年に付けた最高値に迫ったが、さらなる

シャフト閉鎖を回避するには遅すぎた。ロンミンのマリカ

ナ鉱山では、古いシャフトの稼働終了によって、生産量が

2019 年と 2020 年に急減するだろう。また、インパラ・

プラチナムは 2018 年 8 月に新たな戦略的計画を発表し、

同社のリース鉱区のプラチナ生産量が 2021 年までに年間

52 万オンスまで減少するとの見通しを示した。総括すると、

2019 年はシャフト閉鎖による減産を補うことができるが、

2020 年以降については減産分を補うことが難しくなると考

えられる。実際には、ノーザム・プラチナムのブーイセン

ダル鉱山やロイヤル・バフォケン・プラチナムのスタイド

リフト鉱山といった新規プロジェクトの増産スピード次第と

なろう。

スタイドリフト鉱山では月産 23 万トンの鉱石の安定生産

に向けた増産が続いており、生産量は今年も増加するで

あろう。ブーイセンダル鉱山では、UG2 リーフの第 2 シャ

フトの開発が進められており、わずかだがすでに鉱石が

貯蔵され始めている。第 2 処理プラントは以前、現在閉

鎖中のエベレスト・サウス鉱山からの鉱石を処理してい

たが、2019 年上半期に再稼働する予定である。以前に

この鉱山を採掘していた際に産出され、大量のクロム鉱

と少量の PGM を含む物質を残滓ダムから採収して再処

理する作業も始められている。

PGM とクロム鉱の残滓からの生産量も緩やかに増加す

る可能性がある。ノーザム・プラチナムは昨年、グレン

コアからエランド・プラチナム・プロジェクトを買収した

が、現在ではこのプロジェクトの選鉱施設を再始動させて

おり、今後は以前の UG2 の採掘から生じた残滓を再処理

して、クロム鉱と PGM を回収する予定である。また、同

社はジュビリー・メタル・グループとも契約を結んでおり、

同グループの PlatCro クロム事業から生じる PGM 含有物

質を処理することになっている。

南アフリカのプラチナ供給量は、余剰仕掛在庫が精錬さ

れることによっても支えられるであろう。我々の試算による

と、アングロ・アメリカン・プラチナムとインパラ・プラチ

ナムおよびノーザム・プラチナムが抱えるプラチナの仕掛

在庫は 2018 年 9 月末現在で通常の水準を 40 万オンス

も上回っている。この在庫の一部は 2018 年末の時点で

まだ精錬工程にあったため、2019 年の供給量に加えられ

ることになろう。

ノリリスク・ニッケルがベースメタルと PGM の中期増産を

目標としているものの、短期的にはロシアの生産量が増

加する可能性はない。過去 2 年間にわたり、ロシアの生

産量は、停止中の処理プラントから回収された地金の精

錬や、すでに採掘されている古い磁硫鉄鉱や銅精鉱といっ

た PGM 含有量の多い物質の処理によって支えられてきた

(2 ページ参照)。磁硫鉄鉱の在庫はすでに枯渇している

が、銅精鉱の精錬は今後 2 年間にわたって続くと予想さ

れる。さらにそれ以降については、ノリリスク・ニッケル

が自社の「サザンクラスター」採掘事業における露天鉱

の大型拡充を査定中だが、2023 年前後まではこれが生

産に寄与することはないだろう。

自動車触媒分野のプラチナ需要は 2018 年に 5 年ぶりの

低水準まで落ち込んだが、向こう数年間は、大型車への

排ガス規制が中国市場とインド市場で強化され、欧州で

は小型車の検査手続きがより厳しくなるため、需要につい

ては安定もしくは緩やかな増加が予想される。

Euro 6d の最終フェーズが 2020 年 1 月に施行されること

により、実路走行(RDE)試験時の NOx 許容排出量はさ

らに制限され、CF 値は Euro 6d-TEMP の 2.1 から 1.43

となる。後処理システムが十分に温まっていない状況での

コールドスタートや、エンジンが NOx を最も排出する高負

荷時など、実路走行(RDE)試験で認められる様々な条

件下で、Euro 6d の NOx 排出基準を満たすことは非常に

難しい。このため、小型ディーゼル車の選択還元触媒(SCR)

ブリックの上流に使用されるディーゼル酸化触媒のプラチ

ナ充填量が増加している。この増加により、SCRと微粒子

除去フィルターの機能を 1 つのブリック上に組み合わせる

ことによって PGM でコーティングされたフィルターを不要

にした SCRF 技術の利用拡大によるマイナスの影響は相殺

されるだろう。

インドの排ガス規制 Bharat VI の 2020 年の施行を受け

て、ディーゼル車セクターのプラチナ消費量が増加に向

かっていることから、小型ディーゼル車市場のプラチナ

需要は今後2~3年間は横ばいで推移すると予想される。

9 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

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この時期には、China VI と Bharat VI の実施によって、

インドと中国でそれぞれ新車販売されるすべてのトラック

がプラチナを使用した後処理システムを追加装備するこ

とになるため、大型車からのプラチナ需要は急増すると

見込まれる。ちなみに、2018 年にこのシステムを搭載し

ていたトラックは全体の半数未満であった。今年は、中

国の多くの省と都市が全国での実施に先駆けて China VI

を導入するため、触媒を装着した大型車の割合が大幅に

拡大すると予想される。

小型ガソリン車のプラチナ需要は、主に日本メーカーでわ

ずかに使用されているプラチナ・ロジウム方式あるいはト

リメタル方式に限定されており、合計でも年間 20 万オン

ス未満である。2017 年以降はパラジウム価格がプラチナ

価格と同水準にあり、2018 年中はパラジウム価格がプラ

チナ価格を上回って価格差が拡大したことから、ガソリン

車用触媒におけるプラチナの利用について、新たな研究

が行われた。その結果、プラチナ・ロジウム触媒は特定

の用途で良好なテスト結果が得られたものの、技術改良

がなされなければ、既存のパラジウム・ロジウム触媒並

みの性能を確保することは難しい模様である。特に、ガソ

リン車の通常のエンジン排気温度では、パラジウムがプ

ラチナよりも熱安定性に優れているため、触媒の働きも長

時間にわたってより安定的に維持されることになる。

プラチナ触媒がパラジウム触媒並みの性能であることを

証明できたとしても、パラジウムをプラチナで代用する動

きが急速に進むことはないであろう。自動車メーカーは排

ガス規制の強化に対応するためにすでに膨大な量の技術

資源を投入しており、同時に、主要市場における実路走

行(RDE)試験の導入によって、コストよりも規制順守を

優先させる保守的な(確実性の高い)排ガス処理戦略が

採用されるようになっている。従って、パラジウムをプラ

チナで代用することによるコスト削減が理論的には可能で

も、これまでのところ、自動車メーカーがこれに挑戦しよ

うとしていることを示す証拠はごくわずかにとどまる。最近

までプラチナを使った触媒方式を使用していた自動車メー

カーがある日本であっても同様である。

それでも、現時点では、小型ディーゼル車向けの需要が

安定しており、大型車向けの需要も大幅な増加が見込ま

れるため、ガソリン車の触媒にパラジウムの代わりにプラ

チナが利用されるようにならなくても、自動車触媒分野の

プラチナ総需要は向こう数年間にわたって増加する可能

性があると考えられる。

同時に、使用済み自動車触媒からのプラチナリサイクル

量については、1990 年代序盤以降に三元触媒のプラチ

ナ離れが進んだことを受けて、近年の増加傾向に歯止め

がかかり、横這いに向かうであろう。ディーゼル車のスク

ラップからのプラチナリサイクル量はまだやや増加すると

予想されるものの、ガソリン車の使用済み触媒における

プラチナ含有量の減少が足かせとなるとみられる。つま

り、廃車からのプラチナリサイクル量が全般的に増加す

る余地は今や非常に限られていることになる。

10 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

「自動車触媒分野のプラチナ総需要は2018年に5年ぶりの低水準まで落ち込んだが、今後数年間は安定が見込まれ、増加する可能性もある」

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産業用需要についても、向こう数年間は 2018 年の水準

並みもしくはこれを上回ると予想されることから、見通しは

明るい。もっとも、各年の正確な需要動向は、生産設備

拡充のためのプラチナ購入の時期に大きく左右されること

になる。

中国では 2018 年に製油所の拡張によって接触改質触媒

(石油を改質する触媒)用のプラチナ購入量が増加した

が、今後、製油所の拡張ペースが減速してプラチナ需要

が減速すると予想されている。さらなる増加のペースは

下流の石油化学セクターの今後の動向に大きく左右され

るだろう。既存の精製方法に代わってプラチナ触媒を使

用することが、安全性や品質の向上ならびに環境負荷の

軽減という点で妥当であると判断された場合には、製油

所向けの新たな用途としてプラチナ需要が増加する可能

性もある。

化学分野によるプラチナ触媒の購入量は今後 2 年間に最

高水準を更新すると予想される。中国では、複数の大型

総合石油コンビナートが完成間近で、それらに触媒が設置

されているためである。こうしたコンビナートには一般的に、

大型パラキシレン製造装置が組み込まれており、こうした

装置の一部には最初に数万オンスのプラチナ触媒を設置

しなければならないものもある。

グラスファイバーセクターでも、プラチナ需要の見通しは

明るい。ただし、2019 年のプラチナ購入量が異例の水

準となった昨年の水準を下回る可能性はある。グラスファ

イバー向けのプラチナ需要は新規生産設備へのさらなる

投資に支えられ、今後数年間にわたって世界的に大きく

増加するだろう。さらに、グラスファイバー製造用ブッシ

ングで使用されるプラチナ・ロジウム合金でも、ロジウム

の高値によってプラチナの含有率が高まると予想される。

ガラス製造に使用される多くのプラチナ合金では、ロジウ

ムが必要不可欠な構成要素となっている。ロジウムによっ

て融点が上昇するため、製造工程に伴う非常な高温下で

の強度と耐久性が高まるためである。過去数年間は、ロ

ジウムの安値を受けて、ガラスメーカーが合金中のロジウ

ム比率を高めることで装置の安定性を高め、寿命を延ば

してきた。逆に 2017 年終盤以降はロジウム価格が上昇

しているため、ロジウムの使用量を徐々に減らしてプラチ

ナで代用するようになると予想される。この動きは緩やか

なものになるであろう。というのも、合金の組成変更は一

般的に寿命を終えた装置の交換時に行われ、これを受け

てガラス製造装置をサプライヤーに戻し、これを溶かして

再び組み立てることになるためである。

燃料電池セクターにおけるプラチナ需要は 2019 年も引

き続き 2 桁の伸びになると予想される。昨年の伸びは、

主に自動車市場での増加によるものだったが、今年はベー

スロード用電源の定置型発電機に使用されるリン酸型燃

料電池(PAFC)装置が増加の大半を占めるだろう。韓国

では、50 メガワットの新規 PAFC プラントが建設中であり、

2020 年に完成する予定である。このプラントの稼働によ

り、推定 17 万世帯に供給するのに十分な電力が生産さ

11 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

「昨年の場合、燃料電池セクターのプラチナ需要が増加したのは主に自動車市場だったが、今年は定置型発電機向け燃料電池が増加の大半を占めるであろう」

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れることになる。また、PAFC プラントとしては初めて、天

