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Peñoles, Grupo Mexico 2011.9 金属資源レポート 25 メキシコ、主要非鉄金属企業の現状と 展望(その1) Peñoles, Grupo Mexico の動向メキシコ事務所 所長 高木 博康 1. メキシコにおける両社の鉱業活動の変化 (2003 年と 2010 年の比較) 表 1-1 表 1-6 に 2003 年及び 2010 年のメキシコにお 209メキシコ合衆国の主要な非鉄金属企業は、銅を主体にメキシコ、ペルー、米国等で活動する「Grupo Mexico(グ ルーポ・メヒコ)社」と、銀等の貴金属を主体に主にメキシコで活動する「Industrias Peñoles(ペニョーレス)社」 である。本号と次号の2回に分けて、メキシコにおける両社の鉱業活動の変化(2003 年と 2010 年の比較)、2010 年 アニュアルレポートを基にした両社の企業概要、鉱業活動の現状、今後の展望等について報告する。 ける Grupo Mexico 社及び Peñoles 社の金属鉱石生産 量を示す(共同権益の鉱山については、いずれも他社 権益分も含む。)。 2003年 2010年 増  減 メキシコ計 323.7 270.1 -17% Grupo Mexico 296.0 144.1 -51% シェア 91% 53% -  Peñoles 7.7 36.0 +367% シェア 2% 13% -  表 1-1 及び図 1-1 のとおり、2003 年から 2010 年まで の間に Peñoles 及びその他の企業が銅の生産を伸ばす なか、Grupo Mexico のメキシコでの銅の生産が半減し たため、メキシコ全体で2003年に比べ銅の生産が 17減少している。この一因としては、後述のメキシ コ最大の Cananea 銅鉱山(現 Buena Vista 銅鉱山)に おけるストライキの影響が大きい。2010 年月に全面 解 決 し、2010 年 月 か ら SX-EW の 生 産 が 再 開 し、 2011 年月末現在 90レベルで生産が回復した同鉱山 が仮に2010年にフル操業していたと仮定すると、 Grupo Mexico のメキシコにおける 2010 年の銅の生産 量は 303.4 千と 2003 年を僅かに上回る数字となり、 Peñoles 及びその他の企業の銅の生産量が大きく伸びて いることから、メキシコ全体では 429.4 千と 2003 年 の生産量を 33上回ることとなる。 表1-1. 2003年及び2010年のメキシコにおける両社の銅の生産量 図1-1. メキシコにおける両社の銅の生産量の位置付け 2003年(計323.7千t) 2010年(計270.1千t) (単位:千t) (注)Sx-Ewを含む。 (出典:INEGI(国立統計地理情報院)、両社HP) GM Peñoles その他 GM Peñoles その他

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2011.9 金属資源レポート 25

メキシコ、主要非鉄金属企業の現状と展望(その1)—Peñoles, Grupo Mexico の動向—

メキシコ事務所 所長 高木 博康

1. メキシコにおける両社の鉱業活動の変化(2003 年と 2010 年の比較)表 1-1~表 1-6 に 2003 年及び 2010 年のメキシコにお

(209)

メキシコ合衆国の主要な非鉄金属企業は、銅を主体にメキシコ、ペルー、米国等で活動する「Grupo Mexico(グルーポ・メヒコ)社」と、銀等の貴金属を主体に主にメキシコで活動する「Industrias Peñoles(ペニョーレス)社」である。本号と次号の2回に分けて、メキシコにおける両社の鉱業活動の変化(2003 年と 2010 年の比較)、2010 年アニュアルレポートを基にした両社の企業概要、鉱業活動の現状、今後の展望等について報告する。

ける Grupo Mexico 社及び Peñoles 社の金属鉱石生産量を示す(共同権益の鉱山については、いずれも他社権益分も含む。)。

2003年 2010年 増  減

メキシコ計 323.7 270.1 -17%

Grupo Mexico 296.0 144.1 -51%

シェア 91% 53% - 

Peñoles 7.7 36.0 +367%

シェア 2% 13% - 

表 1-1 及び図 1-1 のとおり、2003 年から 2010 年までの間に Peñoles 及びその他の企業が銅の生産を伸ばすなか、Grupo Mexico のメキシコでの銅の生産が半減したため、メキシコ全体で 2003 年に比べ銅の生産が17%減少している。この一因としては、後述のメキシコ最大の Cananea 銅鉱山(現 Buena Vista 銅鉱山)におけるストライキの影響が大きい。2010 年6月に全面解決し、2010 年9月から SX-EW の生産が再開し、

2011 年4月末現在 90%レベルで生産が回復した同鉱山が仮に 2010 年にフル操業していたと仮定すると、Grupo Mexico のメキシコにおける 2010 年の銅の生産量は 303.4 千tと 2003 年を僅かに上回る数字となり、Peñoles 及びその他の企業の銅の生産量が大きく伸びていることから、メキシコ全体では 429.4 千tと 2003 年の生産量を 33%上回ることとなる。

表1-1. 2003年及び2010年のメキシコにおける両社の銅の生産量

図1-1. メキシコにおける両社の銅の生産量の位置付け

2003年(計323.7千t) 2010年(計270.1千t)

(単位:千t)

(注)Sx-Ewを含む。 (出典:INEGI(国立統計地理情報院)、両社 HP)

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表 1-2、図 1-2 のとおり、2003 年から 2010 年までの間にメキシコの鉛の生産が 38%増加するなか、Grupo

