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講義「情報理論」 第2回 事前知識の準備(確率,対数計算) 情報理工学部門 情報知識ネットワーク研究室 喜田拓也 2019/6/21 講義資料

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講義「情報理論」

第2回 事前知識の準備(確率,対数計算)

情報理工学部門 情報知識ネットワーク研究室喜田拓也

2019/6/21講義資料

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情報理論での情報伝達のモデル(おさらい)

情報を「記号の列」だと割り切って取り扱う

その意味内容には立ち入らない送信される情報は記号{晴,曇,雨,雪}の列

あなた(受け手)の世界は,記号(列)の集合とその統計的知識

2

あなた(受け手)の世界

日々の天気の結果の列

情報の発信元

(実際の天気)

記号列としての天気の結果の集合

統計的知識

確率分布𝑃𝑃(𝑋𝑋)

出現頻度など

{晴,曇,雨,雪}

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情報理論が取り組む4つの問題(おさらい)

【問題1】 できるだけよい情報源符号化法(復号法)を見出すこと

【問題2】 情報源符号化の限界を知ること

【問題3】 できるだけよい通信路符号化法(復号法)を見出すこと

【問題4】 通信路符号化の限界を知ること

3

デジタル情報源

情報源符号化

あて先

2元通信路

通信路符号化

情報源復号

通信路復号

符号化

復号

誤りやひずみ

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今日の内容

付録A 対数とその性質

確率について基本的なお話

4

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対数の定義

定義A.1:𝑎𝑎 ≠ 1 を正の実数とする.このとき,任意の実数 𝑥𝑥 > 0に対し

𝑥𝑥 = 𝑎𝑎𝑝𝑝

を満たす実数 𝑝𝑝が唯一に決まる.これを 𝑝𝑝 = log𝑎𝑎 𝑥𝑥 と書き,𝑎𝑎 を底とする 𝑥𝑥 の対数(logarithm)と呼ぶ.

定義A.2:

𝑒𝑒 = lim𝑡𝑡→0

1 + 𝑡𝑡1𝑡𝑡 = 2.71828182845904⋯

で定義される定数𝑒𝑒 をネイピア数(またはオイラー数)という.

• 底が10のときを常用対数(Log 𝑥𝑥)• 底が𝑒𝑒 のときを自然対数(ln 𝑥𝑥)• 底が2のときを二進対数(lg 𝑥𝑥,log 𝑥𝑥)

5

情報理論では二進対数が良く用いられる

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対数の基本的な定理

定理A.1: 𝑎𝑎 ≠ 1 を正の実数とする.任意の正の実数𝑥𝑥,𝑦𝑦 と任意の

実数𝑏𝑏 に対し,以下が成り立つ.

(1) 𝑎𝑎log𝑎𝑎 𝑥𝑥 = 𝑥𝑥(2) log𝑎𝑎 𝑎𝑎 = 1(3) log𝑎𝑎 1 = 0(4) log𝑎𝑎 𝑥𝑥𝑦𝑦 = log𝑎𝑎 𝑥𝑥 + log𝑎𝑎 𝑦𝑦 (4’) log𝑎𝑎

𝑥𝑥𝑦𝑦

= log𝑎𝑎 𝑥𝑥 − log𝑎𝑎 𝑦𝑦

(5) log𝑎𝑎 𝑥𝑥𝑏𝑏 = 𝑏𝑏 log𝑎𝑎 𝑥𝑥 (5’) log𝑎𝑎1𝑥𝑥

= log𝑎𝑎 𝑥𝑥−1 = − log𝑎𝑎 𝑥𝑥(6) 𝑎𝑎 > 1 かつ𝑥𝑥 < 𝑦𝑦のとき,log𝑎𝑎 𝑥𝑥 < log𝑎𝑎 𝑦𝑦(7) 𝑎𝑎 > 1 のとき, lim

𝑥𝑥→+∞log𝑎𝑎 𝑥𝑥 = +∞

定理A.2: 正の実数𝑎𝑎, 𝑏𝑏 ≠ 1 および任意の正の実数𝑥𝑥 に対し,

log𝑎𝑎 𝑥𝑥 =log𝑏𝑏 𝑥𝑥log𝑏𝑏 𝑎𝑎

が成り立つ. 6

底の変換!

掛け算が足し算に! 割り算が引き算に!

