Campyrobacter lari C. upsaliensis · 2019-04-13 · Campyrobacter lari RM2100、C. upsaliensis...

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108 0116 Macrolides amd Lincomycin Susceptibility of Mycoplasma hyorhinis and Variable Mutation of Domain Ⅱand Ⅴ in 23S Ribosomal RNA (Mycoplasma hyorhinis のマ クロライド系及びリンコマイシン感受性ならびに 23S リボソーム RNA のドメイン II 及び V の多様な突然変異) Kobayashi H, Nakajima H, Shimizu Y, Eguchi M, Hata E, Yamamoto KJournal of Veterinary Medical Science, 67 8, 795-800 2005豚の肺病変(離乳豚、 n71及び肥育豚、 n80)から分離した合計151株のMycoplasma hyorhinisを、10種類の抗菌薬に対するin vitro感受性について試験した。このうち31(離乳豚からの28株と肥育豚からの3株)が16員環マクロライド系抗生物質とリンコ マイシンに対する耐性を示した。日本の養豚場の離乳豚における16員環マクロライド 耐性M. hyorhinis株の蔓延率は過去10年間で約4倍となっている。この31株の一部を23S リボソームRNA rRNA)の突然変異について試験した。試験した野外株のすべてが、 Escherichia coli (大腸菌) 23S rRNA2059の位置でAからGへの転位を示した。一方、 各抗生物質の阻止濃度以下で連続39代の継代を行った場合、感受性型のBTS7株か M. hyorhinisのタイロシン耐性及びリンコマイシン耐性突然変異体がそれぞれ選択 された。タイロシン耐性及びリンコマイシン耐性突然変異体の23S rRNA配列を、基 準株BTS7のものと比較した。タイロシンによって選択されたBTS7突然変異株は、野 外分離株と同一の転位A2059Gを示した。一方、リンコマイシンで選択された突然変 異株は、23S rRNAのドメインIIにおける5アデニンループへのアデニンの付加ならび にドメインVにおけるG2597U及びC2611Uという突然変異を示した。リンコマイシン によって選択された株は、タイロシンによって選択されたA2062Gの付加的点突然変 異を示した。 0117 Major structural differences and novel potential virulence mechanisms from the genomes of multiple Campylobacter species. (複数の Campyrobacter 菌種における 遺伝子構造の主要な差異と新規潜在的毒力の機序) Fouts, D. E., E. F. Mongodin, R. E. Mandrell, W. G. Miller, D. A. Rasko, J. Ravel, L. M. Brinkac, R. T. DeBoy, C. T. Parker, S. C. Daugherty, R. J. Dodson, A. S. Durkin, R. Madupu, S. A. Sullivan, J. U. Shetty, M. A. Ayodeji, A. Shvartsbeyn, M. C. Schatz, J. H. Badger, C. M. Fraser, and K. E. Nelson.PLoS Biol. 3, 72-85 2005Campyrobacter lari RM2100 C. upsaliensis RM3195 及び C. coli RM2228 を含む Campyrobacter 4菌株の遺伝子配列及び比較分析によって、バクテリオファージあるい

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0116 Macrolides amd Lincomycin Susceptibility of Mycoplasma hyorhinis and Variable

Mutation of Domain Ⅱand Ⅴ in 23S Ribosomal RNA (Mycoplasma hyorhinis のマ

クロライド系及びリンコマイシン感受性ならびに 23S リボソーム RNA のドメイン II 及び V

の多様な突然変異)

Kobayashi H, Nakajima H, Shimizu Y, Eguchi M, Hata E, Yamamoto K:Journal of Veterinary

Medical Science, 67 (8), 795-800 (2005)

豚の肺病変(離乳豚、n=71及び肥育豚、n=80)から分離した合計151株のMycoplasma

hyorhinisを、10種類の抗菌薬に対するin vitro感受性について試験した。このうち31株

(離乳豚からの28株と肥育豚からの3株)が16員環マクロライド系抗生物質とリンコ

マイシンに対する耐性を示した。日本の養豚場の離乳豚における16員環マクロライド

耐性M. hyorhinis株の蔓延率は過去10年間で約4倍となっている。この31株の一部を23S

リボソームRNA(rRNA)の突然変異について試験した。試験した野外株のすべてが、

Escherichia coli(大腸菌)23S rRNAの2059の位置でAからGへの転位を示した。一方、

各抗生物質の阻止濃度以下で連続3~9代の継代を行った場合、感受性型のBTS7株か

らM. hyorhinisのタイロシン耐性及びリンコマイシン耐性突然変異体がそれぞれ選択

された。タイロシン耐性及びリンコマイシン耐性突然変異体の23S rRNA配列を、基

準株BTS7のものと比較した。タイロシンによって選択されたBTS7突然変異株は、野

外分離株と同一の転位A2059Gを示した。一方、リンコマイシンで選択された突然変

異株は、23S rRNAのドメインIIにおける5アデニンループへのアデニンの付加ならび

にドメインVにおけるG2597U及びC2611Uという突然変異を示した。リンコマイシン

によって選択された株は、タイロシンによって選択されたA2062Gの付加的点突然変

異を示した。

0117 Major structural differences and novel potential virulence mechanisms from the

genomes of multiple Campylobacter species. (複数の Campyrobacter 菌種における

遺伝子構造の主要な差異と新規潜在的毒力の機序)

Fouts, D. E., E. F. Mongodin, R. E. Mandrell, W. G. Miller, D. A. Rasko, J. Ravel, L. M. Brinkac,

R. T. DeBoy, C. T. Parker, S. C. Daugherty, R. J. Dodson, A. S. Durkin, R. Madupu, S. A. Sullivan,

J. U. Shetty, M. A. Ayodeji, A. Shvartsbeyn, M. C. Schatz, J. H. Badger, C. M. Fraser, and K. E.

Nelson.:PLoS Biol. 3, 72-85 (2005)

Campyrobacter lari RM2100、C. upsaliensis RM3195及びC. coli RM2228を含む

Campyrobacter 4菌株の遺伝子配列及び比較分析によって、バクテリオファージあるい

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はプラスミッド様ゲノムアイランドの挿入が関与する主要な構造上の相違ならびに

リポ多糖類複合体の主要な変異が明らかにされた。C. upsaliensisのポリグアニン配列

は他の菌種のそれに比べて、長くかつ多数であった。racR/S, cadF, edt, ciaB及びフラジ

ェリン遺伝子を含む宿主への定着に関与する多くの遺伝子は種に亘って保護されて

いたが。種特異性と思われる変異がリポ多糖類の遺伝子座、夾膜(細胞外)多糖類遺

伝子座及び新規のCampyrobacter推定licABCD毒力遺伝子座で明らかであった。代謝プ

ロファイル及び広範囲の抗生物質に対する耐性プロファイルもまた菌株によって異

なっていた。新しく同定された仮説及び保存仮説蛋白、ならびに特徴づけられていな

い2成文系制御システム及び膜蛋白が菌株間の毒力の差ならびに特定の宿主への菌

株の特異性に関する明確な追加情報を有することは明らかである。

0118 Method to determine effect of antibiotica at residue level on R-factor transfer

(残留レベルの抗生物質が R 因子伝達に及ぼす影響の判定法)

Brady, M.S. et al.:J. Assoc. Off. Anal. Chem. 71 (2), 299-301 (1988)

腸内菌間の耐性の接合伝達に影響を与える抗生物質/抗菌剤残留物(0.01~1.00 ppm)

の能力を評価できる分析システムが開発された。ドナー菌株大腸菌RP-4(Amr Tcr Nmr

Kmr Lac+)とレシピエント菌株大腸菌Sc-8632(Smr Lac-)を、ドナー:レシピエント

1:9の比率で混合し、残留レベルの抗生物質存在下のブレインハートインフュージョ

ン培地中で緩やかに振盪(50 rpm)しながら、18時間培養した。感受性大腸菌Sc-8632

及び接合完了体の総レシピエント集団を選択するため、混合培養液を連続的に希釈し、

ストレプトマイシン25 µg/mLを含むマッコンキー寒天培地に平板塗沫した。37℃で18

時間培養後、アンピシリン耐性トランスコンジュガント集団を選択するため、同様に

アンピシリン25 µg/mLを含むマッコンキー寒天培地に平板塗沫した。再現性は良好で

あった;平均伝達率は51.8%で、変動係数9.3%であった。残留レベルのタイロシン(0.10

及び1.00 ppm)により、95%信頼限界を超えてアンピシリンマーカーの伝達が上昇し

た。オキシテトラサイクリン、バシトラシン、ストレプトマイシン、ペニシリン及び

バージニアマイシンは、伝達率を上昇させなかった。0.01 ppmのオキシテトラサイク

リンは、伝達率を低下させた。全体として、残留レベル(0.01~1.00 ppm)の抗生物

質は、抗生物質耐性の接合伝達に影響を与えなかった。

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0119 Molecular basis of macrolide resistance in Campylobacter: role of efflux pumps

and target mutations. (Campylobacter におけるマクロライド耐性の分子基盤:排出ポ

ンプ及び標的突然変異の役割)

Mamelli L., V. Prouzet-Maule´on, J. M. Pagès, F. Me´graud and J. M. Bolla.:J. Antimicrob.

Chemother., 56, 491-497 (2005)

背景:エリスロマイシンはヒトカンピロバクター症の治療の第一選択薬である。

Campylobacter分離株はエリスロマイシン耐性に関して2つの異なる表現型を示す:

高レベル耐性株(HLR)及び低レベル耐性株(LLR)。

目的:エリスロマイシン、6-O-メチル誘導体(クラリスロマイシン)及びケトライド

(テリスロマイシン)に対するCampylobacterの耐性のメカニズムを解明する。

結果:これら3分子に対する交差耐性が観察されたが、キノロンに対する交叉耐性は

認められなかった。LLRの解析によって23S rDNAの突然変異は認められず、排出ポ

ンプ阻害剤フェニルアラニンアルギニン-ナフチルアミド(PAN)によって阻害さ

れる薬物輸送系の存在が明らかになった。一方、HLRにはPAN感受性薬物輸送は確

認されなかったが、精製リボソームへのテリスロマイシンの結合の減少に関与する

rDNAの突然変異が発見された。また、Campylobacterで既に報告されているCmeB

排出ポンプがテリスロマイシンのPAN感受性輸送に関与していないことが明らか

になった。

結論:リボソームの突然変異は高レベルのマクロライド/ケトライド耐性をもたらす。

低レベル耐性はPANに感受性の排出メカニズムによって媒介される。この排出ポン

プはマクロライド/ケトライドに感受性であり、既に報告されているCampylobacter

排出ポンプとは異なっていた。

0120 Molecular Characterization and Determination of Antimicrobial Resistance of

Mycoplasma gallisepticum Isolated from Chickens (鶏から分離された Mycoplasma

gallisepticum の分子生物学的特性決定と抗菌薬耐性の測定)

Pakpinyo S, Sasipreeyajan J.:Veterinary Microbiology 125(1-2)59-65 (2007)

本試験では、養鶏場から分離されたMycoplasma gallisepticum(MG)に関する分子

生物学的特性決定、 小発育阻止濃度(MIC)の測定、及び抗菌性試験の三つが連続

した手法について検討した。これらの研究法は、タイの集約的農業地域の五つの異な

る地区から採取した134のMG検体について2004~2005年に実施された。MG分離株20

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株、ならびに基準株S6、F、ts-11及び6/85の4株について、抗菌性試験の前にランダム