Mexico は 22%、Peñoles は 24%鉛の生産が減少しており、それぞれのシェアは大きく低下している。

2003年 2010年 増  減

メキシコ計 139.3 192.1 +38%

Grupo Mexico 25.9 20.2 -22%

シェア 19% 11% - 

Peñoles 81.3 62.1 -24%

シェア 58% 32% - 

2003年 2010年 増  減

メキシコ計 414.0 490.0 +18%

Grupo Mexico 136.5 99.2 -27%

シェア 33% 20% - 

Peñoles 218.5 181.1 -17%

シェア 53% 37% - 

表1-2. 2003年及び2010年のメキシコにおける両社の鉛の生産量

表1-3. 2003年及び2010年のメキシコにおける両社の亜鉛の生産量

図1-2. メキシコにおける両社の鉛の生産量の位置付け

図1-3. メキシコにおける両社の亜鉛の生産量の位置付け

2003年(計139.3千t)

2003年(計414.0千t)

2010年(計192.1千t)

2010年(計490.0千t)

(単位:千t)

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(出典:INEGI(国立統計地理情報院)、両社 HP)

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表 1-3 及び図 1-3 のとおり、2003 年から 2010 年の間に Grupo Mexico は 27%、Peñoles は 17%それぞれメキシコにおける亜鉛の生産量が減少しているにもかか

わらず、メキシコ全体では亜鉛の生産量が 18%増加しており、その他の企業が亜鉛の生産量を大きく伸ばしていることが判る。

表 1-4 及び図 1-4 のとおり、2003 年から 2010 年の間に Peñoles はメキシコにおける金の生産量を 65%増加させているが、メキシコ全体では4倍近くに増加して

おり、同社のメキシコにおける金生産のシェアは、52%から 22%へと半減している。

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2003年 2010年 増  減

メキシコ計 20.4 79.4 +289%

Grupo Mexico 0.7 0.3 -57%

シェア 3% 0% - 

Peñoles 10.7 17.7 +65%

シェア 52% 22% - 

2003年 2010年 増  減

メキシコ計 2,569 4,410 +72%

Grupo Mexico 426 261 -39%

シェア 17% 6% - 

Peñoles 1,373 1,555 +13%

シェア 53% 35% - 

表1-4. 2003年及び2010年のメキシコにおける両社の金の生産量

表1-5. 2003年及び2010年のメキシコにおける両社の銀の生産量

図1-4. メキシコにおける両社の金の生産量の位置付け

図1-5. メキシコにおける両社の銀の生産量の位置付け

2003年(計20.4t)

2003年(計2,569t)

2010年(計79.4t)

2010年(計4,410t)

(単位:t)

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(出典:INEGI(国立統計地理情報院)、両社 HP)

(出典:INEGI(国立統計地理情報院)、両社 HP)

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表 1-5 及び図 1-5 のとおり、2003 年から 2010 年の間で Grupo Mexico のメキシコにおける銀の生産量は、39%減少し、メキシコ全体でのシェアを 17%から6%へと大きく減少させている。Peñoles は、この間でメキ

シコにおける銀の生産量を 13%増加させているが、メキシコ全体の銀の生産量が 72%と大きく増加したため、メキシコ全体でのシェアは、53%から 35%へと減少している。

2003年 2010年 増  減

メキシコ 計 3.5 10.8 +209%

Grupo Mexico 3.5 10.4 +197%

シェア 100% 96% - 

表1-6. 2003年及び2010年のメキシコにおける Grupo Mexico社のモリブデンの生産量(単位:千t)

(出典:INEGI(国立統計地理情報院)、Grupo Mexico社 HP)

Grupo Mexico の La Caridad 銅鉱山の副産物として、モリブデンの生産が近年急増している。モリブデンについては、メキシコでの Grupo Mexico のシェアは100%近い。

メキシコでは、Grupo Mexico 及び Peñoles の2大非鉄メジャー企業が絶大なる力を持っていて、その他の企業には参入の余地が小さいと思っている日本企業関係者も見受けられる。しかしながら、上述のように、それは真実では無く、実際に 2003 年から 2010 年までの間にメキシコにおいて生産を大きく伸ばしている企業は、この2社以外であることを数字が物語っている。

2. Peñoles 社について(1)Peñoles社の概要と今後の展望

Peñoles 社は、主要関連会社として、貴金属部門を統括し世界一の銀の生産企業である Fresnillo plc.(権益77.1%)、その他の鉱山部門を統括する Minas Peñoles社(同 100%)、精製錬・化学部門を統括する Quimica Magna 社(同 100%)及びインフラ事業部門を統括する Infraestructura 社(同 100%)の4統括企業を持つ他、サービス業、鉄道事業、水供給事業等多くの子会社を持つなど事業の多角化を図っているが((3)参照)、売 上 の 95%以 上 が 鉱 業 関 連 で あ り((10) 参 照 )、Grupo Mexico 社とともにメキシコを代表する鉱業企業である。

同社は、1968 年からメキシコ株式市場に上場してい

る((6)参照)。現在、10 鉱山を操業している他、精・製錬等も行い((7)参照)、銀、ビスマス及び硫酸ナトリウムの生産等で世界有数の企業となっている。

同社は、金属価格高騰の恩恵も受け、2010 年の売上高は 5,092 百万 US$、純益は 515 百万 US$といずれも過去最高となっている。2000 年代前半の金属価格が低迷した時期には損失を計上していた時代があるが、貴金属価格の高騰を受けこの数年は 10%前後の安定した当期利益率を維持している((4)参照)。