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ノート A.1

𝑥𝑥の𝑎𝑎を底とした対数log𝑎𝑎 𝑥𝑥 は,𝑥𝑥を𝑎𝑎進数表示したときの桁数

(記述長)に対応する.

例えば,ある自然数𝑛𝑛の10進数での桁数を𝑚𝑚とする.このとき,

10𝑚𝑚−1 ≤ 𝑛𝑛 < 10𝑚𝑚 .各辺の対数をとると

𝑚𝑚 − 1 ≤ log10 𝑛𝑛 < 𝑚𝑚 ,∴ log10 𝑛𝑛 < 𝑚𝑚 ≤ log10 𝑛𝑛 + 1 .

したがって,

𝑚𝑚 = log10 𝑛𝑛 + 1 .

例題: 10進数で 225 は,二進数で何桁か?

log2 225 = log2 52 � 32 = 2 log2 5 + 2 log2 3≒ 2 2.322 + 1.585 = 7.814

すなわち,7 ≤ log2 225 < 8 なので,8桁である. 7

11100001

床関数 𝑥𝑥 : 𝑥𝑥 以下の最大の整数

※ Kenneth E. Iverson が1962年に導入

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𝑦𝑦 = log𝑎𝑎 𝑥𝑥の性質

𝑎𝑎 > 1 のとき,log𝑎𝑎 𝑥𝑥は単調増加

(𝑥𝑥 に対してなだらかに増加する)

𝑥𝑥 → +∞ ⇒ log𝑎𝑎 𝑥𝑥 → +∞𝑥𝑥 < 𝑦𝑦 ⟺ log𝑎𝑎 𝑥𝑥 < log𝑎𝑎 𝑦𝑦0 < 𝑥𝑥 < 1 の間は負の値をとる

𝑥𝑥 → 0 ⇒ log𝑎𝑎 𝑥𝑥 → −∞

定理A.3: 𝑑𝑑𝑑𝑑𝑥𝑥

log𝑒𝑒 𝑥𝑥 = 1𝑥𝑥

.

一般的には,𝑑𝑑𝑑𝑑𝑥𝑥

log𝑎𝑎 𝑥𝑥 = log𝑎𝑎 𝑒𝑒𝑥𝑥

定理A.4: 正の実数𝑎𝑎 ≠ 1 に対して,次が成り立つ.

(1) 𝑦𝑦 = log𝑎𝑎 𝑥𝑥 の曲線は𝑦𝑦 = 𝑎𝑎𝑥𝑥 の曲線と直線𝑦𝑦 = 𝑥𝑥 に関して対称

(2) ln 𝑥𝑥 ≤ 𝑥𝑥 − 18

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

5

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

図 𝑦𝑦 = log2 𝑥𝑥 のグラフ

Try 問3,問4

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ちょっと休憩

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確率とは

「ある事象についての起こりやすさの指標」

もとは,賭け事の戦略や,金銭の公平な分配を

考えるために用いられた概念

10

「1個のサイコロを振って,奇数だったら私の勝ち,偶数だったらあなたの勝ち.参加費は100円.勝ったら180円をあげるよ.勝負する?」

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事象,起こりやすさの指標って?

偶然現象において,起こりうる事柄を事象という

それぞれの事象が起こりうる可能性を,すべての

起こりうる事象に対する割合として表すとき,その

値を確率という

11

偶然現象って何?サイコロ振りだって物理現象でしょ?ロボットが振ったらいつも同じじゃん

𝑃𝑃 𝐴𝐴 =𝑟𝑟𝑛𝑛

事象Aが起こる場合の数

すべての場合の数古典的な

確率の定義

現代の確率の定義は末尾の資料を参照

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まあ難しい話はおいといて・・・

「1個のサイコロを振って,奇数だったら私の勝ち,偶数だったら

あなたの勝ち.参加費は100円.勝ったら180円をあげるよ.

勝負する?」

12

標本集合 Ω = {1,2,3,4,5,6},あなたが勝つ事象 𝐴𝐴 = {2,4,6}

事象𝐴𝐴が起こる確率 𝑃𝑃 𝐴𝐴 = ⁄𝐴𝐴 Ω = 36

= 12

得られる賞金額を確率変数𝑋𝑋とすると,その確率分布𝑃𝑃𝑋𝑋は

𝑃𝑃𝑋𝑋 𝑋𝑋 = 0 = 12

, 𝑃𝑃𝑋𝑋 𝑋𝑋 = 180 = 12

.