増幅多型DNA(RAPD)パターンによって分類した。これらの分離株は、5種類の遺

伝子型(A–E)を示した。そこで、各遺伝子型を代表するMG分離株を11種の承認済

み抗生物質について試験し、MIC濃度を測定した。ドキシサイクリン(0.20 µg/mL)、

チアムリン(0.10 µg/mL)、及びタイロシン(0.33 µg/mL)の3種の抗生物質のMICは、

全有効薬剤中で 低であった。各抗菌薬のブレイクポイントを比較したところ、MG

分離株は、リンコマイシン、オキシテトラサイクリン、チアムリン、及びタイロシン

に対して も感受性が高いことが示された。MG分離株の一部はジョサマイシンに対

して中等度耐性であり、エンロフロキサシン及びエリスロマイシンには耐性であった。

今回の結果は、この地域及び近隣地区から分離採取されたMGが、抗菌薬耐性の特性

を示すのと同様のRAPDパタ−ンを持つことも明らかにした。このRAPDパターンは、

抗生物質の頻繁な使用やMGの耐性株を示唆している。本稿は、RAPDを用いた遺伝

的特性決定がMGに対するMIC濃度を反映することを示した 初の報告である。この

データは、特に抗生物質を大量に使用する地域の家禽産業における予防及び治療の効

果の予測に有用である。

0121 Most Campylobacter subtypes from sporadic infections can be found in retail

poultry products and food animals. (散発感染由来の Campylobacter サ豚イプの多く

は市販家禽肉及び食用動物に認められる)

Nielsen, E. M., V. Fussing, J. Engberg, N. L. Nielsen, and J. Neimann.:Epidemiol Infect., 40876,

1-10 (2005)

デンマークの2つの郡でヒト感染から分離されたCampylobacter株のサ豚イプを、鶏、

豚及びウシの食品試料及び糞便試料から分離した株と比較した。1年間にこれらのソ

ースから分離された1285のCampylobacter株を次の2つの方法で分類した:「Penner」熱

安定性血清型分類及び自動リボタイピング(RiboPrinting)。C. jejuniが優占種であった

が、C. coliは食品及び鶏からの分離株(16%)のほうがヒト分離株(4%)より多かっ

た。全体で356種類の血清型-リボタイプの組み合わせ(サ豚イプ)が認められた。ヒ

ト分離株と食品(66%)、鶏(59%)及びウシ(83%)からの分離株の間には大きな

サ豚イプ・オーバーラップが認められた。これは、選択したサ豚イプに対応する212

分離株のPFGEタイピングによって確認された。食品に認められた高頻度(n>3)の

サ豚イプはすべてヒトにも認められた。国内感染からの分離株のうち61%に食品にも

認められるサ豚イプがあったが、旅行による感染の場合はその割合が31%であった。

これらの結果から様々なCampylobacter集団の差が明らかになった。たとえば、国内感

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染及びデンマーク産食品に反映されるデンマークの集団は海外からの分離株より均

一であった。本研究結果は家禽食品試料、ブロイラー及びウシに認められたC. jejuni

サ豚イプが国内感染で代表され、これらの保有者に由来するC. jejuniがデンマークで

のヒト感染のソースである可能性が高いことを示している。

0122 Multicentre evaluation of the in vitro activity of linezolid in the Western Pacific (西

太平洋におけるリネゾリドの in vitro 活性に関する多施設評価)

Bell, J. M., Turnidge, J. D., Ballow, C. H., and Jones, R. N.:J. Antimicrob. Chemother. 51, 339-345

(2003)

西太平洋地域のブドウ球菌及び肺炎球菌分離株には抗菌薬に対する多剤耐性が多

く見られる。この地域で採取した各種グラム陽性菌に対する活性について、新しいオ

キサゾリジノンであるリネゾリドを評価した。西太平洋6か国の研究所18施設が微量

液体希釈法またはディスク拡散法を用いて、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)及びEnterococcus(腸球菌)属の合計2143の臨

床分離株についてリネゾリド感受性を試験した。Streptococcus pneumoniae(肺炎連鎖

球菌)(n=351)とその他の連鎖球菌(n=83)にはEtest(AB Biodisk、ソルナ、スウ

ェーデン)ストリップを用いた。その結果を他の一般的かつ重要な抗菌薬と比較した。

リネゾリド耐性菌株は、多剤耐性のS. aureus菌株のかなりの割合を含めて、ブドウ球

菌にも連鎖球菌にも検出されなかった。バンコマイシン耐性Enterococcus faeciumの14

株を含むほとんどすべての腸球菌はリネゾリド感受性であった。少数の腸球菌(0.8%)

はリネゾリドに中等度の耐性を示し、Enterococcus faecalisの1株は直径20 mmの帯を示

した(耐性)。微量液体希釈法またはEtestで試験した菌株のリネゾリドMIC(MIC90)

の範囲は、S. aureusで1~4 mg/L(2 mg/L)、CoNSで0.5~4 mg/L(2 mg/L)、Enterococcus

属で0.5~4 mg/L(2 mg/L)、S. pneumoniaeで0.12~2 mg/L(1 mg/L)、Streptococcus属

で0.25~2 mg/L(1 mg/L)であった。リネゾリド感受性について、国間でも、モニタ

ーした各菌種の多剤耐性株と感受性株の間でも差異は認められなかった。

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0123 Multi-laboratory assessment of the linezolid spectrum of activity using the

Kirby-Bauer disk diffusion method: Report of the Zyvox(R) Antimicrobial Potency

Study (ZAPS) in the United States (Kirby-Bauer ディスク拡散法を用いたリネゾリド

抗菌スペクトルの多施設評価:米国における Zyvox・抗菌効力試験(ZAPS)の報告)

Jones, R. N., Ballow, C. H., and Biedenbach, D. J.:Diagn. Microb. Infectious Dis. 40, 59-66

(2001)

一般的な病原性グラム陽性菌に対するリネゾリドのin vitro活性をディスク拡散法

により、ペニシリンまたはアンピシリンまたはオキサシリン(属に応じて)、セファ

ゾリン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、

レボフロキサシン、ニトロフラントイン及びバンコマイシンの活性と比較した。106

か所のセンター(米国31州)が、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、コアグラ

ーゼ陰性ブドウ球菌、Enterococcus faecium、E. faecalis、Streptococcus pneumoniae(肺

炎連鎖球菌)、及び他の連鎖球菌の細菌の臨床分離株を試験した。試験は標準化され

たディスク拡散法を用いて実施され、同時に品質管理試験も行われた。リネゾリドで

阻止帯が直径20 mm以下となった菌株については、確認のための微生物学的モニター

に回すよう要請した。合計3,100の分離株(コンプライアンス97%)が試験された。

リネゾリドに対するブドウ球菌と連鎖球菌の感受性率(帯の直径が21 mm以上)はそ

れぞれ100%及び99.4%と報告された。リネゾリドに対する腸球菌の感受性率(帯の

直径が23 mm以上)は96.0%と報告され、3分離株(0.4%)のみが耐性(帯の直径が

20 mm以下;未確証)と報告された。阻止帯の直径が20 mmと報告された9分離株(0.3%)

のうち6株は詳細な試験に提出されず、2株はグラム陰性桿菌に汚染されていて、1株

のみがリネゾリド感受性と判定された。菌株のバンコマイシンまたはオキサシリンま

たはペニシリン耐性サブセットのリネゾリド感受性に差異は認められなかった。この

米国の医療センターにおける感受性パターンは、リネゾリドが米国食品医薬品局から

承認された臨床使用の適応症にとって重要な病原性グラム陽性菌に対する優秀かつ

ほぼ完璧なin vitro活性を示している。

0124 Multiple-drug resistant enterococci: the nature of the problem and the agenda for

the future. (多剤耐性腸球菌:問題及び今後の検討課題の性質)

Huycke, M. M., D. F. Sahm, and M. S. Gilmore.:Emerg Infect Dis. 4, 239-249 (1998)

院内の菌血症、外科的創傷感染症及び尿路感染症の主要原因である腸球菌は、多く

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の、また時にはすべての標準的治療に対して耐性になりつつある。新しい迅速サーベ

イランス法により、種レベルでの腸球菌分離株の調査の重要性が明らかになった。大

部分の腸球菌感染症は、明らかな毒性に関連する特性を示す可能性が高いが、(差し

当たっては)1種類以上の有効な抗生物質に対する感受性を保つ可能性も高い

Enterococcus faecalisにより引き起こされる。残りの感染症の多くは、事実上既知の明

らかな病原特性はないが、 後の手段としての抗生物質に対してさえ耐性を持つ可能

性が高い種であるE. faeciumにより引き起こされる。多剤耐性腸球菌の有効な制御に

は、1)腸球菌、病院環境及びヒトの間の相互作用のより深い理解、2)慎重な抗生物

質の使用、3)病院及びその他の患者ケア環境におけるより良好な接触者の隔離及び4)

サーベイランスの改善が必要であろう。同様に重要なことは、薬剤導入と薬剤耐性の

サイクルの影響を受けることの少ない新しい治療上のパラダイムの発展と併せて、さ

らなる薬剤の探索における新たな活力である。

0125 Natural transformation-mediated transfer of erythromycin resistance in

Campylobacter coli strains from turkeys and swine. ( 七 面 鳥 及 び 豚 由 来

Campyrobacter coli 菌株におけるエリスロマイシン耐性の自然形質転換介在遺伝子導

入)

Kim, J.-S., D. K. Carver, and S. Kathariou.:Appl. Environ. Microbiol. 72, 1316-1321 (2006)

肉用動物由来Campyrobacter coli菌株におけるエリスロマイシン耐性の発生は頻繁

に認められ、人の感染症の抗生物質を用いた治療において重大な障壁となっている。

本菌種におけるエリスロマイシン耐性は23S rRNA遺伝子の点変異(A2075G)が関与

するものと云われてきた。しかしながら、C. coliにおけるエリスロマイシン耐性の拡

散に寄与する機序は余り理解されていないのが現状である。本研究では、七面鳥及び

豚由来の遺伝的に広範囲なC. coli菌株を用い、七面鳥あるいは豚由来のエリスロマイ

シン耐性C. coliの全遺伝子DNAをドナーとして形質転換介在のエリスロマイシン耐

性獲得を検討した。総体的に、七面鳥由来C. coli菌株のエリスロマイシン耐性への形

質転換は豚由来C. coli菌株のそれよりも高頻度であった(P < 0.01)。七面鳥由来C. coli

菌株のエリスロマイシン耐性への形質転換の頻度は10-5〜10-6で、豚由来C. coli菌株

では10-7以下であった。DNAドナーとして用いられたエリスロマイシン耐性菌株と同

様に、形質転換体は23S rRNA遺伝子の点変異A2075Gに関与していた。ドナー株とし

て用いられたC. coli菌株と同様に、形質転換体のエリスロマイシン耐性は抗生物質が

存在せぬ場合の形質変換の後にも安定していた。形質転換で得られた結果とは対照的

に、自然発生変異株のエリスロマイシンに対するMICは比較的低く(32〜64 µg/mL)、

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23S rRNA遺伝子の変異A2075Gを欠いていた。これらの所見によって、肉用動物に定

着したC. coli菌株間での高度のエリスロマイシン耐性の拡散には自然形質転換が寄与

しているものと推察された。

0126 Nomenclature for Macrolide and Macrolide-Lincosamide- Streptogramin B

Resistance Determinants. (マクロライド及びマクロライド-リンコサマイド-ストレプトグラミン

B耐性決定因子の術語体系)

Roberts, M.C., Sutcliffe, J., Courvalin, P., Jensen, L. B., Rood, J. and Seppala, H:Antimicrob.

