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FRIコンサルティング最前線. Vol.1, p.120-124 (2008) 120 市場環境が激変している昨今、不確実性の高い未来に対していかに柔軟かつ迅速 に対処していくかということが課題となっている。企業が永続的に発展するために 目指すのは、広く社外に未来に対する自社のビジョンを指し示した上で、独創的な 市場を創造し続けることである。我々はこれまでのコンサルティングノウハウを集 約し、非線形の未来を洞察するための方法論を確立した。これは業界を跨る様々な データや事例とニーズを踏まえて「変化の予兆」を捉え、そこから各プレーヤの役 割の変化や価値提供の新たな流れを示した「未来洞察像」を導く方法論である。本 論文では、その方法論の概要と適用事例、活用方法について述べる。 アブストラクト 佐々木哲也(ささき てつや) (株)富士通総研 第二コンサル ティング事業部 産業コンサル ティング事業部 所属 現在、製造業の企画業務を中心と したコンサルティングに従事。 ビジネス・クリエーション 業種:業種共通 新たなビジネス創出に向けた未来への 洞察アプローチ          

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FRIコンサルティング最前線. Vol.1, p.120-124 (2008)120

市場環境が激変している昨今、不確実性の高い未来に対していかに柔軟かつ迅速に対処していくかということが課題となっている。企業が永続的に発展するために目指すのは、広く社外に未来に対する自社のビジョンを指し示した上で、独創的な市場を創造し続けることである。我々はこれまでのコンサルティングノウハウを集約し、非線形の未来を洞察するための方法論を確立した。これは業界を跨る様々なデータや事例とニーズを踏まえて「変化の予兆」を捉え、そこから各プレーヤの役割の変化や価値提供の新たな流れを示した「未来洞察像」を導く方法論である。本論文では、その方法論の概要と適用事例、活用方法について述べる。

アブストラクト

佐々木哲也(ささき てつや)

(株)富士通総研 第二コンサルテ ィ ン グ 事 業 部 産 業 コ ン サ ルティング事業部 所属現在、製造業の企画業務を中心としたコンサルティングに従事。

ビジネス・クリエーション

業種:業種共通

新たなビジネス創出に向けた未来への洞察アプローチ          

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FRIコンサルティング最前線. Vol.1, (2008) 121

新たなビジネス創出に向けた未来への洞察アプローチ

ま え が き

昨今の企業においては、顧客ニーズの多様化やグローバルでの価格・品質における競争環境の激化といった外部環境上の問題と、法規制等への対応のための業務プロセス/ルールの見直しや人員構造の問題といった内部構造上の問題がより一層鮮明となってきている。これらの問題に対応していくため、コスト、品質といった現在の競争領域で何をすべきか、ということよりも、新市場の創出によって非競争領域をいかに見出していくか、ということに関心をシフトさせてきている企業が増加している。そこで多くの企業が未来予測に着手しているが、過去から現在にわたるデータを蓄積し、漸進的に将来像を考えていくケースが大半である。その際の前提は、未来は破壊的な構造変化を起こさず連続的に推移していくということである。従って突然変異ともいえる革新的なプレーヤが登場し、市場の原理原則自体が破綻することも、自らが革新的プレーヤとなり市場を形成していくことも、予期してはいない。本来求められるのは、現状の市場をベースとした発想から脱却し、業界の垣根を意識することなく非線形の未来を洞察し、意思を込めて革新的な将来像を描くことである。そのためには、市場、技術、政策、社会といった様々な要素における「変化の予兆」をいかに幅広く捉え、読み解くか、ということが重要となる。「変化の予兆」に基づき具体化した将来像に対し、実現するためのシナリオを逆展開して自社の計画に落とし込むことで、不確実性の高い未来に対応することが可能となる。結果、企業は顧客にとってのパートナーというポジションであり続け、持続可能性を高めることができるのではないか。このような新たなアプローチが今まさに必要となってきている。そのための手法や手順は個別には存在するものの、体系的に確立されたものがないことから、我々はこれまでのコンサルティングで培ったノウハウを集約化させ、独自の手法体系としての構築を行っている。本論文ではその具体的な進め方とアウトプットの概要について述べる。