然ガスではなく近隣の石油化学コンビナートから副産物と

して調達される水素を燃料として使用する。つまり、この

プラントは発電時に実質的に二酸化炭素を排出しない。

自動車触媒と産業用の需要見通しは大いに明るいが、こ

うした楽観的見通しがあまり当てはまらないのが宝飾品と

投資の需要である。中国のプラチナ宝飾市場の減速ペー

スは緩和しているように見受けられるが、この市場が目

先底入れする可能性については、2018 年 5 月のレポー

トで示したほど楽観視していない。中国の宝飾メーカー

に関するジョンソン・マッセイの最新調査の結果はまちま

ちだったが、全体としてはプラチナ宝飾加工生産が緩や

かながらもさらに縮小しており、同時に中古宝飾品からの

プラチナ調達比率が高まっている。

18 金等の宝飾加工量の増加が、金とプラチナの価格差

に後押しされているだけではなく、消費者の影響力を反

映するようになっていることを示す証拠は増えている。つ

まり、背景には、若年層の宝飾品購入者が手頃な価格で

提供される豊富なデザインを好感することがある。同時

に、プラチナ宝飾分野では、特定のメタルを志向しない

新世代の消費者の関心を惹起するために必要な魅力的で

現代的なデザインに欠けることが伸び悩みの原因となって

いる。中国の宝飾メーカーが軽量で魅力的な宝飾品を提

供しやすくするためにプラチナ鋳造技術の改善に努めてい

ることは承知しており、価格設定も商品単位にすれば、軽

量で複雑なデザインを開発することの採算性も高まるだろ

う。しかし、こうした試みがどの程度まで成功するかはま

だ不透明である。

明るい様相を示しているのはインド市場で、プラチナ需要

が 2 桁の増加を続けており、成長の余地はまだかなりあ

る。これまでのところ、プラチナ宝飾品の販売は主にチェ

ンナイやバンガロールなどの南部の都市に限定され、マー

ケティング活動は富裕層の若い消費者を対象に、自己購

入市場・ブライダルギフト市場に重点を置いて行われて

いる。人口動態の傾向では、インドにはプラチナ宝飾品

の売り上げが今後大幅に拡大する余地があることが示唆

されているが、それでも中国よりは小規模な市場にとどま

るであろう。インド市場では、大半の先進国と同様に、宝

飾品の価格は商品単位で設定されている。

投資需要の見通しはまちまちであるが、プラチナ価格が

2018 年末に 800ドルを割り込んだため、日本の投資家

の新規購入を刺激するさらなる下落の余地は限られている

とみられる。同時に、プラチナ価格が大幅に上昇すれば、

ETF の解約による売却が増加するだろう。

大半の投資家は保有するプラチナ ETF の購入単価が現行

価格を上回っており、これが間違いなく主因となって、こ

の 4 年間の ETF 保有残高はわずかな増減にとどまってい

る(この 4 年間の ETF の解約は 35 万オンス弱となって

いる)。これとは対照的に、投資家は同時期に 220 万オ

ンスを上回るパラジウム ETF を解約して売却した。つまり、

プラチナ価格が上昇すれば、投資家が保有するプラチナ

ETF を大量に売却し、産業用需要や自動車触媒需要の増

加による好影響を相殺する可能性があると言える。

12 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

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13 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

パラジウム市場の要約2018年の供給と需要

• パラジウム価格は 2018 年 12月に 1,274ドル /ozまで急騰し、リースレートは 30%を上回る水準でピークを付けた。

• 生産者在庫の売却、リサイクル量の増加、ETFの大量解約が市場の流動性を支えるには不十分であった。

• 自動車の試験方法の厳格化により、欧州車の触媒充填量が増加したため、自動車触媒用のパラジウム需要は記録的な水準に達した。

• 我々が示した数値は、市場が需給均衡に近づいていることを示しているが、構造的な供給不足は引き続き拡大している。

昨年のパラジウム市場では、生産者在庫からの売却とリ

サイクル量の増加によって供給が増加する一方で、ETF

で積み上げられた現物が大量に解約されたことによって需

要の伸びが減速したため、供給不足が縮小した。しかし、

一次供給量と自動車触媒・産業用需要が長期にわたって

乖離している状況に変わりはない。2018 年には、自動車

触媒需要が記録的な水準に達し、化学分野の需要が極

めて旺盛だったことから、パラジウム市場の構造的な供給

不足が引き続き拡大した。

パラジウム市場では、異例の需給逼迫が 2018 年を通じ

て継続し、リースレートが一貫して 5%を上回っていた(ち

なみに2012 年~ 2016 年の平均レートは1%未満であっ

た)。年初には、市場の流動性の低下によって短期のリー

スレートが一時的に 10%を上回り、パラジウム価格は

2017 年 12 月の 1,000ドル弱から急騰して、2018 年 1

月には 1,120ドルを上回る水準に達した。それ以降は市

場の流動性がやや改善し、パラジウム価格は徐々に下落

して、8 月半ばに 850ドル弱の年間最安値を付けた。米

中貿易戦争によって世界の経済成長率が減速するとの懸

念を受けて市場に対する投資家の信頼が後退したため、

投資家は先物市場でロングポジションを減らした。その

結果として、NYMEX では投機筋のロングポジションが 1

月の 280 万オンス強から減少し、8 月にはわずか 2 万オ

ンスの最低水準まで落ち込んだ。

この時期には、現物市場の需給逼迫が再燃したため、短

期リースレートが 15%を上回る水準まで急騰し、パラジ

ウム価格も急反発して、9 月に 1,000ドルを、11 月には

1,100ドルを突破した。年末のピーク時には、短期リー

スレートが 30%を上回る水準に達し、パラジウム価格も

史上最高値の 1,274ドルに到達した。

パラジウムの供給と需要(単位:1,000oz)

供給 2016年 2017年 2018年

南アフリカ 2,570 2,550 2,590

ロシア 2,773 2,406 2,840

その他 1,417 1,405 1,450

供給合計 6,760 6,361 6,880

総需要

自動車触媒 7,951 8,428 8,655

宝飾品 191 173 166

産業用 1,875 1,832 1,855

投資 -646 -386 -555

総需要合計 9,371 10,047 10,121

リサイクル量 -2,491 -2,899 -3,212

純需要合計 6,880 7,148 6,909

在庫変動 -120 -787 -29

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この時期には、生産者による売却と ETF の解約によって

大量のメタルが供給されたにもかかわらず、市場では現

物需給は非常に逼迫していた。1月~ 6月には、ノリリスク・

ニッケルが 153 万オンスのパラジウムを売却。このうちの

16 万オンス前後は鉱山生産分の在庫で、2017 年に生産

したものの売却せずに、同社のグローバル・パラジウム・

ファンドに一時的に保有していたものであった。このファン

ドの目的はノリリスク・ニッケルの業務用顧客に対する供

給の安定性を高めることにあり、ファンドは鉱山生産分に

加えて、市場から購入したパラジウム地金も保有している。

(市場からの購入分の売却は供給量に含まれない)