Agents Chemotherpy. 43,No12, 2823-2830 (1999)

マクロライド系抗生物質(以下、マクロライド)は14(エリスロマイシン、クラリ

スロマイシン)、15(アジスロマイシン)または16(ジョサマイシン、スピラマイシ

ン、タイロシン)員環ラクトンとそれにグリコシド結合で付着したアミノ糖及び/ま

たは中性糖で構成される。エリスロマイシンは初めてのマクロライドとして1952年に

導入された。しかし残念ながら、一年もしないうちにエリスロマイシン耐性(Emr)

ブドウ球菌が米国、欧州、日本から報告された。エリスロマイシンは放線菌の一種で

あるSaccharopolyspora erythraeaによって産生されるが、それより新しいマクロライド

はラクトン環上に置換基を持つ半合成分子である。クラリスロマイシンやアジスロマ

イシンなどの新しい誘導体ほど、細胞内及び組織への浸透性に優れ、安定度が高く、

吸収されやすく、胃腸副作用の発生率が低く、他の薬物と相互作用する可能性が低く

なっている。また、それらは Legionella、Chlamydia、Haemophilus及び一部の

Mycobacterium属(M. tuberculosis[結核菌]以外)など、より広範な感染性細菌に対

して有効であり、その薬物動態により投与頻度もエリスロマイシンより低くて済むよ

うになっている。その結果として、これら新しいマクロライドの使用が過去数年間で

劇的に増大してきており、それがマクロライドへの細菌集団の曝露の増大につながっ

ている。

マクロライドは、延長中にリボソームからのペプチジル-tRNA分子の分離を刺激す

ることによりタンパク質合成を阻害する。これが連鎖停止を引き起こし、タンパク質

合成を可逆的に停止させる。 初に報告されたマクロライド耐性のメカニズムは、ア

デニン-N6-メチルトランスフェラーゼによる23S rRNAの転写後修飾であった。この酵

素は23S rRNA成分中の1つのアデニン(Escherichia coli[大腸菌]ではA2058)に1個

または2個のメチル基を添加する。これまでの30年間に、異なる種、属、及び分離株

に由来する複数のアデニン-N6-メチルトランスフェラーゼが報告されている。一般に

これらのメチル化酵素をコードする遺伝子はerm(エリスロマイシン・リボソーム・

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メチル化)と呼ばれてきているが例外もあり、それは特に抗生物質産生菌に多い(表

1及び3を参照)。報告されるerm遺伝子の数が増えてくるにしたがってこれらの遺伝子

を指す術語はばらつき、一貫性を失ってきている(表1)。すなわち、無関係の遺伝子

に同じ文字が割り当てられたり、類縁度の高い(同一性が90%超の)遺伝子に異なる

名称が与えられたりしている。

エリスロマイシンの50Sリボソームサブユニットの結合部位は、より新しいマクロ

ライドだけでなく構造的に無関係のリンコサマイド系及びストレプトグラミンB抗生

物質の結合部位とも重なっている。メチル化酵素による修飾はこの3つの抗生物質ク

ラスすべての結合を低減し、マクロライド系、リンコサマイド系、及びストレプトグ

ラミンB抗生物質(/MLSB)に対する耐性をもたらす。マクロライド耐性のメカニズ

ムの中ではrRNAメチル化酵素が もよく研究されている。ただし、これ以外にも耐

性を与えるメカニズムとして多様なものが報告されている。これら別のメカニズムの

多くは、複合MLSB抗生物質クラスのうち1つまたは2つに対する耐性を与えるに過ぎ

ない。

このレビューでは、/MLS遺伝子を命名するための新しい術語体系、ならびに新し

いテトラサイクリン耐性遺伝子の特定及び命名のために策定したルールの使用を提

案する。 近少し修正が加えられたこのシステムは当初、DNA-DNAプローブ法によ

って2つの遺伝子を一意的に識別できることを根拠として策定された。一般にアミノ

酸配列の同一性が80%未満の2つの遺伝子では、別個のプローブをデザインできるだ

けの十分な可変部がヌクレオチド配列に存在する。研究者の多くはやろうと思えば新

しい遺伝子の配列決定を行うことができるだろうが、プローブ技術を利用したなら、

新しい遺伝子を含んでいる可能性のある分離株を迅速に同定できるようになるだけ

でなく、確実に菌集団をスクリーニングし、ある1つの耐性決定因子の出現頻度を判

定することも可能になる。そこで私たちは、アミノ酸同一性が80%以上の2つの遺伝

子については同じクラスに分類して同じ文字を割り当て、アミノ酸同一性が79%以下

の2つの遺伝子には異なる文字を割り当てることにより、このパラダイムを引き継い

だ。表1はその分類結果を示しており、メンバーにほとんど可変性のないクラスもあ

れば、クラスA及びOのようにDNAとアミノ酸の両方のレベルで可変範囲がやや大き

いものもある。理想を言えば、新しい遺伝子配列が出現するたびに、オリゴヌクレオ

チド・プローブ・ハイブリダイゼーション及び/または既知遺伝子のバンクに照らし

た配列分析による比較を行ってから、新しい名称を割り当てる必要がある。ひとつの

クラスで複数の遺伝子が利用可能な場合、特にクラスAのように一定範囲が利用可能

な場合は、そのクラスの代表的メンバーの1つだけでなくすべてを試験するべきであ

る。新しく発見された耐性決定因子に対して提案した名称または数字がまだ他の研究

者によって使用されていないことを確認するには、これに関する情報をM. C. Roberts

まで問い合わせて頂きたい。この種の請求はこれまでに新しいtet遺伝子に関して行わ

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れた。

rRNAメチル化酵素

過去30年間で、グラム陰性菌ではE. coliからHaemophilus influenzae(インフルエン

ザ菌)まで、グラム陽性菌ではStreptococcus pneumoniae(肺炎連鎖球菌)から

Corynebacterium属に至るまでの多様な細菌から、多くの種類のrRNAメチル化酵素遺

伝子(erm)が分離されてきた(表3)。また、多様なグラム陽性及びグラム陰性嫌気

性菌、さらにBorrelia burgdorferi(ライム病ボレリア)やTreponema denticolaといった

スピロヘータまでもがすべてerm遺伝子を持つことが示されている。erm酵素はすべて

が同一のアデニン残基をメチル化し、あるMLSB表現型をもたらす。このアデニン

(A2058)またはペプチジルトランスフェラーゼ領域内の隣接する残基の1つ(A2057

またはA2059)は、マクロライド耐性Mycobacterium intracellulare(バテー桿菌)、

Mycobacterium avium(鳥型結核菌)、Propionibacterium属(プロピオン酸菌属)、及び

Helicobacter pylori(ピロリ菌)内の突然変異によって別のヌクレオチドへと変化する。

異なるerm遺伝子間の相違は表現型発現の制御に見られる。一部の酵素はmRNAリ

ーダー配列の翻訳減衰(アテニュエーション)によって誘導的に制御される;エリス

ロマイシンが存在しない場合はシャイン-ダルガーノ配列が隔離されていることによ

ってmRNAが不活性の配座となり、erm転写産物の翻訳が有効に開始されない。erm(C)

リーダーペプチドの突然変異分析では、ペプチド(FS)IFVIが誘導に不可欠であるこ

とが示唆された。しかし、erm遺伝子からのermペプチドを比較してみても、配列相同

性はほとんど見られない。 近、エリスロマイシンの不存在がロー因子依存性の終止

によってmRNAの完全な合成を妨げる、というもう1つの制御メカニズムが報告され

た。このタイプの制御はerm(K)系について報告されており、これとの相同性から、

すなわち類縁性が高度であって同じクラスDに分類されているという理由から、私た

ちはerm(D)さらにerm(J)にもこの種の制御が存在すると推測している。いずれ

の系においても、誘導型分離株を試験した場合、マクロライドには感受性または中等

度に耐性で、リンコサマイドには感受性のように見える可能性がある。エリスロマイ

シンは一般にほとんどの種において良好な誘導因子となる;動物またはヒト由来のブ

ドウ球菌分離株では、リンコサマイド及び/またはストレプトグラミンBが良好な誘導

因子となることが考えられる。Weisblumは 近のレビューでerm遺伝子の制御に関す

る優れた概説を示している。

1960年代から1970年代には誘導型の株が主流であった。しかし今日では、事前の抗

生物質への曝露なしにrRNAメチル化酵素を構成的に産生する分離菌が地理的に多く

の地域で見つかることが多くなっている。構成的なerm遺伝子の発現には通常、erm

(C)の欠失、重複及び点突然変異を含むerm翻訳アテニュエーターの構造的変化が

関係している(104)。構成型は、誘導因子ありまたはなしの事前増殖とは無関係に

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MICが安定していることで誘導型分離株と識別することができる。

多くのerm遺伝子は染色体上に存在する傾向のある接合型または非接合型トランス

ポゾンと関連しているが、一部はプラスミド内に見つかっている。また、他の抗生物

質耐性遺伝子、とりわけテトラサイクリン耐性遺伝子と関連していることが多い。erm

(F)遺伝子はtet(Q)遺伝子と結びついていることが多く、erm(B)遺伝子はtet(M)

遺伝子と結びついていることが多い(24, 86, 95)。これらの接合型トランスポゾンは

広範な種を宿主とすることができ、多くの異なる細菌種の臨床分離株がこれらerm遺

伝子を持つことが見つかっているのはそのためであると考えられる(表3)。一般にerm

遺伝子はG+Cの含有量が低いが(31~34%)、全体的な染色体のG+C含有量はグラム

陰性菌種で50%以上、グラム陽性菌種で約35%である。

研究者は自分が見つけたerm遺伝子に、それ以前に特性決定されているerm遺伝子と

のDNA及び予測アミノ酸配列の相同性とは無関係に、またその遺伝子が異なる分離株、

種または属に存在しているかどうかを考慮することなく、新しい名称を与えるのが一

般的となっている。その結果、長年の間にこれらerm遺伝子の名称は分かりにくいも

のとなってしまい、しばしば複雑な表がなければどの遺伝子同士が緊密に関連し合っ

ているのかを思い出せないというのが現状である(表1)。 悪のケースでは無関係の

酵素の遺伝子に同一の名称(erm(A))が与えられたりしていて、文献及びGenBank

リストに混乱を招いている(表1)。逆に、非常に類縁度の高い、あるいは事実上同一

の遺伝子に様々に異なる名称が与えられていることもある。例えば、erm(F)(GenBank

番号M14730)はBacteroidesトランスポゾンTn4351及びTn4000上に見つかっている一

方、erm(FS)(番号M17808)はBacteroidesトランスポゾンTn4551上に見つかってお

り(91)、erm(FU)(番号M62487)もBacteroidesに認められている。この3つの酵素

のDNA 及びアミノ酸の同一性は97%以上である。この3つのerm(F)遺伝子の表現

型に差異はなく、配列決定以外の方法でこれらを識別することには問題があるため、

私たちはこの3つのすべてをクラスFすなわちErm(F)タンパク質及びerm(F)遺伝

子と呼ぶよう提案する。

より多くの遺伝子で構成されるクラスBでは事態がさらに深刻で、その構成員の

erm(AM)、erm(B)、erm(BC)、erm(BP)、及びerm(Z)の配列の相同性は98%

以上である。遺伝子の命名には単一の文字を用いるのが普通であり、erm(AM)はerm

(A)と混同されるおそれがあるため、私たちはこのグループをクラスBすなわちerm

(B)遺伝子及びErm(B)タンパク質と呼ぶよう提案する。erm遺伝子の多くを掲載

した 近の系統樹がSeppäläら及びMatsuokaらの論文に示されており、これらの遺伝子

のすべてをクラスBという名称に集めることを裏付けている。

現場に役立つよう、まだ正確に分類されていないGenBank番号または参照配列を表

1に列挙している。新しい遺伝子配列がいずれかのクラスのメンバーと80%以上のア

ミノ酸相同性を示し、かつ宿主に同様の表現型を与える場合は、その新しい遺伝子を

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その既存グループに入れて、新しい文字や新しい名称を与えないようにすることを私