未来洞察のための手法体系

非線形の未来を洞察し将来像を描く一連の手法体系を我々は“Future Opportunity Modeling メソッド”と名付けている。それぞれのステップにおける手順やポイントは後述するが、全体を通じて根底にある考え方、基本方針をここでは述べる。本メソッドでは非線形の未来を洞察するためにそのような考え方から脱却し、市場の構造や登場人物および価値観が大きく変化する可能性のある要因を多数抽出した上で、その要因を組み合わせた将来像を描くということをキーポイントとしている。この要因を我々は「変化の予兆」と呼んでおり、これを抽出するためには膨大な事象や事例といったデータを収集した上で、既存の市場を構成するプレーヤが真に何を求めているかを察し双方の関係付けを行うことが重要となる。また、上記の将来像をここでは「未来洞察像」と呼ぶ。本メソッドではこのキーポイントを主軸として無数の情報を組み合わせて発想を繰り返すための情報整理手法や発想手法、検討における視点および観点を体系化した。それにより発想の斬新さと納得性のバランスを取りながら、複数のシナリオを生成させることが可能となる。

“Future Opportunity Modeling メソッド”概要

本メソッドは図-1のプロセスを辿る。発想を促すために発散と収束をひたすら繰り返していく構成となっている。以降では各ステップにおける進め方とポイントを説明する。● STEP1ターゲットエリアの設定本メソッドを用いて描く将来像のターゲットエリアを定義する。ターゲットエリアは、主要製品やサービスを中心として、それらが用いられている業界・業種や、関連する業界・業種を広く設定する。● STEP2「重要ドライバネットワーク」の作成ターゲットエリア周辺における変化をもたらす様々な事象・事例や動向についての、公開・非公開を含めた情報を我々は「ドライバ情報」と呼んでいる。この「ドライバ情報」に基づき、ドライバ間で関連性があると思われるものを線で結び付けていき、「重要ドライバネットワーク」を作成する。

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FRIコンサルティング最前線. Vol.1, (2008)122

ビジネス・クリエーション

● STEP3 各プレーヤにおける「重要ニーズ」の定義ターゲットエリアにおけるそれぞれのプレーヤ

(使い手、売り手、作り手、素材・部品供給、新規参入業者等)を定義する。特に重要と思われるニーズ、もしくは複数のプレーヤに共通するニーズを「重要ニーズ」として定義する。● STEP4 「重要ドライバ」 と 「重要ニーズ」 関連付け各プレーヤの「重要ニーズ」に対し、「重要ドライバネットワーク」のどの領域が対応しているかを検証し、図-2のような「ドライバ/ニーズ関連図」を作成する。「ドライバ/ニーズ関連図」を作成し見出した、「重要ニーズ」に対応する「重要ドライバ」の領域について、どのような未来の方向性が考えられるか、

それぞれのプレーヤがどのようなことを求めているか、ということを咀嚼し、今後変化が起きることが想定される、「変化領域」を設定する。● STEP5 「変化の予兆」の抽出定義した「変化領域」ごとに仮説を立案する。プレーヤの役割がいかに変化していくかということを中心に、「変化の仮説」として詳細に記述していく。「変化の仮説」を記述した際に具体的に表現された無数の要素を、「変化の予兆」として抽出する。抽出した「変化の予兆」を一覧化し、それらをターゲットエリアにおける業務のどのあたりに位置づけられるかを配置し、多角的な評価を行った上で「変化の予兆」をいくつかのクラスタに分類し、図-3のような「変化の予兆マップ」として記述する。