同社のマイナスの要因としては、マインライフが5~ 10 年と比較的短い鉱山が過半を占めていることにあり、Francisco I.Madero 亜鉛鉱山、Bismark 亜鉛鉱山といった亜鉛価格によっては採算が困難になる鉱山も存 在 し て い る((8)、(9) 参 照 )。 し か し、La Cienega 多金属鉱山、Tizapa 亜鉛鉱山等のマインライフが長い優良鉱山の存在に加え、メキシコ国内に有望鉱区を多数保有し、Fresnillo plc. を中心に積極的な探鉱投資を続けている。2010 年に Soledad-Dipoles 金鉱山が商業生産に達したのに続き、2011 年には Sausito多金属プロジェクト、2012 年には Noche Buena 金プロジェクト、2013 年には Velardeña 亜鉛プロジェクトと次々と操業開始が予定されている。また、その他の既存の鉱山の周辺でも埋蔵量増加のための探鉱活動が積極的に進められており、かつてに比べメキシコ国内での金属生産のシェアは落ちたとは言え、今後ともGrupo Mexico とともにメキシコ2大主要非鉄金属企業としての地位は揺るがないであろう。

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(3)Peñoles社の組織機構

(2)Peñoles社の企業概要

正式名称 Industrias Peñoles, S. A. de C. V.

本社Moliere No.222 Col.Morales Seccion Palmas,C.P. 11540, Mexico D.F.

主要事業 非鉄金属鉱山、精・製錬、化学

従業員 8,967人

決算日 12月末日

主要関連会社

Fresnillo plc社Minas Peñoles社Quimica Magna社Infraestructura社Met-MexPeñoles社

(注)太字は事業統括会社。Penmont社保有鉱山の Peñoles社の実質権益保有率は43.2%(77.1% ×56%)となる。

図2-1. Peñoles社の組織機構

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(5)Peñoles社の主要鉱物及び地金生産量

図2-2. Peñoles社の財務状況の推移

(出典:同社 HP)

表2-2. Peñoles社の金属鉱石生産量の推移

(注)金属純分、銅には、銅カソードを含む。

2003年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年

金(t) 10.7 11.8 12.1 11.9 13.0 17.7

銀(t) 1,373 1,475 1,459 1,432 1,545 1,555

鉛(千t) 81.3 62.0 62.1 61.3 64.4 62.1

亜鉛(千t) 218.5 205.7 194.1 182.9 185.4 181.1

銅(千t)(注) 7.7 13.6 18.7 27.3 34.2 36.0

(214)

(4)Peñoles社の財務状況

(単位:百万 US$)

表2-1. Peñoles社の財務状況

(注 )各年度末対ドル為替相場は、06年10.87557ペソ /US$、07年10.8662ペソ /US$、08年13.5383ペソ /US$、09年13.0587ペソ /US$及び10年12.3571ペソ /US$。2008年純益には、Fresnillo plc社ロンドン証券取引所上場に伴う株売却による純益4,876.1百万ペソ(360.2百万 US$)が含まれている。

(出典:同社 HP)

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年

売上高 3,547.1 4,116.5 3,917.0 3,431.7 5,091.6

当期損益 392.2 356.1 499.6 398.1 514.7

純益比(%) 11.1 8.7 12.8 11.6 10.1

流動資産 1,206.0 1,403.7 1,966.4 1,756.3 1,922.8

固定資産 1,504.2 1,625.8 1,832.4 2,012.3 2,297.2

資産総額 2,953.7 3,267.8 3,871.7 4,013.9 4,493.6

銀行負債 603.8 571.2 663.2 473.4 611.4

負債総額 1,672.1 1,594.3 1,630.2 1,443.2 1,839.0

探鉱投資 62.7 87.2 95.1 67.7 125.5

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(6)Peñoles社の沿革1910 年:Peñoles 社の前身 The Fresnillo Company of

New York(米国資本 100%)設立。1919 年:同社は、英国資本会社 Mexican Corporation

にプラントを貸与。1929 年:上 記2社 が 合 併 し、Fresnillo Campany of

New York が設立(1961 年 9 月 6 日まで操業継続)。

1952 年:Naica 多金属鉱山権益 100%取得。1961 年:9月6日、新鉱業法により企業はメキシコ民

族資本化され、鉱山会社 Compania Fresnillo設立。また製錬会社 Metalurgica Peñoles 社

(現 Met-Mex Peñoles 社)設立。これら2社が 合 併 し、 現 在 の Peñoles 社(Industria peñoles, S. A. de C. V.)設立。

1965 年:Jalisco 州 Cuale 鉱区権 100%取得。1968 年:メキシコ株式市場に上場。

Guanajuato 州 Los Torres 多金属鉱山の探鉱開始。

1970 年:Queretaro 州 La Gegra 鉱 山 及 び Cadereyta鉱山操業開始。

1972 年:Durango 州 Cienega 村にて鉱化帯発見。1974 年:Mexico 州 Zacualpan 町 に て Compania de

Plata 権益 100%取得。1975 年:Hidalgo 州 El Monte 多金属鉱山操業開始。1976 年:Los Torres 多金属鉱山操業開始。Guerreo 州

Rey de Plata 鉱区探鉱開始。1980 年:Mexico 州 Tizapa 鉱床が発見される(1987~

1990 年に亘って日本の技術協力事業である資源開発協力基礎調査(JICA-MMAJ)により、坑道探鉱、坑内ボーリング探査及び選鉱試験が実施される。)。同年 Cuale 鉱山操業開始。