たちは提案する。したがって、クラスA(アミノ酸相同性81%)やクラスO(アミノ

酸相同性84%)のように広範に相同性を示すクラスでは、多くのメンバーを新しい遺

伝子と対比させなければならない。クラスの命名は構造遺伝子のアミノ酸配列のみに

基づいて行い、遺伝子の上流に発生し得る様々な調節配列は含めないようにするよう

注意が必要である。これらのガイドラインは、その遺伝子が 初に特定されたのが病

原性細菌、日和見感染細菌、正常細菌叢細菌または抗生物質産生菌種のいずれであろ

うと関係なく、すべてのN-メチルトランスフェラーゼに適用されることを意図してい

る。新しいerm遺伝子を特定するのにすべての大文字を使い果たしてしまった場合は、

erm、ermなどと命名することを勧める。このシステムは、新しいtet遺伝子の命名[tet

など]についてすでに提案されているものである。さらに、/MLS抗生物質のいずれ

かに対する他の耐性メカニズムをコードする遺伝子にも、同様のガイドラインを適用

するべきである(表1)。遺伝子erm(GM)に対するクラスY、遺伝子erm(SF)に対

するクラスS、遺伝子erm(GT)に対するクラスT、遺伝子erm(SV)に対するクラス

V、遺伝子erm(CD)、erm(CX)及びerm(A)に対するクラスX、ならびに遺伝子srm

(D)に対するクラス2というのは、一文字命名に適合する新しいクラス名である。

他にもtlr(D)、car(B)、myr(B)、及びsmr(A)などいくつかのメチル化酵素遺

伝子があるが、それらはこれまでermの名称を与えられてこなかったメチル化酵素産

生菌に見つかっていることが も多い。これらはすべてが16員環のマクロライドに対

する耐性を与える種に由来している。私たちはこれらをグループ分けして命名し直し、

car(B)はクラスH、mdm(A)はクラスI、tlr(D)はクラスN、遺伝子lrm及びsrm(A)

はクラスO、lmr(B)はクラスU、そしてmyr(B)はクラスWとした。clr遺伝子は、

現存するデータベース及び文献に配列が存在しないため、分類することができなかっ

た。これらの遺伝子がそれぞれの抗生物質産生菌以外で見つかるかどうかを調べる研

究はあまり行われていない。erm遺伝子はしばしばtet遺伝子と結びついており、もと

もとは抗生物質を産生するストレプトミセス属の放線菌で見つかったオキシテトラ

サイクリン耐性を与える遺伝子が今ではMycobacterium臨床分離株の一部に見つかっ

ていることから、いくつかのerm遺伝子がMycobacterium属及びその他の属にも移入し

ていることはほぼ確実である。

無関係の2つの遺伝子に同一の名称が与えられるのを防ぐため、私たちはテトラサ

イクリン耐性遺伝子について 近推奨されているような参照センターの設立を提案

する。新しいerm遺伝子の同定の統制に上記のようなガイドラインを用いれば、細菌

集団を対象として特定のMLSB耐性決定因子の広がりを調べる調査を実施すること

が可能になる。また、ある遺伝子クラスのすべてのメンバーを検出する単一の内部

DNA断片もしくはオリゴヌクレオチドプローブまたはPCRアッセイを確立して、大量

の分離株のスクリーニングを行うことも可能になる。均一の命名システムを採用すれ

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ば、新しいerm遺伝子の名称の数が減少するだけでなく、うまくいくと無関係の遺伝

子に同じ名称が与えられたり高度に関連している遺伝子に異なる名称が与えられた

りすることからの混乱も防止されることになる。

排出システム

輸送(排出)タンパク質をコードする抗生物質耐性遺伝子には数種類のものがある。

これらは抗生物質やその標的を修飾するのではなく、抗生物質を細胞または細胞膜か

ら汲み出すことにより、細胞内の抗生物質濃度を低く保ってリボソームが抗生物質に

触れないようにする。これらのタンパク質の多く[mef(A)、mef(E)、lmr(A)]は

排出タンパク質の主要促進因子スーパーファミリー(MFS)と相同性を持つ。その他

[car(A)、msr(A)、ole(B)、srm(B)、tlr(C)、vga、vga(B)]はABC輸送体ス

ーパーファミリーのメンバーであると推定されている。初期のマクロライド耐性の大

部分はerm遺伝子の存在によって媒介されていた。しかし 近では、一部のグラム陽

性菌集団で他のマクロライド耐性メカニズムが見つかることが多くなってきている。

グラム陽性球菌では耐性を与える排出システムが3種類報告されている[msr(A)(マ

クロライド及びストレプトグラミンB耐性)、mef(A)(マクロライド排出)、vga及び

vga(B)(バージニアマイシン因子A)]。これらの遺伝子については学術的関心に加

えて、治療対象のエリスロマイシン耐性病原性細菌にこれらの遺伝子が存在する場合

には治療選択肢という点でも意味を持つことになり得る。分離株がmef遺伝子を持っ

ているときにはクリンダマイシンを考慮することができる一方、erm(B)が存在す

るときにはリンコサマイドを考慮できないということになる。 近、mef及びerm(B)

遺伝子の両方を持ち、そして予想どおり/MLSB表現型を持つStreptococcus pneumoniae

株を私たちと他の研究者が同定している。

mef遺伝子はコリネバクテリウム、腸球菌、ミクロコッカス、及び種々の連鎖球菌

種を含む多様なグラム陽性菌属に見つかっており、このことはこの遺伝子群が当初の

想像よりもはるかに広く蔓延していることを示唆している。これらの遺伝子の多くは

染色体上に位置する接合型要素と関連しており、種及び属の障壁を越えて容易に接合

移転する。

文献ではmef(A)及びmef(E)という2つのmef遺伝子の特性が決定されている。

mef(A)遺伝子はStreptococcus pyogenesで報告され、mef(E)遺伝子はS. pneumoniae

で発見された。この2つの遺伝子はDNAの90%、アミノ酸の91%が相同であるため、

私たちはこの2つの遺伝子を単一のクラスA:mef(A)遺伝子及びMef(A)タンパク

質として考慮することを推奨した。

msr(A)、msr(SA)、msr(SA)’、及びmsr(B)は、マクロライド系及びスト

レプトグラミンB抗生物質の両方(MS)に対する耐性を与えるという点でmef遺伝子

と異なっている(13, 55-57)。msr(B)遺伝子はmsr(A)のほぼ半分の大きさである

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が、互いに非常によく一致している。この遺伝子はmsr(A)遺伝子配列よりも有意

に短いが、私たちはこれを他のmsr遺伝子と一緒にした。

抗生物質産生菌には、/MLSB抗生物質に特異的な、一般にABC輸送体スーパーファ

ミリーに属する排出ポンプが存在する(87)。これには、Streptomyces thermotolerans

からのcar(A)、Streptomyces antibioticusからのole(B)、Streptomyces ambofaciensから

のsrm(B)、Streptomyces lincolnensisからのlmr(C)及びStreptomyces fradiaeからのtlr

(C)が含まれる。msr(A)排出ポンプに加えて、ブドウ球菌ではストレプトグラミ

ンA抗生物質に対する耐性を与えるvga及びvga(B)という2つの排出システムが特定

されている(4)。mef(A)以外にも、プロトン駆動力からエネルギーを得ていると

思われる排出タンパク質が/MLSB抗生物質に関して報告されている。S. lincolnensisで

は、lmr(A)によってコードされるリンコマイシンに特異的な排出ポンプが報告され

ている。

その他のメカニズム

上記以外に、通常は3つのクラスの1つのみ(/MLまたはS)に対する耐性を与える、

あるいはストレプトグラミンA耐性はあるがストレプトグラミンB耐性はないといっ

たように1つの成分のみに対する耐性を与えるメカニズムが色々と報告されている。

これらのタンパク質はrRNA標的ではなく抗生物質を修飾するか、菌体から抗生物質

を運び出すポンプとして働く。ストレプトグラミンBを加水分解する酵素[vgb(バー

ジニアマイシン因子B加水分解酵素)、vgb(B)遺伝子]やストレプトグラミンAにア

セチル基を添加することによって抗生物質を修飾する酵素(アセチルトランスフェラ

ーゼ)[vat(バージニアマイシン、因子Aアセチル化)、vat(B)、vat(C)、sat(A)、

及びsat(G)遺伝子]が報告されている。これらの遺伝子の多くはプラスミド媒介性

であり、ブドウ球菌ではしばしば他のストレプトグラミン耐性をコードする遺伝子

[vgb、vga(B)、vgb(B)遺伝子]の下流にこれらのvat類縁遺伝子[それぞれvat、

vat(B)、vat(C)遺伝子]が存在するが、腸球菌ではそのようなことはない。この

アセチルトランスフェラーゼは、活性部位領域において新規のクロラムフェニコー

ル・アセチルトランスフェラーゼ酵素ファミリーと類縁である。私たちは術語体系を

単純化するため、sat(A)をvat(D)、sat(G)をvat(E)と命名し直した。

このレビューに記述している他のほとんどの遺伝子と違って、ere(エリスロマイ

シン・エステル化)及びmph(マクロライド・ホスホトランスフェラーゼ)遺伝子(表

2)はともにグラム陽性球菌ではなくE. coliで 初に報告された。私たちのガイドライ

ンに従い、mph(K)は相互のタンパク質のアミノ酸の相違が10個(1%)のみである

ことからmph(A)に再仕分けされた。mph(BM)とmph(C)は、これらの遺伝子

が互いにほぼ同一である一方でmph(A)やmph(B)とは異なることから、Mph(C)

に分類された。Staphylococcus haemolyticusのlin(A)、Staphylococcus aureus(黄色ブド

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ウ球菌)のlin(A)’及びEnterococcus faeciumのlin(B)(14)といったいくつかのリン

コマイシン・ヌクレオチジルトランスフェラーゼが報告されている。linという文字列

はすでにガンマBHCデヒドロクロリナーゼ及びシクロヘキサジエン加水分解酵素遺

伝子に用いられているため、私たちはlin(A)とlin(B)をlnu(A)とlnu(B)(リン

コマイシン・ヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子)に変更することを提案する。

新しい遺伝子クラスに命名するときは、事前にその三文字命名案が他のすでに特性決

定済みの遺伝子に使われていないかどうかを調べる必要があることが示唆されてい

る。

結論

マクロライドの使用は、効力が強化された新しい安定度の高いマクロライドが導入

されたことによって大きく増大してきている。アジスロマイシンやクラリスロマイシ

ンなどのマクロライドは、ヒト免疫不全ウイルス患者におけるMycobacterium avium複

合疾患を防ぐための予防的使用に推奨されている。マクロライドの使用が増えるにつ

れて、それに対する細菌集団の曝露も増大し、細菌がマクロライドまたは/MLS耐性

を獲得するチャンスが大きくなってきている。マクロライド耐性決定因子の遺伝子内

移動が可能であることを考えると、このレビューに記した遺伝子のすべてが新しい種

に広がって行く可能性とさらに新しい遺伝子が発見される可能性がともにあると言

える。したがって、拡大しつつある術語の使用者や読者のために、これらの耐性遺伝

子の術語体系を明確なものとしておくことが重要である。

0127 Occurrence of Campylobacter jejuni in pets living with human patients infected

with C. jejuni. (Campylobacter jejuni に感染したヒト患者と生活するペットにおける C.

jejuni の出現)

Damborg, P., K. E. P. Olsen, E. M. Nielsen, and L. Guardabassi.:J Clin Microbiol, 42, 1363-1364

(2004)

Campylobacter jejuniが、デンマークにおけるC. jejuniに感染したヒト患者と生活中の

イヌ4頭(11%)及びネコ4匹(33%)から分離された。パルスフィールドゲル電気泳

動(PFGE)分析により、少女とそのイヌに同一のキノロン耐性株の出現が認められ

た。PFGEプロフィールが近似した(類似性>95%)C. jejuni株が、デンマークの異な

る郡のヒト及びペットから分離された。

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0128 Occurrence of satA and vgb genes in streptogramin-resistant Enterococcus

faecium isolates of animal and human origins in the Netherlands (オランダの動物及

びヒト由来ストレプトグラミン耐性 Enterococcus faecium 分離株における satA 及び vgb

遺伝子の発生)

Jensen, L. B., Hammerum, A. M., Aarestrup, F. M., van den Bogaard, A. E., and Stobberingh, E.