図-1 “Future Opportunity Modeling メソッド”全体プロセス

STEP 2ターゲットエリアの設定

STEP 2「重要ドライバ」ネットワークの作成

STEP 3各プレーヤにおける「重要ニーズ」の定義

STEP 4「重要ドライバ」と「重要ニーズ」関連付け

STEP 5「変化の予兆」の抽出

STEP 6「未来洞察像」の策定

技術

重要ドライバ重要ニーズ

使い手新規

プレーヤ・代替品

作り手素材・部品供給

売り手

①プレーヤの機能/役割②提供される価値③価値に対する富の流れ④実現性および制約条件⑤投資領域⑥実現シナリオ

①プレーヤの機能/役割②提供される価値③価値に対する富の流れ④実現性および制約条件⑤投資領域⑥実現シナリオ

①プレーヤの機能/役割②提供される価値③価値に対する富の流れ④実現性および制約条件⑤投資領域⑥実現シナリオ

①プレーヤの機能/役割②提供される価値③価値に対する富の流れ④実現性および制約条件⑤投資領域⑥実現シナリオ

①プレーヤの機能/役割②提供される価値③価値に対する富の流れ④実現性および制約条件⑤投資領域⑥実現シナリオ

①プレーヤの機能/役割②提供される価値③価値に対する富の流れ④実現性および制約条件⑤投資領域⑥実現シナリオ

設計

生産

R&D変化の予兆

変化の予兆

販売販売変化の予兆

変化の予兆

変化の予兆とプレーヤのマッピング

プレーヤプレーヤ

プレーヤプレーヤ

プレーヤプレーヤ

プレーヤプレーヤ

予兆ネットワーク

地球環境

社会・人口

経済・市場

政策・規制

グローバル

回収調達

図-2 「ドライバ/ニーズ関連図」の例

大画面化

新型FPD(有機EL、SED、FED) 素材・材料

の変化

省エネ技術

生産技術(生産の効率化、設備

モジュール化の進展

低価ルに中国

世界社内、社外高精細化

簡素化、軽量化

低電力化

≪使い手の視点≫テレビの性能強化

テレビ

②②新新しいキーテクノロジーの登場しいキーテクノロジーの登場1

重要ニーズ

重要ドライバマップ

変化領域

大画面化

新型FPD(有機EL、SED、FED) 素材・材料

の変化

省エネ技術

生産技術(生産の効率化、設備

モジュール化の進展

低価ルに中国

世界社内、社外高精細化

簡素化、軽量化

低電力化

≪使い手の視点≫テレビの性能強化・より綺麗で、よりコンパクトで、より電力を消費しないテレビ

②②新新しいキーテクノロジーの登場しいキーテクノロジーの登場1

重要ニーズ

重要ドライバマップ

変化領域

重要ニーズ

重要ドライバマップ

変化領域

図-3 「変化の予兆マップ」の例

拡張品/オプション市場拡張品/オプション市場

ネットワーク家電市場ネットワーク家電市場

広告市場広告市場

回収回収アフタサービスアフタサービス

エンドユーザ

エンドユーザ

生産(外部)生産(外部)

販売販売

低価格テレビ市場低価格テレビ市場生産準備(外部)生産準備(外部)

コンテンツ/アプリ市コンテンツ/アプリ市場場

電子部品メーカ電子部品メーカ・バックライト・バックライト

ヘルスケアヘルスケア業界業界

セキュリティセキュリティ業界業界

住宅住宅業界業界

コンテンツコンテンツ制作業者制作業者

企画/デザイン企画/デザイン企業企業

ITIT系ベンダ系ベンダ

化学メーカ化学メーカ

設備メーカ設備メーカ

BPOBPO購買請負企業購買請負企業

EMS企業EMS企業

生産(製品)生産(製品)

生産準備生産準備

設計/開発(設計/開発(外部)外部)組込みソフト組込みソフトベンダベンダ

モジュラ企業モジュラ企業

生産生産((部品部品)) 生産(モジュール)生産(モジュール)

アプリアプリ制作業制作業者者

メーカ

エンドユーザ

小売メーカ

設計

生産調達 回収

R&D

リサイクル設計

生産調達 販売 回収

R&Dリサイクル

広告代理店広告代理店

全産業全産業

OAOAサプライメーカサプライメーカ音響系メーカ音響系メーカ

42.リサイクル起点設計の拡大

3.組込ソフトアウトソーシング激化

20.ネットワーク家電による生活情報の活用

19. ホームエレクトロニクスの司令塔としてのテレビ

21. ユビキタスエコノミーによる新たなライフスタイル

41. リサイクルチェーンの拡大22. アフターサービスの共同会社設立

23. ネットワーク家電各社による不具合対応連携

39. メーカポイントサービスのアライアンス

40. メーカ横断共同直販サイト(Web)の登場

24.メーカ横断のユーザ登録の仕組み

共同ファブの設立

9.ベンダ各社によるオープンイノベーション激化

12.企画販売企業(モジュール寄せ集め)の台頭

5.家電メーカーのコンテンツ事業拡大

18 プロセッサ性能による買換需要喚起

8.脱・組込ソフト化(SaaS)