1983 年:Colima 州 Minta 鉱山操業開始。1986 年:Mexico 州 Sultepec 多金属鉱山操業開始。

1992 年:メキシコ政府により Tizapa 鉱床(鉱区)が国際入札で競売され、Peñoles 社・同和鉱業の JV が落札し、開発工事開始。Hidalgo 州Lomo de Torro 多 金 属 鉱 山 操 業 開 始。Chihuahua 州 Bismark 多金属鉱山操業開始。

1995 年:Coahuila 州 Torreon にて二次産品を生産するAleazin 社操業開始。

1998 年:Sonora 州 Herradura 金山及び Cobarca 金山の開発工事開始。

1999 年:3月、Milpillas 銅鉱床(Sonora 州)100%権益を Syprus-Amax(現 Phelps Dodge)から買収。

2000 年:Sonora 州における銅探鉱に関し、CODELCOとの合併探鉱会社 Pecobre(権益率 Peñoles 51%及び CODELCO 49%)社を設立。3月、Milpillas銅鉱床のプレF/S実施を発表。10月、Dowa Mining と住商との JV の Rey de Plata鉱山操業開始。

2001 年:6月、Zacatecas 州 Francisco I. Madero 多金属鉱山操業開始。12 月、Rey de Plata 鉱山を一時操業停止(2004 年 12 月、Dowa Mining及び住商は JV から撤退)。

2002 年:4月、洪水のため Bismark 多金属鉱山を約40 日間操業一時停止。Milpillas 銅鉱床の鉱山開発工事開始。

2004 年:9月末、ペルーの鉱山会社 Milpo 社の買収を提案するが、合意に至らず。

2005 年:3月、Queretaro 州 Oro de Mezcala 金探査案件(権益保有率 56%)を Goldcorp 社へ売却。La Cienega 多 金 属 鉱 山 の 拡 張 工 事 完 成。Fresnillo 銀 山 の 生 産 拡 大。10 月、Milpillas銅鉱山の試験操業開始。

2006 年:8月、Milpillas 銅鉱山にて SX-EW 銅カソード生産開始。

表2-3. Peñoles社の金属地金生産量の推移

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年

金(t) 48.7 54.2 56.3 25.9 34.0

銀(t) 3,089 3,424 3,678 2,364 3,206

鉛(千t) 139.6 140.5 141.4 113.8 142.2

亜鉛(千t) 239.4 229.1 225.2 236.7 232.7

銅(千t) 9.2 7.4 7.3 5.9 7.8

カドミウム(千t) 1.0 1.0 0.9 0.9 0.9

ビスマス(千t) 1.2 1.2 1.1 0.9 1.0

染料鉛(千t) 154.0 153.3 156.9 139.0 153.2

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2008 年:5月、貴金属子会社 Fresnillo plc. をロンドン株式市場に上場。

2009 年:2月8日~4月 14 日の 66 日間、Torreon 市の鉛精錬所は雇用契約更新問題による労組ストライキにより操業を一時停止。

2010 年:Q1、Soledad-Dipolos 金鉱山(米・Newmontとの JV)商業生産到達。Met-Mex 社の亜鉛精錬所の定期点検による操業停止により亜鉛地金の生産減。

(7)Peñoles社の関連子会社毎の鉱山、精製錬所等の状況

① Fresnillo plc.2008 年にロンドン証券取引所に上場し、Peñoles 社

の権益率は 77.1%となっている。銀の生産量は世界一であり、メキシコにおける金の生産量では Goldcorp に次ぐ第2位にランクされている。子会社として Minera Fresnillo 社(100%)、Minera Mexicana La Cienega社(100%)及び Minera Penmont 社(Peñoles 社の権益は 56%、残りの 44%は、米・Newmont)の3社を持ち、Peñoles 社保有の 10 鉱山中 4 鉱山を統括する。

2010 年の財務状況は金属価格の高騰と金属生産量の増加により、売上高、純益等がいずれも高い伸びを示している。また、売上高は Peñoles 社の 29%であるが、純利益は Peñoles 社を上回っている。2010 年の生産量で金の生産量の大幅な増加は、2010 年1月に Soledad-Dipolos 金鉱山が商業生産に到達したこと等による。

開発プロジェクトは、個々の子会社が実施しているが、探鉱プロジェクトは Fresnillo plc. が自ら実施している。主な探鉱プロジェクトは、以下のとおりである。

Orisyvo 金プロジェクト(Chihuahua 州)社内の予備評価によると金の推定埋蔵量 155.5tとな

っている。2011 年に坑内ボーリング探査のための坑道開削及び Bulk サンプリングによる大規模な選鉱試験を行うこととなっている。

San Julian 金銀プロジェクト(Chihuahua 州)加・AMC 社による予備評価によると推定埋蔵量は、

Au11.7t、Ag4,214tと な っ て い る。2011 年 に 105百万 US$の投資を予定している。

Juanicipio 多金属プロジェクト(Zacatecas 州)Fresnillo plc. 56%、MAG Silver 社(加)44%の JV

プロジェクトである。概測資源量は、5.2 百万t、平均品位 Ag662g/t、Au1.92g/t、Pb1.78%、Zn3.66 %、 含有 金 属 Ag3,446t、Au10t、Pb92.7 千t、Zn190.4 千tとなっている。現在、プレ F/S を行っている。

