家を一軒借りてみた。

そこにはむかし、ギリシャ悲劇の一家が住んでいた。

家やまちの眺め方。

ギリシャ悲劇に登場する 一家が暮らした家だと思えば、 いろいろなものが見えてくる。

彼らが暮らしたまちだと思えば、 いろいろなものが見えてくる。

ーPart 1夏 次女エレクトラが復臼する話。

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どこを開けてのぞいてもかまいません。

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行方不明の弟が帰ってくる。

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花火の夜。 戦争から戻った父を、 母と愛人が待ちかまえていた。

Part 2冬 長女イピゲネイアの嫁入りの話。

おばさんが駆け落ちしたせいで戦争が始まる。

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部屋ごとに別の日付になっています。

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Part 3x4春 家系図を片手に散歩。

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くだる時間とさかのぼる時間。

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道ばたで待っていればバスが来る。

現在の東京のまちと ギリシャ悲劇 を無造作に重ねたときに、 何が

見えてくるかに関心がありました。下町のふつうの民家に、ギリシャ

悲劇の登場人物たちが住んでいると想像すると、「ん？」と脳みそ

に負荷がかかって、 ちょっと面白いような気がしました。お風呂場

や台所などの見え方も変わってきます。

つまり、 海外の古典をダシにして、 ふだん見過ごしてしまっている

ごく平凡な家やまちを、 もっとよく見つめてみようというわけです。

〈演劇〉というのは表現芸術の1ジャンルというよりも、 じつはむ

しろ道具や技能のようなもので、演劇的発想をツ ールとして、さま

ざまなことができるのです。実際に在るものとフィクションとが二層

のレイヤ ー のように重なり合い、 そのおかげでふつうだと見えない

色々なことが感じられ、考えられるようになる。劇場での上演は演

劇のほんの 一面にすぎません。

10 か月にわたるこのプロジェクトは、そんなふうに演劇を使いこなし

ながら、どうしたらある家やまちのもつ、生活や歴史（というと大げ

さですが）に対して感覚を開くことができるのかを探るものでした。

2010年夏におこなった Part1では、 家のディテ ールを見つめるこ

とに力を注ぎました。 翌2011年正月のPart2 では、 同じ家の

なかに流れる複数の時間をつかまえようとしました。そして最後はい

よいよ家の外にでで、 春のきざすのどかなまちを歩きながら、 二種

類の時間の流れをたどろうと準備をしていたさなか、 3月11 日を

迎えました。

公演は中止にせざるをえませんでした。安全上の理由というよりも、

そもそも目をこらし見つめようとしていた 「何もない日常」 がなくなっ

てしまったのです。

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The House of Atreus, Sumida-ku, Tokyo

Part 1 2010年7月 31日（土) - 8月1日（日）Part 2 2011年1月13日（木）—16日（日）Part 3x4 2011年3月16日（水）ー20日（日） ※震災のため中止

会場：旧アトレウス家（東京都畢田区東向島）および周辺出演：福田毅 武田力 稲継美保 聞谷洋子 山崎朋 立川真代 石田晶子

東彩織 堀切梨奈子 西島慧子／國武葵 北條元康 小林賢弘大橋加番 藤井さゆり 坂上翔子 原友里恵 吉中詩織 宮武亜季冨田了平(Partl)/大谷能生 佐藤慎也(Part2)/石田龍太郎堀内里菜 馬渕かなみ 和田匡史(Part 3x4)

コンセプト ・ 構成 ・ 演出：長島確

コラボレ ー タ ー ：福田毅 武田カレトロクッキング： EAT & ART TARO 写真 ・ 映像：冨田了平ロゴデザイン：福岡泰隆ドラマトゥルク：佐藤慎也 横堀応彦(Part 1) 演出助手：宮武亜季制作：戸田史子

企画： mmp (ミクストメディア ・ プロダクト）主催：東京都 東京文化発信プロジェクト室

（公益財団法人東京都歴史文化財団）特定非営利活動法人向島学会

協力：日本大学佐藤慎也研究室東京藝術大学市村作知雄研究室中野成樹＋フランケンズ 花よし生花店堂地堂 昆野純子 こすみ図書本間晴智 Yuri-chan 佐脇三乃里菅野菜実子 碇笑美子 苅部将大