E.:Antimicrob. Agents Chemotherpy. 42,No.12, 3330-3331 (1998)

腸球菌は院内感染の重要な原因菌として出現してきた。多剤耐性腸球菌によって引

き起こされた感染症はバンコマイシンか別の糖ペプチド抗生物質で治療される。しか

し近年、バンコマイシンの使用とバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の分離率が欧州

と米国の両方で着実に増大してきている。VRE感染症は病院内の問題であり、人体へ

の糖ペプチドの使用は院内で行われているという事実に反して、病院との明白な関連

がない健康な人の糞便細菌叢、動物、及び環境からもVREが分離されている。バンコ

マイシン耐性Enterococcus faecium感染に対する数少ない治療選択肢の1つが、ダルホ

プリスチン(ストレプトグラミンA)とキヌプリスチン(ストレプトグラミンB)と

いう2つのストレプトグラミンの混合剤(30:70比)であるキヌプリスチン-ダルホプ

リスチンである。類縁の混合化合物であるバージニアマイシンは欧州で食用動物の成

長を増進するための飼料添加物として長年にわたり使用されてきている。これまでに

食用動物の糞便から多くのバージニアマイシン耐性E. faeciumが分離されており、こ

れらはキヌプリスチン-ダルホプリスチンに対しても耐性をもつことから、バージニ

アマイシンとキヌプリスチン-ダルホプリスチンの間の交差耐性が示唆されている。

臨床分離株からE. faeciumのストレプトグラミン耐性をコードするsatA及びvgbとい

う2つの遺伝子が検出されている。これらの細菌は寒天拡散法によりストレプトグラ

ミン耐性E. faecium(SREF)であると判定された(3, 11)。satAはストレプトグラミン

A成分に対する耐性をコードし、vgbはストレプトグラミンB成分に対する耐性をコー

ドしている。ストレプトグラミンB耐性は「/MLSB耐性遺伝子」と呼ばれるerm遺伝

子によってもコードされている。

本研究では、オランダからのSREF分離株をバージニアマイシンとキヌプリスチン-

ダルホプリスチンに対する耐性及び腸球菌に認められている2つの耐性遺伝子の存在

について検証した。また、SmaI消化後のパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)に

より遺伝子型を決定した。健康な都市(近郊)部住民(n=5)、農民(n=19)、家禽

(n=22)及び豚(n=5)の糞便サンプルから分離した合計51株のSREF分離株を試験

した。MICは米国臨床研究所規格委員会(NCCLS)のガイドラインに従って寒天拡散

法により確定した。satA及びvgbの存在は、satAについて272 bp、vgbについて570 bp

の単位複製配列をもたらす特異的プライマーを用いたPCRによって確認した。同一の

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PFGEパターンを示した2つの分離株(KH 36syn及びK 36syn)は養鶏家(KH 36syn)

とその飼育する鶏から(K 36syn)分離されたものであった。

すべての分離株がキヌプリスチン-ダルホプリスチン(MIC≧32 mg/L)とバージニ

アマイシン(MIC≧16 mg/L)に対して耐性であった。キヌプリスチン-ダルホプリス

チンについては4 mg/Lという区切り点が提唱されている。バージニアマイシンは治療

薬として用いられていないために区切り点がNCCLSによって定められていないが、

E. faecium菌群におけるMICの分布観測所見から、バージニアマイシンについても4

mg/Lという区切り点が提唱されている。これらに照らして、すべての菌株がキヌプリ

スチン-ダルホプリスチンとバージニアマイシンの両方に耐性であると判定した。

satA遺伝子は14株(58%)のヒト由来SREF分離株-農民10例(52%)及び郊外住

民4例(80%)-と5株(19%)の動物由来分離株-豚分離株1株(20%)及び家禽分

離株4株(18%)-に検出された。PFGEが同一の2つのSREF分離株はともにsatA遺伝

子を持っていた。vgb遺伝子はヒト由来の1つの分離株(KH 6syn)に認められた。本

研究により、ストレプトグラミンA耐性をコードするsatA遺伝子が病院外のヒト及び

動物に由来するSREF分離株に存在することが示された。ストレプトグラミンB耐性を

コードするvgb遺伝子は1つのヒト分離株にのみ認められた。これらの遺伝子は、かつ

ては入院患者からのSREF分離株にしか認められていなかったものである。satAは動

物由来分離菌よりもヒト由来分離菌で高頻度に認められた。農民とその飼育動物に

satA遺伝子を持ちPFGEが同一の分離菌が認められたという事実は、SREFが動物と人

の間を移行することを示している。残りの分離株にはおそらく、ストレプトグラミン

耐性をコードする他の遺伝子が存在していたと考えられる。ストレプトグラミンB化

合物に対する耐性をコードするerm遺伝子はマクロライド系及びリンコサマイド系抗

生物質に対する耐性も与える。この2つの抗生物質群はともに人医学及び獣医学にお

いて広く用いられており、マクロライド系のタイロシンは成長促進剤として用いられ

ているため、これらの遺伝子が高度に選択されることは間違いなく、さらなる研究が

必要である。

0129 Pharmacokinetic/pharmacodynamic parameters: rationale for antimicrobial dosing

of mice and men. (薬物動態学/薬力学パラメータ:マウスとヒトの抗菌薬投与法の理

論的根拠)

Craig, W. A.:Clin. Infect. Dis. 26, 1-12 (1998)

抗菌薬治療の薬理学は2つの異なる成分に分けることができる。その第一は薬物動

態学、すなわち薬物の吸収、分布、及び排泄である。これらの因子は投与法とともに

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125

血清中薬物濃度の経時的変化を決定づけ、ひいては組織及び体液中の薬物濃度の経時

的変化を決定づける。抗菌薬について言うと、感染部位における薬物濃度の経時的変

化に特に関心が寄せられる。薬力学は、薬物の血清濃度と薬理学的及び毒物学的作用

との関係である。抗菌薬については、濃度と抗菌作用の関係が第一の関心事となる。

抗菌活性の経時的変化は、薬物動態学と薬力学の相互関係を反映したものとなる。

過去20年間の研究により、抗菌薬によって抗菌活性の経時的変化が大きく異なるこ

とが実証されている[1-3]。さらに、抗菌活性の経時的パターンは有効な投与法の重要

な決定因子となる[4]。このレビューでは、異なるクラスの抗菌薬の投与法を決定する

際の薬物動態学と薬力学の相互関係に焦点を絞る。また、動物の感染モデル及びヒト

の感染症において抗菌薬活性の有効性を予測することができる薬物動態学/薬力学パ

ラメータを個別に詳しく見ていく。

0130 Phenotypic distinction in Enterococcus faecium and Enterococcus faecalis strains

between susceptibility and resistance to growth-enhancing antibiotic

(Enterococcus faecium 株及び Enterococcus faecalis 株の表現型による成長促進抗

生物質に対する感受性と耐性の識別)

Patrick Butaye, Luc A. Devriese and Freddy Haesebrouck:American Society for Microbiology,

2569-2570 (1999)

動物及び食品由来のEnterococcus faecium株及びEnterococcus faecalis株の、動物飼料

に用いられる成長促進抗生物質に対する感受性を寒天希釈法により試験した。どちら

の種にもバシトラシン、ナラシン、タイロシン、及びバージニアマイシンに対する獲

得耐性が見られ、E. faeciumではアビラマイシンとアボパルシンに対する耐性も見ら

れた。MICの度数分布に基づいて感受性か耐性かを識別するのは、アボパルシン、ア

ビラマイシン、及びタイロシンでは容易であったが、バージニアマイシンでは困難で

あり、バシトラシンとナラシンでもある程度困難であった。

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126

0131 Presence of erm gene classes in gram-positive bacteria of animal and human

origin in Denmark (デンマークの動物及びヒト由来グラム陽性細菌におけるerm遺伝子

クラスの存在)

Jensen, L. B., Frimodt-Moller, N. and Aarestrup, F. M.:FEMS Microbiol. Lett. 170:151–158.

(1999)

公表されている配列に基づいて異なるerm遺伝子クラスの分類を実施し、これらの

クラスの一部を検出するための特異的プライマーを設計した。動物及びヒト由来のエ

リスロマイシン耐性分離株として合計113株の腸球菌、77株の連鎖球菌及び68株のブ

ドウ球菌におけるermA(Tn554)、ermB(クラスIV)及びermC(クラスVI)の存在を

PCRで判定した。分離株の88%にこれら遺伝子の少なくとも1つが検出された。複数

のerm遺伝子を持っていた分離株は4株であった。腸球菌(88%)及び連鎖球菌(90%)

ではermB、ブドウ球菌(75%)ではermCが主流であり、ermA(Tn554)は一部の分

離菌(16%)に存在していた。ヒト及び動物由来のブドウ球菌分離株を比較した場合、

存在する遺伝子の種類に差異が見られた。

0132 Prevalence and Antimicrobial Resistance of Enterococcus spp. Isolated from Retail

Meats (小売り肉から分離された腸球菌種の保有率及び抗菌剤耐性)

Hayes, J. R., English, L. L., Carter, P. J., Proescholdt, T., Lee, K. Y., Wagner, D. D., and White:

Appl. Environ. Microbiol. 69,No.12, 7153-7160

2001年3月~2002年6月に、小売り生肉(鶏肉、七面鳥、豚肉及び牛肉)の合計981

サンプルをアイオワ州における263ヵ所の食料雑貨店から無作為に採取し、培養によ

り腸球菌種の有無について調査した。合計1,357の腸内球菌分離株がサンプルから回

収され、汚染率は豚肉サンプルの97%から牛挽肉サンプルの100%に及んだ。回収され

た中ではEnterococcus faeciumが優勢種(61%)で、続いてE. faecalis(29%)及びE. hirae

(5.7%)の順であった。E. faeciumは七面鳥挽肉(60%)、牛挽肉(65%)及び鳥の胸

肉(79%)から分離された優勢種で、E. faecalisは豚の切り身(54%)から分離された

優勢種であった。多くの生産及び治療用の抗菌剤に対する耐性の出現率は、小売り肉

サンプルから分離された腸球菌間で異なった。動物用医薬品バージニアマイシンのヒ

ト用類似体であるキヌプリスチン・ダルホプリスチンに対する耐性が、七面鳥、鶏肉、

豚肉及び牛肉サンプル由来のE. faecium分離株の各54、27、9及び18%で認められた。

リネゾリドあるいはバンコマイシンに対する耐性は認められなかったが、高水準のゲ

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127

ンタマイシン耐性が腸球菌(その大部分は家禽小売り肉から分離された)の4%で認

められた。これらの結果は、腸球菌種により小売り肉が汚染されることが多く、異な

るタイプの食肉から分離された腸球菌間の抗菌剤耐性パターンの相違が各食用動物

生産環境における承認済み抗菌剤の使用状況を反映している可能性を示している。

0133 Prevalence of Campylobacter within a swine slaughter and processing facility. (豚

屠殺・加工施設内の Campylobacter の発生状況)

Pearce, R. A., F. M. Wallace, J. E. Call, R. L. Dudley, A. Oser, L. Yoder, J. J. Sheridan, and J. B.