San Juan 金銀プロジェクト(Durango 州)推定埋蔵量(含有金属量)は、Ag295t、Au9.5tと

評価されている。

①−1 Minera Fresnillo 社Fresnillo 銀鉱山を保有する他、Saucito 多金属プロ

ジェクトの開発を進めている。Fresnillo 銀鉱山(Zacatecas 州)

1550 年から操業され、460 年近くの歴史を持つ世界で最も規模の大きな銀鉱山である。年間 1,000t以上の銀を生産し、銀の世界生産量の約5%、メキシコ産銀量の1/4を占める。2010 年は、Peñoles 社の産銀量の72%を占めた。

埋蔵鉱量は、31.5 百万t(平均品位 Au0.54t/g、Ag338g/t、Pb1.35%及び Zn2.63%)でマインライフ

(埋蔵鉱量を生産量で割った数字。今後の探査結果や経済情勢で変化する可能性あり。以下同様。)は 12 年となっている。

同 鉱 山 で は、2003 年 に 5.5 百 万 US$を 投 じ てTunelera(坑道連続掘削機)を導入した(2005 年に2台目を追加)。採掘は、サブレベル・ストーピングで、地表下 200~600m に胚胎する鉱床を同 700m レベルの水平坑道で搬出するが、岩盤を保持しつつ従前比 3 倍速で坑道掘進可能な“Tunelera”により採掘コストの削減を図っている。

2006 年には、5.5 百万 US$投資により、搬出能力増加とコスト削減を目的とした立坑の巻上機の近代化、排水ポンプ及び通気系統の改善が完了した。

現在は、2011 年末完成を目途に投資額 19.1 百万 US$による水平坑道内の粗鉱運搬距離を短縮するための新規立坑開削工事を行っている。

2010 年は、選鉱プラントのミル処理能力を 7,500t/日から 8,000t/ 日へ改善(Six-Sigma 方式採用)したこと等により、生産量が前年比で増加している。

表2-4. Fresnillo plc.の2010年の財務状況及び生産量

2010年 前年比(%) 2010年 前年比(%)

売上高(百万 US$) 1,474.9 56.1 生産量

営業利益(百万 US$) 833.4 94.4 Au(t) 11.5 33.4

純益(百万 US$) 665.5 106.6 Ag(t) 1,309.7 2.0

探鉱投資(百万 US$) 100.1 21.9 Pb(千t) 17.3 9.9

Zn(千t) 19.5 15.1

(216)

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Saucito 多金属プロジェクト(Zacatecas 州)2011 年商業生産到達を目指す銀の他、金、鉛、亜鉛

を対象とするプロジェクトである。初期の開発コストは、309 百万 US$で、マインライフは 17 年である。F/S の生産計画では、2011 年の生産量は、銀 146t、金 0.7tで、2014 年の生産量は、銀 286t、金 1.4tとしている。(注)2011 年4月に商業生産に到達している。

①−2 Minera Mexicana La Cienega 社La Cienega 多金属鉱山(Durango 州)

同鉱山は、1994 年から操業が開始され、金、銀、亜鉛、鉛を生産するが、特に金を多く生産し、2010 年はPeñoles 社の産金量の 20%を占める 17.7tの金を生産している。

同鉱山は、操業開始当時から近年までメキシコ最高の金品位(平均品位8g t/ 台)の鉱山として知られていたが、2008 年に8g/tを切り、2010 年には 4.30g/tまで低下している。このため、2011 年半ばの完成を目途に 13.3 百万 US$を投じ、品位低下を粗鉱量増加によって補い生産量を維持するための鉱山・選鉱プラント拡張計画を進めている。2010 年には Six-Sigma 方式採用により粗鉱処理量増加と実収率向上を図り、Q1 から Q3 にかけて粗鉱品位が大幅に低下した銀を除き、生産量が増加している。

埋蔵鉱量は、10.5 百万t(平均品位 Au3.52g/t、Ag92g/t、Pb0.80%及び Zn1.21%)、マインライフは12.7 年となっている。

①−3 Minera Penmont 社(権益率 56%)同社は、Fresnillo plc. が 56%、米・Newmont 社が

44%の権益を持つ。Peñoles 社から見た実質権益保有率は、43.2 %(77.1 % ×56 %) と な る。 同 社 は、La Herradura 金鉱山と Soledad-Dipolos 金鉱山を操業している他、Noche Buena 金プロジェクトを開発している。

La Herradura 金鉱山(Sonora 州)1998 年に操業が開始された金鉱山で、2010 年の金の

生産量は、9.0tと過去最大となり、Peñoles 社の産金量の 51%を占める。埋蔵鉱量は、86.8 百万t(平均品位 Au0.64g/t及び Ag0.25g/t)、マインライフは、4.8 年である。

2010 年 Q4 を目途に、鉱山内の採鉱・運搬プロセスを効率的に制御する Mine Star Software システム及び回収率向上を目的としたリーチングパット敷設前の粗鉱と石灰混合システムを建設中である。また、2011 年末を目途に主要パット深部の高品位粗鉱の坑内試錐探査(総延長 2,000m)を目的とした 460mの斜坑掘削を進めている。

Soledad-Dipolos 金鉱山(Sonora 州)初期の投資コスト 68.7 百万 US$により、2009 年 12

月に最初のドーレ棒を生産して、2010 年1月に商業生産に到達した。

埋蔵鉱量は、35.9 百万t(平均品位 Au0.62%)でマインライフは6年である。今後、18 百万 US$投資により第3~第5リーチングパット等を完成させ、2011年末までに目標産金量 4.0t/ 年到達を目指している。