2018 年には、投資家が保有するパラジウム ETF の解約

を続けたことによって 55 万オンスのパラジウムが市場に

放出され、供給を支えた。パラジウムの高値に刺激され、

ETF を保有する投資家は利益確定のための解約を続け

た。これが特に顕著だったのは南アフリカで、その背景に

はドル建て価格の上昇が為替相場の変動によって増幅し、

ランド建て価格が最終四半期に高値更新を続けたことが

あった。

ロシアの供給量は前述した生産者在庫の売却を含めて、

2018 年に 18%増加して 284 万オンスに達したと試算さ

れる(ただし、我々の試算は 1 月から 9 月までのデータ

に基づくもので、2019 年 5 月の次回報告書では修正さ

れる見込みである)。ノリリスク・ニッケルの基本生産量

は引き続きかなりの高水準にあったが、処理工程の大幅

な変更に伴う仕掛在庫の放出によって精錬量が増加した

2017 年の異例の水準は下回った。同社の鉱山からのパ

ラジウム生産量は引き続き、以前に採掘された鉱物、特

に旧ソビエト時代にノリリスク地方で採掘され、2017 年

に国営企業のロステクから購入した古い銅精鉱の処理に

よって補われている。

南アフリカでも、モガラクエナ鉱山の非常に好調な業績に

後押しされて、パラジウム供給量がわずかだが増加した。

北米では、ニッケル製錬所の副産物としてのパラジウム生

産量は低調だったが、スティルウォーターのブリッツ拡張

プロジェクトが初めて大量のパラジウムを産出し、ノース・

アメリカン・パラジウムでもラクデスイレス鉱山の生産量

が増加した。総合すると、一次供給量は 8.1%増の 688

万オンスになったと試算される。

我々の試算によると、二次供給量は 2018 年に 320 万オ

ンスとなり、10.8%増加した。背景には、廃車からのパ

ラジウムのリサイクル量が前年の 20%増に続いて 2 桁の

伸びになったことがある。鉄スクラップの安値によって自

動車のリサイクル市場が低調だった 2015 ~ 2016 年か

らの回復基調が続き、2018 年の使用済み自動車触媒の

集荷量は大幅に増加した。同時に、パラジウム触媒の充

填量に関する過去の傾向をなぞる形で、使用済み触媒に

含まれるパラジウムの量も引き続き増加している。特にこ

れが顕著な米国市場では、1990 年代から他の市場に先

駆けてガソリン車の三元触媒でプラチナの代替品としてパ

ラジウムが広範にわたって使用されていた。当時は、触

媒技術が現在ほど進んでおらず、燃料も現在ほどクリーン

14 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

「使用済み自動車触媒からのパラジウムリサイクル量は2017年の20%増に続いて、2018年も2桁の伸びとなった」

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ではなかったことから、プラチナの代替品としてパラジウ

ムを使用するためには一般的に、プラチナよりも多くのパ

ラジウムが必要とされ、その結果、パラジウムリッチ触媒

の充填量はプラチナリッチ触媒の充填量をかなり上回るこ

とが多かった。

投資家によるパラジウム ETF の解約が増加した事で ETF

の保有残高が減少したものの、それ以上に自動車触媒分

野や化学分野の需要が増加したため、パラジウムの総需

要は 1%増加して 1,012 万オンスとなった。自動車触媒

用パラジウム需要は 3%増の 866 万オンスに達し、史上

最高を更新。需要の増加率が世界のガソリン車生産台数

の増加率を上回ったのは、ガソリン車用自動車触媒のパ

ラジウム充填量が欧州で大幅に増加したためであった。

Euro 6c と Euro 6d-TEMP の段階的施行は、ガソリン車

のパラジウム触媒充填量にとって追い風となっている。

Euro 6c はガソリン直噴(GDI)エンジンに PM(粒子状

物質)粒子数(PN)の上限を課し、Euro 6d-TEMP で

は車載式排ガス測定装置を使用した「実路走行(RDE)」

試験を通じて、PN と NOx の排出基準を台上だけでなく

実路走行時においても遵守していることを示すよう求めて

いる。Euro 6c と Euro 6d-TEMP の段階的導入は 2017

年 9 月に開始された。当初は新型乗用車のみに適用され

ていたが、2020 年 9 月までに漸次すべての新車(小型車)

に適用される予定である。

自動車は現在、以前よりも広範囲にわたる条件下で試験

が行われており、排ガス規制も以前よりかなり厳しさを増

している。それが、後処理システムの複雑化や PGM の

充填量の増加の原因となっている。特に、三元触媒ブリッ

クの平均的な充填量はすでにかなり増加しており、GDI 車

も新基準に対応するためにガソリン車用微粒子捕集フィル

ター(GPF)を装着している。

GDI エンジンでは、燃料を非常に細かい霧状にして噴射

するために極めて細かい煤ができる。こうした煤は人体に

有害であり、Euro 6c ではこの煤の問題に正面から取り組

んでいる。EU の以前の排ガス規制の場合、粒子状物質

の排出についてはキロメートル当たりのグラム数で示した

15 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

パラジウムの需要:自動車触媒分野(単位:1,000oz)

総需要 リサイクル量 純需要

2016年 2017年 2018年 2016年 2017年 2018年 2016年 2017年 2018年

欧州 1,642 1,700 1,883 -424 -489 -549 1,218 1,211 1,334

日本 785 835 859 -110 -127 -125 675 708 734

北米 1,950 2,053 2,041 -1,152 -1,422 -1,620 798 631 421

中国 2,038 2,179 2,117 -75 -100 -130 1,963 2,079 1,987

その他の地域 1,536 1,661 1,755 -228 -261 -296 1,308 1,400 1,459

合計 7,951 8,428 8,655 -1,989 -2,399 -2,720 5,962 6,029 5,935

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質量が規制されているだけで、合計質量が基準を下回っ

ている限り、粒子状物質の排出粒子数についての規制は

なかった。これとは対照的に、Euro 6c では粒子状物質

の絶対数に関する基準の遵守を義務付けており、これに

よってガソリン車の後処理システムに GPF が追加装備さ

れるようになった。ただし、フィルターの中には PGM によっ

てコーティングされていないものや、PGM の充填量がか

なり少ないものがある一方で、PGM が三元触媒並みに含

まれているものもあるため、PGM の含有量全般に対する

影響は非常にまちまちである。

段 階 的 な 導 入 スケジュー ル により、Euro 6c と Euro

6d-TEMP の基準を満たす自動車の台数は 2018 年に少

数にとどまったが、それでも 2014 年以来の低減傾向を

反転させて、充填量を約 10%増加させ、欧州のガソリン

車におけるパラジウム触媒の平均充填量を 2000 年代初

頭以来の最高水準にするには十分であった。

これとは対照的に、自動車触媒用パラジウムの 2 大市場

の需要は 2018 年にやや減少した。北米と中国ではいず

れも乗用車生産台数が緩やかながらも減少したが、触媒

充填量は前年の水準とほとんど同じであった。先行きを

展望すると、この両市場では、向こう数年間にわたる排ガ

ス規制の強化によってパラジウム触媒の充填量が増加す

ると予想され、特に中国ではこれが顕著になるであろう。

China 6 が近く施行されるが、その影響については 18 ~

19 ページで述べる。

パラジウムの産業用需要は 2018 年に横這いであった。

化学分野では、梱包材や繊維に使用されるポリエステル

の製造用供給原料となる高純度テレフタル酸(PTA)の

新規生産設備に対する大型投資によって、パラジウムの

購入量がこれまでと比べてもかなり高い水準にある。しか

し、歯科分野と電子材分野の需要は引き続き、使用量の

低減や代替材料への切替によって打撃を受けている。

一次供給量と二次供給量の合計が 9%増加した一方で、

総需要はわずかな増加にとどまったことから、パラジウム

市場は 2018 年に需給均衡に近づいた。しかし、これは

価格動向にも市場の流動性にも反映されていない。これ

らはいずれも市場の構造的な供給不足を示唆している。

我々の需給尺度では十分に捉えられない 2 つの要因が、

需給逼迫の原因となっている可能性がある。第一に、我々

は主に自動車の廃車台数や充填量の推移に関する情報と

いった市場の基調に基づき、精錬所の投入量に関するデー

タを併用して、二次供給量を試算している。精錬所の稼

働率が能力の限界にますます近づき、未処理の PGM 在

庫が増加していることを示す証拠がある市場では、精錬

16 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

パラジウムの需要:産業用(単位:1,000oz)

2016年 2017年 2018年

化学 418 462 493

歯科 430 392 380

電子材 872 842 828

その他 155 136 154

合計 1,875 1,832 1,855

「市場は2018年に需給均衡に近づいた。しかし、価格動向も現物供給動向も市場の構造的供給不足を示している」

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済み現物引き渡しの時期が明確ではない。我々が試算し

たリサイクル量は、二次供給品の精錬所における在庫増

減の影響を過小評価している可能性がある。

第二に、我々が試算した自動車触媒用パラジウムの需要

は、自動車が生産された時期と場所を反映している。充

填量が急増している時期には、サプライチェーン全般で

PGM の仕掛在庫が大幅に増える可能性があるが、現物

の入手時期を正確に判断することはできないため、その

数量を計ることは困難である。その結果、一年のうちの単

一期間における我々の試算では、在庫の影響(すなわち

需要)を過小評価している可能性がある。

我々が試算した需要と供給は、市場が需給均衡に近づい

ていることを示しているが、生産者在庫の動きや ETF の

解約などの一時的な歪みをこの試算から除くと、市場は

80 万オンス前後の供給不足となる。もっとも、生産者在

庫は小規模で、ETF の保有残高も 2018 年末現在で 73

万オンス前後に過ぎないため、この両者が長期にわたっ

て引き続き供給源となることはあり得ない点に留意すべき

である。

貿易データの分析により、ロシア政府が 1990 年代と

2000 年代序盤にパラジウムを売却したことに起因する供

給過剰は、すぐに解消されたとの見方は強く裏付けられて

いる。というのも、我々の試算によれば、1,150 万オンス

前後のパラジウムが 2007 年以降に英国とスイスから流

出しているからである。ロシアにはまだ在庫が残っており、

旧ソビエト時代に生産された数量不明の在庫を含めて最

終的にロシア中央銀行が所有していると考えられるが、こ

の在庫が市場に売却される時期を予想することは難しい。

17 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

「投資家は2018年に54万6,000オンスのETFを解約し、4年連続で保有残高が減少した。残りの保有残高は2018年末現在で73万オンスとなっている」

「我々の試算によると、2007年以降、約1,150万オンスのパラジウムが英国とスイスから流出している」

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18 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

パラジウム市場の展望2019年の供給と需要

• 自動車触媒需要の大幅な増加によって、パラジウム市場の供給不足は2019年に拡大するであろう。

• 二次供給量(リサイクル量)は引き続き増加するだろうが、一次供給量は増加する可能性がほとんどない。

• ETFの保有残高は73万オンスに過ぎず、更なる解約があったとしても供給不足を埋めることはもはやできない。

• 2019年1月、パラジウム価格は史上最高値を更新し、リースレートは異例の高水準にとどまっている。

パラジウム市場の供給不足は2019年に劇的に拡大する方向へ向かうと考えられる。背景には、排ガス規制の強化によって欧州と中国の自動車メーカーによるパラジウム需要が2桁の伸びになると予想されることがある。使用済み自動車触媒からのパラジウムリサイクル量は2019年も増加するだろうが、二次供給量の増加率は2018年の水準を下回ると思われる。他方、一次供給量は横這いになると予想される。ETFの保有残高は昨年末現在で73万オンスまで落ち込んだことから、ETFはもはや需要と供給の差を埋めるのに十分な現物を保有していない。