Luchansky.:J. Food Prot., 6, 1550-1556 (2003)

本研究では豚屠殺・加工施設内のCampylobacterの発生状況を調査した。360頭分の

豚枝肉に相当する30個の混合枝肉サンプルを放血死直後、磨き直後、 終洗浄後及び

2ºCでの一晩冷蔵後に採取した。放血死直後に30個のマッチング混合直腸サンプルも

採取し、中抜き中に同一ロットの豚から60個の非マッチング個別結腸サンプルを採取

した。また、屠殺作業(42サンプル)及び加工作業(30サンプル)に用いた装置から

72個の環境サンプルを採取した。Campy-Line寒天(CLA)またはCampy-Cefex寒天

(CCA)への直接プレーティングならびにBoltonブイヨン増菌後のCLAまたはCCAで

の培養によって Campylobacterを分離した。 4つの回収方法を合わせると、

Campylobacterは放血死直後では33%(30個中10個)、磨き後では0%(30個中0個)、冷

蔵直前では7%(30個中2個)、一晩冷蔵後では0%(0個中30個)に検出された。この

病原体は混合直腸サンプルの100%(30個中30個)、個別結腸サンプルの80%(60個中

48個)から回収された。Campylobacterは屠殺用及び加工用の装置サンプルのそれぞれ

4.8%(42個中2個)及び3.3%(30個中1個)に検出された。CLAへの直接プレーティ

ングによる回収率は他の3つの回収方法による回収率より有意に高かった(P<0.05)。

評価した様々なサンプルすべてから回収された202分離株のうち、Campylobacter coli

(75%)が優占種であり、続いてCampylobacter属菌(24%)、Campylobacter jejuni(1%)

であった。これらの結果から、Campylobacterが屠殺施設に到着した豚の消化管に多く

存在するが、この微生物は屠殺作業中に増殖せず、一晩冷蔵後には枝肉に検出されな

いことがわかる。

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0134 Prevalence of multiple antibiotic resistance in 443 Campylobacter spp. isolated

from humans and animals. (ヒト及び動物から分離された 443 株の Campylobacter 属

菌における抗生物質多剤耐性の発生状況)

Randall, L. P., A. M. Riley, S. W. Cooles, M. Sharma, A. R. Sayers, L. Pumbwe, D. G. Newell, L. J.

V. Piddock, and M. J. Woodward.:J. Antimicrob Chemother, 52, 507-510 (2003)

目的:Campylobacter jejuniに多剤排出ポンプCmeABCが存在するという 近の知見に

基づいて、ヒト及び動物に由来する391株のCampylobacter jejuni及び52株の

Campylobacter coliについて多剤耐性表現型の有無を評価した。

材料及び方法:アンピシリン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、エリス

ロマイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、セトリミド、トリクロサン、アク

リジンオレンジ、パラコート及び臭化エチジウムのMICを決定した。有機溶媒に対

する耐性及びサリチル酸塩(大腸菌及びサルモネラ菌のmarRABオペロンの既知の

誘導因子)の作用も評価した。

結果:主に豚または家禽から分離された2株のC. coli及び13株のC. jejuniが3種類以上の

抗生物質に対する耐性を示し、これらのうち12株はアクリジンオレンジまたは臭化

エチジウムに対する感受性が低下していた。アクリジンオレンジ、臭化エチジウム

及びトリクロサンに対する感受性が低かった株(n=20)はアクリジンオレンジ、

臭化エチジウム及びトリクロサンに対する感受性が高かった株(n=20)と比較し

てアンピシリン、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、エリスロマイシン、

ナリジクス酸及びテトラサイクリンに対する耐性が有意に高く(P<0.05)、MIC値

が2~4倍に上昇していた。1 mMサリチル酸塩による株の増殖はクロラムフェニコ

ール、シプロフロキサシン、エリスロマイシン及びテトラサイクリンのMICのわず

か(2倍以下)だが統計的に有意な(P≦0.005)上昇を引き起こした。

結論:これらのデータは抗生物質多剤耐性(MAR)様Campylobacter株が存在するこ

とを示しており、これらの株が別の排出系cmeABCを過剰発現することが推定され

る。

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0135 Prevalence of resistance to /MLS antibiotics in 20 European university hospitals

participating in the European SENTRY surveillance programme (欧州 SENTRY 抗菌薬サ

ーベイランスプログラムに参加した欧州の 20 ヵ所の大学病院における MLS 抗生物質に対す

る耐性の保有率)

Schmitz, F. J., Verhoef, J., and Fluit, A. C. The Sentry Participants Group:J. Antimicrob.

Chemother, 43, 783-792 (1999)

マクロライド、リンコサミド及びストレプトグラミン(/MLS)抗生物質は、化学

的に異なる細菌タンパク質合成の阻害剤である。/MLS抗生物質に対する耐性は、構

造的あるいは誘導的な可能性がある。本試験の目的は、欧州における異なる形態の

/MLS耐性の保有率に関する理解を 新のものにすることである。臨床上の肺炎球菌、

ブドウ球菌及び腸内球菌の3,653分離株の分析により、中水準及び高水準のペニシリ

ン耐性肺炎連鎖球菌21.3%及び6.2%、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌21.8%及びバン

コマイシン耐性Enterococcus faecium 11%の平均割合が示された。肺炎レンサ球菌及び

黄色ブドウ球菌分離株におけるエリスロマイシン及びクリンダマイシン耐性の地理

的な差は、それぞれペニシリン及びメチシリンに対する感受性における地理的変異を

強く反映している。キヌプリスチン/ダルホプリスチンにより得られたMICの範囲は

非常に狭く、>4 mg/LのMICを持つ肺炎レンサ球菌、黄色ブドウ球菌及びE. faecium分

離株はみられなかった。このことにより、多剤耐性グラム陽性菌による感染症の治療

においてキヌプリスチン/ダルホプリスチンが有用である可能性が示唆される。

0136 Public Health Consequences of Macrolide Use in Food Animals: A Deterministic Risk

Behavior. (食用動物におけるマクロライド使用の公衆衛生に対する影響:決定論的リスク

評価)

Hurd, H.S., S. Doores, D. Hayes, A. Mathew, J. Maurer, P. Silley, R.S. Singer, and R.N. Jones. :J.

Food Prot. 67(5) 980-992 (2004)

食用動物における抗生物質の使用により選択された抗生物質耐性菌が、ヒトの健康

に対して潜在的影響を持つため、多くの報告が行われ、推奨処置が取られている。米

国食品薬品局動物用医薬品センターは、動物用医薬品治験依頼者に食用動物における

薬剤使用の質的リスク評価を行うための1つの可能な手順を助言する指針書152を発

行した。この指針を用いて、2つのマクロライド系抗生物質(タイロシン及びチルミ

コシン)からのリスクを評価するための決定論的モデルを開発した。モデル化の範囲

には、家禽、豚及び肉牛における2つのマクロライド系抗生物質のすべてのラベルク

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130

レームの使用が含まれた。この指針書を受けて、ハザードを (i) 耐性決定因子を

有する食品由来細菌により引き起こされた、(ii) 特定の動物由来食肉商品に起因し

た及び (iii) 同一クラスのヒト使用薬剤により治療された疾患と定義した。リスク

は、耐性のあるカンピロバクター種あるいはエンテロコッカス・フェシウムによる治

療失敗の結果と組み合わされたこのハザードの可能性と定義した。二項イベントモデ

ルを用いて、米国の一般人口に対する年間リスクを推定した。パラメータは、企業の

薬剤使用調査、科学文献、治療指針及び政府文書に由来した。この独特な農場-患者

リスク評価により、食用動物におけるタイロシン及びチルミコシンの使用によるヒト

の治療失敗のリスクは非常低く、カンピロバクター由来の約1000万分の1未満及びエ

ンテロコッカス・フェシウム由来の約30億分の1のリスクの年間確率が示された。

0137 Quantification of Campylobacter species cross-contamination during handling of

contaminated fresh chicken parts in kitchens. (調理場における汚染された新鮮な鶏

部分肉の取り扱い中のカンピロバクター種交差汚染の定量化)

Luber, P., S. Brynestad, D. Topsch, K. Scherer, and E. Bartelt.:Appl. Environ. Microbiol 72, 66-70

(2006)

カンピロバクター症に対する多くの集団発生調査及び症例対照研究により、カンピ

ロバクターに汚染された鶏肉製品の取り扱いが、感染及び疾患のリスク要因であると

いうエビデンスが得られている。調理場におけるカンピロバクターの交差汚染のレベ

ルに関する定量的データは、現在極めて少なく、カンピロバクターと鶏肉という病原

体と商品の組合せに対するリスク評価は遅れている。暴露評価には、鶏肉から手及び

調理場環境へ、またそこから調理済み食品への細菌の移動の定量化が必要である。本

研究では、調理場における一部の典型的な状況をシュミレートし、ドイツで も利用

されることが多い自然に汚染された鶏部分肉からのカンピロバクターの移動を定量

化した。1つのシナリオでは、鶏もも肉5本の味付け及び調理済み食肉に対する同じ皿

の再使用をシミュレートした。別のシナリオでは、鶏のささ身5本を木製まな板上で

小さくスライスし、その後木製まな板を洗浄せずに、キュウリをスライスした。また、

手を介した鶏肉からロールパンへの病原体の移動を調査した。鶏部分肉の表面、手、

器具及び調理済み食品上に存在するカンピロバクターの数を、Karmali寒天培地上で

の平板塗抹後にプレストン増菌及びコロニー計数法により検出した。もも肉及びささ

身から手への平均移動率は、2.9及び3.8%であった。もも肉から皿への移動(0.3%)

は、ささ身からまな板及び包丁への移動割合(1.1%)より有意に小さかった(P<0.01)。

手あるいは調理器具から調理済み食品への平均移動率は、2.9~27.5%の範囲であった。

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0138 Quantification of cell proliferation and alpha-toxin gene expression of Clostridium

perfringens in the development of necrotic enteritis in broiler chickens (ブロイラー

における壊死性腸炎の発症における Clostridium perfringens の細胞増殖及びアルファ

溶血毒遺伝子発現の定量化)

Weiduo Si, Joshua Gong, Yanming Han, Hai Yu, John Brennan, Huaijun Zhou and Shu Chen:

Applied and Environmental Microbiology, Vol 73 (21), 7110-7113 (2007)

壊死性腸炎(NE)の発症に関連したClostridium perfringens(ウェルシュ菌)の細胞

増殖及びアルファ溶血毒遺伝子発現を調査した。バシトラシンで治療した鶏と異なり、

バシトラシンで治療しなかった鶏は、典型的なNE症状を呈し、成長成績が低下した。

また、これらの鶏はC.perfringens増殖の増大及びアルファ溶血毒遺伝子の発現を示し、

それらは回帰モデルy = b0 + b1X- b2X2に従って正に相関し、発達した。回腸内消化

物における平均5 log10 CFU/gのC.perfringens数は、病変スコア2のNEを発症させる閾

値と考えられる。

0139 Quinolone-resistant Campylobacter infections in Denmark: risk factors and clinical

consequences. (キノロン耐性カンピロバクター感染症:リスクファクター及び臨床的帰

結)

Engberg, J., J. Neimann, E. M. Nielsen, F. M. Aarestrup, and V. Fussing.:Emerg Infect Dis. 10,

1056-1063 (2004)

デンマークの2つの郡におけるCampylobacter jejuni及びC. coli感染症からの疫学及

び分類データにより、キノロン及びマクロライド感受性パターンに関するデータを統

合した。疾患の平均期間は、キノロン耐性C. jejuni感染症患者86例(中央値13.2日)で

は、キノロン感受性C. jejuni感染症患者381例(中央値10.3日、p=0.001)より長かった。

外国旅行、鶏肉及び七面鳥以外の新鮮な家禽肉の摂取及び水泳は、キノロン耐性C.