Noche Buena 金プロジェクト(Sonora 州)2010 年に Seabridge 社(加)から総額 10.12 百万 US$で買収した 2012 年に操業開始予定の金プロジェクトである。概測資源量は、金 18tである。開発計画によると、初期の資本投資 63 百万 US$で、最初の5年間の産金量は、2.3t/ 年となっている。

② Minas Peñoles 社Minera Bismark社(100%)、Minera Maple社(100%)、

Minera Madero 社(100%)、Compañía Minera Sabinas社(100%)、Minera Tizapa 社(51%)及び Compañia Minera Parreña 社(100%)の6社の鉱山会社(Peñoles社所有 10 鉱山のうち6鉱山)並びにメキシコで探鉱・開 発 プ ロ ジ ェ ク ト を 行 う Exploracion Peñoles 社

(100%)、ペルーで探鉱を行う Minera Peñoles de Peru社(100%)及びチリで探鉱を行う Minera Peñoles de Chile 社(100%)を統括している。

②−1 Minera Bismark 社Bismark 亜鉛鉱山(Chihuahua 州)

1992 年操業開始の高品位亜鉛塊状鉱床及び脈状鉱床からなる鉱山である。亜鉛以外の金属の品位が低いことから、亜鉛の価格変動に大きな影響を受けるという性質を持っている。また、鉱山中央部には膨大な地下水を含む断層が存在し、操業コスト高の原因となっている。2008 年のリーマンショック後の金属価格下落後、集中的なボーリング探査を実施し、埋蔵鉱量 4.2 百万t( 平 均 品 位 Ag22g/t、Pb0.38%、Zn6.76%及 びCu0.28%)、マインライフ 5.3 年と評価されている。2010 年の亜鉛生産量は、Peñoles 社の生産の 27%を占め、亜鉛の生産で第1位となっている。

②−2 Minera Maple 社Naica 鉛鉱山(Chihuahua 州)

同鉱山は、高品位鉛塊状鉱床及び脈状鉱床からなる。埋蔵量、生産量ともメキシコ最大級の鉛鉱山であり、同社によって 50 年以上操業されている。2010 年には電力庁(CFE)のトランスミッションの故障に起因する部分的な坑内の浸水により操業を停止したため、鉛の生産が対前年 27%減になるなど大幅に生産が減少した。埋蔵量増加を目的とした鉱山近隣域の探鉱を継続している。

②−3 Minera Madero 社Francisco I.Madero 亜鉛鉱山(Zacatecas 州)

(217)

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2011.9 金属資源レポート34

メキシコ最大級の亜鉛鉱山で、鉱床は層厚2~ 50mの潜頭性マント型鉱床である。SGM(メキシコ鉱業センター)の国有鉱区の競売によって所有し、2001 年から操業を行っているが、2002~ 2003 年には金属市況低迷により操業の一時停止が検討された。当初の鉱床評 価( 埋 蔵 鉱 量 30 百 万t、 平 均 品 位 Ag42g/t、Zn4.7%、Pb0.99%及び Cu0.19%)から近年鉱床の品位が低下してきており、現在の埋蔵鉱量は、40.4 百万t、平均品位 Ag21g/t、Zn2.34%、Pb0.75%及び Cu0.07%と平均品位が半減している。マインライフは 14.5 年となっているが、マントが点在しているため、次第に生産コストが高くなり、また、亜鉛以外の品位が低いことから亜鉛の市況によっては操業が困難となるという性質をもっている。Peñoles 社の所有する 10 鉱山のなかで経済性価値は低い。

②−4 Compañía Minera Sabinas 社Sabinas 亜鉛鉱山(Zacatecas 州)

1555 年に操業を開始した Peñoles 社で Fresnillo 銀鉱山に次ぐ歴史を持つ鉱山であり、塊状鉱床と脈状鉱床からなる。埋蔵鉱量は、14.2 百万t、平均品位 Ag97g /t、Pb0.64%、亜鉛 2.19%及び Cu0.79%で、マインライフは 11.5 年となっている。

②−5 Minera Tizapa 社(51%)同社は、Peñoles 社が 51%、Dowa メタルマインが

39%及び住友商事が 10%権益を持つ。同社の設立契約に基づき、亜鉛精鉱のほぼ全量は Dowa メタルマイン社へ、鉛精鉱全量が Met-Mex Peñoles 社へ売却される。

Tizapa 亜鉛鉱山(México 州)火山性状硫化物鉱床及びマント型鉱床からなる。

1994 年に操業が開始される。2008 年に今後 10 年分の廃さいダム増設工事が終了した。2011 年上期に粗鉱処理能力を現在の657千t/年から800千t/年に拡張し、増産する予定となっている。埋蔵鉱量は、12.7 百万t、平均品位 Au1.72g/t、Ag196g/t、Pb1.16%、亜鉛5.15%及び銅 0.31%、マインライフは 19 年となっている。

②−6 Compañia Minera Parreña 社Milpillas 銅鉱山(Sonora 州)

2006 年に操業を開始した Peñoles 社初の Sx-Ew カソード生産銅山である。鉱床は、地表下 260m以深に胚胎する潜頭性ポーフィリーカッパー鉱床である。2008年に総延長 15,600mの試錐探査、第2リーチングパット造成、回収システムの実収率改善及び立坑延長工事を実施している。同鉱山は、操業開始当時から軟弱な岩盤により数度の崩壊による死亡事故が発生するとともに、粘土混合粗鉱が銅の回収率に影響する等の問題を持っており、未だに計画採鉱量を達成していない。埋蔵鉱量は、36.9 百万t、平均品位 Cu1.43%で、マイ