パラジウムETFの保有残高は最高だった2014年に約300

万オンスに達していたが、その後、4年間でETFの解約によ

り220万オンスを上回るパラジウムが市場に放出された。

しかし、これだけでは相次ぐ供給不足と徐々に進む需給逼

迫を防ぐには不十分で、短期リースレートは2018年に30

%を上回り、パラジウム価格は史上最高値である1,280ド

ル/ozに達した。

パラジウム価格が引き続き高水準で推移することを前提と

すると、2019年には、利益確定のためにETFがさらに売ら

れると予想される。しかし、それでも供給不足の大幅な拡大

を防ぐには不十分であろう。需要面では、排ガス規制の強

化と試験方法の厳格化によって、自動車触媒のパラジウム

充填量が主要自動車市場の大半で増加している。今年は、

特に欧州と中国で、需要への影響が顕著になるであろう。

中国政府の発表によると、排ガス規制 China 6 は 2 段階

に分けて実施される予定である。つまり、China 6a は

2020 年 7 月から、実路走行(RDE)試験を含む China

6b は 2023 年 7 月からそれぞれ義務付けられることにな

る。しかし、多くの省や都市は「Blue Sky Protection Plan

(青空を守るための三年作戦計画)」に基づいて 2019 年

7月に新基準を採用する予定である。我々の試算によると、

中国の自動車市場の 30%前後が今年の下半期までに、

より厳しい排ガス規制の対象となる。

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China 6への移行により、パラジウムとロジウムの触媒充填

量は、現行の規制制度China 5と比較して、大幅に増加する

ことになろう。実路走行(RDE)試験の開始により、触媒シス

テムのPGM充填量はさらに増加すると予想される。実路走

行(RDE)試験の正確な要件はまだ明らかにされていない

が、China 6bの排ガス規制はEuro 6よりもさらに厳しいこと

から、この要件を満たすのは非常に難しいと思われる。

パラジウム需要の動向は自動車生産台数の動向による影

響も受ける。中国の自動車市場では、販売が2018年下半

期に減速したため、2019年の年明け時点では在庫がやや

過剰となっている。そのため、目先の予想生産台数は下方

修正されるであろう。それでも、2019年~2020年には、パ

ラジウムの消費量が2桁の伸びになると予想される。

欧州では、Euro 6排ガス規制の段階が上がることで、パラジ

ウム需要への影響が以前の予想よりも大きくなることは今

や明らかである。新たな規制に対応することは技術的に難

しいが、規制を遵守しなければ営業面でリスクを負うこと

になる。そのため、充填量に関する戦略は会社によってか

なり異なるものの、欧州のガソリン車用触媒ではPGMの平

均充填量が大幅に増加している。EUが現在、そしてこれか

ら施行する規制により、排ガス試験が一段と厳格になり、そ

の実施頻度が増え、試験期間も長くなることから、欧州の自

動車会社が再びPGMの低減に注力できるようになるまで

には何年もの時間が必要となろう。

Euro 6d の最終段階は 2020 年 1 月から実施され、実路

走行(RDE)試験中に許容される NOx 排出量がさらに制

限される。加えて、使用中の自動車に対する排ガス試験

が 2019 年の年明けから適用される。以前は自動車メー

カーが自社の自動車に限ってこうした試験を実施していた

が、今後は型式認証を行う認可当局もこれを実施するこ

とになり、実路走行(RDE)試験では走行距離が 10 万

キロ以下の自動車に対して、また、台上試験では走行距

離が 16 万キロ以下の自動車に対してテストが行われるこ

とになる。つまり、自動車はその耐用年数のほぼ全期間

にわたって型式認証基準を満たすことが必要となるため、

触媒の耐久性が一段と重視されることになる。

こうした規制とは別に、EUでは型式認証の枠組みの見直し

が行われ、2020年9月から、すでに市場に出回っている車

両(認証済み車両)を独自に調査し、基準を満たさない車

には罰金を科す権限が欧州委員会(EC)に与えられる。こ

の改革により、認可当局は市場に流通している認証済み車

両を独自に監督するようになり、EU加盟各国はその監督結

果を利用して、基準に適合していない自動車の販売を規制

または禁止することができるようになる。

従って、自動車メーカーは排ガス規制の強化、試験方法の一

層の厳格化、不適合だった場合に陥る深刻な事態という3つ

の課題に直面することになる。このため、排ガス制御への取

り組みは非常に慎重になり、ひいてはそれがガソリン車向

け触媒のPGM触媒充填量増加への追い風となるであろう。

欧州以外でも、試験方法が変更されている。「乗用車等の

国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)」の型式認証規約

は、欧州以外の多くの地域でも採用されている(欧州では

2017年9月に採用)。日本では、2018年10月にJC08試験

サイクルに代わってWLTPが採用され、中国ではChina 6の

実施に向けてWLTPに移行する予定である。新たな手続き

に基づくと、型式認証にはコールドスタートおよび暖機時

間の短縮が必要となる。従って、触媒にはこれまでよりも低

温となる排ガスの条件下で有害物質を転換することが求め

られる。パラジウムの触媒充填量を増やすと、こうした条件

下で触媒の活性化を早めることができる。

パラジウムの産業用需要は2019年に横這いから小幅な

増加になると予想される。引き続き堅調な化学分野の需

要が、電子材分野と歯科分野の需要の緩やかな減少によ

って相殺されるためである。積層セラミックコンデンサー

(MLCC)のパラジウム需要は今や主に自動車用、医療用、

軍事用のハイエンド製品に限定されており、価格動向に左

右されるとは考えられない。しかし、めっき用については金

と直接競合しているため、現行価格ではパラジウムに代わ

って金が使用され始める可能性もある。

パラジウムの一次供給量も横這いになると予想される。仕

掛在庫の処理は進むだろうが、それが南アフリカのシャフ

ト閉鎖の影響によって相殺されるためである。ロシアでは、

パラジウムを豊富に含む採掘済み鉱物の処理が引き続き

ノリリスク・ニッケルからのパラジウム出荷量を補い、グロ

ーバル・パラジウム・ファンドからも一次生産分の在庫がさ

らに売却されると予想される。二次供給量は引き続き増加

19 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

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すると予想されるが、2年間にわたる急増を受けて、増加ペ

ースは減速するであろう。

自動車触媒需要が大幅に増加する一方で、一次供給量と

二次供給量の合計は緩やかな増加にとどまることから、パ

ラジウム市場の供給不足は2019年にほぼ間違いなく拡大

するであろう。今年も、供給不足の規模は、投資家が保有す

るETFを利益確定のためにどの程度まで売却するかによっ

て左右されるだろう。投資を除くパラジウムの「構造的」な

供給不足は2019年に100万オンスに迫ると予想される。

投資家が現時点で保有しているすべてのETFを解約したと

しても、この不足を埋めるには不十分である。

20 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

「米中貿易戦争による先行き不透明感から、2018年には投機筋の買い越しが急減した」

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21 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

ロジウム市場の要約2018年の供給と需要

• ロジウム価格は 2018 年 12月に 8年ぶりの高値となる2,600ドル /oz に達した。

• 欧州の自動車会社が厳しくなった自動車の性能試験手続きを遵守するために触媒充填量を増やしたことから、自動車触媒用ロジウム需要は旺盛であった。

• 一次供給量と二次供給量(リサイクル量)の合計は増加したが、精錬所の仕掛在庫の増減が供給動向に影響を及ぼした。

• 中国ではロジウムの輸入量が急減した。これは国内で保有されていた在庫を使用して消費需要に対応したことを示している。

2018 年のロジウム市場では、使用済み自動車触媒のリ

サイクル量の堅調な伸びや南アフリカでの出荷量の 7 年

ぶりの高水準に支えられ、一次供給量と二次供給量の合

計が約 3%増加した。これとは対照的に、需要は 4%減

少した。その背景には、自動車触媒分野におけるロジウ

ム需要の増加がガラス分野と化学分野の購入量の減少に

よって相殺されたことや、ロジウム価格の上昇によってロ

ジウム ETF が利益確定のために解約されたことがある。

その結果、市場の供給過剰が一段と拡大した。

こうした供給過剰は価格動向や市場の流動性とは一致し

ておらず、市場参加者そしておそらくはロジウムの実需家

がすぐに生産で必要としないロジウム地金を購入、保有

していることを示唆している。特に、今年は一部の自動

車会社や産業系ユーザーがフォワード取引での購入を増

やしており、またそうした取引をヘッジするためにスポッ 

ト市場で現物が買い増されていることが考えられる。我々

はこれを需要とみなしてはいない。我々の基準では、ロ

ジウムが実際の製品やプロセスで使用された時点(ある

いは、消費企業が実際に PGM 地金を所有した時点が確

認可能であれば、その時点)を消費とみなしているから

である。とはいえ、こうした取引活動によって市場が流動

性を失った可能性はある。

中国については過去数年間にわたって民間投資家がロ

ジウム地金に投資していることを示す徴候があるものの、

我々は 2018 年に中国人投資家がロジウム地金を買い越

したとは考えていない。実際、昨年、一部の中国人投資

家が保有していたロジウム地金を市場で売却した可能性

を示す証拠がある。例えば、2018 年の中国のロジウム

輸入量が例年になく少なく、また確認された需要を大幅

に下回っていることなどである。中国では国内で調達され

るロジウム地金が国際価格を大幅に下回る価格で取引さ

れているうえに、その価格差が拡大している。つまり、ロ

ロジウムの供給と需要(単位:1,000oz)