jejuni感染症のリスク増加に関連があった。新鮮な鶏肉(デンマークが原産地と推定

される)を食べることは、リスク低下と関連があった。データの分類により、小売り

食品及びブロイラー由来の株とキノロン感受性の国内獲得C. jejuni感染症間には関連

が認められた。便検体採取前のフルオロキノロンによる治療とキノロン耐性C. jejuni

感染症間の関連は認められなかった。

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0140 Quinupristin/dalfopristin-resistant enterococci of the satA (vatD) and satG

(vatE) genotypes from different ecological origins in Germany (ドイツにおける生態

学的起源の異なる satA(vatD)及び satG(vatE)遺伝子型のキヌプリスチン/ダルホプリ

スチン耐性腸球菌)

Werner, G., Klare, I., Heier, H., Hinz, K. H., Bohme, G., Wendt, M., and Witte, W.:Microb. Drug

Resist. 6, No. 1, 37-47 (2000)

半合成ストレプトグラミン系キヌプリスチン/ダルホプリスチン配合剤(シナシッ

ド)は、バンコマイシン耐性Enterococcus faeciumなどの多剤耐性グラム陽性細菌によ

る感染症治療の代替薬として有望である。耐性は、アセチルトランスフェラーゼSatA

(VatD)またはSatG(VatE)遺伝子によって付与される。 近の論文より、商業的畜

産における飼料添加物としてのストレプトグラミン系のバージニアマイシンS/Mの

使用とキヌプリスチン/ダルホプリスチン耐性E. faecium(QDRE)の選抜との関連性

の可能性が示唆された。2ヶ所の七面鳥農場及び6ヶ所の養豚場由来の糞便検体(バ

ージニアマイシン使用)、1ヶ所の汚水処理施設検体、ブロイラー鶏肉24羽、豚肉10

検体、及び非入院被験者便200検体についてQDREをスクリーニングした。過去2年間

の院内E. faecium分離株の保存培養株についてもQDREを検査した。家畜糞便と汚水の

全検体、さらに鶏肉11検体(46%)、豚肉1検体(10%)、及び人の便28検体(14%)

がQDRE陽性であった。院内E. faecium分離株36株は、キヌプリスチン/ダルホプリス

チン耐性を示した。種々の由来のQDRE141株においてsatA(vatD)及びsatG(vadE)

遺伝子が検出された(人分離株7株は耐性メカニズム不明)。ストレプトグラミン耐性

決定因子は、接合伝達実験においてsatA(VatD)は10分離株中5株、satG(vatE)は22

分離株中9株で伝達された。satG(vatE)プラスミドの種々のEcoRIパターンと対応す

るsatG(vatE)遺伝子のハイブリダイゼーションにより、種々の由来の分離株におい

て耐性プラスミドの非相同性が明らかとなった。本試験結果は、生態学的起源の異な

るE. faeciumに共通のストレプトグラミン耐性遺伝子プールの存在を示唆している。

飼料添加物としてのストレプトグラミン系バージニアマイシンS/Mの使用による

QDRE選抜及びフードチェーンを介した人への耐性の伝播の可能性が高い。

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0141 Quinupristin-dalfopristin resistance among gram-positive bacteria in Taiwan (台

−湾におけるグラム陽性細菌のキヌプリスチン ダルホプリスチン耐性)

Luh, K. T., Hsueh, P. R., Teng, L. J., Pan, H. J., Chen, Y. C., Lu, J. J., Wu, J. J., and Ho, S. W. :

Antimicrob. Agents Chemother.44, No.12, 3374-3380 (2000)

臨床使用のためのキヌプリスチン−ダルホプリスチンまだ市販されていない台湾に

おけるグラム陽性細菌の臨床分離株の本剤の耐性を解明するため、キヌプリスチン−

ダルホプリスチン及びその他の新しい抗菌性薬剤に対するin vitroの感受性について、

1996年1 月~1999年12月に回収された重複のない分離株1,287株を対象として評価を

行った。メチシリン感受性Staphylococcus aureus(MSSA)分離株は、ヌプリスチン−

ダルホプリスチンに全て感受性であった。キヌプリスチン−ダルホプリスチンに対す

る非感受性(MIC、≥2 µg/mL)率が高いのは、メチシリン耐性S. aureus(MRSA)(31%)、

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)(16%)、Streptococcus pneumoniae (8%)、緑

色レンサ球菌群(51%)、バンコマイシン感受性腸球菌(85%)、バンコマイシン耐性

Enterococcus faecalis(100%、バンコマイシン耐性Enterococcus faecium(66%)、

Leuconostoc (リューコノストック)属(100%)、Lactobacillus(ラクトバチルス)属

(50%)、及びPediococcus(ペディオコッカス)属(87%)であった。MSSA、MRSA、

S. pneumoniae、及び緑色レンサ球菌群の全分離株は、バンコマイシン及びテイコプラ

ニンに感受性であった。CoNSのバンコマイシン及びテイコプラニン非感受性率は、

各々、5%及び7%であり、その範囲はS. simulansの12%及び18%から、S. cohnii及び

S. auricularisの0%及び0%であった。モキシフロキサシンとトロバフロキサシンは、

シプロフロキサシン耐性バンコマイシン耐性腸球菌及びメチシリン耐性ブドウ球菌

を除く、これらの分離株に対して優れた抗菌活性を有していた。台湾ではバージニア

マイシンが20年間以上畜産で使用されており、これがキヌプリスチン−ダルホプリス

チンの高耐性率の一因となっている可能性がある。

0142 Quinupristin-dalfopristin-resistant Enterococcus faecium on chicken and in

human stool specimens (鶏肉上及びヒトの糞便標本中のキヌプリスチン-ダルホプリス

チン耐性 Enterococcus faecium)

McDonald, L. C., Rossiter, S., Mackinson, C., Wang, Y. Y., Johnson, S., Sullivan, M., Sokolow, R.,

Debess, E., Gilbert, L., Benson, J. A., Hill, B., and Angulo, F. J.:N. Engl. J. Med. 345, 1155-1160

(2001)

背景 ストレプトグラミンであるキヌプリスチンとダルホプリスチンの配合剤は、バ

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134

ンコマイシン耐性Enterococcus faecium感染症の治療薬として1999年後半に米国で

承認された。また別のストレプトグラミンであるバージニアマイシンは1974年以降、

鶏を含む産業動物の成長を促進するために治療濃度以下で使用されている。

方法 キヌプリスチン-ダルホプリスチン耐性E. faeciumの発生頻度を調べるために、

ジョージア州、メリーランド州、ミネソタ州、オレゴン州のスーパーマーケットで

購入した丸ごとの鶏肉からのサンプル及び外来患者の糞便サンプルを選択培地で

培養した。

結果 1998年7月から1999年6月の間に、4州の26店からの鶏肉407例のサンプル及び外

来患者の糞便サンプル334例を培養した。丸ごとの鶏肉237例と糞便標本3例からキ

ヌプリスチン-ダルホプリスチン耐性E. faeciumが分離された。糞便から分離された

耐性株の耐性レベルは低かった( 小発育阻止濃度[MIC]、4 µg/mL;耐性はMIC

が4 µg/mL以上と定義した)。鶏肉から分離された耐性株の耐性レベルは比較的高か

った(MIC、4~32µg/mL;分離株の50%の発育を阻止するのに必要なMIC、8 µg/mL)。

結論 キヌプリスチン-ダルホプリスチン耐性E. faeciumは米国のスーパーマーケット

で販売されている鶏肉の大部分を汚染している。しかし、ヒトの糞便標本中のこれ

らの菌株の存在率と耐性レベルはともに低かったことから、動物へのバージニアマ

イシンの使用はまだ大きな影響を与えていないことが示唆される。ただし、キヌプ

リスチン-ダルホプリスチンの臨床使用の増加に伴って、食品媒介性の耐性の広ま

りが増大していくことが考えられる。

0143 Risk factors for domestic sporadic campylobacteriosis among young children

in Sweden. (スウェーデンの幼児における家庭内散発性カンピロバクター症の危険因

子)

Carrique-Mas, J., Y. Andersson, M. Hjertqvist, Å Svensson, A. Torner, and J. Giesecke.:Scand. J.

Infect Dis., 37, 101-110 (2005)

6歳未満の幼児における家庭内獲得Campylobacter jejuni / coli感染症の危険因子を調

べるため、スウェーデンで症例-対照試験を実施した。全国サーベイランスシステム

に報告された合計126症例を1年間で集めた。人口登録から選択した対照を、年齢、性

別、住居地及び症例の感染時期によって症例とマッチさせた。「保護」因子を含む及

び除外する2つの別個の条件付き回帰モデルを策定した。カンピロバクター感染と有

意に関連していた2つの因子は水に関係するもので、家庭内に井戸があること(OR=

2.6)及び湖/川から水を飲むこと(OR=7.4;6.0)であった。これ以外にリスクの増

大と関連していた曝露因子は、犬を飼っていること(OR=8.4;3.8)及び焼き肉を食

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べること(OR=5.5;2.1)であった。低温殺菌処理していない牛乳の摂取は1つのモ

デルで境界的な有意性を示した(OR=3.7)。ソーセージの摂取は保護因子であった

(OR=0.05)。鶏肉の摂取は有意なリスクではなかった。焼き肉の摂取や湖や川から

の飲水といった曝露因子は暖かい季節により多く見られ、季節性が観察されているこ

とを一部説明できる因子であると考えられる。著者らは、研究間の危険因子の差異は

感染源の地理的及び年齢特異的な差異を反映している可能性があることを示唆して

いる。

0144 Role of Salmonella multidrug effux pumps in tigecycline resistance (チゲサイクリ

ン耐性における Salmonella 多剤排出ポンプの役割)

Horiyama T, Nimaido E, Yamaguchi A, Nishio K:Journal of Antimicrobial Chemotherapy, 66,

105-110 (2011)

目的:チゲサイクリンに対する感受性が低下しているSalmonella enterica株が報告され

ている。本研究では、チゲサイクリン耐性におけるSalmonella多剤排出ポンプ及び

AcrAB調節因子の役割の解明を試みた。

方法:Salmonella多剤排出ポンプ及びAcrAB調節因子の過剰生産株または欠失株につ

いて各薬物のMICを測定することにより、チゲサイクリン及びその他のグリシルサ

イクリン類に対する耐性における多剤排出ポンプ及びAcrAB調節因子の関与を調

べた。本研究では野生型 ATCC 14028s 株由来の Salmonella enterica 血清型

Typhimurium(ネズミチフス菌)の株を使用した。

結果:tet遺伝子を持つプラスミドは9-(N,N-ジメチルグリシルアミド)-6-デメチル-6-

デオキシテトラサイクリン(‘DMG-DMDOT’)、ミノサイクリン、ドキシサイクリ

ン及びテトラサイクリンに対する耐性を与えたが、チゲサイクリン耐性には影響し

なかった。acrABの欠失は、チゲサイクリン及びその他のグリシルサイクリン類に

対する感受性が有意に増大した株を生じさせた。acrABまたはacrEF遺伝子を持つプ

ラスミドは、acrAB欠失変異株のすべての供試化合物に対する感受性増大を元の状

態に戻した。acrABの正の調節因子であるramAの欠失はチゲサイクリンに対する感

受性をわずかに増大させた。ramAの過剰発現またはramAの抑制因子であるramRの

欠失は、すべての供試化合物に対する感受性を低下させた。ramAまたはramRによ

って調節されたこの表現型は、acrB欠失バックグラウンドでは認められなかった。

結論:AcrAB及びAcrEFはSalmonellaにチゲサイクリン及びテトラサイクリン誘導体に

対する耐性を与える。RamA及びRamRもAcrAB依存的にチゲサイクリン耐性に関与

する。

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はじめに

Salmonellaはヒトに胃腸炎から菌血症や腸チフスに至るまでの多様な疾患を引き起

こす1。多剤耐性Salmonella entericaの蔓延率は1990年代に英国、米国及びカナダで劇

的に増大した。他の多くの国々でも家禽肉、牛肉及び豚肉における薬剤耐性Salmonella

の大発生が報告されている。ヒトと動物の両方でSalmonellaの新興耐性が認められて

おり、これは公衆衛生上、深刻な問題となる可能性がある。細菌の薬剤耐性には、細

胞への薬剤の蓄積を低下させる多剤排出ポンプが関連していることが多い。

Salmonella属の薬剤耐性は大きな関心事であり、複合感染症を引き起こすキノロン

耐性及び広域スペクトルβラクタマーゼ産生分離株はさらに大きな関心を集めている。

このようなことから、グリシルサイクリン類などのより新しいクラスの抗菌薬の探索

が必要とされている。チゲサイクリン(GAR-936)、9-(t-ブチルグリシルアミド)-

ミノサイクリンはグリシルサイクリンに分類される新しい広域スペクトル抗生物質

であり、ミノサイクリンの誘導体である第9位の修飾により、チゲサイクリンはテト

ラサイクリン耐性をもたらす2つの主要なメカニズム、すなわちテトラサイクリン特

異的排出ポンプの獲得及びリボソーム保護を克服することができるようになる。チゲ

サイクリンはテトラサイクリン特異的排出ポンプにとって不良な基質であり、Tet(M)