ンライフは 12 年となっている。

②−7 Exploracion Peñoles 社同社は、Durango 州 Velardeña 亜鉛プロジェクトの

開発(2013 年操業開始予定)及び Guerrero 州の Rey de Plata 銀プロジェクト(旧鉱山の再開発)、Sonora州 Pecobre 銅プロジェクト、Durango 州の Centenario亜鉛プロジェクト等の探鉱を行っている。

Velardeña 亜鉛プロジェクト(Durango 州)同プロジェクトは、Grupo Mexico 社から買収したも

ので、買収当初の埋蔵量は、10.5 百万t、平均品位Zn7.0%であった。2008~ 9 年に総延長 113km のボーリング探査を行い、埋蔵量 37 百万t、亜鉛含有量 2.4百万tを捕捉した。2010 年にはこの主要鉱床の近隣地区の総延長 17.3km のボーリング探査を実施し、新たに埋蔵量 46 百万t、亜鉛含有量 1.8 百万tを捕捉した。2013 年 Q1 に操業開始予定となっている。

Rey de Plata 銀プロジェクト(Guerrero 州)かつて日本の Dowa マイニングと住友商事も参加(い

ずれも 2004 年に撤退)した 2001 年に操業を一時停止した後閉山した Rey de Plata 鉱山の再開発を目的とした探鉱プロジェクトである。鉱体は、塊状硫化物マント型である。2009 年に新規鉱体捕捉のための総延長25km のボーリング探査を行い、2010 年に確度を高めるための第2フェーズの総延長 71.8km のボーリング探査を行った。2011 年中に資源量評価結果を公表する予定となっている。

Pecobre 銅プロジェクト(Sonora 州)同プロジェクトは、2000 年に Peñoles 社が 51%及び

CODELCO が 49%の権益で設立された Pecobre 社のJVプロジェクトとして探鉱活動が開始された。2008年、Peñoles 社 は CODELCO 保 有 権 益 49%を 買 収 し、100%保有のプロジェクトとした。推定埋蔵量は、1,000百万t、平均品位 Cu0.34%である。

Centenario 亜鉛プロジェクト(Durango 州)推定埋蔵量は、400 百万t、平均品位 Zn0.40%である。

2010 年に地質精査及び鉱化作用捕捉を目的とした初期の試錐探査を開始した。

②− 8 Minera Peñoles de Peru 社(100%)同社はペルー国内で探鉱を実施し、Racaycocha 銅・

金プロジェクトの探鉱を促進している。

Racaycocha 銅・金プロジェクト(ペルー)同プロジェクトは、ポーフィリーカッパー型の銅・

金鉱床で、露天掘りによる開発が予定されている。2008 年に探鉱が開始され、総延長 6,500mの試錐探査により大型の銅・金鉱体が捕捉された。2009 年に総延

(218)

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( )内は自社鉱等の比率表2-5. Met-Mex鉛精錬所の生産量と自社鉱等の生産量

金(t) 前年比 銀(t) 前年比 鉛(千t) 前年比

2010年生産量 34.0 +31% 3,206 +36% 142.2 +25%

うち自社鉱 10.9(32%) -7% 1,314(41%) +11%  55.5(39%) -6%

うち買鉱 23.1(68%) +63% 1,892(59%) +60%  86.7(61%) +59%

2009年生産量 25.9 -117% 2,365 -36% 113.8 -20%

うち自社鉱 11.7(45%) - 1,183(50%) -  59.2(52%) -

うち買鉱 14.2(55%) - 1,183(50%) -  54.6(48%) -

(219)

長 7,000mのボーリング探査を実施し、広範囲な酸化・硫化混合物及び硫化物の鉱化作用を捕捉している。2010 年から地質及び物理探査、インフラ調査等を実施している。

③ Quimica Magna 社精・製錬を行う Met-Mex Peñoles 社、主に亜鉛の二

次製品を生産するAleazin社、Met-Mex Peñoles社の精・製錬所の残渣から化学製品を生産する Bermejillo 社、酸化マグネシウム等を生産する Magnelec(Q del Rey)社等多くの精製錬に関連する企業を統括している。

③−1 Met-Mex Peñoles 社同社は、Coahuila 州 Torreon 市に位置し、自社及び

買鉱による鉛精鉱を処理する鉛製錬所、それから産出される粗鉛、自社鉱山から生産されるドーレ棒、沈殿物、他社から購入する粗鉛、ドーレ棒及び高品位原料を処理する鉛精錬所並びに自社及び他社買鉱による亜鉛精鉱を処理する亜鉛精錬所を所有する。また、これらの精・製錬所から産出される残渣は、Bermejillo 社へ搬出さ

れ工業化学製品として処理されている。

鉛製錬所1934 年に操業開始し、年間粗鉛生産能力 180 千tの

製錬所である。2010 年は、自社鉱の生産量増加により、染料用鉛生産量が対前年比10.2%増の153.2tになる等、生産量が増加している。

鉛精錬所1975 年に操業開始した鉛精錬所で、年間生産能力は、

金 59t、銀 3,670t、鉛 180 千t、ビスマス 1,440tとなっている。2009 年は、労組ストライキにより鉛精錬所を 65 日間にわたり操業が一時停止した。このため、同年の金、銀及び鉛精錬生産量は、それぞれ 117%減、36%減及び 20%減となった。2010 年の生産量は、2009年のストライキによる生産量減の反動で高い伸びを示している。2010 年は第三者からの買鉱を再び増加させることにより対応しているが、同精錬所の年間生産最大量に達するだけの買鉱を確保するには至っていない。