供給 2016年 2017年 2018年

南アフリカ 615 611 623

ロシア 85 78 69

その他 73 70 67

供給合計 773 759 759

総需要

自動車触媒 809 842 862

その他 193 209 149

総需要合計 1,002 1,051 1,011

リサイクル量 -271 -311 -344

純需要合計 731 740 667

在庫変動 42 19 92

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ジウム地金在庫が中国に偏在して滞留していることが市場

流動性低下の一因となっている可能性がある。

PGM 精錬所におけるロジウムの仕掛在庫の短期的な増

減も、供給能力ひいては価格動向に影響を与えている可

能性がある。南アフリカでは、一部の大手鉱山会社が精

錬所に過剰な仕掛在庫を抱えたまま 2017 年を終えたが、

2018 年になっても 9 か月間にわたり在庫をさらに積み上

げた。南アフリカ以外では、リサイクル量が大幅に増加し

ている状況の中で PGM 地金の精錬設備の合理化が実行

されたため、設備稼働率が異例の高水準となり、仕掛在

庫が通常の水準を上回った。加えて、9 月にはユミコアの

ホーボーケン精錬所で火災が発生し、短期間とはいえロジ

ウム市場の流動性に影響を与えたとみられる。

ロジウム市場は小規模且つ流動性に乏しいため、短期間

であっても需給バランスが崩れると、価格や現物供給能

力に重大な影響を与える可能性がある。昨年のロジウム

価格は 1 月の 1,690ドルから上昇の一途を辿り、12 月

初頭に 2,600ドルのピークを付けた。しかし、12 月後半

に、生産者と投資家からの売りが増加しているとの報告が

あったことを受けて相場は反落し、年末には 2,460ドルま

で落ち込んだ。

2018 年のロジウム鉱山生産量は前年比で横這いとなっ

た。とはいえ、パイプラインと精錬所からの在庫放出量

が増加したため、南アフリカの一次供給量は増加したと

考えられる。鉱山生産量とは対照的に、リサイクル量は

大幅に増加し、2017 年の 15%増に続いて 2018 年も

11%増となった。もっとも、使用済み自動車触媒からの

ロジウムリサイクル量の増加ペースは引き続きパラジウム

リサイクル量の増加ペースを下回っている。これは、ロジ

ウムの異常な高値を受けて 2000 年代中盤から終盤にか

けて北米と欧州でロジウム使用量の低減が図られたこと、

つまりパラジウムの触媒充填量を増やしてロジウムを減ら

したケースが多かったことを反映している。

自動車市場では、ガソリン車用触媒におけるロジウムの

使用量低減が過去 10 年間の一貫した特徴となっており、

2017 年にはガソリン車におけるロジウムの平均触媒充

填量が世界全体で 2007 年の水準を約 40%も下回った。

とはいえ、排ガス規制や検査手続きの変更によって、触

媒充填量は再び増加し始めている。2018 年には特に欧

州でその傾向がみられたが、今後は大半の地域で、ガソ

リン車におけるロジウムの触媒充填量が増加すると予想

される。昨年は、ガソリン車の後処理システムの平均ロ

ジウム含有量が世界全体で約 3%増加し、これにより世

界の自動車触媒用ロジウム総需要が 2 万オンス増加した。

こうした増加の大半は欧州でみられた。実際、欧州では

排ガス規制 Euro 6d-TEMP の基準を満たすことのできる

後処理システムを装備したモデルが増えたため、ガソリン

車のロジウム触媒含有量が急増した。ガソリンエンジンの

場合、NOx の後処理は技術的にみてディーゼルエンジン

ほど困難ではないが、実路走行(RDE)試験と使用中の

自動車への排ガス試験の実施により、自動車メーカーは

自社の自動車が NOx(およびその他の汚染物質)の排出

基準を満たしていることをこれまで以上に多くの条件下で

証明しなければならなくなっている。これは、三元触媒の

PGM 触媒充填量全般にとって、とりわけロジウムの触媒

充填量にとって追い風となっている。

これとは対照的に、Euro 6d-TEMP の段階的導入により、

ディーゼル車でのロジウム需要は減少傾向にある。という

のも、この排ガス規制は、NOx の還元技術として、ロジ

ウムを使用したリーン NOxトラップの利用を減らし、PGM

を使用しない選択還元触媒(SCR)の利用を拡大するこ

とを促進しているからである。ただし、欧州のディーゼル

車は引き続き PGM を使用した触媒ブリックを少なくとも 1

つは搭載することになる。もっとも、ディーゼル車におけ

るロジウムの利用はこれまでも常に自動車触媒用ロジウム

需要全体のわずかな部分しか占めていない。

ロジウムの使用量に関して、二大自動車市場である北米

と中国の 2018 年の需要は低調であった。いずれの市場

でも、小型ガソリン車の生産台数が緩やかに減少したが、

ロジウムの平均触媒充填量はほぼ変わらなかった。世界

のその他の地域では、インドの自動車生産台数の大幅な

増加やロシアの自動車市場の回復によりロジウム需要は

増加した。

化学分野とガラス分野によるロジウム需要は 2017 年に

異例の高水準となったが、昨年は自動車触媒以外の産業

用途のロジウム需要が減少し、自動車触媒分野の需要増

22 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

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加を相殺した。しかし、こうした減少は主にロジウムの購

入時期に関係したものであり、両分野の業況悪化を示す

ものではない。現に、いずれの分野も生産設備新設のた

めの多額の投資を続けている。

ガラス分野では、ロジウム価格の上昇による影響もみられ

た。ガラスメーカーは、価格に応じてロジウムの使用量を

短期的に調整することのできる数少ないロジウム需要家の

1 つである。ロジウムは、ブッシングなどのグラスファイバー

製造装置に使用されるプラチナ合金に必要不可欠なメタル

である。ロジウムによって融点が上昇し、強度と耐久性が

向上するからである。ロジウム含有量はプラチナとロジウ

ムの相対的価格にも左右され、10%~ 20%の範囲で変

動する。つまり、ロジウム価格がプラチナ価格を大幅に上

回った場合には、ロジウムの使用量低減が経済的に理に

適ったものとなる。もっとも、この低減によって装置の耐用

期間が短くなる可能性があり、またブッシングのサイズを

変えないことを前提とすれば、ロジウムとプラチナの比重

の違いによってロジウム 1 オンスの代わりに 1.7 オンスの

プラチナを使用する必要があることも考慮すべきである。

ロジウム価格の上昇は ETF 投資家による利益確定の売り

を誘発する要因にもなった。そのため、2018 年の我々

の統計における「その他」の用途の数値はマイナスに転

じた。昨年は現物に交換されたロジウム ETF が 2017 年

の 2 万オンス前後から増加し、合計 5 万オンスに達した。

年末までには、ETF 保有残高が、ピークとなった 2014

年の約 13 万オンスから減少し、4 万オンスを割り込んだ。

市場の緩やかな供給過剰は変わらなかったものの、こう

した投資からの解約がなければロジウム需要は全体で増

加したことになる点に留意すべきである。

23 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

ロジウムの需要:産業用(単位:1,000oz)

2016年 2017年 2018年

化学 64 71 63

電子材 3 4 4

ガラス 85 113 93

その他 41 21 -11

合計 193 209 149

「価格上昇が刺激となって、投資家は利益確定のためにETFを売却した。昨年は、計5万オンスものロジウムETFが解約されて、ETFの保有残高は年末に4万オンスを割り込んだ」

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24 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

ロジウム市場の展望2019年の供給と需要

• 自動車の排ガス規制や使用中の自動車に対する排ガス試験が一段と厳しくなっていることから、自動車触媒分野のロジウム需要は大幅に増加するであろう。

• この増加は、産業用途で予想される価格動向に関連した消費量の削減を上回るであろう。

• 一次供給量は横這いになるだろうが、二次供給量(リサイクル量)の増加が続くため、市場は引き続き供給過剰となろう。

2019 年には、自動車会社が排ガス規制の強化と従来の規制には無かった使用中の自動車に対する排ガス試験に対応するためにPGMの触媒充填量を増やすことから、自動車触媒分野のロジウム需要が大幅に増加すると予想される。この増加がガラス分野の需要減少を上回ることから、産業用需要全体も前年の水準から増加して記録的な水準に迫るであろう。供給に関しては、一次供給量の前年比横這いが予想されるが、二次供給量が一段と増加するため、ロジウム市場は昨年に続き供給過剰となるであろう。

南アフリカでは、ロンミンとインパラ・プラチナムのシャフ

ト閉鎖が相次ぎ、それ以外の UG2 鉱採掘事業も鉱山が

寿命に近付いているため、ロジウム供給量は近い将来、

減少し始めるであろう。とはいえ、2019 年には仕掛在庫

からの放出量増加を受けて、南アフリカの供給量は前年

に続いて 60 万オンスを上回る水準になるとみられる。ま

た、使用済み自動車触媒からのロジウムリサイクル量がさ

らに増加するため、2019 年には一次供給量と二次供給

量の合計が緩やかながら増加するだろう。しかし、2020

年以降については、リサイクル量の増加が鉱山生産量の

減少を補えなくなる可能性がある。

UG2 リーフは南アフリカで採掘される他の PGM 鉱石より

も多くのロジウムを含有するため、UG2 リーフの枯渇なら

びに UG2 鉱採掘事業の閉鎖はロジウム供給量にとって特

に重大な意味を持つ。一般的に、UG2 鉱石では 4 元素(プ

ラチナ、パラジウム、ロジウム、金)中の約 9 ~ 11%が

ロジウムであるが、メレンスキーリーフではこの含有率が

4 ~ 6%、プラットリーフでは 3%前後となる。南アフリカ

以外の地域では、ロジウム含有率がさらに低下する傾向

にある。我々の試算によると、ノリリスク・ニッケルのロシ

ア事業では、ロジウムが PGM 生産量のわずか 2%前後

を占めるにとどまり、シバニェ・スティルウォーターの米

国の鉱山では 1%を下回るとみられる。中期的には世界

の PGM 生産量は緩やかに減少し、ロジウム含有率の低

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い PGM の生産割合が高まると予想されるため、ロジウム

