Note Application COMPASS 多変量解析)とXphase(相分析...

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COMPASS(多変量解析)とXphase(相分析)による、 複雑な合金相の解析 バルク試料 COMPASS Xphase 定量マップ タービン材料中の析出相の解析例 二次電子線像 Application Note EDS System Key Words サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 スペクトロスコピー営業本部 編集発行 : マーケティング部 はじめに 加速電圧:5kV 倍率:8,000収集時間:40今回分析するタービン材料には、高温使用時での耐久性を 向上させるために、NiCoCrAlの主要元素のほかにNbHfWTi等が添加されている。 数種類の析出相が含まれる視野に、各元素がどのように偏 析しているのかをサーモフィッシャー社製EDS 分析装置 NORAN System SIXを使って分析した。 元素の微細な分布を調べるため、加速電圧は5kVにして測 定した。EDSは、WDSと比較してピーク分解能が劣るので、 下に表示した元素の組み合わせについては、お互いのピー ク同士が重なりあってしまう。このEDS特有の弱点に対して、 サーモフィッシャーサイエンティフィックだけが提供できる独 自の面分析機能COMPASSの有効性を検証した。 分析エリア全体から抽出したスペクトル NS06002 Noran System Six Cr-L線 黄色 Ti-L線 赤線 Ni-L線 黄色 Co-L線 赤線 W-M線 黄色 Hf-M線 赤線 特性X線ピークエネルギー

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  • COMPASS(多変量解析)とXphase(相分析)による、複雑な合金相の解析

    バルク試料

    COMPASSXphase定量マップ

    タービン材料中の析出相の解析例

    二次電子線像

    NS06002

    ApplicationNoteEDS System

    Key Words

    サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 スペクトロスコピー営業本部編集発行 : マーケティング部

    はじめに

    加速電圧:5kV倍率:8,000倍収集時間:40分

    今回分析するタービン材料には、高温使用時での耐久性を

    向上させるために、Ni、Co、Cr、Alの主要元素のほかにNb、Hf、W、Ti等が添加されている。数種類の析出相が含まれる視野に、各元素がどのように偏

    析しているのかをサーモフィッシャー社製EDS分析装置NORAN System SIXを使って分析した。元素の微細な分布を調べるため、加速電圧は5kVにして測定した。EDSは、WDSと比較してピーク分解能が劣るので、下に表示した元素の組み合わせについては、お互いのピー

    ク同士が重なりあってしまう。このEDS特有の弱点に対して、サーモフィッシャーサイエンティフィックだけが提供できる独

    自の面分析機能COMPASSの有効性を検証した。

    分析エリア全体から抽出したスペクトル

    NS06002

    Noran System Six

    Cr-L線 黄色

    Ti-L線 赤線

    Ni-L線 黄色

    Co-L線 赤線

    W-M線 黄色

    Hf-M線 赤線

    特性X線ピークエネルギー

  • ピークカウントマップと定量マップを比較すると、Ti_LとW_Mのマップ像に大きな違いがある。分析エリア全体から抽出したスペクトルでは、Ti_LにはCr_Lが、W_MにはHf_Mがオーバーラップしている。特性X線ピークのエネルギー範囲のカウントをそのまま抽出するピークカウント

    マップは、信頼性に欠ける。定量マップは、バックグランド

    を除去後、ピーク分離を行い特性X線ピークのネットカウントを抽出して定量マトリクス補正を行う。この手法の違い

    により、定量マップはピークカウントマップより、はるかに

    信頼性が高い。

    8kVで収集したスペクトル

    従来のEDSピークカウントマップ NSSの定量マップ

    定量マップの結果をみると、分析エリアに複数の相が存

    在することが判る。しかし、この定量マップの結果から、分

    析エリアに存在する各相を特定する事は、元素の数が多

    く且つそれぞれが複雑に組み合わさっている為、容易で

    はない。

  • 第1主成分波形とその強度マップ

    第5主成分波形とその強度マップ

    第2主成分波形とその強度マップ

    第3主成分波形とその強度マップ

    第4主成分波形とその強度マップ

    Phase1(第1主成分)の生データとその定量結果

    Phase5(第5主成分)の生データとその定量結果

    Phase2(第2主成分)の生データとその定量結果

    Phase3(第3主成分)の生データとその定量結果

    Phase4(第4主成分)の生データとその定量結果

    (*スタンダードレス法による相対定量分析 )

    COMPASS(多変量解析)

    NSSには、定量マップとは別の面分析手法で、多変量解析を使って試料中の各主成分のEDS波形とその強度マップを抽出するCOMPASSソフトウェアがある。次に、同じスペクトルイメージングデータをCOMPASSで分析した結果を報告する。

    COMPASSの結果

    COMPASSが抽出した5つの主成分波形とその強度マップを下図に示す。 注)第1主成分と第5主成分の波形は似ているので、比較の為に並べて表示した。

    特定することが難しい5つの相を、COMPASSは完全自動で抽出した。COMPASSが抽出した各相の組成を調べる為に、その主成分波形をそのまま定量分析することも可能だが、数学的に決

    定されたスペクトルなので、生データと比較すると若干の違いが

    生じる場合もある。

    Xphaseソフトウェアは、COMPASSや定量マップの強度マップから2値化像を決定し、それをテンプレートとしスペクトルイメージン

    グデータからそのエリアに含まれる生データを抽出する。上述の

    COMPASSの分析結果をXphaseで処理して、各相の組成分析を行った。

    Xphaseを使って決定した相から抽出した生スペクトルデータとその定量結果を下図に示す。Phase 1(第1主成分)とPhase 5(第5主成分)の組成を比較すると、Phase 1はAlの濃度が若干高く、Phase 5はCrとCoの濃度が高い。この事からCOMPASSは、組成が僅かに違う相を自動で識別している事が判る。

    Xphaseの結果

    COMPASSデータからXphaseを使って決定した各相

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    まとめ

    この試料は、C、O、Al、Ti、Cr、Co、Ni、Nb、Hf、Wと多くの元素で構成されていた。またそれぞれの元素が複雑に組み

    合わさった複数の相が存在した。このような試料でも、高空間

    分解能分析(8,000倍)を行う場合には、低加速電圧(5kV)での測定となる。当然、ピークが重なり合う元素の組合せがいく

    つもできてしまうので、従来のピークカウントマップの手法に

    よってそれぞれの相を特定することは不可能である。

    今回の解析では、COMPASSを使って、5つの相を簡単に抽出できた。またXphaseによって、各相の生スペクトルデータの定量分析も行えた。

    EDSによる高空間分解能の相分析には、COMPASSとXphaseの組み合わせが非常に有効だといえる。

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