得られる賞金額の期待値𝐸𝐸(𝑋𝑋)は

𝐸𝐸 𝑋𝑋 = �𝑥𝑥∈{0,180}

𝑥𝑥 ⋅ 𝑃𝑃𝑋𝑋(𝑋𝑋 = 𝑥𝑥) = 0 ×12

+ 180 ×12

= 90.

Try 問1

𝑋𝑋は確率によって取

る値が決まる変数

確率変数の「見込み」の値

𝐸𝐸 𝑋𝑋 = ∑𝑖𝑖 𝑥𝑥𝑖𝑖𝑃𝑃𝑋𝑋 𝑋𝑋 = 𝑥𝑥𝑖𝑖

確率を表す関数

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確率の統計的な定義

標本集合のどの要素(根源事象)も同程度に確からしく

起こる場合は古典的定義で問題ない

この仮定が適用できない場合は困る

13

根源事象の

生起にかたより

がある場合

試行を𝑛𝑛回繰り返し行ったときに事象𝐴𝐴が起こった

回数を𝑛𝑛(𝐴𝐴)とする.このとき,

𝑃𝑃 𝐴𝐴 = lim𝑛𝑛→∞

𝑛𝑛 𝐴𝐴𝑛𝑛

を事象𝐴𝐴の確率とする.

(現実に無限回の試行は不可能なので極限を取らないことも)

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とある病院での,患者と女医の会話

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・・・この手術の成功率は30%と言われています

えっ!そんなに少ないの・・・

私は失敗しないのでっ!

大門か・・・

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条件付き確率と独立性

𝑃𝑃 𝐴𝐴 > 0のとき,

𝑃𝑃 𝐵𝐵 𝐴𝐴 =𝑃𝑃 𝐴𝐴 ∩ 𝐵𝐵𝑃𝑃 𝐴𝐴

を,事象𝐴𝐴が起こったもとでの事象𝐵𝐵の条件付き確率と定義する.

このとき,明らかに次式が成り立つ.

𝑃𝑃 𝐴𝐴 ∩ 𝐵𝐵 = 𝑃𝑃 𝐴𝐴 𝑃𝑃 𝐵𝐵 𝐴𝐴 .

事象𝐵𝐵の起こる確率が事象𝐴𝐴の生起に無関係な場合,すなわち

𝑃𝑃 𝐵𝐵 𝐴𝐴 = 𝑃𝑃 𝐵𝐵

が成り立つとき,事象𝐴𝐴と事象𝐵𝐵は独立であるという.

このとき,明らかに次式が成り立つ.

𝑃𝑃 𝐴𝐴 ∩ 𝐵𝐵 = 𝑃𝑃 𝐴𝐴 𝑃𝑃 𝐵𝐵 .15

= lim𝑛𝑛→∞

𝑛𝑛 𝐴𝐴 ∩ 𝐵𝐵𝑛𝑛 𝐴𝐴

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条件付き確率の簡単な例

1個のサイコロを振る試行を考える.

サイコロの出目が偶数である事象を𝐴𝐴,サイコロの出目が4以上である事象を𝐵𝐵とする

事象𝐴𝐴の確率𝑃𝑃(𝐴𝐴)は 𝑃𝑃 𝐴𝐴 = 36

= 12

事象𝐵𝐵の確率𝑃𝑃(𝐵𝐵)は 𝑃𝑃 𝐵𝐵 = 36

= 12

事象𝐴𝐴 ∩ 𝐵𝐵の確率は 𝑃𝑃 𝐴𝐴 ∩ 𝐵𝐵 = 26

= 13

このとき,事象𝐴𝐴で条件付けた事象𝐵𝐵の確率𝑃𝑃 𝐵𝐵 𝐴𝐴 は

𝑃𝑃 𝐵𝐵 𝐴𝐴 =𝑃𝑃 𝐴𝐴 ∩ 𝐵𝐵𝑃𝑃 𝐴𝐴

=1312

=23

.

16

偶数である確率

4,5,6である確率

4か6である確率

出目が偶数であること

は分かっている場合で

4以上である確率

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ベイズの定理

全事象 Ωを互いに排反な 𝑛𝑛個の事象 𝐵𝐵1,𝐵𝐵2, … ,𝐵𝐵𝑛𝑛 に分割する.