生産量の中期見通しは悲観的である。

対照的に、需要見通しはますます明るいものとなっている。

主要市場の大半で排ガス規制が強化され、それによりロ

ジウムの充填量が世界的に増加する傾向にある。2019

年には、使用中の乗用車への排ガス試験が一段と厳しく

なる欧州と、排ガス規制強化について新たな局面を迎え

る中国で自動車触媒用ロジウム需要が最も大きく増加する

であろう。

今後 3 年間に、排ガス規制 Euro 6d の段階的導入によっ

て実路走行(RDE)試験中の NOx 許容排出量はさらに厳

しく制限されるであろう。同時に、自動車メーカーは使用

中の自動車への排ガス試験も受けることになるだろう。そ

の狙いは、触媒システムが自動車の使用開始時のみなら

ず使用期間中の大半にわたって確実に型式認証基準を満

たすようにすることにある。これにより、基準を満たさない

ことによるリスクが劇的に高まり、後処理システムの設計

ではリスク回避傾向の強いアプローチが推し進められてい

る。ガソリン車に関しては、新たな検査体制によって、パ

ラジウムならびにとりわけロジウムの触媒充填量が大幅に

増加すると予想される。

中国も排ガス規制の切り替え時期を迎えている。今年は

一部の都市と省が全国に先駆けて China 6 の施行を開

始するとみられる。ちなみに、全国への適用に関しては、

2020 年に China 6a から始まり、2023 年までに実路走

行(RDE)試験を含む China 6b の導入を終える予定で

ある。China 6a と China 6b の基準を満たすには、China

5 向けの現行触媒システムよりもパラジウムとロジウムの

充填量を増やすことが必要になる。実路走行(RDE)試

験が現時点での予定通りに 2023 年 7 月に実施されれば、

PGM 触媒の含有量はさらに増加することになろう。

今年は、自動車触媒用需要が大幅に増加する一方で、そ

れ以外の用途の需要が減少するとみられ、その主因とし

てロジウム価格の上昇によって使用量を低減することにな

るガラス分野の購入量の減少が挙げられる(23 ページ

参照)。もっとも、使用量低減のタイミングは不透明だが、

合金のロジウム含有率が 10%を割り込むことは一般的に

あり得ないという技術的要因により、低減の影響は限定的

となるだろう。それ以外の用途では、化学分野の需要が

引き続き堅調に推移すると予想され、また投資を含む「そ

の他」の需要もほぼ確実に増加するとみられる。現時点

では ETF がさらに解約されるという可能性が極めて低い

からである。

我々の需給見通しによれば、中国の自動車触媒需要の動

向やガラス分野の低減ペース、精錬所の仕掛在庫処理能

力に大きく左右されるとはいえ、2019 年のロジウム市場

は前年に続いて供給過剰になるだろう。2019 年の年明け

とともに、現物供給能力の高まりを示す証拠として、ロジ

ウム価格の下落がみられた。2018 年 12 月に 2,600ド

ルでピークを付けたロジウム相場は 2019 年 1 月初めに

2,400ドル前後で安定的に推移している。しかし、自動

車触媒の需要増加と今後の需要増加を見越した戦略的購

入の可能性によって供給増加分は直ちに吸収されるため、

供給能力の好転は一時的なものであると予想される。

25 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

「主要市場の大半では排ガス規制が強化されているため、ロジウムの触媒充填量は世界的に増加基調をたどっている」

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26 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

トロイオンス

プラチナの供給と需要

プラチナ(単位:1,000オンス) - 供給と需要

2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

供給1 南アフリカ 4,208 3,546 4,572 4,392 4,449 4,471

ロシア2 736 700 670 717 703 657

北米 318 339 314 337 328 335

ジンバブエ3 410 401 400 489 466 480

その他3 174 167 151 162 159 165

供給合計 5,846 5,153 6,107 6,097 6,105 6,108

需要4 自動車触媒4 2,937 3,064 3,244 3,342 3,218 3,052

化学 522 576 502 476 490 550

電子材4 219 225 228 230 230 273

ガラス 102 143 227 247 366 466

投資 871 277 451 620 361 89

宝飾品4 2,984 2,839 2,746 2,412 2,400 2,363

医療&バイオメディカル5 217 214 215 217 220 224

石油 146 172 140 175 233 311

その他 419 434 443 461 483 497

総需要合計 8,417 7,944 8,196 8,180 8,001 7,825

リサイクル量6 自動車触媒 -1,199 -1,272 -1,110 -1,164 -1,292 -1,403

電子材 -24 -27 -29 -32 -34 -36

宝飾品 -790 -762 -574 -738 -746 -776

リサイクル量合計 -2,013 -2,061 -1,713 -1,934 -2,072 -2,215

純需要合計7 6,404 5,883 6,483 6,246 5,929 5,610

在庫変動8 -558 -730 -376 -149 176 498

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プラチナ(単位:1,000オンス) - 地域別総需要2018年の数値は暫定推定値

2013 2014 2015 2016 2017 2018欧州 自動車触媒 1,280 1,475 1,655 1,801 1,717 1,510

化学 98 111 120 122 119 123電子材 15 12 13 13 11 13ガラス 7 11 11 11 11 11投資 -40 -73 -88 109 36 -102宝飾品 217 204 203 177 176 184医療&バイオメディカル 74 72 71 71 71 71石油 -12 22 -4 3 13 31その他 106 108 105 108 111 112合計 1,745 1,942 2,086 2,415 2,265 1,953

日本 自動車触媒 503 448 382 359 350 344化学 42 41 43 42 39 40電子材 27 31 33 32 31 36ガラス -20 -96 4 2 25 7投資 -40 19 700 543 171 220宝飾品 310 313 314 310 305 307医療&バイオメディカル 19 16 16 15 15 16石油 -1 3 3 3 2 2その他 70 71 79 75 76 76合計 910 846 1,574 1,381 1,014 1,048

北米 自動車触媒 339 356 368 344 322 325化学 102 113 114 103 112 116電子材 19 18 22 26 32 37ガラス 7 10 10 29 45 17投資 57 7 -32 109 127 66宝飾品 213 218 227 220 238 239医療&バイオメディカル 85 85 85 86 87 88石油 23 21 40 36 18 17その他 122 125 117 122 123 122合計 967 953 951 1,075 1,104 1,027

中国 自動車触媒 130 130 136 151 157 153化学 133 155 131 121 110 136電子材 36 39 38 39 40 51ガラス 93 144 178 135 163 351投資 0 0 0 0 0 0宝飾品 2,100 1,935 1,796 1,510 1,470 1,400医療&バイオメディカル 17 18 19 19 20 21石油 56 30 32 64 119 197その他 48 53 59 71 80 89合計 2,613 2,504 2,389 2,110 2,159 2,398

その他の地域 自動車触媒 685 655 703 687 672 720化学 147 156 94 88 110 135電子材 122 125 122 120 116 136ガラス 15 74 24 70 122 80投資 894 324 -129 -141 27 -95宝飾品 144 169 206 195 211 233医療&バイオメディカル 22 23 24 26 27 28石油 80 96 69 69 81 64その他 73 77 83 85 93 98合計 2,182 1,699 1,196 1,199 1,459 1,399 総需要合計 8,417 7,944 8,196 8,180 8,001 7,825

27 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

プラチナの地域別総需要トロイオンス

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プラチナの供給と需要トン

プラチナ(単位:トン) - 供給と需要

2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

供給1 南アフリカ 130.9 110.3 142.2 136.6 138.4 139.1

ロシア2 22.9 21.8 20.8 22.3 21.9 20.5

北米 9.9 10.5 9.8 10.5 10.2 10.4

ジンバブエ3 12.7 12.5 12.4 15.2 14.5 14.9

その他3 5.4 5.2 4.7 5.0 4.9 5.1

供給合計 181.8 160.3 189.9 189.6 189.9 190.0

需要4 自動車触媒4 91.2 95.3 101.0 104.0 100.1 95.0

化学 16.3 18.0 15.5 14.8 15.2 17.0

電子材4 6.8 7.1 7.1 7.1 7.1 8.5

ガラス 3.2 4.4 6.9 7.7 11.4 14.4

投資 27.2 8.6 14.1 19.3 11.2 2.7

宝飾品4 92.8 88.3 85.5 75.0 74.7 73.5

医療&バイオメディカル5 6.7 6.6 6.6 6.8 6.8 7.0

石油 4.5 5.4 4.4 5.4 7.3 9.7

その他 13.1 13.5 13.8 14.3 15.1 15.5

総需要合計 261.8 247.2 254.9 254.4 248.9 243.3

リサイクル量6 自動車触媒 -37.3 -39.6 -34.4 -36.3 -40.1 -43.6

電子材 -0.7 -0.8 -0.9 -1.0 -1.0 -1.2

宝飾品 -24.6 -23.7 -17.9 -23.0 -23.2 -24.1

リサイクル量合計 -62.6 -64.1 -53.2 -60.3 -64.3 -68.9

純需要合計7 199.2 183.1 201.7 194.1 184.6 174.4

在庫変動8 -17.4 -22.8 -11.8 -4.5 5.3 15.6

28 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

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プラチナ(単位:トン) - 地域別総需要2018年の数値は暫定推定値

2013 2014 2015 2016 2017 2018欧州 自動車触媒 39.8 45.9 51.5 56.0 53.4 47.0

化学 3.0 3.5 3.7 3.8 3.7 3.8電子材 0.5 0.4 0.4 0.4 0.3 0.4ガラス 0.2 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3投資 -1.2 -2.3 -2.7 3.4 1.1 -3.2宝飾品 6.8 6.3 6.3 5.5 5.5 5.7医療&バイオメディカル 2.3 2.2 2.2 2.2 2.2 2.2石油 -0.4 0.7 -0.1 0.1 0.4 1.0その他 3.3 3.4 3.3 3.4 3.5 3.5合計 54.3 60.4 64.9 75.1 70.4 60.7

日本 自動車触媒 15.6 13.9 11.9 11.2 10.9 10.7化学 1.3 1.3 1.3 1.3 1.2 1.2電子材 0.8 1.0 1.0 1.0 1.0 1.1ガラス -0.6 -3.0 0.1 0.1 0.8 0.2投資 -1.2 0.6 21.8 16.9 5.3 6.8宝飾品 9.6 9.7 9.8 9.6 9.5 9.6医療&バイオメディカル 0.6 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5石油 0.0 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1その他 2.2 2.2 2.5 2.3 2.4 2.4合計 28.3 26.3 49.0 43.0 31.7 32.6

北米 自動車触媒 10.5 11.1 11.5 10.7 10.0 10.1化学 3.2 3.5 3.5 3.2 3.5 3.6電子材 0.6 0.6 0.7 0.8 1.0 1.2ガラス 0.2 0.3 0.3 0.9 1.4 0.5投資 1.8 0.2 -1.0 3.4 4.0 2.1宝飾品 6.6 6.8 7.1 6.8 7.4 7.4医療&バイオメディカル 2.6 2.6 2.6 2.7 2.7 2.7石油 0.7 0.7 1.2 1.1 0.6 0.5その他 3.8 3.9 3.6 3.8 3.8 3.8合計 30.0 29.7 29.5 33.4 34.4 31.9

中国 自動車触媒 4.0 4.0 4.2 4.7 4.9 4.8化学 4.2 4.8 4.1 3.8 3.4 4.2電子材 1.1 1.2 1.2 1.2 1.2 1.6ガラス 2.9 4.5 5.5 4.2 5.1 10.9投資 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0宝飾品 65.3 60.2 55.9 47.0 45.7 43.5医療&バイオメディカル 0.5 0.6 0.6 0.6 0.6 0.7石油 1.7 0.9 1.0 2.0 3.7 6.1その他 1.5 1.6 1.8 2.2 2.5 2.8合計 81.2 77.8 74.3 65.7 67.1 74.6