13. EMS化の進展(作らないメーカの増加)

36. BPO購買請負会社の登場

25. 新たなサプライヤの登場

26. 既存サプライヤの衰退

7.ネットワーク家電サービスと組込ソフトのセット提案

30.組込ソフト会社との連携

33.設備メーカ(外部)による生産革新

43.商品企画・デザインのアウトソーシング44.メーカーと企画会社・他ブランドとのコラボレーションの場形

16. コンテンツ直結型広告市場の拡大(動画を介したオンライン広告)

17. テレビ専用検索エンジンの登場(個人の嗜好に合わせた番組表)

14. ソフト・アプリ組込デバイスによる拡張(スロットイン)

15.外付・オプション品市場の形成

6.コンテンツ業者の日本メーカー離れ

32.生産技術革新の激化

29. LSI 化進展による半導体メーカの

設備増強・連携強化 37.企業間購買取引所(Web)の一本化

11.メーカとモジュラ企業の連携

10. モジュラ企業の台頭(家電のT1企業誕生)

31.組込ソフト開発者の増強

設計/開発設計/開発1.組込ソフト共同開発

2.メカ・エレキ設計開発の競合間連携

4.家電製品共通汎用LSI28.各社標準の共同設計・開発・生産38.メーカ横断の共通部品化・横断化

34.産学官連携による研究開発増加35.研究開発費分散のための共同開発

R&DR&D

27. セットメーカと化学サプライヤの連携

企画/デザイン(外部)

変化の予兆

プレーヤプレーヤ

企画/デザイン(外部)

購買(外部)購買(外部)

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新たなビジネス創出に向けた未来への洞察アプローチ

● STEP6 「未来洞察像」の策定時系列を踏まえて「変化の予兆」の相互の関係性について、明確化する。それにより「変化の予兆」間の関係性や、影響を及ぼしやすいキーとなる「変化の予兆」を明確にする。キーとなる「変化の予兆」を中心に、クラスタ別に今後起こりうる変化について、全体の傾向、それぞれのプレーヤの意思、役割の変化、実現上の課題について検討する。各プレーヤの価値変化がどのように起こるかということを基軸として、現状との差分を明確に記述していく。妥当性検証(収益性の想定や制約条件の抽出)や投資領域の整理を行い、それぞれのプレーヤの役割・機能を定義する。描いた将来像はどのような要素が実現される必要があるかを踏まえ、シナリオを検討する。上記のような検討結果を踏まえ、「未来洞察像」が生成される。「未来洞察像」には、①プレーヤの機能/役割、②提供される価値(プロダクト/サービス)、③価値に対する富(対価)の流れ、④実現性および制約条件、⑤投資領域、⑥実現シナリオが構成要素として盛り込まれる。

デジタル家電を中心とした事例紹介

本章では、実際にお客様からの依頼を受け、デジタル家電業界にFuture Opportunity Modeling メソッドを適用したケースを紹介する。

STEP1では、デジタル家電を中心としたターゲットエリアを設定し、STEP2で 個人・ネット上でのコンテンツ作成や組込ソフトのオープン化、有機ELやSED等の新たな技術の登場といった近年の動向を「重要ドライバ」として定義した。STEP3では特に使い手(視聴者)の性能・機能・サービス・コンテンツに対するニーズ、作り手(セットメーカ)の技術の高度化・複雑化への対応や徹底したコストダウンに対するニーズを「重要ニーズ」として定義している。STEP4では「重要ドライバ」と「重要ニーズ」を関連付け、①アナログからデジタルへの技術変化、②新しいキーテクノロジーの登場、③サービス業態への変革、④モジュール化の加速、を「変化領域」として定義している。そこからSTEP5において、数十の「変化の予兆」を抽出・定義した。この「変化の予兆」を踏まえて、STEP6で「予兆ネットワーク」を作成し、5つの