すなわち,

𝐵𝐵𝑖𝑖 ∩ 𝐵𝐵𝑗𝑗 = ∅ 𝑖𝑖 ≠ 𝑗𝑗 ,𝐵𝐵1 ∪ 𝐵𝐵2 ∪ ⋯∪ 𝐵𝐵𝑛𝑛 = Ω .

このとき,任意の事象𝐴𝐴に対して次が成り立つ.

𝑃𝑃 𝐵𝐵𝑘𝑘 𝐴𝐴 =𝑃𝑃 𝐵𝐵𝑘𝑘 𝑃𝑃 𝐴𝐴 𝐵𝐵𝑘𝑘

∑𝑖𝑖=1𝑛𝑛 𝑃𝑃 𝐵𝐵𝑖𝑖 𝑃𝑃(𝐴𝐴|𝐵𝐵𝑖𝑖)

17

次の関係はΩ = 𝐵𝐵 ∪ �𝐵𝐵の場合の簡略版

𝑃𝑃 𝐵𝐵 𝐴𝐴 =𝑃𝑃 𝐵𝐵 𝑃𝑃 𝐴𝐴 𝐵𝐵

𝑃𝑃 𝐵𝐵 𝑃𝑃 𝐴𝐴 𝐵𝐵 + 𝑃𝑃 �𝐵𝐵 𝑃𝑃(𝐴𝐴| �𝐵𝐵)=𝑃𝑃 𝐴𝐴,𝐵𝐵𝑃𝑃 𝐴𝐴

.

𝑃𝑃 𝐴𝐴,𝐵𝐵 は

𝑃𝑃 𝐴𝐴 ∩ 𝐵𝐵と同じ意味

𝐵𝐵1 𝐵𝐵2 𝐵𝐵3 𝐵𝐵4 𝐵𝐵5

𝐴𝐴

Ω𝑃𝑃(𝐴𝐴,𝐵𝐵4)

ベイズの定理

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ベイズの定理を使う例題

ガンを診断するための検査法があり,あなたがそれを受けると仮定しよう.

𝐶𝐶 を,被検査者がガンであるという事象,

𝐴𝐴を,検査の結果が被検査者はガンであると示す事象とする.

(つまり検査結果が陽性となる事象)

検査法の認識力が95% (𝑃𝑃 𝐴𝐴 𝐶𝐶 = 0.95 かつ 𝑃𝑃(�̅�𝐴|�̅�𝐶) = 0.95)であるとし,

検査を受ける人の中で実際にガンである割合が 𝑃𝑃(𝐶𝐶) = 0.01であるとする.

このとき・・・

18

あなたガンですよ.検査の結果から常識的に考えて・・・

ガーーーン

検査の結果が陽性だったとき,あなたが本当にガンである確率はいくらか?

(つまり,𝑃𝑃(𝐶𝐶|𝐴𝐴)を求めなさい)

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ベイズの定理を使う例題の答え

ベイズの定理より,

𝑃𝑃 𝐶𝐶 𝐴𝐴 =𝑃𝑃 𝐶𝐶 𝑃𝑃 𝐴𝐴 𝐶𝐶

∑𝑖𝑖=12 𝑃𝑃 𝐶𝐶𝑖𝑖 𝑃𝑃(𝐴𝐴|𝐶𝐶𝑖𝑖)=

𝑃𝑃 𝐶𝐶 𝑃𝑃 𝐴𝐴 𝐶𝐶𝑃𝑃 𝐶𝐶 𝑃𝑃 𝐴𝐴 𝐶𝐶 + 𝑃𝑃 �̅�𝐶 𝑃𝑃(𝐴𝐴|�̅�𝐶)

である.これに,

𝑃𝑃 𝐶𝐶 = 0.01, 𝑃𝑃 �̅�𝐶 = 1 − 𝑃𝑃 𝐶𝐶 = 0.99,𝑃𝑃 𝐴𝐴 𝐶𝐶 = 0.95, 𝑃𝑃 𝐴𝐴 �̅�𝐶 = 1 − 𝑃𝑃 �̅�𝐴 �̅�𝐶 = 0.05

を代入すると,

𝑃𝑃 𝐶𝐶 𝐴𝐴 =0.01 × 0.95

0.01 × 0.95 + 0.99 × 0.05=

19118

≒ 0.161.