亜鉛精錬所1973 年に操業を開始し、年間生産能力は、亜鉛 240

千tとなっている。2010 年の亜鉛地金の生産量は、定

期検査による操業停止もあり、前年比 1.7%の微減で、232.7tとなっている。

( )内は自社鉱等の比率

表2-6. Met-Mex亜鉛精錬所の生産量と自社鉱等の生産量

2010年 2009年 前年同期比

亜鉛生産量 232.7 236.7 -1.7

うち自社鉱 146.6(63%) 149.1(63%) -1.7

うち買鉱 86.1(37%) 87.6(37%) -1.7

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2011.9 金属資源レポート36(220)

③−2 Aleazin 社同社は、Coahuila 州 Ramos Arizpe に所在し、1994

年にプラントを操業開始し、工業用亜鉛二次製品を生産している。同製品の生産能力は、年間 240 千tである。

③−3 Bermejillo 社同社は、Durango 州 Bermejillo に所在し、1981 年に

プラントを操業開始し、Met-Mex Peñoles 社の精・製錬所の残渣を処理し、アンチモン鉛、硫酸亜鉛、硫酸銅及び三酸化アンチモンを生産している。

(注)Peñoles社は、同社全体の生産量と鉱山毎の金属別の割合しか公表していないため、鉱山別の生産量は誤差を含み得る。

Au(t) Ag(t) Pb(千t) Zn(千t)

総生産量 17.7     1,555     62.056   181.145   

La Herradura 9.0(51%)

La Cienega 3.5(20%) 30 (2%) 6.2(10%)

Soledad-Dipolos 3.4(19%)

Fresnillo 0.7 (4%) 1,120(72%) 12.4(20%) 12.7 (7%)

Tizapa 0.7 (4%) 120 (8%) 6.2(10%) 30.8(17%)

Saucito 0.2 (1%) 30 (2%)

Naica 0.2 (1%) 60 (4%) 14.9(24%) 10.3 (6%)

Sabinas 110 (7%) 7.4(12%) 24.0(14%)

FranciscoI.Madero 30 (2%) 11.2(18%) 39.3(23%)

Bismark 20 (1%) 3.1 (5%) 46.2(27%)

その他 (1%) (1%)  (6%)

(9)Peñoles社の埋蔵鉱量2009 年末現在の Peñoles 社の埋蔵鉱量の含金属量は、

Au155.5t、Ag17,596t、Pb1,357.6 千t、Zn3,722.8 千

t及び Cu735.1 千tとなっている。鉱山別の生産量、埋蔵鉱量及び品位は、表 2-8 のとおりである。

表2-7. Peñoles社の2010年鉱山別主要非鉄金属の生産量及びその割合

(8)Peñoles社の鉱山別生産量

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2011.9 金属資源レポート 37

(注 )2009年末の埋蔵鉱量は権益100%所有分及び金属価格 Au819.23US$/oz、Ag14.10US$/oz、Pb0.95US$/lb、Zn1.08US$/lb、Cu22.90US$/lbで算出。

表2-8. Peñoles社の鉱山別生産量、埋蔵鉱量及び品位(2009年末現在)

粗鉱処理量(千t)

埋蔵鉱量(千t)

平均品位

Au(g/t) Ag(g/t) Pb(%) Zn(%) Cu(%)

Fresnillo plc社(坑内掘)

Fresnillo 2,542.8 31,533 0.54 338 1.35 2.63

La Cienega(露天掘)

780.9 10,548 3.52 92 0.80 1.21

La Herradura 15,617.0 86,786 0.64 0.25

Soledad-Diplos 35,872 0.62

Minas Peñoles社(坑内掘)

Naica 755.5 9,689 0.06 118 2.97 5.84 0.16

Sabinas 1,196.0 14,242 97 0.64 2.19 0.79

Bismark 696.2 4,214 22 0.38 6.76 0.28

Tizapa 602.1 12,738 1.72 196 1.16 5.17 0.31

Francsco I. Madero 2,226.0 40,401 21 0.75 2.34 0.07

Milpillas 1,686.2 36,934 1.43

(10)Peñoles社の販売内訳販売先は、輸出比率が高くなるなか、日本向けのシ

ェアは低下している。品目別売上高では、銀、亜鉛の

シェアが低下する一方、銅、精鉱のシェアが増加している。

表2-9. 2003年及び2010年の Peñoles社の販売内訳

販売先 輸出国内訳 品目別売上高比率

2003年 2010年 2003年 2010年 2003年 2010年

国内 52.8% 22.3% 米国 78.8% 76.4% 銀 35.5% 40.1%

輸出 47.2% 77.7% 日本 7.8% 0.7% 金 34.1% 26.6%

欧州 4.2% 17.0% 亜鉛 18.1% 11.9%

南米 4.1% 4.7% 鉛 7.5% 6.7%

その他 5.1% 1.2% 銅 - 6.4%

2010年国内売上高14,303,908ペソ2010年海外売上高49,947,384ペソ

欧州12か国(2003年は15か国)、その他16か国、南米8か国

精鉱 - 4.0%

その他 4.8% 4.2%

その他は、硫酸ソーダ、硫酸アンモニウム等

(2011.8.12)

(221)