その他の地域 自動車触媒 21.3 20.4 21.9 21.4 20.9 22.4化学 4.6 4.9 2.9 2.7 3.4 4.2電子材 3.8 3.9 3.8 3.7 3.6 4.2ガラス 0.5 2.3 0.7 2.2 3.8 2.5投資 27.8 10.1 -4.0 -4.4 0.8 -3.0宝飾品 4.5 5.3 6.4 6.1 6.6 7.3医療&バイオメディカル 0.7 0.7 0.7 0.8 0.8 0.9石油 2.5 3.0 2.2 2.1 2.5 2.0その他 2.3 2.4 2.6 2.6 2.9 3.0合計 68.0 53.0 37.2 37.2 45.3 43.5 総需要合計 261.8 247.2 254.9 254.4 248.9 243.3

プラチナの地域別総需要トン

29 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

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パラジウム(単位:1,000オンス) - 供給と需要

2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

供給1 南アフリカ 2,464 2,126 2,683 2,570 2,550 2,590

ロシア2 2,628 2,589 2,434 2,773 2,406 2,840

北米 831 912 874 892 886 939

ジンバブエ3 322 327 320 396 386 378

その他3 152 160 144 129 133 133

供給合計 6,397 6,114 6,455 6,760 6,361 6,880

需要4 自動車触媒4 7,069 7,517 7,649 7,951 8,428 8,655

化学 378 315 452 418 462 493

歯科 457 464 468 430 392 380

電子材4 1,017 970 903 872 842 828

投資 -8 943 -659 -646 -386 -555

宝飾品4 354 272 222 191 173 166

その他 109 111 134 155 136 154

総需要合計 9,376 10,592 9,169 9,371 10,047 10,121

リサイクル量6 自動車触媒 -1,899 -2,159 -1,882 -1,989 -2,399 -2,720

電子材 -463 -474 -475 -481 -479 -478

宝飾品 -157 -89 -46 -21 -21 -14

リサイクル量合計 -2,519 -2,722 -2,403 -2,491 -2,899 -3,212

純需要合計7 6,857 7,870 6,766 6,880 7,148 6,909

在庫変動8 -460 -1,756 -311 -120 -787 -29

パラジウムの供給と需要トロイオンス

30 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

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31 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

パラジウムの地域別総需要トロイオンス

パラジウム(単位:1,000オンス) - 地域別総需要2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年欧州 自動車触媒 1,502 1,583 1,609 1,642 1,700 1,883

化学 71 -23 77 79 80 79歯科 80 77 70 66 61 56電子材 112 113 101 99 96 94投資 -14 -74 -200 -269 -287 -141宝飾品 61 60 59 58 55 55その他 24 25 27 24 23 30合計 1,836 1,761 1,743 1,699 1,728 2,056

日本 自動車触媒 782 794 757 785 835 859化学 18 16 15 15 15 15歯科 184 205 227 200 174 171電子材 220 214 231 227 220 214投資 -4 -2 4 -3 -3 -1宝飾品 70 67 66 64 57 56その他 9 9 9 9 8 8合計 1,279 1,303 1,309 1,297 1,306 1,322

北米 自動車触媒 1,770 1,963 2,032 1,950 2,053 2,041化学 68 71 76 73 74 77歯科 168 156 145 138 131 126電子材 159 140 131 128 124 120投資 10 -205 -181 -71 -19 -86宝飾品 43 44 41 38 33 33その他 43 43 60 46 43 43合計 2,261 2,212 2,304 2,302 2,439 2,354

中国 自動車触媒 1,499 1,608 1,654 2,038 2,179 2,117化学 144 160 209 156 182 205歯科 8 8 8 7 7 7電子材 168 169 158 156 155 155投資 0 0 0 0 0 0宝飾品 155 78 34 10 9 3その他 15 16 17 43 46 55合計 1,989 2,039 2,080 2,410 2,578 2,542

その他の地域 自動車触媒 1,516 1,569 1,597 1,536 1,661 1,755化学 77 91 75 95 111 117歯科 17 18 18 19 19 20電子材 358 334 282 262 247 245投資 0 1,224 -282 -303 -77 -327宝飾品 25 23 22 21 19 19その他 18 18 21 33 16 18合計 2,011 3,277 1,733 1,663 1,996 1,847 総需要合計 9,376 10,592 9,169 9,371 10,047 10,121

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パラジウムの供給と需要トン

32 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

パラジウム(単位:トン) - 供給と需要

2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

供給1 南アフリカ 76.6 66.1 83.4 79.9 79.3 80.6

ロシア2 81.7 80.5 75.7 86.3 74.8 88.3

北米 25.9 28.4 27.2 27.7 27.6 29.2

ジンバブエ3 10.0 10.2 10.0 12.3 12.0 11.8

その他3 4.7 5.0 4.5 4.0 4.1 4.1

供給合計 198.9 190.2 200.8 210.2 197.8 214.0

需要4 自動車触媒4 219.9 233.8 237.8 247.4 262.3 269.2

化学 11.8 9.8 14.1 13.0 14.5 15.4

歯科 14.1 14.4 14.6 13.4 12.2 11.7

電子材4 31.5 30.2 28.1 27.1 26.0 25.8

投資 -0.2 29.3 -20.5 -20.1 -12.0 -17.3

宝飾品4 11.0 8.5 6.9 6.0 5.4 5.2

その他 3.4 3.5 4.2 4.7 4.1 4.7

総需要合計 291.5 329.5 285.2 291.5 312.5 314.7

リサイクル量6 自動車触媒 -59.1 -67.2 -58.5 -61.8 -74.6 -84.6

電子材 -14.4 -14.8 -14.8 -15.0 -15.0 -14.9

宝飾品 -4.9 -2.7 -1.4 -0.7 -0.6 -0.4

リサイクル量合計 -78.4 -84.7 -74.7 -77.5 -90.2 -99.9

純需要合計7 213.1 244.8 210.5 214.0 222.3 214.8

在庫変動8 -14.2 -54.6 -9.7 -3.8 -24.5 -0.8

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パラジウムの地域別総需要トン

33 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

パラジウム (単位:トン) - 地域別総需要2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年欧州 自動車触媒 46.7 49.2 50.0 51.1 52.9 58.6

化学 2.2 -0.7 2.4 2.5 2.5 2.5歯科 2.5 2.4 2.2 2.1 1.9 1.7電子材 3.5 3.5 3.1 3.0 2.9 2.9投資 -0.4 -2.3 -6.2 -8.4 -8.9 -4.4宝飾品 1.9 1.9 1.8 1.8 1.7 1.7その他 0.7 0.8 0.8 0.7 0.7 0.9合計 57.1 54.8 54.1 52.8 53.7 63.9

日本 自動車触媒 24.3 24.7 23.5 24.4 26.0 26.7化学 0.6 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5歯科 5.7 6.4 7.1 6.2 5.4 5.3電子材 6.8 6.7 7.2 7.1 6.8 6.7投資 -0.1 -0.1 0.1 -0.1 -0.1 0.0宝飾品 2.2 2.1 2.0 2.0 1.8 1.8その他 0.3 0.3 0.3 0.3 0.2 0.2合計 39.8 40.6 40.7 40.4 40.6 41.2

北米 自動車触媒 55.1 61.1 63.2 60.7 63.9 63.5化学 2.1 2.2 2.4 2.3 2.3 2.4歯科 5.2 4.8 4.5 4.3 4.1 3.9電子材 4.9 4.3 4.1 4.0 3.8 3.8投資 0.3 -6.4 -5.6 -2.2 -0.6 -2.7宝飾品 1.3 1.4 1.3 1.2 1.0 1.0その他 1.3 1.3 1.9 1.4 1.3 1.3合計 70.2 68.7 71.8 71.7 75.8 73.2

中国 自動車触媒 46.6 50.0 51.4 63.4 67.8 65.8化学 4.5 5.0 6.5 4.8 5.7 6.4歯科 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2電子材 5.2 5.3 4.9 4.9 4.8 4.8投資 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0宝飾品 4.8 2.4 1.1 0.3 0.3 0.1その他 0.5 0.5 0.5 1.3 1.4 1.7合計 61.8 63.4 64.6 74.9 80.2 79.0

その他の地域 自動車触媒 47.2 48.8 49.7 47.8 51.7 54.6化学 2.4 2.8 2.3 2.9 3.5 3.6歯科 0.5 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6電子材 11.1 10.4 8.8 8.1 7.7 7.6投資 0.0 38.1 -8.8 -9.4 -2.4 -10.2宝飾品 0.8 0.7 0.7 0.7 0.6 0.6その他 0.6 0.6 0.7 1.0 0.5 0.6合計 62.6 102.0 54.0 51.7 62.2 57.4 総需要合計 291.5 329.5 285.2 291.5 312.5 314.7