タンパク質によって修飾されているリボソームに付着する。これは多くのグラム陽性

及びグラム陰性菌に対して強力な抗細菌活性を示し、他の化合物との交差耐性を欠い

ている。また、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、バンコマイ

シン耐性腸球菌、広域スペクトルβラクタマーゼ発現腸内細菌及びペニシリン耐性

Streptococcus pneumoniae(肺炎連鎖球菌)といった多剤耐性病原菌に対して有効であ

る。

ただし、チゲサイクリンに対する感受性が低めの菌株もある。チゲサイクリンの活

性は、排出ポンプの耐性-ノジュレーション-細胞分裂(RND)ファミリーに属する

MexXY-OprMによる能動排出が存在するPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)に対して

は不良であることが報告されている。Enterobacter cloacae、Escherichia coli(大腸菌)、

Morganella morganii(モルガン菌)及びKlebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)でも、AcrAB

の過剰生産からチゲサイクリン耐性が生じることが報告されている。E. cloacaeと、

K. pneumoniaeでは、AcrABの過剰生産からのチゲサイクリン耐性がその正の調節因子

であるramAの過剰発現によるものである可能性があることが報告された。

チゲサイクリンに対する感受性が低下しているS. enterica株が細菌出現してきてい

る。 近の研究では、Salmonellaには少なくとも9個の多剤排出ポンプがあることが示

されている。これらのポンプは、RND、主要ファシリテーター、多剤/毒性化合物排

出及びATP結合カセットという4つのファミリーに分類されている。これらのポンプ

のうちAcrABは多剤耐性の発生に有効であり、広範な基質特異性を持っている。

AcrABは、MarA、Rob、SoxS、SdiA、RamA及びRamRといった多くの調節因子によ

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って誘導される。ある 近の研究は、RamAがSalmonella acrABのマスター調節因子で

あることを示唆している。RamRはramAの局所的抑制因子であり、RamAとRamRは

SalmonellaにおけるAcrAB媒介性多剤耐性に関与している。本研究では、Salmonella多

剤排出ポンプ及びAcrAB調節因子の過剰生産株または欠失株を用いて、チゲサイクリ

ン及びその他のグリシルサイクリン類に対する耐性におけるSalmonella多剤排出ポン

プの役割を調べた。

材料及び方法

細菌株、プラスミド及び増殖条件

本研究で使用した細菌株及びプラスミドを表1に列挙している。本研究で使用し

たS. enterica血清型Typhimuriumは野生型ATCC 14028s株由来である29。菌株はルリ

ア-ベルターニ(LB)ブロス中で37℃で増殖させた。プラスミド維持のためにアン

ピシリンを 終濃度100 mg/Lで増殖培地に添加した。

遺伝子欠失変異株の構成

βramR変異株を構成するため、DatsenkoとWannerの報告のとおりに遺伝子破壊を

実施した30。変異株の構成には、次のオリゴヌクレオチド・プライマーを使用した:

ramR-P1(TCCAATCCCAGCGCAATATATTCGCCAGCGAGCGGGATCGCGCGTGTA

GGCTGGAGCTGCTTC);及びramR-P2(AAGCATTACTGGAAGCGGCAACCCAGG

CGATAGCGCAATCCGGTATCATATGAATATCCTCCTTAG)。上記のプライマーを使

用して、Flp認識部位が隣接しているクロラムフェニコール耐性遺伝子catをPCRに

よって増幅した。得られたPCR産物を使用して、Redリコンビナーゼを発現するプ

ラスミドpkD46を持つレシピエントATCC 14028s株を形質転換した。変異遺伝子座

の染色体構造をPCRによって確認した。

化学物質

チゲサイクリン、9-(N,N-ジメチルグリシルアミド)-6-デメチル-6-デオキシテト

ラサイクリン(DMG-DMDOT)、ミノサイクリン、ドキシサイクリン及びテトラサ

イクリンは日本ワイスレダリー株式会社(東京)から入手した。

毒性化合物のMICの測定

チゲサイクリン、DMG-DMDOT、ミノサイクリン、ドキシサイクリン及びテト

ラサイクリンを多様な濃度で含有するLB寒天平板上で様々な物質のMICを測定し

た。寒天平板は以前に報告されているとおりに2倍寒天希釈法によって調製した。

MICを測定するため、細菌をLBブロス中で37℃で一晩増殖させ、同じ培地に希釈し

た後、37℃で20時間インキュベーションしてから多点接種装置(佐久間製作所、東

京)を使って105 cfu/µLの 終接種サイズで試験した。MICは菌体の増殖を阻止し

た化合物の 低濃度とした。

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結果及び考察

チゲサイクリン耐性におけるtet遺伝子の関与

これまでの研究により、テトラサイクリン耐性決定遺伝子tetは腸内細菌、S. aureus

及びS. pneumoniae分離株のチゲサイクリン感受性に影響しないことが示唆されて

いる32,33。tetがSalmonellaのチゲサイクリン耐性に関与しているかどうかを確認す

るため、tet遺伝子を過剰発現している株についてMICを測定した。テトラサイクリ

ン排出ポンプTetAをコードするtetAを持つプラスミドpBR322-tetは34,35、野生型、

�acrB及び�tolC株に初期の治験グリシルサイクリンであるDMG-DMDOT、ミノサ

イクリン、ドキシサイクリン及びテトラサイクリンに対する耐性を与えたが、いず

れの株にもチゲサイクリン耐性は与えなかった。TetAを産生しないpBR322-�tetは、

上記の化合物に対する感受性に影響しなかった。これらの結果は、tet遺伝子が

Salmonellaにグリシルサイクリン耐性は与えるがチゲサイクリン耐性は与えないこ

とを示唆している。

チゲサイクリン及びその他のグリシルサイクリン類のMICに対する薬物排出ポンプ

の影響

acrAB、acrEF及びmdfA遺伝子を持つプラスミドは、βacrB変異株にテトラサイク

リン耐性を与えた。これは以前の研究の結果と一致している25。acrABとacrEFを持

つプラスミドは、βacrB変異株にすべての供試化合物に対する耐性を与えた(β

acrB/ベクターと比べてMICが2~16倍増大)。しかし、acrABとacrEFを持つプラスミ

ドはβtolC変異株には耐性を与えなかった。これらの結果は、AcrAB-TolC及び

AcrEF-TolCシステムがチゲサイクリン及びその他のグリシルサイクリン類に対す

る耐性に関与していることを示唆している。acrAB遺伝子の欠失は、供試化合物の

すべてに対する感受性が有意に(野生型と比較して4~16倍に)増大した株を生じ

させたが、acrEF遺伝子の欠失は供試化合物のいずれに対する感受性にも影響しな

かった。これらの結果は、AcrABがチゲサイクリン及びその他のグリシルサイクリ

ン類に対する耐性への第一の寄与因子であることを示唆している。�acrAB変異株

から9個の排出遺伝子を段階希釈しても、供試化合物のいずれに対する感受性にも

影響は現れなかった。これらのデータは、AcrABがチゲサイクリン及びその他のグ

リシルサイクリン類に対する耐性に決定的な役割を果たしているという上記の考

察を裏付けている。

チゲサイクリン及びその他のグリシルサイクリン類に対する耐性へのAcrAB調節因

子の関与

ramA遺伝子の欠失はチゲサイクリンに対する感受性をわずかに増大させ(野生

型と比較してMICの2分の1の減少)、野生型株におけるramAの過剰発現はすべての

供試化合物に対する感受性を低下させた(野生型と比較してMICの2~4倍の増大)。

ramR遺伝子の欠失は、すべての供試化合物に対する感受性を有意に低下させた(野

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生型と比較してMICの2~4倍の増大)。marA、rob、soxS及びsdiAといった他のAcrAB

調節遺伝子の欠失は、供試化合物のいずれに対する感受性にも影響しなかった。こ

れらの結果は、RamAとRamRがチゲサイクリン及びその他のグリシルサイクリン類

に対する耐性に関与していることを示唆している。RamAとRamRによって調節され

たグリシルサイクリン類耐性へのAcrB排出ポンプの関与を調べるため、RamA過剰

発現βacrB変異株及びβacrB ramR二重変異株についてMICを測定した。βacrB変異

株におけるRamAの過剰発現とRamRの欠失は、いずれも供試化合物に対する感受性

に影響しなかった。これらのデータは、RamAとRamRがAcrAB依存的にチゲサイク

リン及びその他のグリシルサイクリン類に対する耐性に関与していることを示し

ている。

結論

今回の結果は、AcrABとその緊密な同族体であるAcrEFがS. enterica血清型

Typhimurium ATCC 14028sにチゲサイクリン耐性を与えることを示唆している。β

acrAB変異株の結果から、供試化合物のすべてに対する耐性にAcrAB排出ポンプが大

きく寄与している一方、acrEF遺伝子の欠失はこれらの化合物に対する感受性に影響

しないことが示された。これらの所見は、acrAB及びacrEF遺伝子の発現レベルの相違

に起因している可能性がある。ある 近の研究は、acrEFがヒストン様核様体構成タ

ンパク質(H-NS)によって抑制される一方、acrABは抑制されずにS. entericaに構成的

に発現することを示している。したがって、AcrABがチゲサイクリン及びその他のグ

リシルサイクリン類に対する耐性への第一の寄与因子ということになる。

Salmonella多剤排出ポンプの複数の調節因子の1つであるramA遺伝子の欠失はチゲ

サイクリンに対する感受性がわずかに増大した株を生じさせ、ramA遺伝子の過剰発

現は供試化合物のすべてに対する耐性をもたらした。ramR遺伝子の欠失も供試化合

物のすべてに対する有意な耐性を生じさせた。このRamAとRamRによって調節された

耐性は、AcrB排出ポンプの存在に依存していた。今回のデータは、RamAとRamRが

耐性の表出に有効であること、ならびにmarA、rob、soxS及びsdiAはチゲサイクリン

及びその他のグリシルサイクリン類に対する感受性に影響しないことを示唆してい

る。

本研究で私たちは、Salmonellaにおけるチゲサイクリン耐性のメカニズムを解明し

た。この結果は、AcrAB-TolC及びAcrEF-TolCシステムがチゲサイクリン及びその他の

グリシルサイクリン類に対する耐性に関与していること、ならびにAcrABが主要な寄

与因子であることを示唆している。また、ramAの過剰発現及びramRの不活化は、

AcrAB依存的にチゲサイクリン耐性を増進(4倍に)させた。