「未来洞察像」を策定している。以下に、そのうちの一つとして“センサー型ネットワーク家電によるライフデザインサービス”を挙げる。概要としてはホームエレクトロニクスの進展に伴い、冷蔵庫、洗濯機等のいわゆる白物家電も含めたあらゆる家電製品が家庭内でネットワーク化され、様々なサービスが完全にパーソナライズ化されるというものである。そこでは家電製品は一括コントロールされるだけでなく、個人の感情や思考、生活ログといった情報をリアルタイムに反映させた個人の嗜好や状態に合わせた最適なサービスが無数に登場するようになる。そして、デジタル家電メーカはこれまでのビジネス領域を大きく拡大し、様々なサービス事業者と連携しつつ新たなサービス事業を展開することになる。それぞれの「未来洞察像」では図-4で示したようなプレーヤの機能/役割や提供される価値の流れが詳細展開されると同時に、実現に向けて障壁となる法規制や商慣習等の制約条件やITを中心とした投資領域の定義、制約条件をブレイクスルーするための促進化要因(技術革新/変革要素)がアウトプットされる。

む  す  び

Future Opportunity Modeling メソッド適用後に重要なことは、「未来洞察像」をベースとしたディスカッションである。具体的には、①社内での展開と、②社外との対話、双方を進めていくことが重要となる。社内での展開とは、「未来洞察像」を元にして描いたシナリオの時間軸での推移や発生確率、定点観測すべきポイントを明確にしていくことである。

消費者 デジタル家電メーカ

住宅・エネルギー

ヘルスケア・食品

企業・教育

感情に合わせたコントロール(照明、内外装、温湿度、音響 等)

健康状態・嗜好に応じた食・行動プログラム

個人のパフォーマンス最大化(仕事の時間、順番、方法 等)

生活・感情生活・感情・思考ログ・思考ログ

個人主役

個人主役

メーカが新たな業態に変革し、今以上に様々なプレーヤと連携メーカが新たな業態に変革し、今以上に様々なプレーヤと連携

ハンドリングしたデータを活用

ペタスケールのデータハンドリング

センサー付家電で状態感知

図-4 “A.センサー型ネットワーク家電によるライフデザインサービス”イメージ(一部)

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ビジネス・クリエーション

中期計画や技術ロードマップとの整合性もはからなくてはならない。同時に自社の従業員に対して、「未来洞察像」を積極的に開示していくことが重要となる。全社として共有し、組織的・継続的にブラッシュアップしていくための仕組みや、ITとしての整備も必要となる。社外に対する開示とは、「未来洞察像」をお客様へ積極的に提示し、議論を深めることを中心とする。そのような議論の中で「未来洞察像」そのものも常にブラッシュアップされていくことが望ましい。同様にビジネスパートナーと共有、或いは広く社外へ発信することも重要である。

Future Opportunity Modeling メソッドは企業がイノベーションを起こし続けることを狙いとしている。そのために業界・業種、お客様のニーズに合わせて範囲・規模や進め方を最適化させてご提供差し上げている。本メソッドによって、お客様が目指す姿を実現するための総合的なご支援

が出来れば幸いである。

参 考 文 献

(1) P.F. ドラッカー:すでに起こった未来―変化を読む眼、P.333、ダイヤモンド社、1994.

(2) キース ヴァン・デル・ハイデン:シナリオ・プランニング「戦略的思考と意思決定」、P.312、ダイヤモンド社、1998.

(3) カール=ヘンリク ロベール:ナチュラル・チャレンジ―明日の市場の勝者となるために、P.301、新評論、1998.

(4) 鷲田 祐一:未来を洞察する―Foresight、P.229、エヌティティ出版、2007.

(5) 経済産業省:未来を創るイノベーション、P.330、(財)経済産業調査会、2007.

(6) 根本昌彦:未来学―リスクを回避し、未来を変えるための考え方、P.206、WAVE出版、2008.