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ロジウムの供給と需要トロイオンス

34 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

ロジウム(単位:1,000オンス) - 供給と需要

2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

供給1 南アフリカ 554 470 611 615 611 623

ロシア2 80 80 80 85 78 69

北米 23 24 22 24 23 23

ジンバブエ3 36 36 36 44 42 39

その他3 8 7 5 5 5 5

供給合計 701 617 754 773 759 759

需要4 自動車触媒4 753 770 757 809 842 862

化学 79 90 73 64 71 63

電子材 5 3 3 3 4 4

ガラス 47 49 52 85 113 93

その他 87 38 30 41 21 -11

総需要合計 971 950 915 1,002 1,051 1,011

リサイクル量6 自動車触媒 -281 -301 -260 -271 -311 -344

リサイクル量合計 -281 -301 -260 -271 -311 -344

純需要合計7 690 649 655 731 740 667

在庫変動8 11 -32 99 42 19 92

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ロジウムの供給と需要トン

35 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

ロジウム(単位:トン) - 供給と需要

2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

供給1 南アフリカ 17.2 14.6 19.0 19.1 19.0 19.4

ロシア2 2.5 2.5 2.5 2.6 2.4 2.1

北米 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7

ジンバブエ3 1.1 1.1 1.1 1.4 1.3 1.2

その他3 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2 0.2

供給合計 21.7 19.1 23.5 24.0 23.6 23.6

需要4 自動車触媒4 23.4 23.9 23.5 25.2 26.1 26.9

化学 2.5 2.9 2.3 1.9 2.2 2.0

電子材 0.0 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1

ガラス 1.4 1.5 1.7 2.6 3.4 2.8

その他 2.8 1.2 1.0 1.3 0.8 -0.3

総需要合計 30.1 29.6 28.6 31.1 32.6 31.5

リサイクル量6 自動車触媒 -8.7 -9.4 -8.1 -8.4 -9.7 -10.7

リサイクル量合計 -8.7 -9.4 -8.1 -8.4 -9.7 -10.7

純需要合計7 21.4 20.2 20.5 22.7 22.9 20.8

在庫変動8 0.3 -1.1 3.0 1.3 0.7 2.8

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ルテニウムの需要トロイオンス、トン

36 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

ルテニウム(単位:1,000オンス) - 需要

2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

需要 化学 321 332 444 365 428 267

電子材 336 360 457 447 427 458

電子化学 145 136 151 188 205 200

その他 105 108 149 155 173 192

需要合計 907 936 1,201 1,155 1,233 1,117

ルテニウム(単位:トン) - 需要

2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

需要 化学 10.0 10.3 13.8 11.4 13.3 8.3

電子材 10.5 11.2 14.2 13.9 13.3 14.2

電子化学 4.5 4.2 4.7 5.8 6.4 6.2

その他 3.3 3.4 4.6 4.8 5.4 6.0

需要合計 28.3 29.1 37.3 35.9 38.4 34.7

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イリジウムの需要トロイオンス、トン

37 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

イリジウム(単位:1,000オンス) - 需要

2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

需要 化学 21 22 22 23 17 19

電子材 35 49 89 100 73 53

電子化学 41 39 41 59 84 61

その他 68 71 76 81 84 91

需要合計 165 181 228 263 258 224

イリジウム(単位:トン) - 需要

2018年の数値は暫定推定値

2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

需要 化学 0.7 0.7 0.7 0.7 0.5 0.6

電子材 1.1 1.5 2.8 3.1 2.3 1.6

電子化学 1.3 1.2 1.3 1.8 2.6 1.9

その他 2.1 2.2 2.4 2.5 2.6 2.8

需要合計 5.2 5.6 7.2 8.1 8.0 6.9

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表の注釈

38 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

1 供給量は、鉱山による一次 PGM の販売量の推定値を示しており、地域の分類は精練地ではなく採掘地を基準としている。

2 ロシアの供給量は、ロシアと独立国家共同体(CIS)を含む地域全体の合計 PGM 販売量を示している。ロシアと CIS諸国の需要は世界のその他の地域に算入されている。

3 ジンバブエからの供給量はその他の供給量と区別されている。ジンバブエで採掘された PGM は現在、南アフリカで精練されており、本稿では PGM 精鉱またはマット状 PGM の出荷量を標準的な精練実収率で調整した数値で示している。

4 総需要は、いずれの用途についても、当該用途のためのメーカーの新規メタルに対する需要と当該セクターが保有する未精練の在庫の増減の合計を示している。未精練の在庫を積み上げると需要が増加し、在庫が取り崩されると需要が減少する。

5 医療・バイオメディカルの分野については、医療、バイオメディカル、歯科の 3 セクターを合わせた需要を示している。

6 リサイクル量は、オープンループリサイクル(すなわち、メタルの使用権は最初の購入者から移転される)でのメタル回収量の推定値を示している。例えば、自動車触媒のリサイクル量は個々の地域の使用済み自動車やアフターマーケットの廃車や廃部品から回収されたメタルの重量を示しており、地域の分類については最終的にメタルが回収された地域ではなく自動車が最初に登録された地域を基準としている。これらの数値には、担保となるスクラップもしくは製造工程でのスクラップは含まれていない。リサイクル量が示されていない場合は、オープンループリサイクルによるリサイクル量がごくわずかであることを示している。

7 純需要は、ある用途の総需要の合計から当該用途のオープンループリサイクルによるメタル回収量を差し引いた数値に相当する。リサイクルされたメタルが当該産業で再利用されるか、他の用途に販売されるかは問わない。リサイクル量が示されていない用途については、総需要と正味需要は同一である。

8 ある年の在庫変動は、加工業者、ディーラー、銀行、受託者が保有している在庫の変動を示しているが、一次精練業者と最終ユーザーが保有する在庫はこの対象とならない。この数値がプラスの場合(「供給過剰」と示されることがある)は市場在庫の増加を示し、マイナスの場合(「供給不足」と示されることがある)は市場在庫の減少を示す。

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用語集

39 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

ASC アンモニアスリップ触媒BEV 電気自動車CF CF値(台上試験の規制値に対する倍数)CO 一酸化炭素CO2 二酸化炭素DOC ディーゼル車用酸化触媒DPF ディーゼル微粒子捕集フィルターEC 欧州委員会ELV 廃車ETF 上場投資信託FCEV 燃料電池車GDI ガソリン直噴エンジンGPF ガソリン車用微粒子捕集フィルターHC 炭化水素HDD 大型ディーゼル車ISC 使用中の自動車に対する排ガス試験LAB 直鎖型アルキルベンゼンLDG 小型ガソリン車LDD 小型ディーゼル車LEV 低公害車MLCC 積層セラミックコンデンサーNEDC 新欧州ドライビングサイクルNEV 新エネルギー車(BEV、PHEVまたはFCEV)NOx 窒素酸化物NRMM 特定特殊自動車NYMEX ニューヨークマーカンタイル取引所(New York Mercantile Exchange)PDH プロパン脱水素法PHEV プラグインハイブリッド車PM 粒子状物質または煤PN 粒子数PNA NOx吸着触媒PTA 高純度テレフタル酸PX パラキシレンRDE 実路走行RoW 世界のその他の地域SCR 選択還元触媒SCRF® 選択還元触媒機能付のフィルターSGE 上海黄金交易所SUV スポーツユーティリティ車WLTP 乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法

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排ガス規制Euro6

40 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

Euro6は、小型車の排ガス規制を規定する包括的な規範であり、多様なテストや手続きに従って随時段階的に導入される

Euro6aは任意の段階だったが、これによって Euro 6 の基準遵守が義務付けられるよりも先に、この型式認証を取得した自動車を売り出すことができた。この段階は PGM の需要に非常にわずかな影響を与えたに過ぎなかった。

Euro6bは 2014 年 9 月から乗用車の新たな型式認証に適用され、2016 年 9 月からは欧州市場で販売されるすべての自動車に適用されている。2016 年 9 月以降、新欧州ドライビングサイクル(NEDC)を通じた試験では Euro 6 の排ガス基準を満たさなければならなくなった。Euro 6b のガソリン車排ガス基準は一点を除き、Euro 5 と同じである。その相違点とは、ガソリンエンジンに対する粒子状物質の排出粒子数(PN)の上限が Euro 6b で導入された点である(もっとも、メーカーは PN 基準に関する 3 年間の免除期間を申請すれば、やや緩やかな基準に対応することから始めることもできた)。ディーゼル車については、NEDC のテストサイクルで許容される NOx 排出量が、Euro 5 の基準から 56%も引き下げられた。これはディーゼル車の PGM 触媒充填量に非常に大きな影響を与えた。

Euro6cは 2017 年 9 月から段階的に導入され、2019 年 9 月からすべての自動車に適用される。ディーゼルエンジンに対する排ガス規制については 6b と 6c で違いはないが、ガソリンエンジンについては、すべての自動車を対象に PNの排出上限が 6c で引き下げられ、ディーゼル自動車並みとなった。これはガソリンエンジン用微粒子捕集フィルター

(GPF)の装着動向に影響を与えている。

同時に、NEDC に代わる新たな台上試験方法が採用された。2017 年 9 月からは「乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)」が新たな型式認証となり、2018 年 9 月からはすべての自動車に適用された。

Euro6dは 2017 年 9 月から数年間にわたって段階的に導入される予定である。NOx 排出量と PN のテスト方法および計測方法に関して Euro 6d と Euro 6b・6c で異なるのは、台上試験に加えて実路走行(RDE)試験が導入された点である。RDE 試験では、加速と減速を任意に繰り返しながら自動車を走行させ、車載式排ガス測定装置(PEMS)を使用して排出量を測定する。

CF 値が導入され、自動車の NOx 排出量および PN が RDE 試験中に基準を超える場合の許容制限が倍数で規定されるようになった。こうした超過許容制限は、PEMS による計測の許容誤差を設けることを意図している。CF 値は 2 段階に分けて導入される。

第一段階(Euro6d-TEMP)では、NOx に関する CF 値が 2.1 倍、PN に関する CF 値が 1.5 倍で、2017 年 9 月から乗用車の新たな型式認証に、2018 年 9 月からは小型商用車(LCV)の新たな型式認証にそれぞれ適用されている。乗用車の新車すべてに対する CF 値の適用については、PN が 2018 年 9 月から、NOx が 2019 年 9 月からとなっており、LCV の新車すべてに対する適用はその 1 年後となる。

第二段階(Euro6d)では、NOx の CF 値が 1.43 倍に引き下げられ、乗用車の新たな型式認証には 2020 年 1 月から、すべての自動車には 2022 年 1 月から適用される。

PEMS の精度向上に合わせて欧州委員会は今後も CF 値を見直し、2023 年には 1.0 倍まで引き下げて、試験中の許容誤差を撤廃するとしている 1。

こうした移行により、触媒システムの設計および充填量の変更は不可避となる。

1 欧州連合司法裁判所の最近の判決では、NOx の CF 値を 1.0 倍にする時期が 2020 年に繰り上げられたが、EU 委員会はこの判決について、現在不服申し立てを行っている。

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排ガス規制

41 JohnsonMatthey PGM市場レポート2019年2月

小型車

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排ガス規制

42 Johnson Matthey PGM Market Report February 2019

大型ディーゼル車

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44 JohnsonMatthey PGMMarketReportMay2018