19

たったの16%!よかったお

Try 問2

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今日のまとめ

確率の考え方について学んだ

確率の定義標本集合,事象,平均(期待値)

対数とその性質について復習した

次回テーマ

情報量とエントロピー

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現代の確率の考え方

「サイコロの目がどう出るかは最初のサイコロの持ち方と

その振り方によって決まる.そこには何の偶然性もない.

ただし,その因果関係はあまりにも複雑なので,結果を

予想するのはほぼ不可能である.・・・(中略).このよう

な予測しにくいこと,制御しにくいことを「偶然である」とみ

なすのが確率統計の出発点である.」

(金谷健一著,「確率統計を学ぶにあたって」岡山大学工学部講義資料)

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現代の確率論は,「確率」が何を意味するかは問わない.

「確率」が満たすべき数学的な性質を規定し,その性質

から導かれる定理を論じる.公理主義

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確率の公理による定義

ある空でない集合 Ω (結果の集合,標本集合)について,

その任意の部分集合を事象という.

事象全体の集合をℱ(= 2Ω)とする.

写像𝑃𝑃: ℱ → 0,1 が任意の𝐴𝐴 ∈ ℱについて次を満たす

とき,𝑃𝑃(𝐴𝐴)を事象𝐴𝐴の確率という.

22

𝑃𝑃𝑟𝑟(𝐴𝐴)と書くことも1. 0 ≤ 𝑃𝑃 𝐴𝐴

2. 𝑃𝑃 Ω = 1

3. 𝐴𝐴1,𝐴𝐴2, … ∈ ℱについて𝐴𝐴𝑖𝑖 ∩ 𝐴𝐴𝑗𝑗 = ∅ (𝑖𝑖 ≠ 𝑗𝑗)ならば,

𝑃𝑃 ∪𝑖𝑖=1∞ 𝐴𝐴𝑖𝑖 = ∑𝑖𝑖=1∞ 𝑃𝑃 𝐴𝐴𝑖𝑖

∅: (ヌル)空集合

by コルモゴルフ(Kolmogorov)

確率の三公理

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公理から導かれる確率の基本的性質

1. 𝑃𝑃 ∅ = 0

2. 𝑃𝑃 �̅�𝐴 = 1 − 𝑃𝑃(𝐴𝐴)

3. 事象𝐴𝐴,𝐵𝐵 ∈ ℱに対して

𝐴𝐴 ⊂ 𝐵𝐵ならば𝑃𝑃 𝐴𝐴 ≤ 𝑃𝑃(𝐵𝐵)

4. 任意の事象𝐴𝐴 ∈ ℱに対して𝑃𝑃 𝐴𝐴 ≤ 1

5. 事象𝐴𝐴,𝐵𝐵 ∈ ℱに対して

𝑃𝑃 𝐴𝐴 ∪ 𝐵𝐵 = 𝑃𝑃 𝐴𝐴 + 𝑃𝑃 𝐵𝐵 − 𝑃𝑃(𝐴𝐴 ∩ 𝐵𝐵)

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�̅�𝐴は事象𝐴𝐴が起こらない事象(余事象)

0 ≤ 𝑃𝑃 𝐴𝐴 ≤ 1

確率の加法定理

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確率変数と確率分布

確率変数𝑋𝑋とは,標本集合Ωから実数空間ℝ(ℝ𝑛𝑛)

への(確率と関連付いた)写像である

確率変数𝑋𝑋がある値になる確率を確率分布という

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0 1

標本集合Ω 実数の空間ℝ𝑛𝑛

𝑋𝑋−1(𝐴𝐴) 𝐴𝐴

確率 𝑃𝑃(𝑋𝑋−1(𝐴𝐴))

確率変数 𝑋𝑋

確率分布 𝑃𝑃𝑋𝑋 𝐴𝐴

𝑃𝑃𝑋𝑋 𝐴𝐴 = 𝑃𝑃(𝑋𝑋−1(𝐴𝐴))

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なんでこんなに面倒な議論をするの?

A. 抽象的な概念を抽出して議論することで,

様々なケースに適用できるから

離散的な集合だけでなく,連続的な集合の上でも

同じようにして確率を定義できる

確率的な性質さえ満たすなら,何でもいい

→ 主観的な確信の度合いとして確率を用いても

よかろうもん(ベイズ主義)

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直接に統計情報を取れない事象を推測するのに用いる